テマリがシカマルを迎えに来たあの日から、本当に私とシカマルは会えない日々が続いていた・・・





もう何週間会ってないんだろう・・・





わがまま言って、頑張っているシカマルの邪魔をしちゃいけないって・・・
分かってるのに・・・




でも、なんかもう限界。




会いたいよシカマル。
それが叶わないのなら、せめて声だけでも聞きたい。




私は勇気を振り絞って、その日、シカマルの家へと電話をかけた。




今までは毎日シカマルに会えてたから・・・
シカマルの家に電話するのなんて、いつぶりだろう------------------------









「はい。奈良です」


受話器ごしに懐かしい声がした。


「あ、あの・・・おばさん。私・・・です」


「あら!なの!!久しぶりね!!元気だった?」


久しぶりに聞くシカママの声は嬉しそうに弾んでいた。


「はい。元気です。あの・・・シカマル・・いますか?」


「えぇ!!今帰って来たところよ!すぐ代わるはね!!」


〜 シカマルーーーっ早くおりてきなさいーーっ 電話よvv 〜


受話器のむこうで、シカママのからかうような声が聞こえて・・・
しばらくして、遠くから階段を下りてくる、ぶっきらぼうな足音がしてきた。



ギシギシッ



受話器のむこうから、だんだんと足音が近づいてくる。

「めんどくせぇ」って靴下も履かないシカマルの指の長い大きな素足が、少し湿った床を踏む音。
きっと、めんどくさそうに眉間にシワをよせて、片手で頭をガシガシかきながら、歩いてくるんだろうな・・・

その姿を想像して、そしてその足音を聞くだけで、シカマルが側にいるようで、心臓がドキドキした。



「あんだよ?誰から?」


めんどくさそうなシカマルの声が遠くに聞こえる。


「いいからいいからvv」


シカママは私の名前を言わなかったみたい。



「ったく・・・」

電話口から、めんどくさそうな声が聞こえてきた。


『もしもし』






「シ、シカマル?・・・・」
『おぉ・・・・か?・・・どした?』

名前を呼ばれただけで、嬉しくて、心が弾む。



「シカマル、元気にしてる? 最近なかなか会えないね・・・・」

『あぁ・・・そうだったな。 毎日、任務だ修行だって忙しくてよ。ったく、めんどくせぇぜ。』


ふあぁぁぁと大きなあくびが聞こえる。


(シカマル・・・疲れてるんだなぁ・・・)


本当に眠そう・・・



「やっぱり忙しいんだね・・・」

『やらなきゃならねぇ事が山ほどあるからな。めんどくせーけど、そうも言ってらんねぇ・・・』

「そっか・・・」



(あぁやっぱり・・・シカマルは今本当に大変なんだ・・・)


「毎日、くたくた?」


『へっ・・・まぁな・・・』



こんな状況じゃ、やっぱり会いたいって言う一言は、言えない。
だって、今は私と会うより、シカマルは睡眠をとる方が大事だろうから・・・・



『・・・お前、元気でやってんのか?・・・・』



そんな状況でもシカマルは私の心配をしてくれるんだね。


「うん」


『そうか?相変わらず髪も乾かさねぇで寝てんじゃねぇだろううな?』

少し意地悪なシカマルの声。


「え?」

『風邪ひくぞ』


くくく。


受話器越しに、シカマルの声を押し殺したような笑い声がかすかに聞こえる。










シカマルの何気ないその言葉は、私の頭に、過去のある映像を思い出させた。






-------------それは、私とシカマルしか知らない秘密の出来事--------------





ピンポーン




ちょうどお風呂上りに玄関のベルが鳴る。


『はーーい』


上はノースリに、下はパイル地の短パン。
思いっきり部屋着状態の私。
おまけに髪は洗いたてのびしょ濡れ状態で、私の髪からは雫が肩へと垂れていた。
毛先をタオルで適当に拭きながらドアをあける。




