次の日。
その日は朝からどんよりと曇っていた。


立ち込めた雲のせいもあり、薄暗い朝だった。


いつものように、シカマル君の部屋で着替えていた私のところにシカママが呼びに来た。




・・・火影様から召集がかけられたの。至急、火影岩前へ全員集合よ」


「あっ はい。」



火影様というのは里で一番の忍びで、絶対権力者であることは聞いていた。

その人が里の忍び全員に召集をかけるという事は・・・
思い当たる事といったらシカマル君達の任務についての話ししかない・・・・



ふと窓の外を見ると、たちこめた鉛色の雲が空全体を覆っていた。


(嫌だ・・・・)


いつもとは何かが違う朝。


胸騒ぎのような変な感覚・・・・
心臓がドキドキしていた。
私は胸元の痣に手を置く。




<<大丈夫・・・シカマル君は今日、帰ってくるんだから!!>>

















っ!こっち」



いのちゃんに声をかけられた。
火影岩の前には、すでにたくさんの里の忍び達が集まっている。


私はいのちゃんの隣にたった。
後ろにはチョウジ君の姿も見えた。




(大丈夫・・・みんないるもの。いつもと同じ。同じだよ・・・)




それでも私の心臓はさっきから高鳴りっぱなしなの・・・
何かがおかしいの・・・・


「い、いのちゃん・・・」


意味も無く不安で、怖くて、たまらずに私はいのちゃんに小声で話しかけた。


でも、ちょうどその時、キーンとマイクの音が響き渡った。













「今日、みんなに集まってもらったのは、今回の任務の報告をするためだっ」












火影様の声に大勢の忍びが一斉にピンと背筋を伸ばす。
私もいのちゃんもまっすぐに火影様の方へと向きなおした。







立ち込めた雲があたりを夜のように暗くさせた。








「すでにみな分かっているとは思うが・・・今回の任務には大きな組織の動きがあった。
 ヘタをすれば、里の壊滅も避けられないような大きな事態だった。
 我々木の葉からは選りすぐりの精鋭部隊を派遣した為、最悪の事態は避けられたが・・・・
 我々も苦戦は免れなかった。」





そんなに大変な任務だったんだ・・・・
私は忍びとして生きるみんなの過酷さを改めて実感する。





「そして・・・われわれは今回の任務でまたたくさんの同胞を失った。
 改めて、ここで合同葬儀の儀を行おうと思う。」







火影様の声が響き渡ると、
鼻をツンとつくような匂いがあたりに立ち込めはじめた。








そうか・・・これは・・・・線香のにおい。









「命をかけて里を守ってくれた我々の仲間達に最後の別れの言葉を・・・・」






火影様の声とほぼ同時に、木の葉の里に雨が降り出した。






それはやわらかく静かで、とても穏やかな雨だった。










一人一人順番に亡くなった人達の写真がたてかけてある机の上に花束を添えて行く。




その間に、今回の任務で亡くなった仲間の名前が一人一人呼ばれた。




その家族達なのだろう・・・写真に寄り添って泣いている人
が何人もいた。



その光景に胸が詰まった。
もし・・・もし・・・シカマル君が死んでしまったら・・・
私もきっとあんな風に・・・・・







私は列に並びながら、シカマル君のことを考えていた。







ナルト君はシカマル君は生きていると言った。
そして、帰るのは今日だと・・・・


この式の間にも、シカマル君達が戻ってくる可能性は無いのだろうか・・・・
私はぼんやりとそんな事を考えていた。



突然の雨に傘ももたずに集まったみんなは、雨にぬれながら、無言で花の列に並び続けた。



雨はやむ気配もなく降り続ける。
まるで里中のみんなの涙みたいだ・・・・・




(早くシカマル君に会いたい・・・)




なんだかとても寂しくて、シカマル君の顔が見たいの。
声を聞かせて?
私に触って欲しいよ・・・・



いつも眉間に寄せたシワ。ぶっきらぼうな態度に不機嫌そうに曲がった口元。
それでも、シカマル君が私を呼ぶ声はいつだって心地良かった・・・・







背の高いシカマル君はいつも私を見下ろして、少し鼻にかかった低い声でそう呼んだ。




シカマル君の姿を思い出す。



たった何日しか離れていないはずなのに、随分と時が経ってしまったかのように、シカマル君の姿が
遠く感じた。



胸の痣がまたズキンと痛んだ。


(シカマル君・・・・・)



ねぇ・・・この妙な胸騒ぎは何?





















