ねぇ シカマル・・・私、最近変なんだよ・・・








「おい!。おいっ!」

「え・・・・え?」

「お前、さっきから何ボーッとしてんだよっ」

シカマルはハァと溜息をついた。

「ご、ごめん・・・・・」




私、また・・・・・もう・・・なんで?なんでなのーーーーー!!
ドキドキドキドキ・・・・意味もなく鼓動が早くなる・・・めまいがしそう・・・・




「ったく、これだから、お前の修行に付き合うのは、めんどくせーってんだよ」
シカマルは頭をガリガリかいて、眉間にシワをよせている。

「ごめんなさい・・・今度はちゃんとやるから・・・・」

「あったりめーだ・・・・バカ・・・・」

シカマルにコツンと頭を叩かれた。




ドキドキドキ・・・・ほ、ほら・・・また・・・・・・・





シカマルは、かったるそうに背をむけて歩き出し、私から少し距離をとって、
もう一度向きなおした。

「おら、、いいから向かってこいって!!」
「う、うん。行くよ!シカマル!手加減無しだからね!」
「けっ いくら俺でも、女のお前なんかに負けねーっての・・・」

鼓動を沈めるため、大きく深呼吸をし、胸に手をあてた。

よしっ いける!!

私は足にチャクラを込めて、思い切り土を蹴って走った。




ガツッ



鈍い音がして、私がむけた拳をシカマルの腕が防御した。


(きゃっ)


ダメ・・・・接近したら・・・また・・・動悸がひどくなる・・・・・・



私は後ろに飛びのくと、自分の手にチャクラを集中させる。
離れた所から、術でやるしかない!!

私は印を結ぼうと自分の手に意識を集中させようとした。

「バカ・・・そんな鈍い動きじゃ、次の動きを相手に読まれっぞ」

(え?)

ガツッ

私の腕は、術を発動する前にシカマルの手でがっちりと捕まえられて
しまった。


あっ やだ・・・・また・・・・・・・・ドキドキドキ・・・・・・

「お前、本当、鈍いなーーーー」
シカマルは私の腕を掴んだまま、へっと笑った。

私の視線は自然とシカマルにつかまれた腕に集中した。

「きゃーーーーーーーーーっつ」
「は?」




私は、口をぽかんと開けたシカマルの胸を思い切り押して、
後ろに逃げようと後ずさりしたら、体が木にコツンとあたった。



「な・・・なんだよっ」
「だって、だってぇ・・・・・」
「な、なに、泣いてんだよっ 」

自分でもよく分からないんだもん・・・

シカマルが私に近づいて、腕を伸ばして私の肩を掴もうとした。

「いやーーーーっ 触らないでーーーー!!」

私は悲鳴に近い声をあげてしまった。





シカマルの手は私の肩にあと数センチという所でピクッと止まった。

「お前なー 俺が何かしたみてーじゃねーか!!」

怒ってる・・・眉間にシワよってる・・・・・目がひくついてる・・・・

「だってだってぇ・・・・・・シカマルがぁ・・・・・」
「だから、俺は何もしてねーっつうの・・・・」

あぁ・・・確かに何もしてないよぉ・・・・だけど、私、変なの。

「シカマル・・・・私・・・・変なの・・・もしかして病気かも・・・・」

グスン、グスンと鼻をすする。

「あぁ?大丈夫だろ・・・お前はいつでも変だから・・・・」

ボカッ

「痛てっ」

シカマルが頭を抱えているすきに、私は帰り支度をはじめる。


良かった、さっきのあの変な動悸も治まったみたい・・・・




「帰るのかよ!」
「うん・・・・今日は、ダメ・・・・・・みたい・・・・」

はぁ・・・・またシカマルが溜息ついてる

「ほんと、お前って勝手だよな・・・・・」

シカマルはしぶしぶ私の後ろを歩いてついてきた。

しばらくして、シカマルが私の隣においついて
並んで歩いて帰る。

シカマルは頭の後ろに腕組みしてる。


私はその腕を見て、また動揺してしまう。



ほどよい筋肉のついた細い腕には血管が浮き出ていて、
いかにも男の人の腕って感じ・・・・
シカマルの手は指が長くて細くて、でも骨ばってて、頑丈
そうで大きくて・・・・


私、その腕や手を見るだけで・・・最近、動悸がとまらなくなる・・・・・・
これって何なの?