『あのよ、母ちゃんが夏みかんをお前と一緒に・・・』



シカマルは玄関先で籠につまった夏みかんをぶっきらぼうに差出して、私の姿を見て固まっていた。



『うわぁありがとう/////』


『んじゃ、そういう事で・・・』


『え?ちょっとちょっとちょっと!!』


私が籠を受け取ると、突然くるりと背を向けて帰ろうとするシカマルの腕をつかんでひきとめた。


『なんで帰るの?こんなに一人で食べられないよぉぉ・・・一緒に食べよ?』

『いや・・だって、お前、風呂上がったばっかだろ?・・・』


シカマルは私を振り向かずにそう言った。


『もう出たから大丈夫・・・あがってよシカマル』

『・・・・いい。帰る』



なんか頑なに帰ろうとするから・・・


『なんで?』

『なんか・・・悪ぃし・・・//////』



シカマル顔赤い・・・


『なにが?』

『いや・・・わかんねぇけど・・・』



『・・・・・・』

『・・・・・・』


くすくす


『へんなシカマル。いいから、入ってよ』


私はシカマルのことを無理やり家の中に入れた。


『めんどくせぇ//////』





部屋の中に入ると、私とシカマルは座敷から続く縁側のガラス戸をあけて、そこに二人並んで座った。



『ひゃーっ 気持ちいい〜』



縁側からサラサラと優しく入る風にお風呂でほてった体が冷やされていく。



『風邪ひくぞ』

『平気だよぉ。』


まだ濡れたままの髪が冷やされて、肩がひんやりした。
私はタオルを肩にかけて、額に垂れた雫を拭いた。


『食うか?』

『うん』


シカマルに ポーンと夏みかんを放られる。

シカマルは隣に座って、器用に夏みかんの硬い皮をむいていく。


みかんのおしりのところに、シカマルの長い親指がぐっと入って、それから、
なでるようにするだけで、ミカンの皮はシカマルの手の中で綺麗にむけていく。


『じょうず・・・』

『普通だっつうの』


私はシカマルの器用な指先を見るのが好きだった。


『私も食べとっよvv』



同じようにしてるのになぁ・・・私の小さい親指はみかんの皮にそばまれて、なかなか奥に入らない。



『かったい。シカマルむいて?』

『バーカ。めんどくせぇ自分でやれ』


シカマルはパクリと一房を口に入れる。


『うめぇ。・・・』


シカマルは嫌味にチラっと私を見た。


『うーーーっあたしも食べ・・た・・いぃぃっ! 』


私はいまだ皮に苦戦中。



『ったく・・・かせバカ。』



なんだかんだ言いつつ、シカマルは私の夏みかんの皮を丁寧にむいてくれた。


『シカマル優しいねぇ・・・』

『ったく。ガキのめんどう見なきゃいけねぇから本当めんどくせぇよ・・・』

『・・・それって、私のこと?』

『他にいるか?』


シカマルはニシシと笑って、反論しようとした私の口に、むきたてのミカンを
ポコンと入れた。


『うっ』


口の中に甘すっぱいミカンの果汁がひろがる。
舌がすこししびれた。


『うめぇだろ?』

『うん』



くくく


シカマルはそんな私をいつも穏やかに笑って見ている。




そんな時、ふと思う。シカマルも私のことやっぱり好きなんだよね?って・・・
ちゃんと好きだから、私と付き合ってくれてるんだよね?って・・・
それって、私のうぬぼれじゃないよね?







