「シカマル。さっきは、の本当の事教えてあげなくてごめんね。でも、僕はシカマルに自分で
 気づいて欲しかったんだ。の気持ちも、シカマル自身がを想う気持ちにも・・・」


「あぁ・・・分かってるぜ。チョウジ。」




俺には分かる。
チョウジの優しさが・・・・


が誰を想っていようと、自分の本当の気持ちをぶつけてやれるぐらい俺が強くなんなきゃ、
俺はをこれからだって、守っていけねぇよな。

の気持ちを俺自身が信じてやれなきゃ、を好きになる資格もねぇよなっ

それを気づかせてくれたのは・・・・・チョウジお前だ。








「チョウジ・・・ありがとなっ」


「へへ。どういたしまして・・・お礼は焼肉でいいからさvv 早く行ってきなよっシカマル!!」




グリグリの頬を真っ赤にしてチョウジは笑ってくれた。



「あぁっ またお前が入院するぐれぇ食わせてやるよっ!!」



「そ、それは勘弁してっ」





ぷっ





あはははっ







チョウジ、俺はもう迷わねぇっ!!






俺が  を、絶対に見つけてやるよっ


今度は俺が命をかけて、お前を守ってみせるっ!!










火影様の診察を待って、木の葉病院を退院する手続きを待つなんて、めんどくせぇ時間、
今の俺には必要ねぇ。


後で、厳罰があろうと、誰に何を言われようと構わねぇ。






「じゃあな。チョウジ」



病室の窓枠に ヒョイ と飛び乗って、俺はチョウジを振り返る。



「いってらっしゃいシカマル!によろしくね!!」


「あぁ」









2階の窓枠を蹴ったら、フワリと体が宙に浮く。



っ 待っててくれよっ)



俺は風を受けながら、地面へと足を伸ばした---------------------------------

























火影様の屋敷の中にある、いわゆる監禁部屋。
監獄というには綺麗で、でも部屋というにはあまりに殺風景。

私は、木の葉に意識の無いまま連れ帰られ、医療班によって適切な処置をしてもらってから、
この部屋のベットに寝かされていたようだ。





意識がもどり、うっすらと目を開けると、私の目の前には火影様が座っていた。







「意識が戻ったようだね。調子はどうだ?」


「は、はい・・・大丈夫です」


緊張して掴んだ布団は少しカビたようなツンとした匂いがした。



「そうか。お前は昔っから、後先考えずに突っ走っていくタイプだったみたいだが・・・
 それにしても、今回は随分無茶したねぇ・・・・・」


「す、すみませんでした。」


私はベットに横になったまま、布団を口のあたりにひっぱり上げた。


火影様は はぁ とため息をついている。
怒っているというより、手をやく子供に困っている母親のような表情に見えた。
でも、その後、真剣な目で火影様は私の顔を見た。



。お前は今回、自分のした事の重大さを分かっているか?」


火影様が何を言おうとしているのか・・・なんとなく分かる。


「・・・・はい。」




私は記憶はなくても木の葉の忍び。
里の長の命も受けずに、勝手に里を抜けることが、どれだけのことなのかぐらいは
なんとなく分かる。

しかも、ゲンマさんが教えてくれた情報を救助部隊に伝える義務まで怠って、私は
一人勝手に飛び出したのだから・・・

怪我をしていたゲンマさんにも、後から救助部隊を連れて来てくれたイズモさんやコテツさん
にも・・・そして救助部隊の人達にも迷惑をかけただろう・・・・






(それでもあの時はそんな事を考えている余裕すら私には無かった。私の頭の中はシカマル君を
 助けたい!!っていう気持ちでいっぱいだったから・・・・)









・・・お前の気持ちも分からんでもない。 今回の任務で、シカマルがお前を想う気持ちも、
 お前がシカマルを想う気持ちも、どれほど大きなものかって事は、私にも痛いほど伝わってきたからね・・・・」





(私がシカマル君を想う気持ちに嘘は無い。でも・・・
          私を想うシカマル君の気持ち・・・その大きさ・・・)




それは、今となっては的外れな答えだ。
シカマル君は私を拒絶した。



私は本気だったよ。
私達が再会して、抱きしめあってキスして・・・・・
このままシカマル君と一つになれたらいいって、私は本気でそう思ってシカマル君とキスしたよ。



でも・・・・・・・・



シカマル君はあの時、意識が朦朧としていたのかもしれない・・・




だから、




今の私なんて・・・やっぱり必要なかったの?





