部屋にもどった俺は自分の部屋のベットにゴロッと
横になり、さっきのの言葉を思い出していた。

『心配だよ』
『あの人とずっと一緒にいられるのは嫌なの!』


俺には分からなかった。

俺はいつだって、のことしか見てねーのによ。
他の女の事なんて、どーでもいいっつうの!

「あの女がなんだっつうんだよ・・・・くそっ」

正直、今回、彼女に抜擢されて同じ隊に入ったものの、
これからの任務の話しを聞き、そのあまりの過酷さにほとほと
嫌気がさしていた所だったのだ。

一歩間違えば、命とりになる・・・・・・

任務の内容もこと細かに確認する必要があった。

あの女とは、それが理由で任務前にも何回も顔をあわせて、
自分の役割を確認する必要があったし、女との会話は
任務の話し以外には何も無かった。


それなのに、まるで自分があの女に気でもあるかのような
疑いよう

「あーーー めんどくせー」

俺は溜息をついた。

それに、があんなことで嫉妬するとは以外だった。

「俺達の関係って、そんなもんじゃねーだろーが・・・
 にとっちゃー俺達なんて、そんなもろい関係でしか
 ねーのかよ・・・」

俺は天井に向かって、ぼそりと呟いた。
部屋の天井を見据えると、さっきのの泣き顔が浮かぶ。

あの時は本気で腹がたった。
疑われるのは心外だった。

でも、やっぱり好きな女を泣かせちまった事に、俺の胸は
今更になって、ズキズキと痛んだ。


「けど・・・やっぱ言い過ぎたよなぁ・・・・・俺」


後悔の溜息を漏らしてみるも、もう遅い・・・・・

明日の任務は朝からだ。

「しゃーねーなぁ。もう!  明日、朝一で謝り行くか!
 はーーーーぁ めんどくせー」

俺は勢いよく布団をかぶって、そのまま目を閉じた。








次の日の朝、俺は任務の準備を整えると、の家へと
向かった。

まだ陽が昇ってまもない、朝のツンとした寒さが余計に
身をひきしめた。

「まず開口一番に謝らねーとな。」

俺はゴホンと咳をしてから、の家の呼び鈴を鳴らした。




シーーーーーン




「ん?あぁ・・・まだ寝てるよな・・・」

俺は妙に納得して、の部屋がある2階の窓をめがけて
ヒョイと飛んだ。

窓越しにの部屋を覗く。

いくら彼女の部屋だからといって、無防備に寝ている彼女を
覗くのは気が引けた・・・・
でも、時間ねーしな・・・俺は自分を納得させて、窓ガラスに
はりついて、のベットを見た。



「いねー・・・・・・・」



のベットはもぬけの殻。
部屋の様子からすると、いつもの服が無いことと、クナイなどを
いれる腰に巻く鞄もないことなどから、も朝一で任務が
あって出かけたのだと察しがついた。


「ちっ 一歩遅かったか・・・・・」


俺は心底後悔した。
もうちょっと早ければ間に合ったのに・・・・・

に謝って、抱きしめて、ついでに朝一でキスとかして、
俺的にはメチャクチャハッピーな気分で任務に行きたかった
のによ・・・・・・

「はーーーーーーーぁ すげー任務やる気失せたぜ。」

2階の窓から飛びおりて、溜息をついてみたが、任務をサボる
訳にはいかねーし。

時間もねーな・・・・・

「しょーがねー。 このまま行くか!」

・・・・あとで必ずお前を見つけるからな・・・・・)