みんながもとの列に戻る。






「それから・・・もう一つ報告がある」





マイクを通した火影様の声がキーンと耳に残った。








「昨日の部隊から遅れて戻る予定だった隊員からの連絡が途絶えた。
 まだ消息も明らかになっていない・・・今、すでに迎えの隊をむかわせてはいるが・・・
 さきほどの連絡だと・・・いまだ彼らの消息は不明のままだそうだ・・・・」




え?
胸の痣がうずくような感覚。





(それは・・・どういう事?・・・・・)




息があがる。
心臓がバクバク言って、足が震えた。




「家族のものは心配だと思うが・・・詳しい情報が入るまで
 いましばらく待っていて欲しい」





心臓がドキドキする・・・それは・・・誰のこと?・・・・
怖かった。
聞きたくないっ ・・・・それはまさか・・・




不明になっている隊員の名前がマイクを通してつげられていく。



「不知火ゲンマ・・・・・・・・・








「嘘だろ?ゲンマさんが?・・・・・」


後ろで誰かが驚きの声をあげた。






ゲンマ・・・・?!




その名前を聞いた瞬間に、何故だか私の脳裏に、あの男の人の姿が浮かんできた。



・・・まさか・・・ゲンマって、シカマル君を向かえにきた・・・
あの人?!・・・・・








マイクを通して、もう一人の名前が火影様から言い放たれる。



記憶の無い私には知らない名前・・・

お願いだから、それ以上、誰の名前も言わないでっ

心臓がドキドキと高鳴る。








でも---------------------------------------------








「・・・・・・・・・奈良シカマル。以上3名だ。」









(奈良シカマル)




耳にこだました声。



目の前が真っ暗になった。















消息不明。














嘘だ・・・・


























っ!!!」





いのちゃんに肩を抱きかかえられた。



たぶん私は立っていられなくなったんだろう・・・・・




意識が朦朧とする。
これは夢?




・・・何も・・・聞こえないっ
聞きたくないっ




もう誰も何も言わないで!!!











嘘つきっ










今日帰ってくるって言ったじゃない・・・・・・

どうして?どうして?







シカマル君・・・・どうしてっ!!!


























気がついたら、あたりに人はまばらになっていた。



雨は地面の土に跳ね返り、体にあたる冷たさに薄れていた意識がだんだんと戻ってくる。



夢なんかじゃない・・・これは現実なんだ・・・・・





(シカマル君は帰ってこないっ)













「帰ろう・・・



その場に座り込んでしまっている私に、雨に濡れたいのちゃんが優しくそう言った。



「いのちゃん・・・・」



私はぼんやりと雨に濡れた金髪の綺麗な髪を見つめていた。



・・・一度帰った方がいいよ。シカマルのおじさんとおばさんは今、火影様に呼ばれてる・・・」


「チョウジ君・・・」


雨に濡れたまま、私の傍に立っているチョウジ君をゆっくりと見上げた。



「しっかりしよう。待ってる私達がしっかりしなきゃ・・・帰って来たときにシカマルに笑われちゃうよ」


いのちゃんは笑ってた。
嘘つき・・・・



「そうだよ。僕達が笑ってなきゃ。シカマルだって帰ってきずらいよ」


チョウジ君もにこりと微笑んだ。
嘘つき・・・・





   嘘つきだよ二人とも・・・・






だって・・・・いのちゃんもチョウジ君も・・・・泣いてるじゃないっ












雨が頬にあたる。
体中を濡らしていく。

寂しいよ・・・悲しいよ・・・不安だよっ




どうして、シカマル君なの?

ねぇ神様。

どうして、シカマル君がいないの?