・・・大丈夫かい?」


火影様に顔を覗かれる。


「は、はい」



気を抜いたら涙がこぼれそうで、私は必死に我慢した。



こんなこと・・・火影様に言えるはずもない。







「できるなら、お前はまだ記憶も戻っていないしねぇ。助けてやりたい気持ちもあるんだが。
 でも、私も火影という立場だ。こういう事に特例を作るわけにはいかないんだよ。」



「分かっています」



何を言われても構わない。
勝手をした私が全て悪い。
そう思っていた。

私はギュッと布団を掴んで、火影様の次の言葉を待った。





「私の指令無しに勝手に里を抜けた者は、いかなる理由があろうとも、私が許すまで監獄に入ってもらう。
 それが木の葉のルールだ。」


「はい・・・」



(監獄・・・でも、それでもいいって思っていた。このまままた平然とシカマル君の家に戻る訳には
 いかないし・・・そこがどんな場所だろうと、私が犯した罪を償うべき所であるなら、文句は
 言えない。)







「だが・・・お前もかなり無茶したからねぇ。体も心配だ。監禁するならば場所はどこでも構わんだろうと
 判断した。まぁ・・・この部屋は私と同じ火影屋敷の中にあるものだ・・・他の罪人もいないし・・・
 危険も少ないからな。2〜3日はここで大人しく寝ていろ。」




「火影様・・・・」




それは火影様が自分の立場を考えて、それでも私の為にしてくれた最良の決断だったんだと思う。
嬉しかった。
ありがたかった。

こんな私を気遣って、大事にしてくれる。





「ありがとうございます・・・・」




涙が流れて、寝かされたベットの硬い枕に染みていった。



「まぁ・・・体力が回復するまで、ちょっと暗いがこの部屋でゆっくり休め。」


「はい」












それから、私はこの部屋で3日目を迎えた。


体力はもうほとんど回復しているので、本当に火影様のお許しが出るまでの監禁生活という
感じだ。


外の状況も、まったく分からない。
外部とは一切隔離された状態だった。


薄暗い部屋。かろうじてある小さな窓から柔らかい陽の光が床の一部を照らしていた。
私は体を丸めて、影になった部屋の隅にあるベットの上にしゃがみ、その光の形を見つめていた。



何もやる事が無いせいか、考えるのはシカマル君のことばっかり・・・・



(シカマル君は今どうしているんだろう・・・)
(怪我の具合は?・・・・)
(もう私のこと・・・本当に嫌いになっちゃたの?・・・・)



あの時のシカマル君とのキスが何度も頭に浮かんでくる。
優しい唇の感触が私の首すじにも、唇にもまだ残ってる。
シカマル君の優しい匂いも・・・大きな体も・・・・全部・・・全部好き。





でも・・・・・シカマル君は?・・・・












コツコツコツ



廊下に響く靴音。


(火影様だ。)





「入るよ」


「は・・・はい」


部屋の扉は錆び付いた音をたてて、ゆっくりと開いた。



「もう大丈夫だとは思うが、これが最後だと思って、容態を調べるからね」


「はい」




火影様は私のベットに近づいて、そっと腕をとる。




ブワーーッと青い炎のような光が火影様の手のひらを覆って、その手に触れられた私の体は
ポウッと温かくなった。




「だいぶ、いいようだね。これならお前もすぐココを出られるだろう・・・」


「え? で、でもまだ3日目間しかたってないですよ・・・」


「まぁ私としては、周りの反応も考えて、もうちょっと監禁しておくつもりだったんだがねぇ・・・
 外野がうるさくて適わないんだよ」


「え?」


火影様は はぁ とため息をつきながら、ゆっくりと話してくれた。












一応、ここが監獄で無いにしても、私は罪を犯し、その罪を償うために監禁されている事には変らない。



私の状況を知り、何回か、いのちゃん、チョウジ君達・・・みんなが私の為に
火影様に直談判にきたそうだ------------------------------------------------











『おい!こらお前ら!!何しに来たんだっ!!』


廊下に響いていた、イズモさんの声はひきつっていたらしい。








しばらくして、火影室のドアが勢いよく叩かれた。




ドンドンドンッ!!








