それからは、シカマルの言ったとおり、私達はなかなか会えない日々が続いていた。







私の班のちょっとした任務の帰り、私は家への道を一人でとぼとぼと歩いていた。


私はまだ下忍で、実力も経験も浅いから、チームの任務はいつもCとかBランク。


けど、シカマルはもう中忍で、その実力は上忍の誰もが認め、期待されている忍びの一人だ。
だからきっと、今頃は、難しい任務や、修行の日々で、忙しくしているに違いない。


分かってるんだけど・・・・


夕焼けがやけに紅くて・・・・だからかな?
すっごく寂しい気持ちになった。

坂の上に鳥達の群れ。
もうそろそろ陽も沈む・・・・


「会たいよぉ・・・・・・」


だけどシカマルはきっと今だって平然と任務をこなしてるんだ。
寂しくてたまらないのはきっと私だけなんだ。

だって・・・シカマルから会いに来てくれる事なんて、絶対に無いもん。



「シカマルのバカ・・・・」



呟いた小さな声・・・私のため息は夕方の冷えた風にたなびいて白くなった。












「誰がバカだって?」


ふいに背後から声をかけられた・・・


「え?」


振り返ったら、中忍服をボロボロにしたシカマル。


「お前よっ 久しぶりに顔見れたと思ったら、いきなりバカとか言うか・・・」


「シカマル!」



私はとっさにギュッとシカマルに抱きついた。
だって、ずっと我慢してたんだよ!!会いたくて会いたくて仕方なかったんだもんっ!!





「バカ・・・汚れるぞ・・・・」

「いいの・・・・」



久しぶりに嗅いだシカマルの匂い。
任務後のシカマルは、汗と泥にまみれていたけど、ちゃんとシカマルの匂いだけは分かるんだから。


(あぁやっぱり変わってない。私が安心できる場所は、シカマルの腕の中だけだよ。)



「元気・・・だったか?」


シカマルの穏やかな声。


「うん////シカマルは?」


「あぁ・・・この通りな」


「良かった//////」



私はさっきよりもっと強くシカマルの胸にしがみつく。




「誰かに見られても知らねぇぞ・・・」


「いいもん////」



シカマルはそっと私の背中に腕をまわして、抱きしめてくれた。








夕暮れの土手は遠くにまばらに人が歩いているだけで、他には誰も来なくて・・・
風だけがサラサラと吹いていた。




(会えない日々が続いていたから、なんだか夢みたい・・・)




「ずっとこうしてたい・・・・・」

「バカ言ってんな・・・」



シカマルはそう言って少し笑った。



けど・・・やっぱり寂しい。
生まれてから今まで、こんなにシカマルと会わない期間なんて無かった。
気がつけばいつも隣にいてくれたはずのシカマルがいない今が信じられないんだよ。




だからかな。
久しぶりのシカマルの感触。
私を包み込む硬い胸の感触と、背中にまわされた力強い腕。

私はシカマルの腕の中で ドキドキ していた。




(・・・シカマルも私みたいに、ちょっとはこの偶然の再会にドキドキしてくれてるのかな?)







なのに・・・








「変わってなくて安心したぜ・・・」


シカマルは私の頭の上で くすり と笑う。


「何?」







「ん?抱き心地?」









(・・・・・・へ?・・・・・・)








感動的な再会を一人イメージしていた自分がバカみたい/////顔がカッと赤くなった。




「何それ!!シカマルのバカ!!ヤラシイぃぃ//////」



とっさに上のシカマルを見上げる。



「ちげぇよ!!俺のいねぇ間に、菓子とか、たらふく食って太ってんじゃねぇかって
 心配してやったんだっつうの!!」



「な、何よそれーーっ!!」


(感動もなんもないそのセリフ!!)