『くしゅん』


夜風は思いのほか急激に私の体を冷やしていた。


『ほれみろ。閉めるぞ』


シカマルはよっこらしょって立ち上がって、カラカラとガラス戸を閉めた。


『貸せ』


そして、私の肩に無造作に置かれていたタオルをスルリと奪い取る。




『もしかして、拭いてくれるの?』


私はふざけて座ったまま後ろに立っているシカマルを首を上にして見あげた。




『お前に風邪ひかれっと、辛いだ、苦しいだ騒いで、余計にめんどうなんだよっ』


シカマルはバサッと後ろからタオルを私の頭にかぶせた。




『やだーやだー何よぉ?なんにも見えないぃぃっ!!』

『だ・まっ・て・ろ!』

『もうっ!!』





閉められたガラス戸越しに月が煌々と光っていた。
それだけで、電気もつけていない部屋はぼんやりと明るかった。


シカマルの指先が私の髪を上から下へとタオル越しに優しくすべっていく。
強くも無く、ちょうどいい感じ。








『気持ちぃぃ///////』

『ほっんとめんどくせぇなお前』



シカマルは文句ばっか言うけど、結局いつも優しくしてくれるんだよね。



『最後はちゃんとドライヤーで乾かしてね!毛先がゴアゴアになっちゃうからvv』

『・・・・・・・・はいはい』



いい加減、私のわがままに反論するのもめんどくさくなったのか、シカマルはまた よっこらせ
っておじいちゃんみたいにつぶやいて、かったるそうに私の家の洗面所の下の戸棚から
ドライヤーを引っ張り出して、持ってきてくれた。


『あら?シカマル君たら、私の家の中の事までよくご存知で?』


からかうように見上げたら、


『ガキん頃から、コキ使わされてっからよ・・・自然と覚えちまったんだよっ/////』


シカマルは赤い顔をして、ふんっと目を反らす。
照れてるんでしょ?
そういうところがまた好き。


『もう、いつ一緒に住んでも大丈夫だね〜///////シ・カ・マ・ル』


だからもっと意地悪言いたくなっちゃうんだよね////


『ば、ばか言ってんなっつうの!お前となんか一緒に住んだら、俺の体がもたねぇよっ!!』


『なにそれーーーっ!!そんなに嫌がらなくていいじゃないよぉぉ』


からかうつもりが本気でカチンときたりして・・・


『うるせぇ。』




ブオーーーーッ



温風が後ろから私の髪をなびかせると、冷え切っていた肩もほんのり温まってきた。



『ひゃあ。あったかーーーいvv』

『お前よ、これぐらい自分でやれよ』


今度はシカマルが意地悪して、ガシガシと強めに私の髪をなでた。


『痛い 痛ーーいっ』

『けっ 自業自得だっ バーカ』


ガシガシガシ


シカマルがやめてくれないから、ちょっと私も意地悪してみたくなった。



思いっきり目をうるませて、ゆっくりとシカマルを振り返る。




『痛いのやだ。シカマルぅ。優しくして?』









『・・・・・////////////』









シカマルは唖然として、言葉に詰まっていた。

心なしか、顔も赤い?



(もしかして、シカマルってば、私のかわいい顔に悩殺されちゃった?)



心の中でガッツポーズvv



なのに・・・・



『・・・・お前・・・・その台詞はやべぇって//////』


『へ?  台詞?』


キョトンとしていたら、シカマルにギロリと睨まれた。



『どうせお前のことだ。・・・知らねぇで言ってんだろ?』

『な、なに?//////』



そしたら、今度はシカマルは はぁ とため息をついた。


『ったく・・・本当、男ってもんを分かっちゃねぇなぁお前』


『へ?』


『あぁもういいよっ めんどくせぇ』



ガシガシガシ


『痛い痛いよぉぉ!!』



シカマルはさっきより余計にタオルで私の頭を乱暴に拭いた。



『だいたいなっ お前が俺を誘おうなんて、10年早ぇっつうの』


『痛い痛い!なによぉもうっ』



カチンときた。
さっきから何を怒ってるんだか意味わかんないし、
タオルではガシガシされるし、
こんなかわいい彼女の悩殺顔にも、そういう事言うなんてっ!!