『何事だ!騒々しいっ!!』


火影様が言葉をかけるや否や、ドアは乱暴に開いた。





『火影様、今日はどうしてもお話しを聞いてほしくて来ました!!』

先頭をきってドアから入ってきたのは、いのちゃんだったらしい。




『やいやいやい!!火影のばぁちゃんっ!をどこに隠しやがった!!』


いのちゃんを押しのけるように勢いよく入ってきたのはナルト君で・・・


『なんでが監禁されなきゃならないのか、俺達も納得できるように説明してくれよ!!』

キャンキャンッ


キバ君は赤丸と一緒にかなりの目つきで入ってきて・・・



が悪いという事は充分に承知している。だが、あいつはまだ記憶がもどったわけではない。
 この処分には俺も納得がいかない』


冷静な言い方だったけど、シノ君までも私の為に怒ってくれたらしい。



『わ、私も・・・ちゃんを許してあげて欲しい・・・です・・・』


大人しいヒナタちゃんまで・・・



は・・・命をかけてシカマルを連れ戻してくれた。シカマルが生きてたのは
 のお陰なんです』

チョウジ君も真剣な顔だった。


『火影様・・・私もそう思います。がいたからシカマルは帰ってきたんです!!
 だからっ!!』

サクラちゃんも火影様に食ってかかった。








『お前らの言いたいことは分かった。でも、これは木の葉で決められたルールだ。
 今、をここから出す訳にはいかないねっ!!』





『火影様!!』『ばぁちゃん!!』『五代目!!』





みんなが必死なのも分かっていたさ。
仲間を思って、ここまで出来るコイツらを私も嫌いじゃぁ無い。
でもねぇ・・・こればっかりは・・・お前にも言ったが特例は許されないんだよ・・・・


だから・・・



『コテツ!イズモ!何をしている!!こいつらをひっぱり出せ!!』





『はいっ!!』『はい!!』









『離してよーーーーっ』『火影様、ひどーい!!』『こらーーっいい加減にしろ!ばぁちゃん!!』






















「ギャ−ギャ−とうるさい声がしばらくはずっと廊下に響きわたっていたよ。」





火影様は私の体を見てくれながら、そんな話しを教えてくれた。




「それからも何回か来て。まったく懲りない連中でねぇ。私も仕事にならなくて困っている
 ところだよっ。」



くすくす。



笑っちゃいけないけど・・・でも、みんなの姿が想像できて、それもすごく嬉しくて、
でも気恥ずかしくて、私は声を殺して笑った。
自然と涙も出てきた。




「みんならしいです。でも・・・本当に嬉しい。」


「こらっ!笑いごとじゃないよ!」


「はい。ごめんなさいっ・・・でも」


「あぁ・・・いい仲間だ。・・・まぁ、そうは言っても、私にとっては邪魔なガキ共って
 ことに変わりはないがね。」



そう言いながらも、火影様はどことなく楽しそうだ。
そして、ゆっくりと優しい声で私に言った。



「それから・・・シカマルも体は良くなってるよ。直に意識も戻るだろう・・・
 何も心配ない・・・」


「本当ですか!!・・・・・・・良かった///////////」







それは何より一番嬉しい知らせだった。
拒絶されたって、たとえ嫌われたって、私はシカマル君が好きだから・・・・
だから・・・生きてて欲しいっ 絶対にっ!!

それだけを考えて、毎日祈って、この3日間過ごしてきた。

たとえ、私がシカマル君にとってもう必要ない存在になってしまったとしても・・・・






「準備が整い次第、出発するよ。、早めに用意しなっ」


火影様のピンと張った声に一瞬驚いた。


「え?・・・あ、あの、出発ってどこにですか?」

「決まってるだろう?シカマルの見舞いだよ。」

火影様は嬉しそうに笑った。
心臓がズキリと痛む。




シカマル君に会える!!??