私は思わず子供みたいにふくれっつらをした。





「くく・・・・その反応も変わってねぇ・・・・」



シカマルは私の頬をピンッとはじいて、笑いをこらえていた。





「シカマルだって、相変わらず不愛想なとこ、全然成長してないねっ!!」

「うるせぇよ」




ぷっ

あははは



それはいつもの二人の会話で・・・・
お互いこんなに長い時間離れていたのに、シカマルといると、すぐに時間が縮まってしまうことが不思議で、
そして、それがとても嬉しかった/////



なんでだろ?
シカマルにはムードとか、感動とか、そういうの無いのかな?



でも、どうしてなんだろう?



私はやっぱりそんなシカマルが大好きなの。











「ところで、お前は?任務ちゃんとこなしてんのかよ?」



シカマルはそんな私を逆にくすりと笑って見下ろした。


「もちろんよ。」

「またドジでもやって、メンバーに迷惑かけてんじゃねぇのか?」


ニシシ と意地悪に笑う。


「そんなことっ」


「おおあり!だろ?」


ムギュッと鼻をつままれた。


「痛いっ 何よぉもぉぉぉっ!さっきから、私のことバカにしてぇぇぇぇ!!!」



シカマルは あははは と笑った。



シカマルにつままれた鼻はきっと真っ赤になったはず。
少し冷えてきた風にさらされてジンジンした。



「もう!鼻痛いよっ シカマルのバカーーー!!」



私は子供みたいに両手を夕焼け空につきあげて、叫んだ。



「お前、鼻高くなってるぜ? かわいくなったんじゃねぇの?俺に感謝しろよっ!」



くくくっ


シカマルは笑った。





なんで?シカマルはさっきから意地悪ばっかり!!
私ばっかりこんなにドキドキしてる。


しかも、私をからかうシカマルはなんだか嬉しそうで・・・





「どうせ普段は鼻ぺったんこだもんっ ふーーんだッ」




ぷいっ と顔を反らす。



(いじけたり、怒ったり、私って本当かわいくない。)



けど、こんなに私をからかってばっかりいるシカマルのせいだよ!!



シカマルは、ようやく私に会えても、そんなに嬉しくないの?
ドキドキしないの?



(そんな時、私は時々ふと思っちゃうの。)



二人、付き合っているといったって、お互いがお互いを想う気持ちの重さは違う。
シカマルが私を思う気持ちは、私とは違うのかな?



私ばっかりこんなにシカマルを好きだって分かったら、シカマルはめんどくさいかな?
そしたら、私を重荷に感じちゃうかな?




---------会えない今が、余計に私を不安にさせる-----------










そしたら、シカマルがガッチリと私の腕を掴んだ。




「え?」




見あげたら、シカマルの顔は夕日を背に影になってて良く見えなくて・・・・



「悪ぃ。・・・ようやく会えたっつうのに・・・お前喜ばせてやれなくてよっ」


「シカマル?/////」




(シカマルがそんな事言ってくれるなんて・・・それに、私、本当はシカマルに会えただけで
 嬉しいよ?)



「さっきの冗談・・・・マジ、俺だって、お前に会えて嬉しいんだぜ?」



シカマルの顔が近づいてきて・・・



・・・」



鼻先がくっつくくらいの距離で、シカマルはいつもの鼻にかかった低い声で私の名前をささやいた。



(きゃーーっ////なになに?人は遠くにしか見えないとはいえ、こんな土手の真ん中で
 キスするつもりなの?? 恥ずかしいぃぃっ  で、でも・・・久しぶりだし・・・・////)



「シ、シカマル//////」



私は ギュッ と目を閉じた。


















「なーーーーんてな」



「へっ?」




ゴツンッ




「いったっ////」


シカマルにオデコをぶつけられた。


「するかよ・・・バーカ。こんな道の真ん中でよっ/////もしかして、今お前期待したろ?」


シカマルはニシシと笑う。


「するわけないでしょ//////バカ!!」


私はぶつけられたオデコを両手でさすりながら答えた。


(でも、本当はすごく期待しちゃったよっ//////)


まだドキドキしてる。


でも、どこまでが冗談なんだろ?
もしかして、偶然会えたのを喜んでくれてたのも、冗談なのかな?