・・・シカマルの意地悪。




『ちょっとは、私にドキドキしてくれたっていいのにさっ!!
 シカマルこそ分かってねーよーだっ』



タオルの下で私は ぶーぶー と文句を言った。




『は?・・・本当バカだなお前・・・くくく。 まぁいいか。』



シカマルは 何故だか楽しそうに笑った。
でもなんか私は納得できなくて・・・


『バカって言うなっ!!シカマルの鈍感!!』


『その言葉だけはお前に言われたかねぇっつうのっ この天然!!』








私とシカマルって結局いいムードになんかなれなくて、いっつもこうやって
言い合いになっちゃうのっ


これって、付き合ってる男女の会話には到底聞こえないよね・・・





ブオォォォーーー





また、ゆるやかにドライヤーの音が響く。
今度は、心地よいシカマルの指が丁寧に私の髪を乾かしてくれていた。



ぽかぽかしてきて、なんだか眠くなってきた。



『他人にやってもらうのって気持ちいいんだね!これからいつもシカマルにやってもらおうかなぁ・・・』

『誰がやるか!めんどくせぇっ』


後ろでシカマルは不満げ。


『なんで? ちゃんとお礼するよvv』

『いらねぇよっ!!お前のお礼なんて、どうせロクなもんじゃねぇんだからよっ』

けっ

と舌打ちするシカマルになんか笑っちゃったっ
私の性格、本当よくわかってるよね。




それからも、シカマルは無言でドライヤーで髪を乾かしてくれていた。







『乾いたんじゃねぇか・・・』





ドライヤーの音が止まると、家の中がやけにシーンとした。





『本当?じゃぁ触ってみて?』



『あ?』



シカマルは私の頭のてっぺんからゆっくりと指先で、少し遠慮がちに私の髪を
下へと撫でる。



『ツルツル?』

『ん////たぶん』





『ありがとvvシカマル』





私はシカマルを振り返って、笑った。


シカマルはそんな私をじっと見てた。





『え?何?シカマル・・・???』


『その笑顔は・・・ズリィ。』


『え?』


文句言いながらも私の為にしてくれるシカマルの為に、感謝の気持ちを込めて笑った
つもりだったんだけど・・・・?
シカマル・・・なんで怒るの?



キョトンとしてたら・・・



『だから・・・お前となんか一緒に住んだら、俺の体がもたねぇって言ってんだよっ・・・・』








きゃっ





シカマルに突然、背中から抱きしめられた。






『シ、シカマル?///////』










『やっぱ・・・もらっとく・・・』


『へ?な、何を/////』



ドキドキして、頭がまわらない。



『お礼・・・くれんだろ?』




シカマルにグイッ と腕をひかれて、前をむかされた。



『え?何?シカマル?』



シカマルは私を向かいあう格好で膝に据わらせた。




『風呂上りに、こんな色っぽい格好してお出迎えしてくれるぐれぇだから
 さぞかし豪勢なお礼だろうなぁ?。』


『ち、ちが/////これはたまたまお風呂上りで・・・』


『おまけに、こんな近くでお前の髪に
 触れてんだ・・・俺だって我慢に限界だってあんだよ』


『え?だって/////そんなの知らないよぉ・・・』



なんだか焦って、私はしどろもどろ。



『どっちみち、こんな状況で俺を部屋にあげるお前が悪ぃのっ』



シカマルはふいに、チュッと私にキスをした。




こういう体勢でキスってしたことないよね//////






『だ、だめぇ!!は、はい/////お礼終わり!もう終わりだからね!!』

『冗談だろ?』



急な事にびっくりして、私はシカマルの肩を押し戻す。
それでも、シカマルが私を離してくれないから変に心臓がドキドキして焦ってきた。



『さっきっから俺を誘うだけ誘っといて、そりゃねぇだろ?』


『誘ってなぃぃぃっ//////』



目と鼻の先にシカマルの顔。
シカマルはニヤリと笑うと、私の首すじに顔を近づけて、チュッとキスをした。


『やーーっ/////やめてよぉぉ』


キスを体にされるのは初めてで、心臓がドキドキする。

シカマルは慣れた手つきで、私のキャミソールの肩紐をゆるりとおろすと、肩先にも
キスをした。



『あっ///////』


なんか変。
こういうの心の中では、まだ嫌だって思ってるはずなのに、体が動けない。


(なんていうか・・・・気持ちいい?////////・・・・・・)




