演習場にシカマルと二人きり。
今日はシカマルに無理を言って、修行に付き合ってもらったんだよね。







「くーーーなんでうまく当たらないのよぉぉぉ!!!」


何度クナイを投げてみても、丸い標的の真ん中に私のクナイが命中する事はなく、
いつも円の端っこにグサッと刺さるだけだった。


「シカマルーーー!助けてよぉぉぉ!」


一緒に修行してくれるって言ったくせに、シカマルはちょうど木陰ができている
木の下に座って、両手を空につきあげて、ふあぁとあくびなんかしてる。

「もう!ちょっとは見てくれてもいいじゃないっ!!シカマルのバカ!!」

私は少し離れた場所から大声で怒鳴った。


「あ? クナイなんてな、説明して頭でどうこう考えたからって出来るってもんじゃねぇ。
 そういう事は自分で体で覚えるしかねぇんだよっ 」


シカマルは木陰に座ったまま、両手を頭に組んで、またあくびをした。


「分かってるけど・・・・でも・・・・さっきから何度やっても出来ないの!!」


私は悔しくて、悔しくて、クナイを握り締めたまま、その場で立ち尽くしていた。



「ったく・・・めんどくせーな。」



シカマルはよっこらしょと立ち上がって、ポケットに両手を入れながら、のそのそと
私の側にやって来た。


「ほら、投げてみろよ」

「う、うん」


私は 深呼吸を一つして、20mほど離れた円に意識を集中する。
心臓のドクドクという音だけが体中に響いていた。
そして、狙いを定めて、円に向かって、クナイを持った腕を降りおろした。



ビュシュッ



するどい音とともに、私が投げたクナイは、また円の右端に刺さった。



「はぁ・・・やっぱりダメ・・・・」


シカマルはその光景を近くでジッと見つめていた。
でも、くるりと踵を返して、また木陰へと向かって歩いていく。

(え?何も言ってくれないの?)


私はシカマルの背中をジッと見つめていた。

「シカマル・・・ねぇ・・・・」


その時、シカマルはゆっくりと私を振り返った。


「腕だけで投げてんだよお前。足をバネにして体全体使わなきゃ意味ねぇ」

「体・・・全体?」

シカマルは私の呟きは無視して、木陰にまた腰をおろした。

「やってみろよ。」



シカマルの言葉を頭で反芻する。
腕だけで投げている。体全体。足をバネ・・・・・


もう一度投げた。


ビシュッ


(違う・・・さっきとは投げ終えた後の感覚が確かにさっきとは違う・・・・)


もう一度!!!



ビシュッ



何度か投げたが、相変らず円の真ん中には命中しなかった。


でも、私のクナイは確実に的の真ん中に近づいていった。


そして・・・・・
硬直しきっていた体がしなやかに動いた気がした。




ビシュッ!!!



「シカマル!!やったよぉぉ!ほら真ん中!!」

私の投げたクナイは初めて、まるで計算されたかのように、ど真ん中にグッサリと刺さった。


「あぁ。その感じ、忘れんなよ。」

「うん!!」


嬉しくて、何度も何度も投げ続けた。
この感じを体で覚えてしまわないと、次からまたダメになってしまいそうで・・・・


しばらくすると、シカマルが声をかけてきた。


「飽きずによくやんなっ お前」


「だってっ せっかくシカマルに投げ方教えてもらってのに、忘れて無駄にしたくないもんっ」


私だってもっと強くなりたいもんっ

私は必死でクナイを投げ続けた。
体に覚えさせるのにも人一倍時間がかかる事は自分でも分かっているから。


「へっ」


シカマルが笑ったのが分かった。


「何よぉっ そんなにおかしい?どうせ人よりドンくさいですよぉーーだっ」


私はシカマルに向かってベー−ッと舌を出した。
でも・・・

「そんなんじゃねぇよ。そこがお前のいいところだって事・・・人がどうでもいいっておざなりにする所を
 お前はいつも一生懸命修行してんだろ?けど、結局そこが一番大事なんだよ。・・・技がどうとか、術が
 どうとかより・・まず基本が出来てなきゃダメなんだ。・・・そうだろ?」


シカマルは優しく笑ってくれた。


「う・・・うん///////」 

シカマルが褒めてくれるなんて思わなかったから、私今すっごく恥ずかしくて、顔真っ赤だろうな・・・

「お前まだやるんだろ?」

「え?うん。やる」

「んじゃ待っててやっから。その変わり、俺は寝る。お前の修行が終わったら、適当に起こせ」

「分かったvv」



シカマルはいつだって、めんどくせぇとか言いながら、私を待っててくれる。
決して一緒に修行とかしてくれないけど、側にいてくれるだけで、なんか心強いんだ。



私は飽きもせずクナイを投げ続けた。
そしたら急に・・・・



「おいっ 

「え?何?」



もう寝てると思ってたから、シカマルの真剣な声に思わず手を止めて、私はシカマルの方を見た。


「お前、俺が寝てる間に無茶すんじゃねぇぞっ」


シカマルはいつになく真剣な顔でそう言った。


「しないよ。」


はじめは シカマルが何を言ってるのか良く分からなくて・・・
修行だもん。別に敵と戦う訳じゃないし、無茶しようがないよね?