私、シカマル君に会いたい。
たとえまだ意識がなくても顔が見たい。体に触れたい。側にいたいっ。


まだ意識が無いのなら、こんな私でも顔ぐらい見てもいいのかな・・・・
でも、もし意識が回復して、私なんかが側にいたら・・・

頭の中で、私の色々な思いが交錯して、火影様になかなか言葉を返せなかった。



「どうした?お前も、すぐにでもあいつに会いたいだろう?」


火影様はまるで自分の恋人にでも会いに行くような、嬉しそうな顔で私を見ている。



「あ・・・えっと・・・。」


「まぁそう照れるな照れるなっ!!とにかく、準備ができたら声をかけてくれっ
 それまで、火影室でまた面倒な書類整理でもやっていようかねっ」


バンバンッ


と背中を叩かれて、ニシシと笑った火影様の顔を見て、私はなにも言えなくて、


「は、はい。」



そう返事をした。





これからシカマル君に会えるっ////////

火影様には、ちゃんと言えなかったけど、私の中にはちゃんと一つの答えが出ていた。

シカマル君・・・・大好き、大好きだよ。

そう・・・だから私は、シカマル君に------------------------------------------------

























は今、火影様の屋敷にいる』

チョウジの言葉が俺の頭の中に響き続けていた。





・・・待ってろよっ!俺が絶対その監禁部屋から開放してやっからよっ!!」


くそっ


どんなに全速力を出してみても、俺がの側に行きたいと思う気持ちと、実際の速度が
追いつかねぇから、俺にはもう、火影屋敷への道のりの長さが、もどかしくて、たまらねぇ。



「くそっ 一刻も早くお前に会いてぇってのにっ!!もっと修行しとくべきだったぜっ」



それでも、俺は必死で走った。
病み上がりにしちゃぁ・・・上出来って走りだろ?

けど、もっと早く走れねぇかなぁ・・・とずっと考えながら走ってた。

頭に浮かぶには、の顔だけだ。


(早く、会うんだ。お前にっ)






はぁはぁ・・・・




息がきれる。
めんどくさがりの俺でも持久力には結構自信あったんだけどよっ 
3日寝込むってのは、これほど体力が衰えちまうもんなんだなっ



けど・・・・




「よしっ ついたぜっ」




視界の先に火影屋敷の門が見える。
だが、あいにく今日の担当はコテツさんだ。




「マジかよっ いきなりついてねぇなぁ。あの人は融通が利かねぇかんなっ
 めんどくせぇぜ。」




走りながら小言。
まだこの声が聞こえるほどは、門まで距離があっからまぁいいんだけどよっ



それでも、門からのまっすぐな道をこちらに向かって全力で走ってくる奴がいたら、そりゃ、
いくら平和ボケした木の葉といえど、不信な人物(つまり俺)に気づかねぇ訳ねぇわな。





「ん?・・・お、おい!!止まれ!!!」 



火影屋敷の門よりかなり手前から、コテツさんは大きな声をあげた。


「ちわーっす」



俺は何事も無かったかのように、走りながら右手をチラリとあげて、愛想笑いをしてみせた。


「お、お前シカマルじゃないかっ!!」


コテツさんは幽霊でも見たかのように俺を見て驚いた顔をした。



「へへ。ご無沙汰っすね。先輩。」

「ご無沙汰じゃないだろ?お前はまだ木の葉病院に入院中だと聞いているぞ?しかもまだ意識が
 戻ってないと・・・」



「それが今さっき戻っちまってっ・・・それで・・ちょっと火影様に野暮用で・・・」


そこまで言って、ようやく火影屋敷の門前まで着いた。



はぁはぁはぁ・・・



さすがに、走りながらしゃべったら、さっき以上に息があがる。
額から汗がダラダラ流れた。




「今さっき意識が戻ったって・・・お前、それで、なんでここにいるんだよ?」


コテツさんは尚も驚いた顔をしたままだ。


「いや、だから、火影様に用事で・・・・」


俺はあがった息を整えながら、額の汗を袖でぬぐった。



「お前の退院を決めるのは火影様の診察を待ってからだと聞いているぞ!!まさかお前、
 勝手に病院を!!」


「実は、これは火影様命令で・・・」


「嘘を言うな!!火影様からそんな話は聞いてないぞっ!」


コテツさんはジロリと俺を疑わしそうに睨んだ。


「ほらな。やっぱ、融通利かねぇんだよっ この人・・・・」


(はぁ。
 めんどくせぇ人に掴まっちまったぜ、まったくよぉっ
 こうなりゃ、やっぱアレっきゃねぇか・・・・)

俺は豪快にため息をついた。



「とにかく!!病院に連絡して、お前の状況を聞くまで、この屋敷には・・・・」


コテツさんの言葉の途中から俺は気づかれないようにこっそりと印を結び始める。



(忍法!影真似の術!!)