『バカ。そういう声だすなって・・・』


『だ、だってぇ・・・ずるいよぉ。シカマルばっかり余裕なんだもんっ』



(いつだって、シカマルは冷静で、私ばっかりドキドキさせられるんだからっ)



『アホ。今の俺に余裕なんてあるわけねぇだろ? あぁもうっ マジやっべぇ。』




シカマルはキャミの背中から手を入れて、私の背中を直に触った。

こんな風に体を触られるのは初めて。

熱い手の平が予想外に大きくて、なんかごつごつしてて、冷えた背中がじんじんと熱くなった。



『シカマルぅぅ//////』


なんかわかんないけど、たまらなくなって、私はシカマルの首にそのまま抱きついた。





シカマルはギュッと私を抱きしめた。







体が直に密着する。






そっか。
恋人同士って、こういう事するんだ・・・・
私もシカマルと・・・

でも、シカマルになら、これから何されてもいいかも・・・・



シカマルの肩越しをつかんだまま、私はギュッと目を閉じた。



心で決心してみても、初めてだから、
心臓はドキドキと鼓動を高めた。






でも、












シカマルはその先はずっと何もしてこない。








『はい。終わり』








突然、シカマルにトスンと床におろされた。





『へ?』





なんだか、続きが欲しいような物足りないような変な気分。




『これ以上は・・・無理。』



『シカマル・・・な、なんで?』



それって、私じゃ色気なくて駄目ってことかなぁ・・・
シカマルは満足できないのかなぁ・・・

心とは裏腹に気持ちは落ち込んだ。




『あほ。そんな顔すんなっ・・・』


『だってぇっ』



なんか涙でそう。 
シカマルはこぼれそうな私の涙を指先でチョンとぬぐった。



『もうちょい待ってろって・・・俺がちゃんと責任とれる男になるまで、
お前のこと、簡単に抱いたり出来ねぇだろ?』



『・・・・っ///////・・・』



(そ、そっか・・・シカマルは私の為に途中でやめてくれたの?)



本音を聞いたら、なんだか照れて、言葉に詰まってしまった。


シカマルはそんな私の顔を覗きこむ。



『はぁ・・・・お前よ。俺がどういう意味で言ってっか分かってっか?』


ツンとおでこを弾かれた。



『う・・うん。大事にしてもらってるって・・・シカマルはちゃんと私のこと想ってくれてるって・・・
 そういう事・・・・だ・・よね?/////////』



『めずらしく理解してんじゃねぇか//////よく出来ましたっと。』



シカマルはまるで子供をなだめるみたいに私の頭を撫でた。





(それって、シカマルも照れ隠し?なのかな)