シカマルの真意は、いつもあやふやにされちゃうから、よく分からないよっ






「さぁて。・・・腹減ったし、そろそろ帰ろうぜ」



シカマルは私の気持ちに気づかないまま、夕焼けの空にむかって大きく伸びをして、
いつも通りめんどくさそうに私を手招きした。


「うん」


(そっか、今日は2人で、家まで一緒に帰れるんだ。)



トット と小走りでシカマルに近づくと、シカマルの長い手が伸びてきて、
あたたかい手は私の手をギュッとつかんだ。



「めんどくせぇけど、ちったぁ彼女を喜ばせとかねぇとな?」

「・・う、うん//////」

(シカマルから彼女とか言われた///////)



本当それだけで、今はなんだか胸がいっぱい。







ゆっくりと土手を歩く。
赤から紫にうっすらと変わりゆく空。


すごく静か・・・




「ねぇシカマル・・・今度はいつ会えるの?」


二人つないだ手を軽く揺すりながら、私は何気なく聞いてみた。


「あぁ・・・今はまだ無理。親父が柄にもなく修行に付き合うなんて言い出しやがってよ」


シカマルはまっすぐに前を向いたまま、静かにそう言った。




「そう・・・・」




(また・・・・私達会えない日々が続くんだね・・・・)




うつむいたら、シカマルと私の影が長く伸びて、寄り添いながら先を行く。




(あぁ・・・今日が終わったら、任務帰りの私の影の隣には、もうシカマルの影は無い・・・
 また一人ぼっちだ。)



胸がギュッとした。




「親父のやつ、新しい忍術教えるとかって、はりきってやがってよ。あーー、本当めんどくせーよ・・・」



繋いだ反対の手で頭をかきながらシカマルは はぁ とため息をつく。




だけど分かるの。
それは私への気遣いだって・・・




だって、シカマルの目は前よりずっと男らしくなって、体も頼もしくなった。
私と会っていない時間。
シカマルはまた忍びとして成長してるんだろう・・・・



それは、シカマルが一番望んでいたことだから。



たぶん、あのサスケの任務から帰ってきて何かが変わった。
木の葉の忍びとして肉体的にも精神的にも成長していくことは、これからのシカマルにとって
大事なことだって・・・私だって、そう思ってるから・・・今まで会えない日々もずっと我慢してきた。




だけど・・・分かってるのに・・・またシカマルと会えない日々が続くかと想うと、
胸が苦しくて、寂しくて仕方なかった。




「シカマル・・私、・・・・」




今までだって、シカマルの重荷になりたくなくて、ずっと我慢してきた言葉。
でも・・・もう限界。



私はその場に立ち止る。



「どうした?・・・?」


心配そうに顔を覗きこまれたら、もう我慢できなくなった。



「こんな風に偶然に会えるだけなんてもう嫌っ 寂しいよシカマル。もっと会いたい!
  私、シカマルの側にいたいよっ!!」



・・・」



もうこんなに会えない日々を過ごすのなんて嫌だよっ
さっきみたいに、私をバカにしてもいいから、隣でいつも笑っていてよっ
こうやっていつもそばにいて!!



「シカマル。私、いつまで待てばいいの?」


「・・・・・」



シカマルが何も言ってくれないのは困ってるからだって分かってるのに、それが余計に切なくて、
つないだ手を離さないまま、私はシカマルの腕に顔を押し付けた。




「絶対、修行の邪魔しないから!私も一緒に頑張るから!!だから・・
 私が側にいちゃダメかな?ダメなの?」




涙を押し殺した私の声。




今までだったら・・・

きっと私が泣いたら、シカマルはいつだって、「めんどくせぇな」とか言いながらも、
許してくれた。
いつだって、私の願いをかなえるように努力してくれた・・・・


だから・・・


私はそんなシカマルの性格を知っていて、本当は甘えていたのかもしれない・・・・
シカマルならきっと私の為になんとかしてくれるって・・・




でも





「・・・・ごめんな・・・・」





シカマルはそれだけ言うと、無言になった。





(そうか・・・今回ばかりは無理なんだね。私がどんなに泣いても、すがっても・・・
 シカマルは忍びとして成長することを選んだんだね・・・)






そう・・・それは正しいよ。





私がいたら、シカマルはきっと心のどこかで私を心配する。気にかける。
そしたら修行に集中できないもんね。
そんなの・・・分かってるのに・・・・




私の隣で、言葉に詰まったシカマルに苦しくなる。



今がどれだけシカマルにとって大事かって分かっているのに・・・
シカマルを困らせてばかりの自分がすごく惨めだった・・・




私って、本当駄目な彼女だね・・・・




「・・私こそ・・・ごめんね・・・・」




自分だけが、心も忍びとしても、全然成長できないままな気がして、情けなかった。





だけど、シカマルは本当にやさしいね-----------------





シカマルの手は、落ち込んで下を向いたままの私の髪をゆるりと撫でる。



「離れてたって・・・俺は、いつもお前のこと思ってるぜ。・・・」


それはきっとシカマルが私の為に言ってくれた精一杯の言葉だ。



「・・・うん」



たとえそれが慰めだって構わない。

それでも、シカマルが私の為に言ってくれた言葉だから、私の心臓はこんなにもうるさいんだ。




あぁ胸が苦しい・・・私は泣きたいぐらいシカマルが好き・・・・















夕日が沈んで夜空には星が散らばりはじめた。


二人繋いだ手。
それでも、それっきりシカマルは私に何も言わなかったし、私も続く言葉が見つからなくて、
無言で歩き続けた。


もうすぐ家に着いちゃう・・・



(シカマルは・・・今、何を思ってるの?)



本当はもう少しだけでも、こうして2人で歩いていたい・・・・・
だけどもう・・・そんな我がままを言うのも怖いな・・・




無言のまま私達は家の前に着いてしまった。




お互いに離せずにいる手。




でも、そんな時、





・・・明日・・・お前任務は?」


シカマルが唐突にそう言った。



「え?」


とっさに頭が回転する。
確か、明日は上忍に渡された任務遂行表にはお休みの×印がついていたはず。



「う・・・うん。お休み・・・・だよ?・・・」


「そうか・・・」

「な、なに?」


少しためらいがちに、頬をかきながら、シカマルは言った。


「明日は親父が朝から任務でよ。っつても昼過ぎには帰ってくるらしいから、その後は修行
 するとか言ってんだけどよ・・・・」

「・・う、うん」






「それまで・・・2人でいねぇ?」


シカマルがちらりと私を見て、目があった・・・・



思わぬ言葉・・・シカマルも・・・本当は少しでも私に会いたいって思ってくれてたのかな?
そう感じただけで、私の心は一瞬で舞い上がった。



「うん/////いる!いる!一緒にいたい!!」


今まで泣いて落ち込んでいたくせに、本当げんきんだって自分でも思うけど、
私は家の前で子供のように興奮していた。



「そっか//////んじゃまぁ・・・そうすっか。」


「やったーーー!!」


「子供かお前は・・・・」



シカマルには へっ って鼻で笑われたけど、それでも嬉しくて、私はキャっキャと
はしゃいだ。





(本当にいいの?明日もシカマルに会えるの?)




たとえ少しの間だけでもいい!!
シカマルと一緒にいたい!!


「お前、はしゃぎすぎ////そんなに俺と会えんのが嬉しいのかよ?//」


「うん!!超嬉しい!!///////」


えへへ 


「ばーか/////」


私は 明日会える約束が出来たから、ようやくシカマルと笑顔で さよなら できるかなって、
思ってて・・・


玄関の扉に近づこうとした。






でも、








浮かれてる私を呼ぶ声



「なぁに?」



何も考えずに、くるりと振り返った瞬間、シカマルは私をグッと引き寄せた。

突然ひっぱられて、私はよろけてシカマルの胸に抱きつく。



「え?・・・シ、シカマル??・・・・//////」


「ったく・・・あんな嬉しそうな顔されたら・・・やべぇっつうのっ」


「な、なに?/////」


「お前にあんまし触れたら、俺、離したくなくなっちまうんだよっ ・・・修行とかもう
 どうでも良くなっちまったら、さすがにヤベーだろ?」


「う、うん/////」

シカマルが言う意味がよくわかんなくて・・・


「だから・・・あんまお前と真剣な会話とか避けてたのによ・・・」



(それって、さっきから私をからかってばっかりだったこと?)



「お前がこんな傍にいたら、かわいくて・・・やっぱ、我慢できねぇよ・・・」



シカマルは真剣な顔で私を腰から引き寄せた。



「あ///////」


下半身から密着する体。



(そ、そっか//////もしかして・・・このまま・・・・)


シカマルからまさかそんな事・・・思ってもなくて////


「嫌かよ?」


シカマルは、少し怪訝そうに私の顔を見下ろす。



「ううん////嫌じゃないよ/////」




そうか・・・・キスしてくれるんだ・・・・・



ずっと会えなかったから、キスするのもすごく久しぶりで、心臓バクバク。
おかしいよね。だって、今までだって、何回もしてたのにね。







抱きしめられて、大きなシカマルの右手が私の左の頬をゆっくりとなぞって、
いつものように顎を持ち上げられた・・・



シカマルの吐息が近づくと、触れる前でも唇の感触が思い出されて、余計にドキドキする。




「お前緊張してる?」

「だ、だってぇ・・・」



体が硬直して、心臓が壊れそうだよ。

今までだって何度もしてるのに、まるで初めてするみたいに緊張してる自分が
恥ずかしかった。


(また、「バーカ」なんて笑われたらどうしようっ)





でも--------------------




「お、俺もしてる・・・」

「え?」




見たら、シカマルも緊張して耳まで真っ赤になっていた。



「変なの!」

私は思わず、くすくす笑った。




(いつも冷静なシカマルなのに・・・////)





「うるせー。久々だからしょうがねぇだろ?」

「だってシカマルってば・・・男の子のくせにぃ・・・」

(いつもと逆に、私から、ちょっとからかってやろうと思ったんだけど・・・・)






「もう黙れよ」





シカマルに唇をなぞられたら、魔法にかけられたみたいに、私はそっと目を閉じる。












それから、緊張していたのが嘘みたいに、私達は数え切れないほど、いっぱいキスをした。
今まで、こんなにしたことないよね?



唇が離れても、シカマルは私の返事も待たずにまた唇を重ねてくる。




「く、苦しいよシカマル」

「まだ、足んねぇよ」



シカマルが求めて絡める舌は、言葉以上に私を好きだと言ってくれている気がして、たまらなく
愛しくて、私はシカマルの背中をギュッと掴んだ。


(ねぇ・・・シカマルも私みたいに、私のことを深く愛してくれてる?
  思ってくれてるの?)



その答えを このキスがすべて教えてくれた気がして、心の底から温まっていく気持ちがした。






----------やっぱりシカマルと私はずっとずっと愛し合っていけるよね。-------------












次の日、私はいつもの土手に座って、シカマルを待っていた。

久しぶりのデート。


青空からのぞく太陽の光がまぶしいくらいの快晴だった。






「気持ちいいなー・・・・」


ゆっくりと目を閉じると、目の前の川の流れる音が穏やかに耳に響いた。





(シカマルは青い空を見上げてるのが好きだから・・・今日はデートにはもってこいの日だなぁ)



ぼんやりとそんな事を思いながら、これから来るシカマルの眠たそうな顔や、めんどくさそうな歩き方を想像して、
なんだか笑えた。





「何アホ顔して笑ってんだ?」



くくく と笑う声。



「あ。シカマル・・・もうっ 遅いよーーー!!」


座ったまま見上げると、


「あんまりあったけぇから、歩くのめんどくさくなっちまった・・・悪ぃ」


シカマルは大して悪びれた様子もなく、私の隣にドカリと座る。



「もーーっ何それっ」


「へっ 文句ならこのピーカンの天気に言ってくれ」


シカマルは ふあぁ とあくびをした。



「まったくぅぅ」



そう答えたけど・・・ちらりと見たシカマルの横顔。




結われた髪の先が風になびいて、耳元に光るピアスがキラキラしていた。
・・・やっぱりシカマルはかっこいいんだよねぇ・・・・




本人には全く自覚は無いんだろうけど・・・。




「なんだよ?あんまじろじろ見んなっつうの。」

シカマルは けっ と不機嫌な顔をする。


「なんで?だってデートなんて久しぶりだから・・・」

「落ちつかねぇんだよ・・・バカ」


ふんっ と顔をそらされた。




(そっか・・・シカマルってば、また照れてるんだ/////)




こうして離れてる時間が長いと、お互いに妙に意識しちゃうよね。
前なら、こんな事でお互いにギクシャクなんて絶対に無かったのに・・・

そんな風に目の前で照れられたら、私までまた真っ赤になっちゃうよ。




でも・・・今はね。ちょっとの時間でももったいないの。
だって、シカマルと一緒にいられる時間はほんの少しだけ。



せっかくのデート。
ラブラブしたいよね////////




「シカマル・・・ねぇ。誰もいないから、腕にくっついていい?」


勇気を出して言ってみた。



「は?」


シカマルってば、ものすごく愕いた顔してるっ



「ねぇ、いい?」


シカマルのベストの裾をクイクイとひっぱってみた。








「・・・・・・お前よ・・・・相変わらず、ツボつくね」


シカマルははぁとため息をついた。




「え?なに?」

「朝っぱらからそういう顔・・・・すんなってっ」


「なにが?」


そういう顔ってどういう顔?
私、そんな変な顔したかなぁ?


一人頭をめぐらせていると・・・・・



「あーーーぁ。こんなとこでデートするんじゃなかったぜ。めんどくせぇ・・・どうせなら俺の部屋で
 会うべきだったよな・・・あぁ・・・マジもったいねぇ」


シカマルはもっと深くため息をついた。


「どうして?」


土手じゃつまんないのかな?
私はオロオロしてしまった。


「ばーか。部屋なら誰の目も心配せずに、できんじゃねぇか」

「????」







「昨日の続き・・・してぇんだけど・・・」


シカマルの指先がチョコンと私の唇に触れた。


(き、昨日って・・・あの激しいキスの・・・・)


頭の中に昨日の別れ際のキスの感触がよみがえってきて、私は真っ赤になった。



「あーーぁ。 許してくれんなら、このままお前の全部もらっちまうのによぉ」


ニシシ とシカマルは笑ったけど、心臓が壊れそう!!!


だって、別れ際のキスは夜だったし、人もいなくてありだけど、こんな明るい時間からしたことないし、
私の全部って・・・/////



「シ、シカマルのバカ//////」


だって/////そういうの無しだよっ
苦手なの知ってるくせにっ/////



「んだよ?さっきの顔は俺を誘ってたんじゃねぇのか?てっきりヤらせてくれんのかと・・・」

「バカーーッ//////」


ポカポカと殴ったら、シカマルは くくく と笑っていた。


「冗談冗談っ マジ痛てぇってっ 」


シカマルは笑ってたけど、とっさにグッと腕を捕まれる。






「大事にとっとけよ。俺がもらう日までな」




ずるいよっ
いつも半分寝ぼけたような顔してるくせに、急に真面目な顔をして、
シカマルが本気で私を欲しいって分かるから・・・


だからすごく緊張しちゃう。


べつにもったいつけてる訳じゃないけど・・・
シカマルが嫌いな訳でももちろん無いけど・・・
ただちょっと勇気が無いだけなの。


本当は私だってもっとシカマルと近づきたいの・・・・・
離れているぶん、ちゃんと私をずっと想っていて欲しいから・・・


だから、本当はシカマルのものになってもいいかなって・・・私そう思ってるんだよ。


「シ、シカマル・・・・」

「ん?」

「私、----------------」





(部屋に行ってもいいよ・・・なんて言おうとしてたのに・・・)










「シカマル!」










「へ?」







それは、私にはあまり聞き覚えの無い女の人の声で・・・・

二人で声の方へと振り返ると、後ろにテマリが立っていた。





「え?」

とっさの彼女の出現に、私はさっきのシカマルとの会話を聞かれてしまったのかと、恥ずかしくて
焦った。

でも、シカマルは相変わらずの口調で




「あ?テマリ・・・何の用だ?」


座ってふりむいたまま、ぶっきらぼうに返事をした。





「呼び出しだ・・・・」




テマリも、冷静に答える。


その態度から、さっきの会話を聞かれていなかったみたいで、私がホッとしていると・・・。




「誰からだよ?」


シカマルは眉間にシワを寄せる。


「・・・・・・・」


テマリは無言のまま、私をちらりと見た。






きっと、極秘の任務なんだ・・・・





とっさにそう直感した。

極秘任務は、たとえ同じ忍びであっても、命を受けた者でしか、内容を知ることは許されない。



けど、どうして、シカマルを呼びに来たのがテマリなんだろう?



まさか、同盟を結んだとしても、サスケ奪還の時のように、里が緊急事態になった時の助っ人として、
お互いのチームが向かう事はあったとしても、木の葉の忍びと砂の忍びが手を組んでチームを作るなんて
聞いたことないし・・・




私はシカマルの隣に立つテマリをじっと見つめていた。



「・・・・・・」



シカマルは無言で立ち上がって、テマリの腕をひいた。



私から距離をとって、任務の話しをするんだろう・・・・・





それは忍びとして当たり前の行動だけど、テマリとシカマルだけが知っている極秘の話しがあることが、
私にはたまらなく気になった。



冷静で大人びたシカマルと、年上の落ち着きをもったテマリ。



何より、二人のツーショットがとても似合っているような気がして・・・・






(そんなことを思うなんて・・・私、どうかしてるよね・・・)




二人の背中を見ながら、私は妙な胸騒ぎを押さえようとしていた。












しばらくして、テマリを残してシカマルが私の傍に戻って来た。





・・・悪いな・・・・今日は・・・無理そうだ」


「・・・そう」



テマリが来てからの二人の態度で、なんとなく普通じゃないって
分かったけど。

やっと会えた時間が無くなってしまうのは本当に悲しかった。




「この埋め合わせは・・・今度・・な・・・」

「うん」



言葉を詰まらせたシカマル。




今度・・・


今度っていつ?


どうせまた、修行だ、任務だって・・・あえない日々が続くんでしょ?





(でも・・・・・そんな事・・・・・いえる訳ないよ・・・・・)





「じゃぁな」

「うん・・・頑張ってね」



手を振って、笑ってみたけど、本当は泣きたかった。



テマリと肩を並べて、私から遠ざかっていくシカマルを見るのが辛かった。



(どうしてシカマルの隣にいるのは私じゃなくて、テマリなの?)





シカマルの隣には、いつも私がいたはずなのに・・・・・・





どうしても、私の心にひっかかってしまうテマリという存在。




あの日、サスケ奪還から帰って来たシカマルとテマリの妙に親しげな姿を今でもはっきりと覚えている。
あの時のテマリの存在を私はまだ消せずにいる。






時より会話を交わしながら、前よりずっと親しげに距離を縮めて歩く二人の後ろ姿。






(シカマル・・・テマリと親しくしないで・・・私だけを見ててよっ)





胸が苦しいよ。

どうしても、そんな我がままな気持ちを、私はどうしようもなく抑えられなかった。




















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