ふと、シカマルが組んでいた腕をといて、その腕は下におろされた。
その時、隣を歩いていた私の腕にシカマルの腕があたった。

(きゃーーーーーっ だめーーーっ)

私はとっさに体ごと、横に逃げた。


「お前なぁ・・・・・露骨に避けんなよ・・・・」

また、すっごい眉間にシワよってる・・・・・

違う!違うの!誤解なのに!


私はなんと答えていいのか分からずに、アタフタしているうちに
家の前までついてしまった。




「今日はうちのバカ親、いねーぞ。お前、どうする?」
シカマルはちらっと私を見て言った。

「あ・・・・あ・・・そう。 じゃぁ 私が夕飯作ってあげるね・・・」
声がうわずってしまった。

シカマルはそんな私の顔をジッと見て。

「俺、お前になんかしたか?」
と言った。

「してない・・してない・・・何もしてないよ・・・」
私が首をブンブンと横に振ると、
シカマルはまた ハァーーーと溜息をついて、玄関の扉をあけて、
ドンドン先に部屋へと入っていった。

私も後に続いていった。





冷蔵庫を開けて中を覗く・・・

「なんもねーな・・・お前、これで何か作れるか?」 
「うん。簡単な煮物系ならね・・・」
「あっそ。んじゃ、頼むわ・・・俺も手伝うからよ・・・・」

シカマルは手際良く、ボールだの包丁だのお皿だのを取り出して、
準備を開始する。

私もシカマルの隣にならんで、準備をはじめた。


まず、かぼちゃ煮作ろう・・・

私は包丁を握って、かぼちゃに突き刺した・・・

「かたーーーい」
かぼちゃに刺した包丁はピクリとも動かなくなってしまった。

「バーカ。貸してみろ・・・」

シカマルが私から包丁をとろうと腕をのばす・・・・



ドキドキドキ・・・・鼓動が早くなる・・・・
いやッ また・・・・・


「いい!自分でできるもんっ!」
私はシカマルが取ろうとした腕を振り払って、包丁を握りかえそうと
した。


あ!


スパッ と音がした気がした。
あっさり切れて、一筋の赤い線が私の腕から床へと落ちた。



「バカ!、お前何やってんだ!」

シカマルは私の腕をギュッと握って、自分の顔に近づけた。

私は自分の腕をシカマルの手が掴んでいる事への動揺と、自分の腕から
流れる血を見て、またドキドキと鼓動が早くなる・・・・顔が青冷めていく
のが分かった。


「とまらねーな・・・・」
シカマルは ちっ と舌うちをすると、私の腕に口をつけてギュッと
すった。


ダメだよぉ・・・・・・もう心臓が壊れちゃうよ・・・・・・
私は自分の心臓が飛び出そうな程音をたてているのに気がついて、
ギュッと目をつぶった。体が硬直した。


「待ってろ・・・今、止血してやっから・・・・」

シカマルはすごくテキパキと部屋の奥から救急箱を持って来て、
消毒液を出す。

、腕だせ」

私はその間、何も言えず、ただ言われた通りにシカマルの前に自分の腕を
つきだして、他人事のようにその光景を見ていた。


ふいにシカマルの手が腕を固定するために私の腕に触れた。



あっ ドキドキドキドキ・・・・・・・



「やだってばーーー 触らないで!!」
私はギュッと目を閉じて、腕をひっこめた。

・・・・お前いい加減にしろっ そんなに俺が嫌なら
 もうお前に触れたりしねーよ。けどな、今は止血が先だ!」

シカマルはギュッと体におしつけていた私の腕を強引に掴んで
引き剥がし、消毒液をつけた。
真剣な顔で包帯をまいてくれた。

その間も私のドキドキは一向におさまらなかった。

「できた・・・・」

シカマルは私の腕を力なく離した。


「シカマル・・・・・・・」

シカマルは真剣な顔で私を見つめている。

「もう大丈夫だから・・・・お前はもう帰れよ・・・・・」



シカマルはスッと立ち上がって、私に背をむけた。



胸がギューっと締め付けられる思いがした。


「違う・・・違うの・・・シカマル・・・私、シカマルが好きなんだよ・・・・」

「・・・嘘つくんじゃねーよ・・・・」

「本当だもん・・・・」

「あんだけ避けといて、よく言うなお前。いくら俺が鈍感でも、
 気づくっつうんだよ・・・・」

「だから、それは誤解で・・・えっと・・・」

「いいから・・・・もう帰れって・・・・」

シカマルはこっちを見てくれない。
私は自分のこのどうしようもない状態と、今の現状と、頭が
混乱して、ただただ涙が出るばかりで、何も言えなかった。

はぁ・・・・・・

溜息をつくと、シカマルは玄関まで無言で歩いていった。
私は泣きながら後についていった。

「送る・・・から・・・・・」

シカマルはずっと背をむけたまま、扉をあけた。

帰りたくないのに・・・・でも、今の私はどうかしていて、何を言えば
いいのか分からないよぉ・・・・

ヒクヒク・・・・

私の情けない声だけが聞こえている。
無言のままのシカマルの背中に私は力なくついていった。

シカマルは私の家の玄関の前までくると、やっと後ろの私を振り返った。

「じゃぁな・・・・・」

シカマルの顔・・・・すっごく寂しそうだ・・・・

「シカマル・・・私ね・・・誤解だから・・・今はうまく言えないの・・・・
 でも私はシカマルのことが・・す」


好き・・・・・・そう言いたかった・・・・・
けど・・・・私の肩にふわっと風が通りぬけ、シカマルの匂いがした。
その動きはまるでスローモーションのようにゆっくりと切なく過ぎた。
何も言わないまま、弁解もできないまま、シカマルは私を通り過ぎて
帰っていった。



「どうしてこうなっちゃうの・・・・・」
私はしばらく玄関の前で立ち尽くして泣いた。













次の日、いのが私の家にやってきた・・・・・・




「はーーーい! 元気?」

いのは、とびっきりの笑顔を見せた。

「元・・気・・・・・・じゃない・・・・」

「でしょーね。」

いのは何も言ってないのに、勝手に靴を脱いで、我が家に
上がりこんだ。

「で?シカマルと何かあった?」

ソファーにちょこんと座って、私を見上げる。

「なんで分かるの?」

「シカマルさぁ・・・朝からずっと黙ったままで、任務中も真剣な顔してんの」

「だって・・・そりゃぁ任務中ならふつう誰だって真剣でしょ」

「よく言うわ。が一番あいつの性格を知ってるくせに。」


そうだよね・・・・シカマルはたとえ任務中だって、自分のペースを崩す人
じゃない・・・・
いつもなら、あくびしながら、かったるそうに、いつもの調子で
めんどくせーなんて言いながら、任務をこなすに決まってる。

「私でいいなら、相談のるけどー?は私の親友だしね・・・」
いのはフフと優しく笑った。
私は心に張っていた膜がやぶけた気がした。



「いのーーーーーー助けてーーーーーーーーー!!」




思いっきり、いのに抱きついて、わーーーーーーと泣いた。


・・・・バカね。もう一人で悩んでんじゃないわよ。」
いのはまるで子供をあやすように私の髪を何度もなでてくれた。










「なーーーるほどね・・・・・・・」
いのは眉をしかめたまま頷いた。

「ようするに、シカマルに触れられると眩暈がするほどの動悸に襲われると・・・」

「そ、そう・・・・特に腕とか手とか・・・・見るだけでもうダメ・・・・・
 私、シカマルを拒絶しちゃう体質になっちゃったのかな・・・・・」

また視界が潤んで、泣きそう・・・・


・・・あんた病気だわ・・・・・」
いのは真剣な目で私を見つめている。
「何?なんの病気?」
私はますます不安になって、いのの腕にしがみついた。


プッ   いのが吹き出した。
「本当バカねーーー は。」
「ひどいよ、いの!私、真剣なのに!」



「それはね・・・恋の病ってやつよ! 
分かりやすく言うならば・・・・シカマル大好き病!!」




は?      シカマル大好き病??


「聞いたことない・・・・そんな病名・・・・・・」
いのは私をからかってる・・・・・・私は頬をふくらませていのの顔を見た。

「あったりまえじゃない!にしかかからない特別な病気だもん!」

いのはお腹を抱えて笑いだした。


なおも膨れっつらの私の頬をギュッとつまんで、
いのは私のおでこに、そっと自分のおでこをくっつけて、言った。




「それはね・・・シカマルにもっともっと触れてほしいって、の体が言ってんの」




私の顔はゆでだこみたいに真っ赤になっていった。

「ねぇ・・・・・分かる?」
いのは私を優しく見た。

「え?で、でも・・・・」
私には良くわからなかった。
自分のはじめての感情にとまどってばかりだったから。
本当の自分を見失ってしまっていたから・・・


「大丈夫・・・今にきっと分かるから・・・・・」
いのに優しく頭をなでられた。


「う、うん・・・・・・」

私はそれだけ答えて、目の前の大切な友達を見つめた。




NEXTへ



戻る





55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット