相変わらず、シカマルと女の人は話しに夢中だ。

「まだ木の葉の町のことも良く分からないの、今度は町の案内も頼みたいわ」

女の人がシカマルに気づかれない程度にチラリと目だけ、私に向けた。
細められた瞳はまるで私をバカにするように、かすかに笑っていた。

「だからぁ、俺がそういう役が苦手だってあんたも分かってんだろ?俺なんかより、
 もっとうまく案内役してくれるやつ、他にゴロゴロしてるっつうの・・・
 俺は女に気をきかせられるほど出来た男じゃねーからな」

「そうそう・・・・」
私は思わず後ろから、うんうんなんて頷きながら、声を出してしまった。

「お前に言われたかねーよっ」

シカマルは眉間にシワを寄せながら、私を振り返った。


(違う、違う!そういう意味じゃなくてぇ・・・他の人と行けばいいって話しよぉ!)


私の心の声に気づかないシカマルに、でこピンされた・・・



「あら、奈良君の説明は的確で無駄なところがなくて、私は一緒にいて楽しいわ」


またくすりと笑う彼女。



ムキーーーーッ!!
なんなのよぉぉ!もうっこの女! 
絶対に負けられないっ!
これは女の戦いよぉぉぉ!

私はシカマルにはじかれて赤くなったおでこをさすりながら、彼女をにらんだ。


「冗談だろ? 案内役は、悪ぃがこれ以上は断る。こんな役、めんどくせー」


(良かったぁ・・・さすがシカマル!)

私がホッとため息をつくと、彼女がジロリと私をにらんだ・・・っていうか、睨んだ
ように見えた? ううん。 一瞬、私の背筋がゾッとしたもの、絶対、悪意のある目で見た
んだよ・・・




これではっきりしたわ!彼女はシカマルが好きなんだ!!





彼女はすばやくシカマルに視線を戻すと、優しく微笑んで言った。



「奈良君らしいわね・・・そういうところも素敵だわ」


さらっと言ってのける彼女の言葉・・・
私はドキリとした。

シカマルもちょっと驚いた顔で彼女の顔を見ていた。

でも、なんか頬が赤い・・・

何テレてんのよ!バカッ!



「痛てぇーーーーーーーーーーーーーっ」



シカマルが叫んだ。
だって、私が思いっきり、足を踏みつけてやったんだもんっ!!

!てめー何すんだよっ」

シカマルは相当痛かったのか、涙目で私を睨んでいる。
何よ!鼻の下のばしちゃってさ!シカマルが悪いんだからねっ!!

「だって!暗くてよく見えなかったんだもんっ」

「だってじゃねーよ。バカッ!目の前に立ってるやつの足ぐらい気づけっつうの!」

痛てぇなー とか、ぶつぶつ言いながら、足をひきづってる。

(わざと踏んだんだよ。シカマルのバカ。そっちこそ、私の気持ちに気づけっていうの!)

「ったく。どこまでドジなんだよ お前は! あーー痛てぇ 血ぃでた。」

また大げさなことを!ちょっと踏んだぐらいで血がでるわけない・・・??
あっ そうか・・・私、今夜は浴衣に下駄だったんだ・・・ 

「シ、シカマル!ごめんね・・・」

急に心配になってしまった。
私がおどおどした姿を見たら、シカマルは くっ と笑った。

「冗談だよ。こんぐらい平気だ。バーカッ」

優しく頭をコツンと叩かれた。

嘘ばっかり、本当は痛いくせに・・・

なんだか自分の子供じみた行動がすごく惨めで、シカマルに悪くて、でも、こんなに
優しくしてくれるシカマルに安心して、私は真っ赤になってしまった。



「大丈夫?傷になってるわよ・・・・」



そんな時、私達を見ていた彼女がゆっくりとシカマルの足の前にかがんで、
シカマルの足に真っ白なハンカチをあてた。

「え? おいっ いいって。 汚れるから 」

シカマルも私もすごく驚いて、その光景を見つめた。

「そんなの気にしないで」

見上げた彼女の柔らかい笑顔。

私には出来ない、しなやかな大人の行動。

すごくすごく胸が痛んだ。




「悪ぃ・・・その・・・これは洗って返すから・・・」

シカマルの足に器用に巻かれたハンカチ。
シカマルは彼女の顔を申し訳なさそうに見ていた。
頭をがりがりかいて、照れた顔・・・そんな顔・・・私にはしてくれたこと無いよね・・・


私の胸はまたズキンと痛んだ。


「いいのよ。」

彼女の綺麗な笑顔。



私には到底かなわない・・・・・・・








それからは、またなんとなく2人のムード。
私は2人の背中を見ながら、1歩後ろを歩いてついていった。



さっきから、彼女はあちこちの屋台を指さし、シカマルに説明を頼んだ。
それって、なんだかシカマルに私と話しをさせないようにしているみたい・・・
本当にムカツクッ!!


「わぁ 綺麗ね」

彼女は灯篭の光を見てつぶやいた。

「あーーーそうだな・・・」

シカマルもまんざらでもなさそうに、優しく笑った。


何よ・・・2人して大人なムードだしちゃってさっ
私だって、いるのよぉぉ!!

後ろで一人、ジタバタとしている私。
なんだか、私だけが子供みたい・・・・・・
そう思えば思うほど、なんだか自分が惨めになってくるよ・・・


(でも・・・確かに綺麗。)


灯篭か・・・私もその柔らかい輝きと、くるくる回る絵にみとれた・・・
なんだかボーーッと見てしまった。


次の瞬間、



「もっと近くで見たいわ」


彼女の手がシカマルの腕に組まれた。

それを見た私の心臓はどきりとして、なんだかそのままシカマルが彼女に連れていかれちゃう
気がして、私はとっさに叫んでしまった。



「ねぇ シカマル!」


「あ?」

シカマルと彼女が私を振り返る。


「あっと・・・えっと・・・・」

別に用事があったわけじゃないし、とにかくシカマルを彼女と行かせたくなかっただけで・・・


「なんだよ?」

とっさに私の目に、ある屋台が入ってきた。


「シカマル!私あれ食べたい。買って!」


私はとりあえず、別に食べたくもなかったけど、その屋台を指差して叫んだ。


「あら、あんず飴?かわいいわね。」

くすりと笑う彼女。

「ガキなだけだろ? ったく。」

シカマルは仕方ねーな って顔で私の方に歩いて来た。
彼女がシカマルに組んだ腕は、するりと解かれた。
ガキって言葉にはかなりムッときたけど、私は内心すごくホッとした。

「ほら・・・お前が好きなの選べよ」

「うん。じゃーあれ。あれください。」

恥ずかしくなって、小声でおじさんに言う。

「親父、それ1個な」

シカマルはぶっきらぼうにお金を差し出す。

「お?かわいい彼女じゃねーか。兄ちゃん幸せ者だな」

屋台のおじさんはニシシと笑って私を見た。
私の顔は急激に真っ赤になる。

「無駄なことはいいから、早くくれよ」

そういうシカマルも真っ赤。

あいよ と屋台のおじさんは笑って、シカマルに飴を手渡した。





「ほ、ほらよ////」

「あっ うん。ありがとうシカマル/////」

小さな私と、背の高いシカマル。
それがとってもコンプレックスに感じることもあった。
でも良かった。私達もちゃんと恋人同士に見えるんだ・・・・
そう思ったら、なんだかすごく恥ずかしくなった。

飴をペロッとなめたら、私をじっと見るシカマルと目が合った。


「な、なに?////」

「なんでもねーよ///」

プイッと顔をそらされた。
でも、そんなシカマルの顔がなんだか赤くて、こっちまでまた照れてしまった。






「お2人さん。こっちよ」

灯篭屋の前で私達を手招きする彼女。



灯篭の薄い光が彼女をぼんやりと照らして、とても妖艶で美しかった。


道行く男の人達が

『綺麗だなー』
『いい女だな』

なんてつぶやいているのが聞こえた。



なんだか彼女の近くに寄るのが嫌だなー・・・
私はため息をついた。

「あぁ 今行く・・・」

シカマルは私の横を通りすぎて、彼女の方へとゆっくりと歩いていった。


「待ってよぉ シカマル」

私もあわてて小走りで2人のもとへと急いだ。




屋台の前にかがんで、彼女はしきりに灯篭を見つめている。

その横で、シカマルも無言で灯篭を見つめている。

私は隣にならぶのが嫌で後ろに立ってあんず飴を食べながら、そんな2人の様子を
伺っていた。


「綺麗なお姉さん、これなんかどうだい?」

灯篭屋の屋台のおじさんが彼女にひとつ差し出した。

「ありがとう。でもいらないわ。見てるだけでいいの」

彼女はとても美しい顔で微笑んだ。

「そうかい。そうだな、あんたはこの灯篭より綺麗だもんな。必要ねーか」

灯篭屋のおじさんも彼女に見とれているみたい。



ふーーーーーーーんだっ


すると・・・

「へぇ。 あんたの彼は忍びか?そのベストは中忍だな。似合いだね」


(何?この親父!シカマルの彼女は私よ!私!!)
後ろに立っていた私は言葉に出来ずにあたふたとしていた。


「いや、俺は・・・・」

シカマルが否定しようとした言葉をさえぎって、彼女は言った。

「えぇ・・・そうなの。ありがとうまた来るわ」

「お、おいっ///」

彼女は驚いた顔をしたシカマルの腕をひいた。

まんまとそのまま腕を組んで、彼女はシカマルを屋台の外へと連れ出した。
私は唖然とその光景を見ていた。

一瞬ボーーーーッとしてしまったけど、あわてて私も後を追う。





「あのなー あんた悪い冗談やめてくれよっ」

シカマルは少し怒った顔で彼女を見た。

「大丈夫。もう2度と会うような人じゃないじゃない?それに、私があなたの担当上忍で彼は
 その部下なんですなんて、いちいち説明するなんて、めんどーでしょ?」

彼女はくすくすと笑った。

「まーーーそうだけどよ・・・でも・・・やめてくれ・・そういうの・・・」

シカマルは頭をガリガリとかいて、また顔を赤くした。









すごくシカマルを遠くに感じた。
ひどいよ・・・シカマル。
どうして許しちゃうの・・・もっと怒ってよ・・・
俺の彼女はだ!って彼女に言ってよ・・・・

そんなことシカマルが言うはずないって分かってるけど、彼女がシカマルを好きだ
って分かってるから・・・だからすごく胸が苦しいの。


すごく悔しくて、悲しくて、泣きたくなっちゃったよ。









私がぼーーーっと突っ立っているのに気づいたシカマルが、

ゆっくりとこっちに向かって歩いてくる。

。お前もどっか行きたい店あったら言えよ・・・」

私のそばに来て優しい声でそう言った。

「う、うん。・・・・」

私もシカマルともっとたくさん話しがしたい。
もっと側にいたいよ。
もっと構ってもらいたいんだよ。

「シカマルー・・・・」

私はとっさにシカマルの右手をギュッと握った。

・・・どうしたんだよ?」

彼女の前で手を握ったから?・・・
シカマルは少し驚いた顔をしている。

「だって・・・甘えたいんだもん・・・」

「バーカ////」

うつむいた私にシカマルはため息まじりに言う。

「ったく。しょうがねーやつ・・・」


呆れられたのかと思って顔をあげたら、
シカマルのもう片方の大きな手が伸びてきて、優しく頭をなでられた。

「あんま人前で甘えんなよ。恥ずかしいっつうの・・・///」

繋いだ手は解かれちゃったけど、でも手が離れる瞬間に ギュッと力を
込めてくれたのが分かった。


「うん・・・ごめんね。」



私・・・やっぱりシカマルが好き。大好き!!
誰にも渡したくないっ

こんな女に取られるなんて、絶対いやだもんっ
私、諦めないからね!!

たとえ、どんなに綺麗な人でも、どんなに大人で、女として絶対かなわないと分かってても、
シカマルだけは絶対渡さないから!!


顔をあげたら、少し離れたところに立っていた彼女と目が合った。



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