私は目が合ったその瞬間に彼女も負けないって顔をしたのが分かった。


なによ!そんな顔してもダメなんだからね!
絶対シカマルは渡さないから!!



それからは一生懸命話しに参加したり、私から話題をふってみたりした。



でも、やっぱり同じ隊で同じ任務についている2人の話しになかなかついていけず、
私もいいかげん疲れてきた。
背の高い2人と、小さい私じゃ歩幅も違うのよぉぉ。

私がはぁはぁしてきているのに、2人は相変わらず平気な顔で歩いている。


シカマルが苦しそうな私に気づいてくれた。

・・どした?お前、具合悪いのかよ?」

「ち、違うよぉ・・・浴衣だから帯がきつくて苦しくて、疲れたのーーー!!」

「は? ったくよぉ。 お前、修行がたりねーんじゃねーのか?」

シカマルは意地悪な顔でフンと笑った。

「だってぇ・・・」

「しょうがねーやつ。仕方ねー、めんどくせーがあそこの裏辺りでちょっと休むか?」

「うん。」

シカマルと私と彼女は、大通りと少し外れた、人通りの少ない場所にむかった。

「あーーー疲れたよぉ」

私がため息をつくと、

「ったく。これだから子供が一緒だと世話かかってしょうがねーんだよ。めんどくせーな」

シカマルは意地悪く言う。

隣で彼女がまた、くすりと笑う。


「子供じゃないよっ」

私は少しムクレた。
だって彼女の前でそんなこと言ってほしくないよ。

「はいはい・・冗談だって・・・怒んなよっ」

シカマルは私の頭をこづいた。

「私も疲れたわ、奈良君。悪いけどジュース買ってきてくれない?」

彼女から予想外の言葉。

「あんたもかよ?ったく めんどくせーな。ちょっと待ってろよ」


シカマルは早足でジュースの屋台に向かっていった。



残された私と彼女。

(一体どうゆうつもりよ!!)





突然、彼女が私を振り向く。


「ねぇ・・・さんて言ったかしら?あなたと奈良君て本当に付き合ってるの?」

彼女はシカマルの前では見せたことも無いような冷たい瞳で私を見た。

「えぇ・・まあ・・・そうですけど。」

私は彼女を警戒しつつ、この威圧感に負けまいと睨みかえした。

「そう。なんだかただの幼馴染にしか見えないわ。奈良君は大人なのに、あなたって全然
 子供みたいで・・・」



あきれたって顔で言う彼女。



「確かに私とシカマルは幼馴染ですけど、でもちゃんと告白してオッケーもらって、今は
 ちゃんと恋人です!!」

「それって、あなたから告白したんでしょ?」

「え?そうですけど・・・」

「彼って、以外と優しいところあるものね。断れなかったんじゃない?あんまりあなたが
 子供だからかわいそうで・・・」


「!!!」

すごく傷ついた!!
心のどこかでずっと気に掛けていたことをズバッといわれた。
もしかして、もしそうだったらってずっと悩んでいたことをこんな他人の女に言われるなんて・・・

悔しいっ!






「おいっ 買ってきたぜっ」

ジュースを片手に2本ともう片方に1本もってシカマルが立っていた。


私と彼女は少し驚いてシカマルを見る。


「な、なんだ?どうしたんだよ・・・2人とも・・・」

異様な雰囲気を感じたのか、シカマルは眉をひそめた。

「別に・・・何もないわ・・・ご苦労様」

彼女はシカマルから1本のジュースを受け取る。

、お前何にすんだよ?」

「うん・・じゃぁ・・・こ・れ・・・」

1本うけとった。

ジュースなんてどうでも良かった。
シカマルの本当の気持ちがなんだか分からなくなってきちゃって・・・

あんな女の一言で私の心はこんなにも動揺してしまう・・・

私とシカマルの関係はこんなことで崩れるはずない!!と心に言い聞かせてみる。
なのに・・・心臓がさっきからずっと高鳴りっぱなしで、私は落ち着かない。

私ののどを通るジュースも今の私にはなんの味も感じられない。
さっきの彼女の言葉が気になって、ジュースどころじゃないよ。

「お前、やっぱ具合悪ぃんだろ?」

突然シカマルにおでこを触られた。

「ち、違うよ//////」

びっくりして、思わず俯いた私。

「無理してんじゃねーよ。さっきから変だろ?熱でもあんじゃねーの?」

シカマルの手がもう一度私のおでこに伸びてきたから、私はすごく動揺してしまう。

「暑くて疲れたんじゃないかしら?この人ごみじゃ、さすがに疲れちゃうわよね?」

彼女はさっきの出来事が嘘のように、私に優しい顔をした。

「そ、そうです・・ね。」

私も精一杯のつくり笑顔をしてみた。

「ほんとに大丈夫なのかよ?」

シカマルは私の顔をじっと見た。

「うん。私は大丈夫だよシカマル。」

その優しさは愛情なの?それとも同情なの?
シカマルの優しさが、なんだか心を締め付ける。

「ジュースでも飲んで、少し休みましょう。お祭りより彼女の体調の方が私も心配だわ。」

彼女の心配した目。
それが明らかに演技だと分かっているのは私だけ。

「そうだな。、お前、そこ座って少し休めよ」

シカマルはため息をついて私の頭を軽くポンポンと叩いた。

「う、うん・・・・」

(シカマルのバカ・・・この女は・・・私の事なんてこれっぽっちも心配になんて思ってないんだからっ)

「ゆっくり休んで、また一緒にお祭り行きましょうね」

彼女はまた優しくニコリと笑う。
シカマルはそんな彼女に「悪ぃな」と言って微笑んだ。




私は心臓がドキドキしていた。

この女が心底怖いと思った。
シカマルはこの人にだまされて、もしかしたら、本当にとられちゃうかもしれない・・・










、具合いはどうだ?」

シカマルに顔を覗かれる。

「う、うん。もう平気。」

「んじゃ、行くか・・・早くいかねーと周りきれねーぞ。」

シカマルはうーーーんと伸びをして、めんどくせーなと言った。

「そうね。もう半分ぐらいまでは来たのかしら?」

「どうだかな?木の葉の祭りは本当うざってーぐれー大きいからな・・・」

「あら楽しむことを知っている人達なのよ。木の葉の人たちは!それって素敵だわ」

彼女の大人びた笑顔。

「まあな・・・俺も木の葉は嫌いじゃねーが、祭りはやっぱ嫌いだ。人ごみは疲れるぜ」

はぁっとため息をつきながら腰を叩くシカマルに、彼女はとても優しい顔でくすくすと笑う。

「やる気が感じられないところが、奈良君らしいわね」

「なんだよそれ?俺がいつもやる気ねーみてーじゃねーかっ」

「違うかしら?」

「違わねーか。」

2人で笑ってる。

その2人の姿に私はすごく嫉妬した。
2人がすごく似合って見えるのがつらかった。

私って本当にシカマルの彼女なのかな・・・・
シカマルにとって私って本当に必要な存在なのかな・・・・




また3人で歩く祭りの道。




もうすぐ恒例の花火がはじまるせいか、さっきよりも人通りが激しくなってきた。




彼女と話しの途中で、チラリと後ろの私を見るシカマル。

「な、なに?//////」

2人の会話に入らない私を心配してくれてるの?

「お前、勝手にどっか行ったりしねーで、ちゃんと着いて来いよ。」

なにソレ・・・・

「分かってるわよっ 私だけ子供扱いしないでよね。」

まるで子供に注意するように言わないでよ!シカマルのバカ!!

「あぁはいはい。分かった分かった。」

シカマルはくくくと笑う。

「彼女に悪いわ、そんな言い方して・・・」

そんな事言いながら、女もくすくす笑った。



もうヤダ・・・・どうせ私は子供っぽいですよ・・・



私はふくれっつらをしながら、2人の後ろをついていく。
するとシカマルが私の頬をムギュッとつまんだ。

「こういうところがガキだっつってんだ。」

シカマルは笑ってたけど、もう相当頭にきた!
私はシカマルの手を振り払う。

「うるさいっ!!」

「へいへい。」

何笑ってんのよ!もうシカマルなんて知らないっ





私は黙ったまま前を行く2人にノソノソとついていった。
もう話しをする気力もない・・・


「疲れたなぁ・・・」


ぼそりとつぶやくと、私の目の中に大好きな カキ氷 の文字が!
メニューがずらりとならんでいて、その中には私の一番好きな ミルク金時が!!

あーーーおいしそう・・・・
私は一瞬思考が止まって、ボーーーッとしてしまった。



そういえば、さっきシカマルに

『お前も行きたい店があったら言えよ』

って言われたなぁ・・・・


私はとっさに前の2人を呼び止めようと声をかける。



「ねぇ!カキ氷食べようよぉって・・・あ、あれ?」


目の前に2人の姿が無い。

きょろきょろしていると、はるか遠くに2人の後ろ姿が見えた。

ほんの一瞬ボーーっとしていただけだったのに、2人との距離はかなり開いてしまった。



「シカマルーーーねーーー待ってよぉぉ!」

懸命に叫んでみるが、前から次次に人が向かってきて、声は届かない。
2人の背中も見失いそうだ・・・

「シカマルーーー私、ここだよーーー」

手を振ってみたり、体を左右に揺らしてみたり、なんとか2人の背中を見ようとがんばるけれど、
もともと背が小さい私には限界があった。


でも、人ごみの間からわずかに2人が見えた。
シカマルは私が後ろにいないことにまだ気づいていないみたい・・・
でも・・・彼女がチラリとこちらを振り向いた。


私は懸命にアピールしたのに・・・


彼女はぷいっと顔を戻した・・・私に気づいたくせに・・・見なかったことにしたんだ・・・




心臓がドキドキと高鳴ってきた。

シカマルが彼女に連れていかれちゃう・・・


そんなの嫌だよっ シカマル! 気づいて!!





「シカマルーーーーーーーーーーーーー!!」





大きな声で叫んだのに・・・私の声は人ごみにかき消された。
















さっきはちょっと言い過ぎたか?

本当はを子供だなんて思っちゃいねー。
幼馴染ってだけの関係だったあの頃と違って、今の俺には、は大事な女になってる。
けど、にはまだうまく言えねーんだよ。

いつかちゃんと言わなきゃならねーんだろうけどな・・・・

まっ それはともかく、とりあえず怒らすとまたあいつめんどくせーからな・・・・・
さっきの事は謝っとくか?







の事を考えだした俺はとっさに異変に気づく。

「ん?」

そういえば・・・・・・

「どうしたの?奈良君?」

俺はなんとく後ろのが妙におとなしいことに気づいて、慌てて後ろを振り返った。

「あ・・・・・いねぇ・・・」

隣で女がびっくりしたような顔で俺を見た。

「あら?気づかなかったわ。どうしちゃったのかしら?」

「どうしたもこうしたも・・はぐれたんだろ?・・・あのバカッ」

俺はとっさに後ろを見回すが、急激に増えた人ごみに、の姿がなかなか見つからない。


「ちっ   ったく、めんどくせーやつ。」


でも、俺の心臓はドキドキしていた。
あんなかわいい浴衣姿で、こんな訳わからん奴等の中に一人でいさせられっか。

ただでさえ、天然のあいつのことだから、見ず知らずの男についていっちまう可能性も
あるわけだし・・・


とにかく戻るか


「あんたはそこの茶屋で待っててくれ!俺が探してくっからよっ」

「え?えぇ・・・分かったわ・・・・」




俺はもと来た道を逆戻りだ。
人の流れに逆らうように、行き交う人を押しのけるような形で、俺は必死にの姿を
探した。
こんな人ごみじゃ、の気配だけを追うのは不可能だ。
忍術に頼ることはできねーから、自力で探すしかねーな・・・・


道幅がかなりあるメイン通りの両端に屋台がギッシリ入っている。
しかもこの人ごみ。


を見つけるには時間がかかりそうだ。


「ったく あのバカ。どこ行きやがった?」












「シカマルーーーどこーーー?」

私は必死で名前を呼んだ。
人ごみをかきわけて、ひたすら歩いた。

着慣れない浴衣の帯が苦しい。下駄の鼻緒が指の間でこすれて痛い。
人ごみで暑くて、のどがカラカラ。

たくさんの人にぶつかって、そのたびに「すいません」と頭を下げて、それでも
私は必死でシカマルを探した。




だって、このままあの女とシカマルを2人きりにするなんて絶対に嫌だもんっ


「シカマルーーー!」「シカマルーーー!」


疲れてかすれた声になってしまったけど、それでも一生懸命シカマルを呼んだ。
そしたらきっとシカマルは私に気づいてくれるはず!
きっと今頃は私がいない事に気づいて、シカマルも私を探してくれてるはずだもんっ!!













「見つからねーな・・・くそっ」


改めて、この祭りのデカサにうんざりする。

もともと背も小さく、体も細いは、ちょっと背の高い子供の後ろにもすっぽりと隠れて
しまいそうだ・・・


「こんな事なら、手ぇ握って歩いとくんだったな・・・」


俺の頭にさっきのの姿が浮かんだ。
の浴衣姿はいつもよりずっと大人びて見えて、綺麗だった。
恥ずかしくて、まともに見られなくて、あまり後ろを向いてやることもしなかった自分を
後悔した。


「くそっ・・・他のやつに付いてくなよ、。」


はぁ・・・・俺はため息をついた。
心配で、仕方がない。
無邪気で、純粋で、素直なかわいい彼女。

誰にも渡したくないっ・・・・
絶対、俺以外の男に指一本も触らせたくねー・・・・


焦る気持ちと、この人ごみとで俺はイライラする。



「だめだ。と行き違ってるかもしんねー。もしかしたら、彼女がもう見つけて
 くれてるかもしんねーよな? いったん茶屋に戻ってみっか。」


俺はもう一度きびすを返して、今度はまた茶屋に向かって走りだした。












茶屋ののれんが見えた。


(頼むっ 、いてくれよっ!!)


そう願いながら、外にある長いすを見る。




女が手を振っていた。

その辺りを目で追って、の気配を探す。


「やっぱ・・・いねーか・・・・・」


座っている彼女に近づく。

「お疲れ様。さんは見つかった?」

彼女は不思議と冷静な顔で俺を見る。

「いや・・・いなかった。」

俺はさっき走りまわったせいで、かなり汗をかいていた。

「はい。」

彼女によく冷えたジュースを渡される。

「あぁ・・・サンキュー」

「もう探すのやめて、ここで待ちましょ。どうせ行き違うわ。」

彼女はなんとなく、めんどくさそーにそう答えた。


「いや、俺はこれ飲んだら、また探す。めんどくせーけど、あいつ一人ほっとけねーだろ?」


俺は冷えたジュースをグビグビと飲んだ。
熱い体に冷たい水分が胃まで流れていくのがありありと分かった。

はぁ・・・・

一息ついて、なんとなく ホッとした。











はぁはぁはぁ・・・・・


私の足はもう疲れてガクガクしていた。
汗で浴衣が体に密着して、すごく気持ち悪い。
額から流れる汗が入って、目もくもってる・・・・


もうダメ・・・シカマルぅ・・・どこなのーーー・・・・・




ふと目の前に 茶屋 の文字。


「少し・・・休みたい・・・もう歩けないよ・・・・」


私はフラフラと茶屋に近づいた。




人ごみの間から座れる椅子があるか探す。
その時、シカマルの頭が見えた!!


あ!シカマル!


やっと会えた!   私は嬉しくて、叫んだ。


「シカマル!!」


そして、人ごみをかきわけて、側に行こうと--------------------





私の足は急に止まった。





目の前には、シカマルと彼女が椅子に並んで腰掛けて、ジュースを飲んで、話しを
している姿が見えた。
まるで恋人同士みたいに寄り添って、まるで世話焼きな女房みたいにシカマルの額の
汗をぬぐってあげたりしている彼女・・・・



シカマルが別の男の人に見えた。

ううん・・・違う。

シカマルが私の手の届かないところに行っちゃった気がしてる。


だって、だってさ・・・・・・・


(私はこんなにボロボロになって、シカマルを探してたのに・・・なのに・・・なんで?
 なんでよ!シカマル・・・なんであんたは、こんなところで2人で仲良くジュース
 なんか飲んでるの?)


私なんて、いなくてもいいの?




「ひどいよ・・・シカマル・・・・・」











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