甘栗甘 という大きな木目の看板が目立つ茶屋。


外の長椅子に、大きな体をした男の子がお団子を食べながら座っていた。


「チョウジ!待ったぁ?」

いのちゃんはニシシと笑う。

「ううん。別に」

チョウジ君というその男の子は口に団子を頬張りながら、そう答えた。


「あ、あの・・・・」

私はおそるおそるそのチョウジ君という男の子に近づく。


「はい。も食べる?」

いきなり目の前に団子を突きつけられた。

「あ、ありがとう・・・・」

私はチョウジ君の隣にチョコンと座る。




「ねぇ、話しが一段落ついたら、も中においで!待ってるからさ」


いのちゃん達は店の中に入っていく。





長椅子にチョウジ君と2人きり。

「どう? ここの団子・・・おいしいでしょ?」

「は、はい。//////」

やわらかくて、甘いタレのついたみたらし団子。
口の中でとろけるような柔らかさだった。


(本当においしいなぁ・・・それに、なんだか懐かしいような味)


「私・・・もしかして、ここのお団子をよく食べてましたか?」

座っていても大きなチョウジ君をチラリと見上げる。

「うん。よく一緒に来てたよ。僕達10班ととでさ」

チョウジ君はニコリと笑った。


10班・・・・・確かシカマル君も10班だって言ってたなぁ・・・・


ぼんやりと考える。


「いのとシカマルと僕。それが10班だよ」

「いの・・・ちゃんも・・・・」


そうか、それで・・・・シカマル君といのちゃんはあんなに親しげだったんだ・・・

なんだか少し ホッ とする気持ち。
私ったら・・・変なの//////










それからは別に何も会話も無くて、
シーーーーンとしている私達のまわりを穏やかな風がサラサラと通り過ぎて行った。




なんか不思議。
チョウジ君は別に私の答えや言葉を急かす素振りもなく、ただ私の横でのんびりと団子を
食べながら空を見上げていた。

「あの・・・チョウジ君・・・・」

「なに?」

「私・・・て・・・、どういう女の子だったのか教えてくれませんか?」

お団子を遠慮がちに噛みながら私をそっと聞いた。

「うーーん。今と変わらないけど・・・」

「?」

「ちょっとのんびりしてて、明るくて、笑顔が似合ってて・・・ここの団子が大好きな女の子・・・だよ」

ニコリと笑ったチョウジ君の顔。
どうしてこの人はこんなに暖かいんだろう・・・・・
笑顔や言葉を聞くだけで、すごくホッとする私の気持ち。

・・・いの達の事、気にしないでいいよ」

「え?」

「いののお節介は昔っからだし。別に記憶がもどらなくったって、いのはを責めたりしないよ。
 僕達だって、そんな事気にしないからさ。」


私がいのちゃん達が頑張ってくれている事にプレッシャーを感じている事を、この時初めてあったはずの
チョウジ君は分かっていた。


「焦らなくても大丈夫。記憶はきっと戻るよ。はいつも幸せそうに笑ってた。そんな大事な記憶が
 こんな事で無くなるはずないって。僕はそう思う。」

「う・・・・うん///////」

にとって一番大事な人が、いつも側にいるってきっと今に気づくよ」

「え?」


それって・・・サスケ君のこと?


「お団子食べ終わっちゃったね。」

私とチョウジ君の間にあったお皿はいつの間にか空っぽ。

「僕、お腹すいたから帰るよ!、またみんなで焼肉行こう!」

お団子食べ終わってもまだお腹がすいたと言うチョウジ君にあっけにとられた。
チョウジ君はよっこらしょと立ち上がると、私にニコリと笑って、手を振った。
その優しい笑顔に、記憶を取り戻せずに焦っている私の心がすーーっと軽くなるのを感じた。



「ありがとう・・・チョウジ君・・・///////」



大きな背中が小さくなるまで私をその背中を見ていた。


(私はいつでも笑っていた。)
チョウジ君の言葉。
幸せだったんだな・・・私。
それはきっとこんなに素敵な仲間がたくさんいてくれたから・・・そして、大事な人が私を守って
くれていたから・・・きっとそうなんだ。