撫でられた髪がくすぐったい。





『まぁ・・・あれだ・・・たまにはこうして、お前の髪を乾かしてやってもいいぜ』


『う・・・うん///////』




本当は、背中にまだシカマルの手の感触が残っていて、じんじん熱い。
それを目の前にいるシカマルに気づかれるのが恥ずかしくて、私はうつむいた。









『もちろんキスのお礼つきな?』



シカマルはニシシと笑った。








その日以来、私はたまにお風呂上りにシカマルを呼び出して、髪を乾かして
もらっていた。

いつも意地悪なシカマルが、私の髪を優しく撫でてくれる事が嬉しかったから・・・・・
それに・・・私もお礼のキスをしたかったのかも////////























あの出来事も、今となってはとても懐かしい思い出に感じた。

あの頃は本当に私達、兄妹みたいに仲良しで、ケンカしてはまたくっついて、
でもやっぱり恋人同士で、何度もお互いを確認するようにキスして・・・・



二人でいる日々が当たり前だったよね。


私はいつもシカマルに甘えるのが幸せだった。


めんどくせぇって言いながら、守ってもらえるのが嬉しかった。


















『・・・・・・おいっ どした?起きてっか?』















「え?あ・・・ごめん。」



電話中だったの忘れてた・・・


『ったく・・・お前も疲れてんじゃねぇのか?』


「ち、違うよ・・・全然平気だし」



このまま電話を切られちゃう気がして焦った。



『今よ、マジで風邪流行ってんだ。、お前も体調気をつきろよ』


「え?あ、うん。」



『そうそう。こないだ、高熱出してテマリもダウンしてよ』



(テマリ・・・・・)



突然の彼女の名前にビクリと反応する。



「そ、そうなんだ・・・・」


『カンクロウからうつったって・・・姉弟だよな・・・やっぱ・・・くくく』



「へ、へぇ・・・・・」





シカマルはおもしろそうに笑ったけど、私は笑えなかった。
だって・・・



なんでそこでテマリの名前が出てくるの?



シカマルはまだテマリと会う事があるの?
そんなの聞いてない・・・・


テマリの事・・・噂で聞いただけだよね?





聞きたいけど、聞けないっ!!








『だからよ・・・お前も飯食って、早く寝とけ。』


「私は平気だもんっ!!」


『くくく。よく言うぜ。いつも真っ先に風邪こじらすのは、どこのどいつだ?・・・
 だいたい、熱出して寝込んでたって、俺ぁ今、行ってやれねぇんだからな』

「そんなの・・・・・分かってるよ。」




分かってる。私は今、シカマルに会うことすら出来ない。
こうして電話で話す事だって、ようやくかなった現実だ。


なのにまさかテマリは・・・・


テマリって名前をシカマルに出されただけで、こんなにも動揺する。



だけど私は、シカマルのこと信じてるからね。
シカマルのこと・・・・。




心の奥ではそう思っていたはずなのに、テマリの事が頭から離れない。





「ね、ねぇ。 テマリってさ・・・どれぐらい強いの?ランクは?シカマルと同じ中忍?」



テマリのことなんて聞きたくないけど、やっぱりなんだか気になって、私はシカマルに聞いてしまった。

だって、もし、テマリがシカマルと同じ中忍だったら・・・もしかして、色々と噂とか聞く事もあるのかもしれないし・・・
それに、中忍だけの伝令の時に顔ぐらいは会わせる事もあるのかもしれない・・・・



だからシカマルはきっとテマリの事、色々知ってるんだ・・・きっとそうだ・・・


(二人が会っているなんて絶対に思いたくなかった。)



でも-------------------------------------------



『いや。あいつは上忍だ。やっぱ砂の連中は俺達とはレベルが違げぇよ』


「へ、へぇ・・・そんなにスゴイんだ・・・」

 
(テマリは上忍・・・・シカマルの言葉に変な胸騒ぎがした・・・)

『あぁ・・・たぶん・・・ガキん頃から過酷な修行をさせられてきたんだろう。
 俺には到底理解できねぇやり方だが、忍びとしての腕は一流だ・・・』


「お、女でも、シカマルから見て、テマリは・・・一流なの?」


『あぁ。あいつはすごいぜ・・・けど・・・俺は・・・砂のやり方は好きじゃねぇけどな・・・』


「え?」

(・・・その先は聞きたくない気がした・・・でも・・・シカマルは続けて言った)


『・・・いつでも死ぬ覚悟が出来てるっていうあの考えが・・・俺には理解できねぇ。
 あいつだって一応女だろ?・・・ちったぁ男に守られるって立場も考えりゃいいもんを・・・
 平気で無茶苦茶やりやがるからな・・・・』



「・・・・・・」





私は言葉に詰まった。


テマリの事を本当に理解しているようなシカマルの言葉・・・・


(ねぇ・・・どうして?なんで?)





