「シカマルどこかなー。」

シカマルが中忍になってから、最近あまり会えない
日々が続いていた。
任務が忙しいのは分かるけど、私の事もちょっとは
構ってほしいよ・・・


今日はシカマルの任務先を聞いてある。
予定ではそろそろ任務完了時刻。

木の葉の森の中を私はシカマルの姿を捜して歩き
回っていた。

「確かこの辺りにいるはずなんだけど・・・・」

呟いた瞬間、私の視界の遥か先にシカマルの頭が
木の間から見えた。

いた!今一番会いたい人が!

「シカマル〜!」

私は大声で叫びながら、木の間を走りぬけて、シカマル
に向かっていった。

「シカマル。見ーつけた!」
木の陰からピョンッと飛び出て、驚かすつもりだった
のに・・・・

シカマルはチラッとこっちを見ただけで、顔をもどしてしまった。
その視線の先には私の知らない女の人が立っていた。

「あっ」

私は言葉を失った。

。まだ任務中だ。」
再びこちらをむいたシカマルの顔はなんだか険しくて、
怒っているみたいだった。

「ごめん。」
俯いた私に、女の人はクスリと笑っていた。

(なんだか悔しぃ!誰よこの女!)

私は2人が話しをしている様子を黙ったまま突っ立って
見ていた。
2人は任務の話しをしているみたいだった。

「んじゃ、そういう事で」
シカマルが言うと
「奈良君が私の隊で安心だわ」
女の人は優しく微笑んだ。
「俺はそんな頼れるキャラじゃねーよ」
頬をかくシカマルに
「何?謙遜してるの?あなたの洞察力の鋭さには周りの
 みんなも一目置いてるわ。頼りにしてます」
女の人はまた微笑んで、シカマルの肩に手を
置いた。



私はその光景に体が硬直してしまった。

なんて美しくて、艶やかな人なんだろう・・・
この人とシカマルが同じ隊・・・・・・・

私は一気に不安になった。



「それじゃあ 明日っつう事で。」

「えぇ。 かわいい彼女さん。長々とごめんなさいね。」
彼女は私の顔を覗き込んで、優しく笑うと、
スッと消えるように去っていった。

私は何も言えずに、黙って彼女の後ろ姿を見ていた。

あのしなやかな身のこなしはきっと上忍レベルだ・・・・
しかも、背が高くて細身の体。きりりとした顔立ち。
どこをとっても大人の女性だった。






。帰るぞ。まったくお前はいつまでもガキ
 だな。なんだよあの登場は・・・」
シカマルは溜息をつきながら私の頭にポンッと手を
置いた。

『ガキだな・・・』

その言葉が私の胸を突き刺した。

そうよね・・・あの人は大人な女性だわ。
私とは全然違う・・・

私は無償に腹がたった。

「どうせ私はガキよ!なによ!シカマルったら、あの女の人
 に鼻の下伸ばしちゃってさ!やらしい!」

本当はそんな事なかったけど・・悔しいんだもん。

「あぁ?なんだよ、焼もちか?めんどくせーやつ。」
シカマルはまた溜息をつく。

「何が焼もちよ!うぬぼれんなっ!」

私はシカマルの背中をボスと蹴っ飛ばして、その場を走り去った。

「痛ってぇ・・・・」
シカマルは背中を屈めながら、

「そういう所がガキだっつうんだよ。バカ。」

と言っていた。

私は振り向かなかった。
全速力で走って逃げた。
そりゃさ、蹴っ飛ばしたのは悪いけど・・・・
でも、謝らないからね。
シカマルが悪いんだよ!私をほったらかしにしといて、あんな
綺麗な人といるなんて・・・そりゃ、任務の話しだったかもしれ
ないけど・・・でもでも・・・・





家につくと、一人ぼっちの薄暗い部屋が妙に寂しく感じた。
電気もつけづに、私は居間のソファーにボスッと勢いよく
座り、そのまま膝を抱えて身を屈めて泣いてしまった。

どのくらい時間がたったのかな?
辺りはすっかり真っ暗になっていた。

ピンポーン

家のインターホンがなった。

私が涙を拭ってから、玄関の扉をあけると

「何、泣いてんだよ。ったく」
シカマルが頭をかきながら立っていた。

「泣いてないわよ!バッカじゃない!」
私って素直じゃない。

「あーーあーー分かった分かった。夕飯食うんだろ?
 早く来いよ。」

私は親が忙しく、いつも一人だから、小さい頃から、
シカマルの家で夕飯を食べるのが日課になっていた。

シカマルはプイッと後ろをむいて、そのまま自分の家
まで歩いていく。
私はシカマルの背中を見ながら後に続いて歩いていった。

いつも見ている背中がやけに大きくて、頼もしくて、男
に感じてしまう。

やっぱりシカマルは男で、私を追い越して、どんどん大人
になっていってしまう。

私はいつまでも、下忍のままのただのガキだ。




玄関先で
「何やってんだよ。、早く入れって。」
シカマルに言われて、ハッと我に返る。
私はボーッとしてしまっていたらしい。

「う、うん。」

私とシカマルはおいしい食事がならんだテーブルの
いつもの席に座った。

私の左隣がシカマルで、その前がシカパパ。
私の前がシカママの席。

いつもの時間のいつもの楽しい食卓。
けど今日はなんだか気持ちが沈んだままだ。

『さ、も来たことだし、早く食べましょ!』

シカマルのママの凛とした声。



食卓では、自然とシカマルの任務の話しになった。

「んで、お前は中忍任務をちゃんとこなしてんのか?」
シカパパはご飯を頬張りながら聞いた。

「そこそこ」
シカマルは煮物を箸で刺しながら答える。

「そういやーお前の隊にえらく美人の上忍がいるだろ?」

私は一瞬ドキっとして、ご飯を噛むのが止まってしまった。

「・・・あぁいるな。」
シカマルは一瞬考えたけど、すぐにそう答えた。

「聞いたぞ。その人がお前を是非同じ隊にって抜擢した
らしいな」

「そういう事らしいな・・・」
シカマルは別に気にする様子もなく、もぐもぐと煮物を
食べている。

私の心臓はドキドキとなった。
あの人がシカマルを抜擢した・・・・・・

「手ぇ出すなよ・・・お前にゃ、ちゃんがいる」
シカマルパパはそう言うとご飯をパクっと食べた。

「んな訳ねーだろ・・・・くっだらねー・・・・」
シカマルはそっけなく答えた。

私は内心穏やかではなかった。
あの綺麗な女の人がシカマルを自分の隊に選んだ。
もしかしてあの人、シカマルのこと・・・・・
だからシカマルを同じ隊に?

「食事中にムダ話ししない!まったくお父さんも
いい加減にしなさいよ!」

「へいへい」

シカママの一言で、その話題は終わった。

でも私の頭の中はさっきの女の人とシカマルのことで
いっぱいだった。




。送る」
シカマルに言われて、急に現実に意識がもどった気がした。

「あっ・・・うん。」

帰りはお互い無言だった。

「んじゃな。」
シカマルは私を玄関先まで連れてくると、そう言った。

「うん。おやすみ」

信じていいよね?まさかシカマルがあの人を好きになんて
ならないって・・・信じてるからね。

そう言葉に出すのって難しい。

私がオドオドしているのに気づいたシカマルが

「親父の言った事・・・・気にすんなよ。
 あの女のことは何でもねーってさっき言ったろ・・・・・・」
とぽつりと言った。

「で、でもさ・・・・・・・」

私はやっぱり不安で、このままシカマルと別れるのが怖かった。

「なんだよ。」
シカマルは眉間にシワを寄せて、私の次の言葉を待ってる。

「あの人、すごく綺麗だし、やっぱり私、心配だよ・・・・・
 ねぇ、いつまであの人と同じ隊で任務続けるの?
 ねぇ・・・・違う隊に変われないの?」

私の言っている事が、すごく理不尽なことだって事ぐらい
分かってる。
任務は遊びじゃないし、忍びともあろう者が公私混同なんて論外だ。

でも、でも、私にとってシカマルはその常識すら捨ててしまい
たいほど大事だって事も事実なの。


でも、シカマルはすごく怒った顔をしていた。


・・・・・・・お前、いい加減にしろよ。めんどくせーこと
 言うんじゃねーよ。」

私を見る目はとても冷ややかだった。


「だって・・・・だって・・・・私・・シカマルが好きなんだもん。
 心配にだってなるよ・・・・」

ずるいって分かっているけど、私は泣いてしまった。

でも、シカマルは

「お前さ、俺のこと、信じてねーのかよ。」

シカマルは本気で怒ってる・・・・・

ポケットに手をつっこんだまま、私をジッと見下ろす。
細身の体だが、私よりずっと背の高いシカマルが目の前に
立っていると、威圧感を感じるぐらい怖かった。

「信じたいけど・・・でも、やっぱりあの人とずっと一緒にいられる
 のは嫌なの!!」


私は必死だった。


そして、シカマルはとっても冷静に静かな声で言った。
 




「そんな子供みてーに嫉妬するは好きじゃねー」





真っ暗な闇がシカマルの表情を余計に無に感じさせた。
シカマルの言葉が頭の中で何度もこだました。


『好きじゃねー』


私の足は縛られたように硬直し、肩がブルブルと震えた。
涙はとめどなく溢れて、もう言葉も出なかった。


「俺、帰るわ」
シカマルは背中を向けて、家へともどっていった。
夜の暗闇がシカマルの後ろ姿を消していく。


(嫌だよ。シカマル!行かないでよ!)


私は言葉にでない言葉を心の中で何度も何度も繰り返して
叫んでいた。


でも、シカマルには届かなかった・・・・・・・



私がシカマルを疑ったから・・・・
だからシカマルを怒らせた・・・・


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