私はジーーンとする胸を抑えながら、店ののれんをくぐって、いのちゃん達の待つ、茶屋の中へ入っていった。


















「うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーっっす!シカマル!いるかぁ!!」


2階の縁側で昼寝してた俺の耳をつんざくような声。
このアホ声・・・キバだ。


「あ、あれ?お前らも来たんだってばよ?」


そして、バカの声が一人増えた・・・ナルトかよ。


「おーーーーーーーーーーーーい。みんなもやっぱり来たの?お菓子いっぱい持ってきて正解だねvv」

相変らず能天気な声・・・チョウジ。



これで揃ったか。いつものバカメンバー。


「あーーーぁ。めんどくせぇな」


俺は小声で呟きながら、よっこらしょっと起き上がる。



『お!っやっぱ寝てやがった!!』

みんなに一斉に指をさされた。
下には思ったとおりのいつものバカメンバー。シノまでいたのは以外だったが、一人で寝てるのにも
正直飽きたし、仕方ねぇか。


「あがれよ」


俺は頭をかきながら、めんどくさそうにそう言った。


『言われなくても、そうするよっ!!!』


こんな時だけ、息もあって、バカ友の声ははもってやがった。








俺の部屋は男だけでいっぱいになった。
正直すげぇむさ苦しいぜ。


バリボリバリボリ


「今日よ、・・バリ・・会ったぜ・・ボリボリ。によぉ・・ボリボリ」

「俺もバリバリ・・会ったってばよ・・・バリバリ」

「僕もバリボリバリボリ・・・」

「ひゃわって・・バリボリ・・・なかった・・・ボリ・・よな?」

『だ・・な・・バリボリ。バリボリ。』

「あ?」

お前らみんな言葉になってねぇっつの。

「だからーーーバリボリ」

「変わってなかったって・・バリボリ・・・言ったんだってばよ?バリボリ・・なぁ・・キバ ボリボリ。」

「そうそう・・・バリボリ」



だーーー!イライラする。



「お前らなぁ・・・食うかしゃべるかどっちかにしろっつうんだよ!!」



バリバリボリボリバリバリボリボリ!!



「結局食うのかよっ!!!」

はぁ・・・・・俺が深いため息をついていると・・・


「冗談はさておきだ・・・の事では、お前も相当まいっているんじゃないのか?」

シノに言われて、俺は無言になる。

「だよな。お前の事も綺麗さっぱり忘れてやがったもんな。」

きゃんきゃん。

キバも急にマジメな顔をした。

「正直、俺もどうしていいのか分っかんねぇ。今のあいつには俺はただの幼馴染ってだけだし。」

俺もポテチをバリッと食った。

「バカ!んなもんよぉ、押し倒して、お前のもんにしちまえよ!!記憶ねぇんだし、俺達はもともと
 こういう関係だ!って言っちまえばいいじゃねぇか!!」

冗談って顔じゃなく、いたってマジメにキバをそう言った。

「お前らしいな・・・」

正直こういう時、キバの強引な性格がうらやましく感じる。


「お前、ロクな恋愛してねぇだろ? 第一、相手はあの天然のだぞ?俺だったら絶対出来ねぇってばよ」

「うん。僕もそれは反対。、絶対傷ついちゃうよ。」

ナルトもチョウジもキバの意見には反対らしい。

「だよな。まぁ俺には無理だ。んなこと出来るぐれぇならとっくにしてるしよっ。」

『だよなぁ・・・シカマルじゃあ無理だよなぁ・・・はぁ。』


お前らにまでため息つかれたくねぇよ!!



ワンテンポ遅れてシノが意見した。

「まあ、キバの手も一理あるがな。」

『えぇ!!』

シノがキバの意見に同意するとは、意見したキバさえも驚いたって顔をした。


「相手はだ。キバの恋愛してきた女とは性格も違う。だから今回のキバの案はにはむかない。」

「だ、だよな・・・・」

言葉にも詰まるっつうの!!だってよ!
シノ・・・お前こそ、一体どういう恋愛してきてんだよ!!
私生活がまったく謎に満ちたシノの大胆な発言に、俺もみんなもシノを凝視していた。



「でもよ・・・このままにしとくってのはどうだかな・・・・」

キバの意味深な言葉。

「なんだよ」

の過去の記憶が完全に無くなっちまって、シカマルとの関係もただの幼馴染に戻っちまった訳だろ?
 もし、の記憶がこのまま戻らなかったらよぉ・・・がシカマル以外の男に恋しちまう可能性だって
 あるぜ? そしたら、お前どうすんの?」
 


ギクリとした。



俺以外の男を・・・が好きになる。



それは、俺だって分かってる。
実はずっと気にしていた事だ。

《何回でもシカマルに恋をするよ》

そう言ったお前の言葉を信じたい。
でも、記憶を無くしたお前が、本当にもう一度俺を見てくれんのか?
俺を選んでくれんのか?