こんなに私達、シカマル君を大好きなのに・・・こんなに会いたくて、ずっとずっと待ってるのにっ

お願い、誰か教えて? 






シカマル君は生きてるって言ってよっ!!!







私達は3人で雨の中、声を出さずに泣いた。そして、最後に手を握り合って、誓ったんだ。












<<シカマルは(シカマル君は)絶対に生きて帰ってくる!!だから、信じて待とう!!!>>




















・・・じゃあね」


いのちゃんは手を振った。


「何かあったらすぐに連絡するよ」

チョウジ君は笑ってくれた。





「うん・・・・・・」











それでも雨はやまなかった。

それはまるで、私達の涙みたいに。









雲はどこまでも空を真っ黒に塗りつぶした。

それはまるで、私達の不安な心みたいに。

















私は・・・・・その場から動けなかった。














木の葉の門の前で、雨の中、私はずっと立ち尽くしていた。







目の前には、雨でぼやけた一本の道。
昼間だというのに、遠くはかすんで薄暗いままだ。





シカマル君は絶対に・・・絶対に死んだりしないっ!!!
私はシカマル君を信じてるっ!!!




この道から・・・絶対に木の葉に帰ってくる!!!




ズキズキと古い傷のように痛む痣をギュッと掴んだ。













































「おいっ シカマル!! 大丈夫か?」







「あっ・・・・あぁ・・・・・なんとか大丈夫っすよ」





ちっ




だいぶ上からゲンマさんの声が聞こえる。
たちこめた雨雲のせいで、あたりは薄暗く、俺にははっきりとその姿を見ることは出来なかった・・・





こりゃ、相当下まで落ちたか?





「しくじったぜ・・・・ったく」




















俺とゲンマさんは足に重症を負い、意識を失っている隊員を連れて、本隊より遅れて木の葉に向かっていた。
怪我をした隊員をおぶっていたゲンマさんの道しるべとなるべく、俺が先頭を走っていた。



空にたちこめる湿気た空気。



一雨くるような予感はしていた。




「シカマル、急ぐぞ。雨に打たれたらコイツの体力がなくなる」


後ろから声がする。
俺はゲンマさんと、ゲンマさんの背中で意識をなくしている隊員をそっと振り返った。



「分かってますよっ でも、この霧じゃ・・・」



いつの間にか、もやがかかり、20M先すらぼやけていた。



「とにかく、雨が降る前に、休める場所をみつけた方が得策だと思うんすけど・・・」

「駄目だ。怪我の状態も悪いうえに食料がもう無い。こいつだけでも早く木の葉に連れ帰らないと・・・・」


「・・・・了ー解。・・・」


はぁ・・・・・


ため息も出るぜ。
腹が減ってるのは俺も同じだ。

でも、ゲンマさんが言うように、あいつの体力はそう長く持ちそうもねぇ。

応急手当にも限度がある。
せめて、何か食べさせて体力だけでも回復させてやりてぇが・・・あいにく兵糧丸も底をついてるっ


最悪だっ










俺はとにかく木の葉に急いでもどることだけを考えた。




もう誰も死んでほしくねぇっ



「シカマル!あっちへ行くぞ。確か、あっちは木の葉への近道があるはずだ。道は悪いが、ここを行くより
  早いっ!悪いが、先頭に立ってくれ」



ゲンマさんが指示した方向には、目印のように置かれた大きな尖った岩があり、その先に細い道が見えた。



「げっ あっちっすか?」


だがあっちは霧が更に深い。
視界が悪い。


でも・・・・


隊員一人の命がかかってるんだ


めんどくせぇなんて言ってられっかよっ



「分かりました。んじゃ、行くっすよっ!」


ビュッ





枝をクッションに、俺とゲンマさんは右の方向へと迂回した。











案の定、視界はすこぶる悪い。
霧が濃い。
足場も悪い。


こっち側は年中そんな気候なのか?高い木々の枝はどれも湿気でもろくなっていた。


とっさの判断で、足場の良い枝を捜す俺の集中力も、もう限界がきそうだった。





「シカマル、お前は大丈夫か?」

背中に仲間を背負うゲンマさんだって限界は近かったはずだ。


「あぁ・・もうそろそろやばいですけどねっ でも・・・めんどくせぇけど、そんな事も言ってらんねぇしっ」


「はは・・・だな・・・・」


ゲンマさんは力なく笑う。


それでも、俺達は足をゆるめなかった。
とにかく、仲間の命が何より優先だと、それが木の葉の忍びである俺達の想いだからだ。








それから30分・・いや正確にいやぁ15分ぐらいしか走ってなかったか?








目がかすむのは、霧のせいだけじゃないとだんだんと理解した。
体力の低下に伴って、視力も落ちてきてる。
これ以上は正直やべぇぞ。








過酷な任務。
敵の圧倒的な強さに俺達木の葉の忍びは苦戦した。

それでも、敵の勢力を半分以上おさえ、なんとか撤退させられたのは、
俺達の作戦勝ちと言っていいだろう・・・それでも最後はナルトの爆発的な力がなければ、危なかった。


やっとの想いで危機を乗り切ったが・・・その代償として、俺達も仲間を失った。
たくさんの負傷者も出た。


それでもまだ傷の浅い者が仲間の遺体を背負い、傷の深い者を背負って、木の葉まで運ぶため、帰路を急いでいた。







俺とゲンマさんは、最悪、追い忍の可能性も考え、隊の一番後ろを走ることになった。






誤算だったのは、ゲンマさんの背中にのせた仲間の容態が悪くなり、あまりスピードを出せなかった事だ。





俺達は間もなく、前の隊とはぐれてしまった。


























「どうだシカマル?行けそうか?」

「まぁ・・・なんとか」



はぁはぁ・・・
息が切れる。
それでも、俺達は順調に飛ばしているはずだった。

こう見えても、俺は方向感覚は悪いほうじゃねぇ。





その時・・・・・・・






「おろせっ 殺してやるっ!!」


ゲンマさんの背中で怪我をした隊員が突然声を出した。



「おい?意識が戻ったのか?どうした?」





そう、意識を失っていたから、こいつはまだ状況を掴みきれてねぇんだ。
完全にゲンマさんを敵だと勘違いしてやがる。
意識もまだはっきりとしてねぇんだろう・・・・






こいつはまだ覚醒しきれていない意識の中で戦い続けてるんだっ


忍びとは・・・・そういうもんだろう。








「落ち着け!!俺達は木の葉の仲間だっ!!お前は怪我をして、意識を失ってたんだよっ!!」



ゲンマさんは背中でもがく相手に必死で話しかける。
それでもまだ意識がはっきりしねぇのか背中で暴れだした。



「あぶねぇ!!!」











それは一瞬だった。





枝の上でバランスをとれなくなったゲンマさんが見えたから、俺はその体を支えようとした。





前方は注意してた。
けど、予想外の後ろの出来事に、俺は後方へ飛びうつる枝への注意を怠った。





ゲンマさんの体を木から落下しないように押し戻すことは出来た・・・が・・・・





バキッ




え?





