次の日も私はあきらめずにシカマルを探した。

半分意地。

だって、このままシカマルに誤解されたまま嫌われるなんて
絶対に嫌。




今日は私の班も任務があって、タイミング良く、10班との
任務地に近かった。


!何か食ってくか?」
同じ班の仲間に誘われたけど、今日は大事な用があると断った。

だって、早くシカマルに会いたい。








私が走っていく先に、任務を終えた10班メンバーが見えた。

出来るだけ笑顔で、出来るだけ自然に、そういつものように振舞って、
いつものようにシカマルと一緒に帰りたい!
私は懸命に走った。


その時・・・・


アスマの姿が飛び込んできた。


アスマを含めた3人がシカマルを取り囲んでいる。


私は変な胸騒ぎがして、急いでそこに向かった。





「大丈夫なの?シカマル?」
いのがシカマルの顔を覗きこんでいる。
「たいしたことねーよ・・・・」

「まぁ・・・傷は浅いから問題無いだろう・・・でも念のため、アカデミーも
 近いことだし、医務室に行ってみろよ」

アスマはシカマルの頭をポンと叩いた。




私は少し離れたところから、その光景を見ていた。
シカマルの腕から地面へと血がしたたり落ちているのが見える。
シカマルがケガをしたんだ・・・


「あ・・・・・・・・・・」
チョウジが私に気づいた。


とっさに、いのとシカマルも私を振り返る。

「おぉ!ちょうど良かったじゃねーかシカマル。彼女に医務室に付き添って
 もらえよっ」
アスマは私に手招きした。


でも・・・・


「いらねーよ。一人で行けるっつうの。」
シカマルは一人で歩き出した。


「シカマル・・・・・・」
そうだよね・・・昨日あんな別れ方をして、今日また笑顔でなんて・・・
そんなの虫のいい話しだよね・・・・
私はシカマルを傷つけたんだから・・・・



でも、分かってるけど、すごく悲しかった。
立ち尽くして、また泣きそうになった。


そんな私を見かねて、いのが私の側にきて、耳元で囁いた。
・・・シカマルはああ言ってるけど・・・あんたどうするの?」

はっとした。
こんなことで、いじけてたら、またシカマルを見失っちゃうよ!
「わ、私・・・・それでも就いていく・・・シカマルが心配だもん・・・・」

「よっし!行っといでっ」
いのに背中をポンと叩かれる。

シカマルの後を追って、私はまた駆け出した。






「シカマル!待って。一緒に行くよ」

「いいって・・・・」
そう言いながらも、シカマルの腕の出血はひどくなっていった。

「ねぇ・・・痛い?」
心配で心配で泣きそう・・・

「痛くねーわけねーだろっ」
シカマルは本当にうざったいという顔で私を見た。

でも・・・・私が泣いたから・・・・

「ば・・・ばか・・・なんでお前が泣くんだよっ 平気だっ こんなケガ。
 たいしたことねーっつうの。 」
シカマルはプイッと顔をそらした。

「う・・・うん・・・・」

こんな時でも私のことを思って無理してくれてる。
そのことに私の胸は余計に苦しくなった。

泣いちゃだめだと思っても、涙がとまらない。

「泣くな・・・・・・もう泣くなって・・・・」
シカマルは腕をかばいながら、前を向いたまま、隣を歩く私にそっと
言ってくれた。

私は無言でうなずいて、医務室までの道のりを一緒に歩いて行った。






なんで、お前が泣くんだよ・・・
訳わかんねー・・・
女はたとえ嫌いな相手でも、こんな状況になったら心配して泣きやがる
もんなのか?

俺にはの気持ちが分かんねー・・・

隣でグスングスンと泣き続けるの頭を優しく撫でてやりたかった。

でも、俺がお前に触れたら・・・・・
またお前は俺を拒絶すんだろ?

俺はお前にすげー触れたくて、ケガした腕なんかよりもずっと心が
痛かった・・・・







医務室の扉を開ける。


いつもの医療班メンバーの姿がない。

代わりに見慣れた人影があった。

「あら?めずらしいじゃない?医療班の人たちは今出払っていないのよ」

「さ、サクラ!」
私は懐かしい顔に思わず微笑んだ。


「なんでお前がここにいんだよっ」
シカマルは相変わらず、無愛想に言う。

「今までナルトもいたの!任務中にケガして・・・それで私が手当てして
 あげたってわけ。」

あいつって相変わらず本当ドジなのよねー・・・
サクラは私に笑って言った。

「ところで、シカマル、その腕!出血してるじゃない?どーしたの?
 あんたまでドジやったってわけ?」

「うるせーな。とにかく医療班がいねーんなら、包帯でもなんでも
 取ってくれよっ」
シカマルは適当にイスにドカッと座った。



「わ、わたしがやるっ」
私は戸棚から、医療品をいくつか出して、シカマルの前にしゃがんだ。


「相変わらず、あっついわねー。がいるから私は用なしか」
サクラは溜息をつきながら笑った。


まずは消毒して・・・そして包帯・・・・
私はひとまず消毒液をガーゼに染み込ませて、シカマルの傷を見る。
そう、そして、これをシカマルの腕に塗って・・・・


私の前に突き出されたシカマルの腕・・・


私の動悸はまた早くなる・・・で、でも・・・そんな事言ってられないよ。
今はシカマルの腕の治療が先だもん・・・・


恐る恐るシカマルの腕に触れる。
ドキドキドキ・・・・鼓動が早くなる。
手が震えてきた。

消毒液を染み込ませたガーゼを押し当てようとしても、手が思うように
動いてくれない・・・

ど、どうしよー・・・



「はぁ・・・・・」
シカマルの溜息。


「サクラ・・・お前やってくれよ・・・・」




シカマルはそう言うと、私の前から立ち上がって、サクラの方へと
歩いて行ってしまう。


「え?」
ナルトの治療の後片付けをしていたサクラが驚いて振り返る。

「だ、だって・・・」
サクラは後ろでおどおどしているを遠慮がちに見た。


「いいから・・・お前、やってくれって・・・・」
サクラの脇にあるベットに座って、シカマルは腕を出した。

「う、うん」
サクラは片付けはじめていた医療品を手にとり、シカマルの前に
屈んだ。





私はボーーーっとその光景を見ていた。






サクラの白くて細い女の子らしい手がシカマルの腕を優しく掴む。





その瞬間、私の心臓がズキンズキンと痛みだした・・・・・
今までのドキドキとは全然違う・・・痛いほどの苦しみだった。


(イヤだよ・・・シカマルに触らないで・・・サクラ・・・・)


自分の心の声に思わず、はっとした。


私はシカマルの腕にすら触ることも出来ないくせに・・・
目の前でシカマルの腕を握るサクラに激しく嫉妬する自分がいる・・・


丁寧に包帯を巻くサクラをじっと見つめるシカマル。

「へーー お前、案外女らしいところあんだな?」

「案外とは何よっ」
キリっと睨むサクラ
でも、その言葉と同時にシカマルの腕に包帯が器用に巻き終えられた。

シカマルの大きな手の平がサクラの頭をぐりぐりっと撫でる。

「あーーーはいはい。ご苦労さん」

「まったく〜」
サクラはしかめっ面をしたけど、私はその光景に体が硬直した。


ズキンズキン・・・・心臓が痛い・・・・
また、私の心が叫ぶ

(シカマル・・・サクラに触らないで・・・私以外の女の子に触らないでよ・・・)


私は自分がわからなくなった・・・・
私ってなんて嫌な女なんだろう・・・
こんな事を思うなんて・・・

心臓がこんなにもズキンズキンと痛むのは、シカマルを独り占め
したいと思う自分のエゴ。


そう・・・私は気づいてしまった・・・
いのの言っていた言葉・・・・・


私はシカマルにもっともっと触れてほしいんだ・・・・
シカマルにもっと愛されたいんだ・・・・・
私だけを見て、私だけに触れて、私だけを愛してほしい・・・・

私の体はシカマルを拒絶していたんじゃない・・・・
もっともっと触れてほしくて、私の体はシカマルを欲していたんだ・・・・・




なんて汚くて、なんていやらしい感情だろう・・・・
私はなんて嫌な女なんだろう・・・・・




私は目の前が真っ暗になった。
自分をこの場所から消してしまいたかった。


とっさに医務室を飛び出す私。


サクラとシカマルはそんな私に驚いて、

!どうしたの?」
!待てって・・・どうしたんだよっ」


シカマルが追ってくるのが分かる。


でも、嫌・・・私に近づかないで!
もうこんな私なんかに触らないでよ!




私はドンドン速度をあげていく

でも、シカマルはすぐに私に追いついて、私の腕を掴んだ。




「なんだよお前!どうしたってんだよ!急に出て行くからびっくり
 すんじゃねーか。ったく、めんどくせーなっ」
シカマルは息をあげながら、怒ってる様子で私にそう言った。


「触らないで・・・・離してよ・・・・・」

「あ?」

シカマルは初め、眉間にシワを寄せて、何のことだ?って顔をした。
でも、気づいて、とっさに私を掴んだ手を離した。



「大っ嫌い・・・・シカマルも・・・・私自身も・・・・大っ嫌い!」



シカマルの驚いた顔・・・見開かれた目・・・・・



でも、私はシカマルから逃げるように走り出した。















「大っ嫌い・・・シカマルも私自身も・・・・・大っ嫌い・・・・」


の言葉が俺の頭をぐるぐると巡っている。


どういう意味かは良く分からなかった・・・
でも確実に分かることが一つ・・・・・


は俺が大っ嫌いってことだ・・・・・・・・・・



「はっ やっぱりな。それがの答えってわけか・・・・・」


混乱していた意識が徐々にもどってくる。

そうか・・・・・もう俺たちはダメなんだな・・・
どんなに俺がお前を想っていても、もうお前にその想いが届くこと
はねーんだな・・・

幼馴染でずっと仲良くやってきた・・・
少し大人になって、俺はお前を幼馴染以上に女として好きだって事に
気づいちまった・・・
日に日に想いは募って・・・・でもうまく伝えられなくて・・・・
でも、お前の気持ちも、いつも俺にあるって思ってた・・・・
だから、もう少し俺が忍として成長するまで、好きって気持ちは
かくしておくつもりだった・・・

でも、もう・・・・・・お前を俺のものにすることは出来ねーんだな・・・・





俺はその場に立ち尽くしていた。


サクラが後を追ってきて、しきりに俺の名を呼んでいた。
でももうどーでもいい・・・

「お前・・・もういいから帰れ・・・・」

その一言を聞くと、サクラは心配そうな顔をしながらも
そっと帰って行った。









体から力ってもの全てが失われたようだ。俺は体をひきずるように
アカデミーを後にした。



門の前でいのとチョウジが立っていた。

「シカマル・・・・」
チョウジが心配そうに呟く。

「で?どうしたのよ・・・・」
いのは腕組みして聞いた。


「あぁ・・・・・・に完全に嫌われたみてーだ・・・・・もう何やっても無理だろ・・・」

脱力感・・・・喪失感・・・・・とにかく俺からは一切の気力が失われていた。
あぁ・・・本当、何もかも、めんどくせーな・・・・もうどうにでもなれ・・・くそっ・・・


「ふーーーん。そう・・・・・」
いのは少し考え込む仕草を見せた。

「もういい・・・いの。・・・何もかも手遅れだ・・・もう、俺に構うな・・・・」
俺の呟きに、なぜかいのは逆ギレた。

「あんたっていっつもそう! すぐそうやって諦めちゃうんだからっ
 のこと、何も分かってないのね!この馬鹿!」

のこと・・・何も・・分かってない?

俺は無言でいのを見つめた。


「いい?シカマル。本当にが大事なら簡単に諦めないでよ!
 今あの子は迷ってる。すごく自分にとまどって、悩んで、苦しんでるのっ 」


「何の話しだ?が何を悩んで、苦しんでるって言うんだよっ」

思い出した・・・・が本当の気持ちに気づくまで・・・お前はそう言ったな・・・・


「ばか! はあんたが好きだからに決まってるでしょ!」




は?




何言ってんだ?いの。

「俺はな・・・たった今、に大っ嫌いって言われて・・・・」

「だから、あんたは馬鹿だって言ってんのよっ!」
いのが俺の胸倉を掴む。

「いの!やめなよっ 」
チョウジの制止も聞かないで、いのは俺を睨み続ける。

を諦めるつもり?もうめんどくさくなった?嫌いって言われて、
 はいそうですかって、いつもみたいにすぐに降参する?
 を忘れて、他の女好きになってみる?」

グググと首をしめられて、苦しい・・・・
でも、きっとそれは首をしめられてるからだけじゃねー・・・・
俺は・・・・を諦めて、忘れて、他の女を好きになって・・・・・・

そんなことできるほど、俺は器用じゃねーよ・・・・


「離・・・せ・・・・・いの・・・・・・・」


いのの手が俺から離れた。


はぁはぁ・・・・・俺の体はようやく与えられた酸素をすうために、
激しく呼吸を繰り返す。


「とにかく・・・・明日、あんたはと会うのよ・・・あの子の気持ち・・・
 ちゃんと受け止めてあげてよね・・・・それが出来なかったら・・・・
 今度こそ、私はシカマル!あんたをぶっ飛ばしてやるからっ!!!」

いのはそれだけ言うと、くるりと踵を返し、走っていった。



残された俺とチョウジ・・・・・・・

あぜんといのの後姿を見つめる。


「やっぱ女は分かんねーな・・・・」
なんかバツが悪く、俺はチョウジの顔を見た。

「うん。僕、女恐怖症になりそうだよ・・・・」
「あぁ・・・俺もだ・・・・・」

お互い顔を見合わせて少し笑う。


「でもさーシカマル。」
「あ?」
「いのはね、きっとシカマルとを元通りにしてくれるよ・・・」

チョウジは笑った。

いのはいい奴だ・・・仲間を友達を誰よりも大事に思って・・・自分のこと
みてーに真剣になってくれる・・・・
行き過ぎた面もあるけどよ・・・・

「そうだな・・・・・」
俺もチョウジの顔を見て笑った。

「シカマル・・・いのを信じて・・・明日に会ってきなよ・・・」
「ん・・・・そうすっか・・・・こうなりゃ、ダメもとで行くしかねーか?」

「玉砕したら、なぐさめてあげてもいいよ」
チョウジが笑う。

「おごってくれんのかよ?」
「もちろんっ でも最後の一口は僕のものだけどねっ」
「けっ それじゃーいつもと変わらねーじゃねーか」


でも、お前もいい奴だぜ・・・チョウジ。

お前らが俺の背中を押してくれんなら・・・
しょうがねー めんどくせーけど、俺も玉砕覚悟でやるっきゃねーか。


(俺はもう一度、を捕まえてやるよ・・・・・・)



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