私はまた、クナイを投げ続けた。









しばらくして、シカマルが木陰で寝息をたてて本気で寝てる姿が見える。


「本当に寝てる・・・・まったく。シカマルったら、こんな真昼間からよく寝れるよね」


半分あきれつつ・・・でも、それと裏腹に、的確な指示を出してくれる、頼れるシカマルを
思い出して、なんかちょっとかっこいいとか思ってみたりして・・・//////


はぁ・・・・


でもシカマルはいつでもマイペースで、私と一定の距離をずっと保ち続けてくれている。
その距離は、友達というにはあまりに近くて、恋人というにはちょっとだけ気恥ずかしいような
すっごく微妙な関係。

本当は、私、シカマルに一人の女として見て欲しいんだよ。
だから今はシカマルにバカにされないように、早く一人前の忍びになって、ゆくゆく一緒に
任務をこなせるようなパートナーになりたいの!!





クナイ投げが結構上手に出来るようになって、だから私は、もう1歩前進してみたくなって・・・





そうだ!!



この間、サクラが言っていた7班の修行を思い出した。
それは、足の裏にチャクラを溜めて、その力だけで、木に登る事が出来るようにするというもの。
チャクラをいつでも、集めたい箇所に1点に集中させられるようにする為の訓練だとか言ってた。



チラリとシカマルを見たら・・・・・まだ寝てる!



シカマルが寝てるすきに、私が足の裏だけで木に登っていたら、シカマルはきっと驚くだろうなっ
そしたら、きっと褒めてもらえる!!


なんだかワクワクして・・・・






私はそこから一人で、チャクラを足に集中させる修行を開始した。






「ていっ!!」



それから、何時間やっていたんだろうか・・・・・
相変らず何度やっても木から落下する。


「集中!集中!!」


気持ちをめいいっぱい足先に込める。


その時、不思議と自分の足の裏がグゥッと熱をもち始めた。


この感じ・・・・きっとこれだ!!!


体中の血液が足へと流れ込んでいく感じ。






私は勢いをつけて、目の前の太い木の幹に飛んだ。





おもしろいように体が木と垂直に上っていく。
まるで平らな道を歩いているみたいに・・・・・・







てっぺんまでもうすぐ!

私はドキドキと高鳴る心臓を抑えながら、大声で叫んだ!




「シカマル!見て!見て!」






その声にシカマルは ビクリと体を反応させて、目をあけた。




「こっちこっち!シカマル!私凄いでしょ?」


絶対褒めてくれると思ったのに・・・・・



「バカ!」



シカマルはガバリとその場で勢いよく立ち上がって、こっちに向かって走ってきた。


「大丈夫!こんなの全然簡単よぉ」

私は少し得意気に下に見えるシカマルに叫んだ。




!いいから、その枝に掴まれ!」



こちらに走りよってくるシカマルがやけに小さく見える。
でも、かなり焦っている事だけは分かった。


「平気だよ・・・だって・・・・ほら、こんなに足の裏にチャクラが・・・・」

!」


あ・・・・れ?・・・・・・



さっきまで、あんなに燃えるように熱かった私の足から、チャクラが逆流するように、
だんだんと足先が冷たくなってくるのが分かる。


もしかして・・・・チャクラ切れ?


その瞬間、ふわりと体が宙に浮いた。
この妙な浮遊感。
私はまっさかにさまに地面へと落下していた。


「きゃーーーーーーーーーーーーーーーー」



「!!」



ガバッと横からの衝撃。

え?何?


ズザザザーーーン

目の前に砂埃が舞った。

その瞬間に足に激痛。


「痛いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


思わず大声で叫んでしまった。




「バカ!痛てぇのは俺だっつうの!!」


私の下に、私を抱えて、地面を転がったシカマルが、ものすごく怒った顔をして私を見ていた。


「シカマル大丈夫!!」

「大丈夫・・・なわけねぇだろうが!このバカ!」

「ご、ごめんなさいっ」

いつもボケーッとしているシカマルに本気で怒られたら、なんか泣きたくなった。


「シカマル・・・受け止めて・・・くれたの?」

「当たりめぇだろ?じゃなきゃ、お前、今ごろ死んでんぞ」

シカマルは腰をさすりばがら、上半身を起こした。


「よく・・・受け止められたね・・・・・」

だって、あんな高いところから落ちてきたのに・・・私だっていちよう体重あるしさ・・・・

「バカ。上からもろに抱きかかえてたら、さすがに俺もつぶれるわ」

「・・・・だよね・・・・・」

「横から、かっさらうみてぇに受け止めた。」

シカマルは腕や足についた砂埃をバンバンとはたきながらそう言った。

それで、落下の衝撃を和らげて抱きとめてくれたんだ・・・・

「とっさにそうしようって思ったの?」

「わかんね。体が動いてた・・・・」



シカマルって・・・・すごい不思議。
いつもは縁側でボケーっとしてる、じじいみたいな性格なくせに・・・・

頭の回転は誰より速くて・・・・それでもって、絶対私を助けてくれるんだから・・・・



「シカマル・・・・ありがと」

「あぁ」

「ごめんなさい」

「もういいって」

自然に涙がでてきた。
シカマルは私の頭を優しく撫でてくれた。
あったかい手のぬくもりに余計に安心して、私は涙が止まらなかった。


まるで子供みたいに泣いてしまった。


「なぁ・・・もう泣くなよ。俺が泣かせたみてぇじゃねぇか・・・・」

私の背中をさすりながら、シカマルは はぁ とため息をついた。


「だって・・・・あたしのせいでシカマルが死んじゃったらどうしようって考えたら、
 急に怖くなっちゃったんだもん・・・・」

「あほ。死んでねぇだろうが。っつうか死んでたまるかっての。」

「それに・・・・」

「それに?」

「足くじいて、動けない・・・・」

「お前なぁ・・・・・」






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