『見てらんねぇ・・・ああいうの・・・・』



「う、うん・・・・」


受話器を持つ手がジンジンした。


シカマルはテマリを本気で心配してる・・・・
それは、テマリが同じ忍びの仲間だから?・・・・それとも・・・・女の子だから?



テマリが上忍、シカマルが中忍なら、任務に接点も無いはず・・・・
なのに、テマリのことをなんでシカマルはそんなに知ってるの?
二人の親密さってどの程度?




私の頭は不安でいっぱいだった。

今までシカマルから、いの以外の女の子の話題なんて聞いたこと無かったのに・・・・

それは勝手な想いだと分かっているけど、テマリに対して、怒りにも似た嫉妬を覚えた。





(力では、私はまだ到底テマリには及ばない・・・・早く追いつかなきゃ・・・)



-------------シカマルが獲られちゃう--------------------



ずっとシカマルに会えないままだった私の心は、焦りと不安でいっぱいだった。






「シカマル・・・私も早く中忍になって、シカマルの任務の手助けするからね!」

『そりゃ、頼もしいな・・・待ってるぜ・・・

「うん」





悔しいっ
悔しいよっ




頭の中で、サスケ奪還任務の時、シカマルを助けに来たテマリの姿を想像した。




<<今度シカマルが窮地にたった時は、絶対に私がシカマルを助けるんだから!!>>




テマリに負けたくないっ!!!







・・・』


「なぁに?」


『・・・あんま会ってやれなくて悪ぃな・・・。』



優しいシカマルの言葉。
でも・・・



シカマルが私を思ってくれる気持ちに素直に答えてしまったら、なんだかテマリに
負けてる気がして・・・・




「私は大丈夫だよ! 修行も、任務もあるし・・・私だって毎日忙しいんだから!!」





今はシカマルに心配されたくない。




<<テマリに負けたくない!!>>






『そうか。それ聞いて安心したぜ。』


シカマルは フッと笑った。



「うん。」




だから、私からは・・・「会いたい」なんて今は言えない・・・




『そろそろ・・・・寝るか?』


「そ、そうだね」





それでも・・・・





これでしばらくまたシカマルの声が聞けない、会って触ることも出来ないって思うと、自分から
なかなか電話が切れなくて、私はいつまでも黙ってしまった。

・・・』

「うん」

『お前から切れよ・・・・』

優しいシカマルの声。

「うん・・・・」

でも、指が震えて、やっぱりなかなか切れなかった。

『分かった。んじゃ、せーので同時に切るか』

シカマルは私の気持ちを見透かして、少し笑ってそう言った。

「うん・・・・」

、んじゃな。』

受話器を痛いほど耳にあてて、私はシカマルの最後の言葉を聞いた。

「シカマル。またね。」

『あぁ。んじゃ、、いくぜ・・・せーの』










シカマルの言ったとおり、同時に受話器を置けばよかった。
痛いほどくっつけた私の耳に ツーツーツー となんの感情も無い機械音だけが響いた。

もう、私とシカマルを繋げるものは何も無い。
ぷつりと途切れた電話は私のシカマルへの想いもプツリと途切れさせた。


受話器を握ったまま、私は声も出せずに泣いた。



「シカマル・・・・本当は私、いますぐにでも、会いたい・・・会いたいよ・・・・」



もう届かない言葉を、受話器にむかって何度も言って泣いた。



















その後も、シカマルが本当に忙しそうだと言うことは、仲間うちからも聞いていた。





連絡もなかなか取れず、電話してもいなかったり、「悪ぃこれから任務だ」といわれること
も少なくなかった。
信じて待つって言ったのに・・・・期限の見えない今が辛い。
シカマルに全然会えない日々がこんなにも苦しいなんて・・・・・




けどきっと、シカマルも同じ気持ちでいてくれてるよね?