「入れないから・・・な?・・・・」



ズンっと音がするぐらい見事に俺の影真似がコテツさんを捕らえた。



「お、おい!!こら! シカマルっ てめぇはっ!!何しやがるっ」


「すいませんねぇ先輩。めんどくせぇけど、俺今、急いでるんで・・・とりあえず、
 ちょっと調べさせてもらいますよっ」


コテツさんの体を使って、俺はコテツさんの腰にぶらさがった忍具入れをあさる。


「あった。あった。」


俺の手にお目当ての物があたった。


「さすがコテツさん。準備いいっすね。縄が無ければ包帯でもなんでも良かったんすけど・・・
 ちょっとの間だけ見逃してもらえたらそれでいいんでっ!!」


「てめぇは何する気だっ!!シカマル!!」


後輩の俺の忍術にはまって、コテツさんは心無しか、罰が悪そうだ。
でも、悪いがそこをさらに利用させてもらうっすよっ 先輩!!



「まさかコテツさんほどの人が俺なんかの術にはまるわけねぇし・・・
  自分で自分の体を縄でくくってるって事は、俺には非は無いっすよね?コテツさん?」



俺の動くとおりに操られたコテツさんは、自分の忍具入れにしまってあった縄で自分を巻いていく。




「くそっ 油断したぜ。お前の術にはまるなんてっ」



コテツさんはしかめっ面で俺を睨んでいた。






「お前、こんなことして・・・後でどうなるか分かってんのか!!」

「まぁ・・・なんとなく・・・それでも、今行かなきゃならねぇっすよ。俺」


念には念を入れて、影真似でぐるぐるとコテツさんを縛る。
すぐには縄抜けできねぇようにな。



「お前、どういう了見だ!!」

「まぁとにかく・・・悪ぃが、コテツさんには、しばらくここで大人しくしててもらいますんでっ
 後はよろしくっ」


んじゃ、と手をあげると、縄でくくられたコテツさんは焦りだした。



「こ、こら待てシカマルっ!!」



影真似で完全に自分で自分を縛ったコテツさんは、バランスを崩してその場にドスンと尻もちをついて、俺を
睨んで叫んだ。


「シカマルお前、覚えてろよ!!」


(そう、俺が火影の屋敷に無事に入れるまで、そこで大人しく座っててくれよコテツさん。)


「へへ。お手柔らかに先輩!! んじゃ、また後でっ!!」









「この恩は倍にして返してやっからな!!」

















コテツさんの悲痛な声には申し訳ねぇが、俺には今、どうしても早急にやらなきゃならねぇ事があるっ
火影様・・・そう五代目にを開放してもらう事だ。


それでも、あいつが監禁される理由があると言うのなら、変りに俺が罰を受ける。


だってよ、俺が無事にここに生きていられるのは、のお陰なんだ。
お前が俺を呼んで、見つけて、命をかける覚悟で死の淵から俺を救ってくれたからだ。












建物に入る入口のドアをあけると、ひんやりとした空気が俺を包み込んだ。



「この先が・・・火影室だっ」



俺は廊下をまた走った。
運良く、廊下では誰にもすれ違わなかった。







目の前に、大きな扉がある。





「いてくれよ・・・五代目」








ドンドンッ





俺はその戸を叩いた。






「誰だ。」



中から、いつものツンとした声。



ふぅ。



俺はとりあえず火影様がそこにいたことに安堵した。
賭博場に入られたら、この人、長げぇからな・・・・・・



「火影様、俺っす。シカマルです。話しがあってきました。」


「シカマル?!・・・なんでお前がここに・・・し、仕方ないっ とにかく入れっ」


「失礼しますっ」



俺は火影室の戸をあけた。











いつもの椅子に腰掛けながら、火影様は俺を驚いた顔で見ている。




「シカマル、お前意識が戻ったのか?」

「おかげさまで・・・」


言われる事はどいつも一緒だ。
俺ってそんなにヤバイ状態だったのか?