揺るがないでいるはずの気持ちが、キバの一言で、また不安に動きだす。


「キバ」

「あ・・・悪ぃ。シカマル。」

シノが俺に気を使ってくれたのが分かった。
キバは申し訳なさそうに頭を垂れた。

「いいって・・・」

だってよ、かっこ悪ぃけど、それはありえない事じゃねぇもんな。








「大丈夫だってばよ!!」


ナルトの大声に、みんな一瞬動きが止まった。


はボケてっけど、シカマルへの想いを忘れるような薄情なやつじゃねぇってば!
 ぜってぇ思い出すに決まってるってばよ!!」

ナルトの強い青い目が俺をジッと見て笑った。

「俺はを信じてるってばよ!!なぁシカマル!!」

なんか俺は、ナルトに勇気づけられた気がした。

「お前になぐさめられるとわなぁ・・俺もやきがまわったぜ」

へっ なんかウジウジ考えてる自分がバカに思える。


「そ、そうだよな。はいつだってシカマルしか見てなかったし。男前の俺が口説いたって、
 なびかねぇような奴だもんな。」

キバがニシシと笑った。


「安心しろシカマル。にかぎって、お前以外の男に恋なんかするはずない。」

シノに肩をつかまれた。


「あぁ・・・サンキュー。そうだな。今はを信じるしかねぇし。めんどくせぇけど、俺は俺なりに頑張るからよっ」


チョウジを見たら、いつもの笑顔でニコリと笑っていた。



きゃんきゃんっ

赤丸が吼えはじめた。
キバもクンクンと鼻をならす。

の匂いだ。もうすぐ戻ってくるぜ。んじゃ俺達はそろそろ帰るか。」

「だな。が帰ってきたら、色々話しもあんだろうが? なあ シカマル」

ナルトに小突かれる。

「焦らずにな。シカマル」

シノに肩を叩かれた。


「あぁ」



みんながぞろぞろと帰り支度をはじめる。
正直、俺はお前らがいて感謝してるぜ。
一人だったら、きっと俺の頭は良からぬ想像で混乱し続けていただろう。

少し元気になれたのも、お前らのお蔭だ。




でも、俺はやっぱ今、一言言っておきたい事があんだよ。





「キバ。お前、ちょっと待て」

俺はキバを呼んだ。

「え?」

キバは、何ですか?と言わんばかりのすっとんきょうな顔で振り返る。







「で? お前、いつを口説いたんだよ?」






サーーーーーーーーーーーとキバの顔から血の気が引いていくのが分かった。

そりゃそうだろう?
お前の体は俺がかけた影真似の術でピクリとも動かねぇんだから。



「いや、あれはその・・ちょっとした出来心で・・結局断られたし、すっげぇ昔の
 話しだし・・・もう時効だって・・・悪かった!ごめんシカマル!」


「そんな言い訳聞くかよ! 忍法 影首しばりの術!!」



「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」



『バーーーカ』



















あいつらが帰って、俺はまた縁側にゆっくりとこしかける。



もうすぐが帰ってくる。


あいつらの話しじゃ、まだの記憶はまったく戻っていないらしい・・・
でも、早くの顔を見たいと思った。

今日一日一緒にいられなかった分、少しでもお前を俺の側においときてぇ。





傾きかけた陽がゆるやかに照らす坂の向こうに小さな人影。




相変らず 変なリズムで歩いてくるその姿。



「ったく・・・転ぶなよ?」


呟いたら、なんか笑えた。
本当お前は天然で、ボケてて、そそっかしくて、でもだからこそ守ってやりたく
なっちまうんだよ。


俺の大切な


早くここまで帰ってこいよ。





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