私はいつもそう自分に言い聞かせて、いつかシカマルが今まで以上に強くなって、自信をつけて
私のもとに帰って来てくれることだけを考えようと、毎日私なりに頑張っていた。





でもそんな時、------------------------------





私は偶然、シカマルの噂話しを聞いてしまった・・・・











それは私が任務帰りに、いつもの茶屋で、班のメンバーのシュウ君とお茶していたときの事だった。








「今日の任務、きつかったなぁ・・・」

シュウ君がボックス席の私の前で、ため息をつきながら、お茶をごくりと飲んだ。

「そうだねーーー」

私はメニューをのぞいて、何を頼もうか迷っていた。



その時・・・・


「なぁ・・・砂の忍って最近よく見かけねぇ?」

「あぁ・・・なんか砂とうちと合同任務にするって話だぜ?」

「え?まさか我愛羅と一緒に組むこともあるってことかよ!!マジ怖ぇ」

「あいつら簡単に裏切りそうだしな」



後ろの席の会話に、私もシュウ君も聞き耳をたてた。




<<砂の忍び達と合同任務?>>



そんなの、私もシュウ君も初耳だった。



どうして?
いくら同盟国だからって、どうして私達 木の葉と砂が手を組まなきゃいけないの??




どうしてもテマリの顔が浮かんでしまって、私はドキドキと高鳴る胸をおさえながら、
また話しに聞き入っていた。







そして、その後、私は信じられない言葉を聞いてしまった-----------------






「なんでも、奈良先輩が推薦したらしいぜ。砂と合同でチーム組んで演習すること」

「そういやぁ奈良先輩、ここんとこいつもテマリと一緒だもんな」

「あの2人、妙に仲いいよな・・・」

「最近は2人コンビで任務に出てるって噂だぜ?」

「マジかよ?」

「やっぱデキてる?」

「ははは。ありえる!!普通にしてたら、テマリって結構いい女じゃねー?」





(嘘・・・・・でしょ?)

心臓がバクバクと不自然に高鳴りだす。










「あーーー。お前、何にすんだよっ」

そこまで聞いて、シュウ君が私を気遣って、声をかけてきた。

でも・・・私の心臓がドキドキと高鳴って、メニューを持つ手が震えた。





そして私は決定的なことを聴いてしまった・・・





「でもマジ最近噂だろ?あの2人」

「あぁ・・・彼女と別れたって噂は本当なのかな?」

「らしいぜ。みんなそう噂してる。最近、奈良先輩が彼女といるの見たことねぇもん」

「テマリがべったりだもんな」

「かわいそうだよな。あんなに長く付き合ってたのによ。どうやらサスケ奪還の任務の時に2人はデキちまったらしいぜ」

「へぇ。彼女かわいかったのに。もったいねぇ。やっぱ奈良先輩がふったのかな?」

「たぶんな。奈良先輩がテマリに乗り換えたって話だぜ?」




私は思わずその場で立ち上がってしまった。



椅子はガタガタと音をたて、その大きな音を聞いて、席の2人が私を振り返る。


先輩!!」

「バカ!やべーよっ」




「お前らいい加減にしろよ!!!」

シュウ君が噂をしていた1人の胸倉を掴んだのが見えたけど、私はもういてもたっても
いられなくなって、そのまま走って店を出てしまった。


!!」

シュウ君の声が後ろから聞こえたけど、止まれなかった。
頭が混乱して、もうどうしていいのか分からなくなった。


嘘でしょ?シカマル・・・


あなたがテマリと一緒に任務をすることを推薦したなんて。
あなたが私と会えない間もテマリと一緒にいるなんて。
あなたが私よりテマリを選んだなんて。



だって、言ったじゃない!

俺を信じて待ってろって・・・・そう言ったじゃない・・・・・



















NEXT


戻る









 
55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット