家に帰ると、私はソファーにうつぶして泣いた。

もうダメだ・・・こんな私・・・・
サクラは悪くないのに、汚い感情で嫉妬してしまった。
シカマルの事、さんざん傷つけておきながら、大っ嫌いっなんて
言ってしまった。

もう・・・・終わりだ・・・・


私はこんなにシカマルが好きなのに・・・
私が自分でシカマルを遠避けてしまった。

汚くて、いやらしくて、わがままで、嘘つきな私・・・・・


最低だよ・・・・・・・もうシカマルに好きになってもらえっこない・・・・



先の見えない迷路にはまってしまった気分だ。
その先は真っ暗闇で、私はきっと前には進めない・・・・
誰か助けて・・・・・どうしたらいいのか教えて・・・・・





ピンポーーーン




家のチャイム。

・・・・!いるんでしょ?開けて!」



            いの!!


私はすがるような気持ちで玄関に走った。
ドアを開けると、いのが息をあげて立っていた。

・・・・入っていい?」
いのは苦しそうに呼吸しながらも、優しく微笑んだ。

「う・・・・うん・・・・・」
いの・・・あなたはいつだって私を助けにきてくれる。
感情が高ぶって、涙がとまらない

そんな私の手をひいて、いのは家のソファーまで連れていって
くれた。



「いの・・・私ね・・・・・」
「分かってる・・・気づいたんでしょ?自分の本当の気持ちに・・・・」

「うん・・・・私、すごく嫌な女なの・・・・」
「どうして?」
いのの優しい声。

私はさっきの医務室であったことを全部話した。
私の汚い嫉妬心も・・・・その時感じた想いも・・・・・
シカマルに触れて欲しいと願っている感情も・・・・


「いの・・・私・・・・女なのに・・・シカマルに対してこんな事想ってる
 なんて、すっごくいやらしくて、汚くて、嫌な女だよね・・・・・」

私は泣きながら、言葉につまりながら必死でいのに言った。

いのは少し困った顔をした。

・・・人を好きになったら、誰だって普通じゃいられなく
 なるものじゃない?・・・それは女とか男とか関係ないよ・・・
 同じ人間だもん」

「でも・・・・」

いのは優しく私の髪をなでる。

「好きな人に触れて欲しいって想う気持ちは決して汚いものなんか
 じゃないよ。体がその人を求めるのは、本気で愛している証拠。」

いのが私を抱き締める。

「いい?。シカマルに自分の気持ちを正直に伝えるの。」

「で、できないよ・・・そんなこと・・・・」
そんなことしたら絶対シカマルに嫌われる・・・・・汚い女だって思われる・・・・
そしたら私・・・本当に生きていけないよ・・・・・

「このままお互い離れちゃったら、取り返せなくなるかもよ?
 シカマルを失ってもいいの?」

私の心臓はズキンズキンとまた痛みだした。

「いやだよ・・・いの・・・・そんなの絶対イヤ・・・・」

いのは私の頭を撫でる。

「だったら・・・言えるはね?」
まっすぐに私を見つめるいのの目。

「でも、私・・・シカマルに大っ嫌いって言っちゃった・・・・」

「大丈夫。シカマルはきっとを受け止めてくれるよ・・・
 あいつは今だって、しか見えてないんだから・・・・」

いのの優しい言葉。

「わ、私・・・どうすればいい?」

ゆっくりといのを見上げる。

「明日・・・・ちゃんと言っておいで・・・・・・・」










「明日の午後・・・・・・木の葉の森の第3地区に行って。
 そこにシカマルが来る・・・・」

昨日のいのの言葉。
私は言われた時間にその場所へと向かっていた。

本当は私は迷っていた。
シカマルに嫌いと言ったことへの誤解をときたい。
でも、自分の本当の気持ちを伝えて、シカマルに嫌われるのが怖い。



第3地区は木々の間にちょっとした空間が出来ていて、たまに修行を
する人が使う場所。



でも、今日は辺りに人影はなく、シーーンと静まり返っていた。



足元で草がさわさわと風に揺れる。



昨日、シカマルに大っ嫌いと言った私。

はじめにどんな顔してシカマルを見たらいいの?
シカマルに触れて欲しいっていう、この感情をどう伝えたら、
シカマルに嫌われずに済むの?

私はまだ現れないシカマルを想像して、不安な気持ちでいっぱいだった。

それより・・・・
シカマルは本当に来てくれるんだろうか・・・・・・










俺の足取りは重かった。
昨日、チョウジにはああ言ってみたが、今朝になって、やっぱり気分が
重かった。

今更に会って、俺は何を言えばいいんだ?

いのは、は俺が好きなんだと言った。
でも、は俺に嫌いと言った。

女の気持ちなんて全然分からねーし。

どっちが本当なんだよ・・・・頭が混乱する。

また、に目の前で嫌いと言われたら、今度こそ無事に家に帰る
自信もねーし。
はぁ・・・・・情けねーな・・・俺・・・・

溜息をつくと、いのに言われた場所にの姿が見えた。

俺はとっさに気配を消した。



木陰に隠れて、俺はまた溜息をつく。


ここまできて、俺は何をやってんだよ・・・・

けど、そこから先になかなか進めずに、俺は遠くで俺を待っている
を見つめた。





の長い髪が風にゆれている。
やわらかい黒髪・・・俺がふざけて頭をたたくと、ふわりと甘い匂いがした。

の小さな口
怒ったときは尖らせて、笑ったときは優しくて、俺が思わず
触れたら、お前は真っ赤になったよな。

の細い腰。
抱きついてくるを受け止めるとき、細いくせにやわらい感触が
女って感じがして、俺はいつもドキドキしてた。

の細い首
髪をかきあげた時見える白い首すじが俺を動揺させて、
そんな時、俺はいつもキスしたくなって、その衝動を抑えるのに必死だった。

の小さな白い手
誰にも触らせたくなくて、俺はいつも握りしめて歩いていた。
迷子になったらめんどくせーからって言い訳してな・・・・




俺の中でがどれだけ大きな存在になってるか・・・お前知ってるか?
今更、嫌いって言われても、もう俺はお前を嫌いになんてなれねーんだよ。



俺の足は無意識に勝手にへと近づいていく。

草をザクザクと踏みしめて。
どんだけ好きかってことをお前に伝えてやるよ・・・





「シ、シカマル!」
との距離が縮まって、はやっと俺に気がついた。

俺はお前の最初の言葉を聞きたかった。だから、黙ってを見ていた。


でも、言葉を選んでいるのか?は何もこたえない。
しばらくお互い無言で向かいあっていた。



「シ、シカマル・・・・私・・・私ね・・・・」

先に切り出したのは、だ。
の声は震えている。
そのうち、涙声になった。

「昨日は・・・シカマルに・・・大っ嫌いなんて言って・・・ごめんなさい」

それでも俺は黙ってを見ていた。

「本当は嫌いなんかじゃないの・・・・」

「それは社交辞令か?」
俺は少し意地悪く言った。

「違う・・・本当・・・私の本当の気持ちは・・・・・・・・」

ゴクリ・・・俺の喉がなる。


「シカマルが・・・・・好き・・・・・・」


俺が聞きたいのは、そんな簡単な言葉じゃねー・・・
そんなセリフは嘘でも言えんだろ・・・
お前は優しいから、俺を傷つけまいと、そう言ってるんだって
思えるんだよ・・・・・



「それじゃ分からねーな。 俺が好き? だったらなんであんなに
 俺を避けんだよ・・・俺に触るのも、触られるのもお前は拒絶したよな・・・」


はゆっくりと顔をあげて俺をじっと見る。


「シカマル・・・私・・・・本当のこと言う・・・そのことで、シカマルが私を
 すごく嫌な女だと思ったとしても・・・それでも・・・言うよ・・・・」


涙を溜めながらも真剣な目・・・・・
俺も覚悟を決めた・・・・


「私・・・ずっとシカマルに触れられるとドキドキが止まらなかったの・・・
 その感情がなんなのかずっと分からなくて・・・ずっととまどってた。」


は自分にとまどって、悩んでるのよ・・・・いのの言葉が俺の頭を
よぎった・・・・


「けど・・・昨日分かったの・・・私の本当の気持ち・・・・」

「あぁ・・・・」
俺はの続きの言葉を待った。

「そのドキドキはね・・・シカマルにもっと触れて欲しいって、私の体が
 言ってるってことなんだよ・・・・」




      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



それは俺がかけらも予想してなかった言葉だった・・・・・


「昨日、サクラがシカマルの腕を手当てした時、私すごく嫉妬したの。
 シカマルに触ってほしくないって思った。シカマルがサクラに
 触ったときもそう・・・シカマルに私以外の女の子に触らないでって
 思った・・・・・」

はグスングスンと泣きながら必死に言葉を出す。


「最低な女かもしれないけど・・・私はシカマルが大好きだから・・・
 だから・・・・」













俺の中の血液がぐるぐると勢いよくまわりだすような感覚。
頭の中が混乱して、かける言葉なんかより先に、
俺は反射的にを抱きしめていた。


「シカマル・・・ごめんね」

・・・は俺の胸に顔をうずめて泣いている。


「お前、なんで言わねーんだよ・・・・」

「だって・・・女の私がこんな事思ってるなんて・・・シカマルきっと
 幻滅するよね・・・・嫌な女だって思うでしょ・・・・」

俺の腕の中で震えているがたまらなく愛しく感じる。

「あぁ・・・・・・ほんと・・・・お前って超バカだな・・・・」


俺がお前にどんだけ触れたいと思ってたか・・・お前分かるか?
俺がお前をどんだけ抱き締めたいと思ってたか・・・お前分かるかよ?
俺はもう我慢できねー・・・・

「シカマル・・・?」
「俺がお前を嫌いになれるわけねーだろ・・・・」

は驚いた顔で俺を見上げる。

「俺はお前が好きなんだよ・・・・」

やっと言えた・・・俺の本当の気持ち・・・・・・・
喉の奥でずっとつっかかって、吐き出してしまいたかった言葉・・・
・・・俺だってな・・・ずっとずっと伝えたかったんだ・・・
今までちゃんと言ってやれなくて、ごめんな・・・・・

「シカマル・・・本当?」
「あぁ・・・・」
「私のこと嫌な女だって思ってない?」
「思うわけねーだろ・・・・・・」
「嘘じゃないよね?」
「なんだよ・・・・ずいぶん疑りぶけーな・・・・・・」
「だって・・・・・・・」
「あのなぁ・・・・・俺はお前が好きなの・・・・分かる?」

の目をじっと見る。
は少し安心したように微笑んだ。

「シカマル・・・お願い・・・私にもっと触って・・・・・」
がゆっくりと俺の右手を握って、自分の頬に当てる。


じんわりと俺の手の平にの体温が伝わる。



「あぁ・・・・俺もお前に触りてぇよ・・・・・・」


俺だってずっとそうしたかった。
ずっと隠して、我慢してきたんだからな・・・


だから、もうお前を絶対逃がさねーぞ・・・・



俺をみつめるに唇を押し当ててキスをした。
は俺の背中にまわした手をギュッと強めて、それに応える。
俺の手は、服の上から、の体に触れていった。

服の上からでもわかるぐらい、の体温が高いのが分かる。
ドキドキと鼓動が早くなっているのも・・・・・


キスしたまま、俺はの髪を撫でる。
ゆっくりと手を下ろして、細い首を優しく掴む。
そしてキャシャな肩を握る。
そのまま細い腕を伝って、腰を抱き寄せる。

全部全部俺のものにしたい。
の体の全部に触りたい・・・・

腰を這って、柔らかい胸を握る。
そのまま上に伝って、細いあごをなぞる。


体中が心臓みたいにドキドキと音がする。
それが俺のものなのか、のものなのかすら分からない。

キスしたまま、立ったまま、俺達は体ごと繋がっている気分だった。






ざわわわ





木が揺れる音がした。



唇をゆっくりと離し、俺は最後にの唇にそっと指で触れた。


「ほんとお前はめんどくせー女だけどな・・・でも、俺にはやっぱ
 お前しかいねーみてーだ・・・」

今さらながら、俺の顔はきっと真っ赤だろ・・・

「うん・・・・・・」

そう答えたの顔も赤い。

結局お前は初めから俺のものだったってことか?
随分遠回りさせやがってよ・・・・
まっ 目の前にいるお前が心底幸せそうな顔してやがるから・・・
それはそれで良かったってことにすっか?

俺はの小さな手を握る。
愛しくて、かわいい手。
俺だって、ドキドキしてんだっつうの・・・・・・・


そして指を絡めた。

しばらくずっと、2人で俯いたまま、むかいあったまま、絡んだお互いの指を見ていた。




しばらくして顔をあげたら、幸せそうに笑うの顔があった。

「不思議・・・・・」
「なにが?」
「シカマルに触ってもらったら、ドキドキが収まったよ・・・その代わり、もっと
 すごい事になってるけど・・・・」
はクスリと笑った。
「なんだよそれ?」

次の瞬間・・・
は思いっきり俺に抱きついてきた。

「シカマルが大好き大好きって、叫びたくなるのっ
 あのね、気持ちが爆発しそうで、なんか止まんないよっ
ねぇ、シカマル、叫んでいい?」

「は?」

は目の前で大きく息を吸い込む。

「シカマル だーーーいす・・・・き」

「バカッ よせっ!」

俺はあわてての口を塞ぐ。

「なんでよぉっ」
はふくれっつらしたふりをしている。

「うるせーーっ バカ・・・」

「それじゃ、もう一回キスして?」
見上げるイタズラっぽい顔。

「は?」
俺が照れてんの知ってて、言ってんだろ?・・・くそっ
みてろよっ・・・・

俺はギュッとを抱き締めた。
(俺なんかずっと前からお前を好きで好きで仕方ねーっんだからなっ)

驚いたの顎を強引にあげさせて、俺はもう一度の唇に
キスしてやった。

唇を離すとは真っ赤だ。

「けっ ざまーみろっ・・・」
俺は鼻で笑ってやった。

「なによっ シカマルのバカッ」

俺たちは顔を見合わせて笑った。

やっと伝わった想い。
俺たちはお互いに求めていたんだ・・・・・
愛しくてたまらない存在として・・・・
全て欲しくて・・・・・



「帰る・・・か・・・・・」
「うん・・・・・」



絡めた指は離さないまま、俺達は家にむかってゆっくりと歩きだした。



サクサクサク・・・・
草を踏みつける音・・・・
絡めた指から、の体温を感じる・・・・・・



・・・・」

俺は無意識に名前を呼んだ。
はゆっくり俺に顔をむけた
木々の木漏れ日がにやんわりと降り注いでいる。


あぁ・・・・やっぱ・・・俺はお前がすげー好きだ・・・・・
もう言葉だけじゃ、足んねーんだよ・・・・
・・・お前も同じだろ?




足りない想いを埋めるのは・・・・・





お互いに絡めた指がそっと離れる・・・・そして・・・・

お前は俺に触れられたくて、俺はお前に触れたくて、俺達は
もう一度、お互いに手を伸ばす・・・



その愛しい体へ





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