俺は任務先へと急いだ。












「はーーーーーーやっと終わったか・・・・・」
俺は上がった息を整えながら、木の下に座りこんだ。

「お疲れ様。思った通り、先を読む力はこちらの方が上手
 だったわね。あなたのお陰よ!奈良君。」

俺の隣に座って、女上忍は汗をぬぐいながら笑った。

同じ隊の他のやつらも、みな一様に疲れきって、木の木陰に
横たわって休息をとっている。

「誰も死なずにすんだ・・・・・」

俺はそのことに安堵した。

「そうね。あなたのお陰ね」

女は俺の肩を軽く叩いた。

そして、一呼吸してから、叫んだ。


「任務完了!みんなお疲れ様!解散!」











俺は傷つき、疲れきった体をひきずるように、家へと向かった。
に会いたくてしょうがなかった・・・・・

「あーダメだ。やっぱお前に会いてー・・・・」


その時、の家へと続く道の先に、見慣れた人影が見えた。
あれは・・・・・・・・

・・・・・・・・」

俺の足は自然と速度を速めた。

は誰かにおぶわれている。

(何があったんだ?)
焦る気持ちを抑えながら、
をおぶっているやつに近づき、俺は声をかけた。


「よぉ。お前の背中のやつ。どーしたんだ?」


をおぶっている奴は、とスリーマンセルで
チームを組んでいる男だった。
俺はそいつをよく知らない。
アカデミーを卒業するまで別のクラスだったからだ。


「あぁ・・・・ひどい熱で意識がない・・・」

そいつは俺をチラッと見てそう言うと、そのまま歩きだした。
は苦しそうにそいつの背中にもたれ、体をあずけている。

俺はなんだか胸の辺りがモヤモヤした。

「あぁ めんどくせーけど、背中のこいつは俺が連れて帰るから、
 お前はもういい。帰れよ。」

俺はその男の腕を掴んで、その場に止まらせた。

すると、

は俺の大事なチームメイトだ。俺が責任をもって、
 最後まで送る」

そいつは俺の腕を払って、を背中に抱えたまま、また
歩きだした。

だぁーーーー コイツ人の女を気安く呼びやがって!)

かなりイラついた。
チームメイトだし、名前ぐらい呼ぶんだろうが・・・コイツが呼ぶ
のはなんだか気にイラネーんだよ。くそっ

すると男は振り返って言った。
「あぁ・・・あんたが、奈良シカマルか?」


「だったらなんだよっ」

眉間にシワを寄せて答える。

の男ってのがお前か。そのベストってことは中忍か。
 別にたいしたことなさそーだな。」

男はフンと笑うと、また歩きはじめた。

(こ、こいつ!マジむかついたぜっ)

「へーぇ そうかよ。 お前は随分と自分の腕に自信がある
 ようだな・・・・」
俺の問いに、

「まあな。あんたよりはいけると思うぜ。あんた相手なら、 
 俺がを奪っても勝てそうだな・・・」

を奪っても・・・・・)

その言葉に俺は完全にキレた・・・・・・

「へっ やってみるかよ?・・・・・」





            『影真似の術!!』     




「あっ!!」

動かなくなった男の首に瞬時にクナイを突きつけて、俺は
ニヤッと笑って言った。

を奪うって?お前、殺されてーのか?」



男の額に汗が流れ落ちるのを見た。

「悪かった・・・・・その言葉は・・・・・・訂正する・・・・・」

男はおとなしくなり、俺はクナイをしまう。

冷静になった俺は今の自分の行動に自分自身も驚いていた。
そしてなんだか無償に腹がたってきた。

「あー、やめだ。やめっ 柄じゃねーんだよ。
   俺はこんなキャラじゃねーっつうの。」

男は俺の言葉を口をポカンと開けて見ていた。

「俺にもよく分かんねーけど、のことになると、
俺らしくなくなっちまうってことだ・・・・・」

俺は頭をかいて、ついでにはぁーーーと盛大に溜息をついた。

「まぁ めんどくせーけど、は渡せねーから・・・」

男はニヤッと笑って、
「お前も変わった男だな」
と言った。

「けっ 俺はふつうだっってぇの。」


「悪かった。に手を出すつもりはない。
 ちょっとお前を試したかっただけだ。中忍ってレベルを
 知りたかっただけだ・・・・」


「で?参考になったのかよ?中忍のレベルってやつは・・・・」

俺は意地悪く笑った。

「あぁ・・・・まぁ・・・な・・・・」
男はバツが悪そうに笑った。

ふと背中のを見ると苦しそうに、肩で息をしている。
俺は男の背中から自分の腕にを抱きかかえなおした。

「ったく。相変わらずドジだな。何やってんだよ。お前は・・・」

俺が意識の無いにそう言うと、隣で男はフッと笑った。

「あのよ・・・・」
俺は男の顔を見て言った。
の家には両親がいねー。つまり家には
 誰もいねーんだよ。お前には悪ぃが、お前を
 2人きりにするのは俺がおもしろくねーーー。」


「あぁ・・・分かった・・・・でも、家には一緒に行く。
 きっと今回の任務失敗の責任を感じてるはずだから・・・・
 同じチームメイトとして一言いってやりたいんだ」

その言葉に嘘は無さそうだ・・・

「はぁーあ。 めんどくせーやつ。まっ 勝手にしてくれ」

俺はを腕に抱きながら無言で家へと向かった。
そのすぐ後を男はついて歩いてきた。
あたりは日も暮れはじめ、夕焼け空がうっすらと夜の色へと
変わっていく途中だった。





シンと静まり返った、の部屋に入る。


自分の女の部屋に別の男がいる事は決して気分の良い
もんじゃねー。

簡単な風邪薬を口に含ませた後、
ベットの上にをゆっくりおろす。
ベットがギシッと音をたてた。

その時、の体がゆっくりと動いた。
意識が戻ったようだ。

うっすらと目をあけたは、真っ先に口を開いて言った。

「任務は?どう・・・・なったの?」

の目には俺は入っちゃいねー。
チームメイトの男の顔をじっと見据えて、はそう言った。

「今回は失敗だ・・・・でも、のせいじゃない」
男はゆっくりと言った。




その後、俺はドキッとした。








はベットから身を乗り出して、チームの男に抱きついた。

「ごめんね。ごめんなさい。 私のせいだ。いつもみんなに迷惑
 かけてる・・・・・ごめんね」
泣きながら、そいつの首にまわした腕を強めて、は泣いて
いる。

のせいじゃないよ。もともと俺達には荷の重い任務
だったんだし・・・」

「でも・・・・でも・・・・・」


窓にもたれて、その2人の光景を眺めていた俺は
なんともいえない複雑な気持ちでいた。

(これはチームメイトとして当然のことだろう・・・・俺だって、
 いのやチョウジとスリーマンセルの任務をしてた頃はよく
 泣きじゃくるいのを抱きしめて、なだめてやってた。)

でも、でも、この俺の感情はなんなんだよっ   くそっ


俺以外の男に抱きしめられて、目の前で泣いている
俺は一気に不安になる。
これから先もこいつと一緒には任務をしていくのか?
ヘタしたら俺より長い時間、こいつと一緒には過ごす
事になるのかよ?

冗談じゃねーぞ・・・・・・


ふと昨日のの言葉が頭をよぎった。

『シカマルが好き・・・だから不安だよ』
『ねぇ、ちがう隊にうつれないの?』








そうか・・・・俺も同じ・・・・・・・・
めんどくせーけど、嫉妬してるって事かよ・・・・
お前とその男に・・・・・・・・・


・・・・・・・・・お前の気持ち、今なら分かる。・・・
俺も不安だって・・・・お前を失うのが怖えーー・・・・・


その時、ふとが窓に目をやった。

「シカマル?・・・・・・・」

「あぁ・・・・・」
俺はそう答えるので精一杯だった。

「それじゃ、明日には元気でまた会おうな」

チームメイトの男はそれだけ言うと、帰っていった。





部屋には俺とと2人だけ・・・・・・・・・





「シカマル・・・・どうしてここに?」
は泣いた目をこすりながら俺を見て言った。

「任務の帰りにお前を見つけたんだ・・・・・」

「任務の帰り?シカマル・・・・ケガしてない?」

「あぁ・・・・たいしたことねー」

俺はとっさにを抱きしめた。
愛しくて、切なくて、たまらない気持ちだった。

「シカ・・マル・・・・・・・」
俺の耳元での声が響いた。


「なぁ。俺、不安だ。あいつとスリーマンセルのチーム組むの
 やめられねーのかよ。」

そう、それは昨日が俺に言った言葉だ。

俺はわざと同じセリフをに投げかけた。

それは俺流の謝罪の言葉でもあった。
(けど、半分は本気だったんだけどよ・・・・・・)

最初はそんな俺の言葉に驚いた様子だった
しばらくして、俺の気持ちに気づいたらしい。
はクスリと笑った。

「私を信用してないの?・・・そんなシカマルは・・・・」

「嫌いか?」
の言葉を遮って、言った。

俺の顔を見上げて、は首を横に振った。

「大好きだよ・・・・・・」




俺はをベットに押し倒して、キスした。

「昨日は悪かった・・・・お前の気持ち、分かってやれなくてよ」
鼻先をくっつけたまま、俺はに言った。

「もう、いいよ。」

・・・・好きだ」

俺はもう一度を抱きしめて、今度は
深くキスをした。

(誰にも渡したくねー・・・・・)
そんな気持ちが抑えられなかった。



苦しげなを感じて、唇を離すと、はかわいい
笑顔を見せて俺に言った。

「風邪・・・・うつるよ!」

「へっ 構わねーよ」

それから、俺はを両腕で抱きしめて、もっかいキスをして、
・・・・・・それから・・・・まぁ・・・・・あれだ・・・・・その先は内緒って
事で・・・・








へーーーーーーーぐしょんっ

「あーーーー だりぃ。 マジ最悪だ・・・」

次の日、俺はやっぱり風邪をひいた。

「だからうつるよって言ったじゃんっ」
俺の顔を覗きこんで、楽しそうな顔をしている

「やっぱよ、うつした本人が根性悪ぃと、風邪も性質悪ぃのな」

俺は鼻をすすりながら節目がちに言った。

「なーーーーんですってぇーーー!!」


に背中をボコボコと叩かれる。


「やめろっ!俺は病人だっつうんだよ!バカ!
 また襲うぞ!」





くくくく・・・・・・・



の真っ赤な顔ったらねーな。
また俺に弱みを握られて、は言い返す言葉もねーってか?

かわいい奴・・・・・


「ほら!おいてくぞっ」


今日は快晴、体調はイマイチだが、お前が隣で笑ってっから、
まぁいいか・・・・・・

めんどくせーけど、今日も一日、任務頑張ってやるよ!






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