「お前の退院は、私の許可無しにはするなと木の葉病院の連中に話しておいたはずだがねぇ」

「いや・・・それは・・・・」


額から汗。
俺が全力を出しても、この人を万が一完全に怒らせたら適わねぇしよっ


でも・・・
火影様はきっと俺の意思をくみとってくれたんだろ?
この人も人の心を読むのが得意みてぇだからな・・・




「なるほどねぇ・・・病院の許可なしに勝手に私の所まで来たって訳か・・・」


ふんっ


火影様は笑った。



「どうせお前の言いたい事ってのは、の事なんだろ?・・・誰かに聞いたか?」


そこまで分かってんだったら、話しは早ぇ・・・
グッと拳を握って、俺は話しを切り出した。


を開放してくださいよ・・・・。」

「それは出来ないと言ったら?」



火影様は口元に手を組んで、ジロリと俺を見た。







そう来るとは思ってたぜ・・・・






は、私の命令も無しに、勝手に里を抜けた。しかも、ゲンマの通告も無視してな。
 シカマル。お前も木の葉の忍びなら、この行為が罪に値するものだと言うことぐらい分かるな?」


火影様はニヤリと笑う。



「あぁ・・・分かってます。そして、その原因が誰にあるかも・・ねっ」


「原因?・・・どういう意味だ。」


火影様は眉をしかめた。


「大体、話しが違うっすよ火影様。俺がこの任務に出るにあたって約束してくれたはずじゃないですか」


「約束とは・・・山中いの の事か?」


「はい」



「約束は果たしたぞ。山中いのにはの護衛という名目で、特別任務として、昼間は必ず
 側につけておいたはずだ。他の任務には一切つけていないっ」


「その言葉に間違いないっすか?」


「何を言っている。当然だっ」


火影様は語尾を荒げた。


「だったら・・・・・が里を抜けた原因は火影様にある。」

「何?」






「俺はに山中いのをつけるようにお願いした。しかし・・・昼間限定とは言ってないっすよ?」


「なんだと?」


は記憶が確かじゃない。不安定な状態だ。しかも、里を抜けたのは夜中。 火影様に昼の護衛
 と言う名目で任務を受けた「いの」には、当然この責任は問えない。
 だが・・・不安定なが、万が一、夜中に何か事を起こすかもしれないって事ぐらいは・・・
 火影様なら察しがついて当然・・・」


「なん・・・だと?」


火影様の手が震えてる。
この状態はちょいやべーかな・・・・
いや、逆に有利か?


「忍びは先の先を読め・・・・・でしたっけ?・・・五代目」


わざと、嫌味に言ってみた。
自分より、ずっと年下。いや、火影様から見たら、単なるガキの俺にここまで言われたら、
もう諦めるしかねぇだろ?

なぁ・・・五代目っ!!






バンッ!!!





急に叩かれた机。






「シカマル!!お前ってやつはっ!!!」





火影様の額には深いシワが・・・・・・。
俺の体はビクリと硬直した。





やっべーーーーっ
殺られるかも・・・俺っ





「ちょ、ちょ、ちょい待って下さい五代目っ!! 俺はその責任とやらを問いに来たんじゃねぇ。
  ようは・・・を開放してくれって頼みに来たんですっ
 それが無理なら、俺が変わりに罰を受けますっ」


とりあえず、反撃に備えて、防御の姿勢だけはとってみた。
で、でも・・・・


「お前が変わりに罰を受ける・・・・か・・・・まったくお前達は・・・・
 それに・・・お前の言う「私の責任」てのも、無いともいえないしねぇ・・・・・・」


はぁ・・・


火影様は深いため息をついた。



「ご、五代目?!」


「ふんっ・・・分かってるよっ!!」


「じゃ、じゃぁ・・・・・」



「っとに、味方にしたら心強いが、敵にまわしたらろくでもないね、お前のその頭はっ」



「す、すいません」



ふんっ

それでも、火影様は心なしか楽しげに笑った。



「いいだろうっ!!ついて来いシカマル!!」




バンッ




(な、なんだ??)



俺の話しも聞かねぇで、火影様は机を叩いて立ち上がると、そそくさと部屋を出て行く。
俺はその後を追うようについて行った。


つうか、行くしかねぇだろ?


本当、この人も訳わからねぇっ 何考えてんだ。
まったく女ってのは、どいつもこいつもこんなんばっかなのかよ?


俺は はぁ とため息をつく。







「ここから先は極秘部屋の通路がある。口外無用だよっ いいね?」


そこは何のへんてつもない壁だ。
だがよくみると小さな三角形の印がついていた。


「はぁっ!!」

火影様の野太い声とともに、手に集められたチャクラが火影様の手から漏れ出した。
するとその印が反応して


ガコッ



「うわっ なんだ?これ・・・・」


「お前は初めて見るだろうねぇ・・・ここが火影屋敷直結の監禁室に続く廊下だよ」



「監禁室・・・・」


そうか、ここが・・・がいる部屋がある場所だ。

心臓がドキドキと高鳴る。




この先に・・・・・・お前がいるのか?









「さぁ行くよっ!!」

「はい」





薄暗い廊下は窓が小さいせいか、湿気が多く、カビ臭く感じた。
無意識に壁に触れると、じんわりと冷たい。


(こんなところに・・・お前は俺のせいで、もう3日間もいるのかよっ)


胸がギュッと締め付けられる想いがした。




コンコンコンッ
火影様の靴音だけがやけに響く。




廊下は思いのほか長かった。


それに・・・・からくりのように扉は隠されているようだが、俺の見た限り、
部屋はいくつかあるらしい。


「なんなんすか・・・この部屋・・・」


「昔は時代も荒れていたからねぇ・・・戦になって、里の子供や女達をかくまうような場所が
 必要だったのさ。今じゃ、ほとんど使われていないがね。」



なるほど・・・そういう訳か・・・・
戦の多かった時代にはこんな部屋も無くてはならねぇものだったんだろ・・・・

今は戦なんて嘘のような平和がこの里には続いている。
この部屋がカビ臭いのも分かる気がした。




「今は監禁部屋なんて呼んでるけどねぇ。監獄とは違って、部屋ごとに小さいが窓もちゃんとある。
 お前が心配するほどひどい部屋でも無いさ。」


「けど・・・こんなとこで生活したいとは思いませんけどね・・・」



鼻をつく独特のこの臭み。
長く居るには気が滅入りそうだ。



「それは、私がここにを監禁している事に対しての嫌味か?」

火影さまはチラリと俺を見た。


「そんなんじゃないっすよ。」


むしろその逆。
俺のせいで、がここにいるってことが苦しかっただけだ。










それから何分か歩いた気がする。



一体この廊下はどこまで続いてるんだ?



「ずいぶんあるんすね。距離が・・・。」


「まぁな。敵陣に見つかっても、すぐには発見できないようになってるのさ」


「なるほどね・・・・・」



俺はこの廊下を歩きながら、の事を考えていた。
こんな薄暗い部屋では本当に大丈夫だったんだろうか?
記憶のあった頃のは、怖がりで、時々夜に怖い夢を見たからと、俺の部屋にもぐりこんでくるような
奴だ。






「ここだ。お前もずっと会いたかったろ?すぐにに会わせてやるよ。」





はっ とわれに返る。





その扉は、少しだが、廊下の窓からの陽を受けて温かみを漂わせていた。
何年前のだよ?っつうような古型のドアノブがくすんだ金色をしている。


この扉を開けたら・・・・・・お前がここにいんのか?






情けねぇな・・・
俺は足が震えた。




命をかけて俺を救ってくれたお前を俺はくだらねぇ誤解で拒絶して、お前をきっと散々苦しめただろう?
ここにいる3日間、どれだけお前が傷ついて泣いたのか、想像するだけで胸が痛かった。

けど、俺は決めたんだ。
俺はやっと決心がついた。

それでも俺はお前をもう一度この手に抱きしめる。
お前をもう絶対離さないっ





お前を信じて、もう一度向き合って、お前に俺の気持ちを伝えたいんだよっ。






「準備は出来たかい?。 お前を迎えに来た奴がいる。会うか?」



火影様はドア前で 優しい声でそう語りかけた。







「入るよ。」






ギギギッ・・・・





重たいドアを開くと、薄暗かった廊下とは対照的に太陽の光がキラキラと部屋中を照らしていて、
俺は最初目も開けられなかった。











・・・・」




俺は無意識にそう呼んだ。
そこにお前の姿が見えたら、きっと俺は強引にでも抱きしめてしまっていたかもしれない。

でも-------------------------------------------------------









サラサラ






部屋の明るさに目が慣れた頃・・・・
俺の耳に残っているのは、そんな音だけだった。










「しまったっ!!」







火影様の声。



「え?」







目の前には、がらんとした部屋だけ。


備え付けられた小さな窓のガラスは割られていた。
床に転がっている小さな椅子から、それで割ったんだろうと察しはついた。




のやつ・・・勝手にここを出たねっ」



火影様はその小さな窓を腕を組みながら見上げていた。



その窓はきっと俺には通り抜けられない・・・そんな小さなものだ。
でも、小柄ななら・・・・・


そこから外と遮断するために着けられたと思われる暗幕カーテンが風にゆれてサラサラと
音をたてていた。









「けど・・どうして?・・・これからお前の病院に一緒に行くはずだったんだよ。もシカマルに
 会いたいだろうと思っていたからね・・・待てずに一人でむかったのか?」




「いや、違う・・・・・」




俺には分かる。
・・・お前は俺に会うために病院にむかったんじゃないっ




「この部屋の窓はどこに繋がってるんすか?」


「急に、どうした?シカマル」


「時間がねぇっ とにかく早くっ!!」





心臓が高鳴る。




お前は俺の為に、俺を想って、俺には会わないっていう選択をしたんだっ

そうだろ?






あの時、俺は これで本当にさよならだ とお前に言った。






だから・・・お前は俺の為に・・・今会っちまったら、また俺を傷つけると想ったんだろ?













「この先は・・・・・・火影岩へと続く洞窟への道へと続いているはずだ」


「くそっ」



俺はその部屋からくるりと踵すを返す。





---------------時間がねぇ!!-------------------





「おい!シカマル!どうした?どこに行く気だ?」








火影様に答えている暇なんかなかった。




火影岩の真下。



記憶のねぇはきっと行ったこともねぇ場所だ。



あいつなら、そこから一体どこに行く?



急げっ 考えろっ!!


の行きそうな場所。記憶が無くてもあいつが行けそうなところ。
人目にはつかない場所のはずだっ

いや、かえって人ごみの方が目立たないと考えるか?











さっき来た廊下を転げるように走りながら、俺は必死で想像した。





がむかった場所はどこだ?)




火影岩から通じるいくつもの場所を頭の中で何通りも思い出してみる。




思考をフルに使うんだっ
今を逃したら、俺は一生に会えないかもしれないっ!!



今、あいつを救えるのは俺だけだっ!!!




















はぁはぁ・・・







屋敷の外階段を早足で降りる。









門の外に出たら、一気にチャクラを使うしかねぇ。



そうだっ あいつの鼻なら!! キバに応援を頼むかっ?
の行きそうな場所なら、俺よりいのの方が詳しいか?
ナルトなら、影分身でっ?
チョウジなら、倍化で里中を見てもらえる?
ヒナタの白眼でっ



俺は必死だった。
たぶん今まで生きてきて一番必死だったかもしんねぇ。



だってよっ
はきっと、俺には二度と会わないと決めたはずだ。
それが俺の為になると信じて・・・

だとしたら、もう俺の家に帰ることは絶対にねぇ。
かといって、サスケの家に行くはずもねぇ。


いのやナルト達に頼ったら、きっと俺に通じると考えるだろう・・・


だとしたら、俺や仲間達と二度と会わない場所に逃げようと考えるはずだ。


もう二度と、俺を苦しめない為に・・・・・











そしたら・・・きっと・・・この里に家族も何も無いお前は最後にきっと選択する。










----------------------いっそこの里を抜けよう・・・と----------------------------------










俺の先読みがあたらないなら、それに越したことはねぇっ
けど、万が一あたっちまったら・・・が里を抜けちまったら、俺はお前を探す術が無くなる。


木の葉以外のどこにお前が向かうかなんて、検討もつかねぇっ



だから掴まえるんだっ
早く!
お前を見つけるんだっ
絶対にっ!








今度は必ず、俺がお前を助けだしてやるからよっ!!!




、待ってろ!!











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