俺の足場の枝は腐っていたらしく、俺の体重を支えきれずに折れやがった。





「シカマル!!!」


ゲンマさんが俺に伸ばした手は空をきった。














「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」





















霧で下まで見えなかったが、体が落下して初めて気づいた。
ここの下は崖だっ。










崖に転がり落ちる瞬間、無数の枝や石が俺の体を切りつけていく。
忍びの修行と同じだ。俺はとっさに身を守る為にガッチリとガードを固めながら


まさに転がり落ちていった。



























はぁはぁ・・・・・




気づいたら、腕と足に無数の傷をおった。


打ち身か?それとも骨までいったか?
体を起こそうとするたびにギシギシとそこら中が痛んだ。




「やっべぇなこりゃ。」




俺はこの崖をもう一度登りきる体力も、チャクラも残っちゃいねぇ。
それにこの怪我・・・・


もうこれ以上は無理だ・・・・

















「ゲンマさん。背中のやつ・・・意識回復しましたか?」


上に向かって叫んでみる。
深い霧でゲンマさんと仲間の姿なんてぇのは、形すらも見えなかった。



「あぁ・・・なんとかな。それよりお前は大丈夫か?」



ゲンマさんの声は上の方から響いて聞こえる。
そうとう俺達離れちまってるらしいな。


「ゲンマさん!」


「あぁ!」



仕方ねぇよ。
これは完全に俺のミスだしな。


「背中のやつを背負って、先に木の葉に帰ってください。もうこれ以上、そいつに無理
 させられねぇしっ 俺はここで救助待ってます」


「お前を置いてけってのか?」


ゲンマさんの叫び声は、俺への答えを決めかねているようだった。


「とにかく時間がねぇっ そいつの命を助けるためには一刻も早く木の葉に
 戻るしかねぇし。俺は・・・一晩ぐらいここで持ちこたえてみせますよっ」



しばらく無言が続き、ゲンマさんの声がした。






「シカマルっ・・・木の葉に帰ったら、すぐにでも医療班をまわしてやるっ 」


「はいはい。信じてますよっ ゲンマさん!!」


「死ぬなよ!シカマルっ!!」









声は途切れた。








はぁ・・・・・






俺は体中の力が抜け、薄暗い岩の陰にうずくまった。






どうやら腹のあたりから、出血もしてるらしい。
俺ももうここでダメかもしんねぇ。






けど、ここでゲンマさんを足止めさせても、どうなるもんでもねぇだろう・・・


俺達にはもう・・・食料も、忍具のほとんども、残っちゃねぇんだからよ。


だったら、せめて・・・せめてゲンマさんと俺とで必死で助けたあいつだけでも
助けてやって欲しい。
木の葉の仲間として・・・せめてあいつだけでも・・・・



俺は意識を失いながらも、必死で木の葉の為に戦おうとしていたあいつのことを
考えた。




生きて帰って欲しい・・・一人でも・・・あいつの帰りを待ち望んでいる誰かが、
きっと木の葉であいつを待ってるはずだから・・・・





湿った空気。
息を吸い込んだら、草の匂いがツンと鼻についた。



何も見えねぇ・・・・・



情けねぇな・・・こんなとこで死ぬのかよっ・・・・・




「はぁ・・・・」



ぐったりと、力をなくした腕が地面に落ちる。
ネチャリと湿った土が手の甲についた。




上を見上げると、ちょうど俺の座った場所からは、霧の薄れた箇所から、少しだけ星が見えた。




だが時期にここには雨が降るだろう・・・
気温、湿気、匂い、空気・・・経験から、体感してだいたい天気ぐれぇは分かる。





(ってことは・・・・明日は・・・木の葉も雨か?)







ふとそんな事を想った・・・・・・・








<<ちゃんと元気に帰ってきて!!じゃなきゃっ私・・・シカマル君を許さないからっ!!>>









ハッ とした。




バカだな俺・・・
こんな時に、やっぱり思い出すのはの事だ。


最後に聞いたお前の言葉が俺の心にずっと響き続けてる。
思い出すのは、あの時のお前の泣きそうな顔だ。






・・・」




名前を出したら、なんかしんねぇけど泣きたくなった。




見上げた空にぼんやりと見える星。
お前もこの空を見てるか?

お前は今どんな気持ちでいるんだ?


ちゃんと寝てんのか?


飯食ってんのかよ?



なぁ・・・・・・お前ちゃんと・・・・・・ちゃんと笑ってっか?

















<<無事に帰ってきて・・・・大好き・・・・シカマル君>>













バカだろ?俺。
あの言葉を忘れようと必死で戦った。
あれは幻聴だって自分に言い聞かせて・・・忘れようとして・・・
だってありえねぇだろ?
が俺を好きだなんて・・・



なのに・・・最後の最後で、やっぱり俺は・・・俺は・・・・






・・・お前に会いてぇ」





俺の手はグッと地面を削り、握りつぶしていた。





重たい体を引きずる。

目の前に小さな洞穴がある。
そこまで行こう。
夜の山はきっと冷える。でも・・・あそこなら、少しでも寒さがしのげるはずだ・・・・




俺の意識もとびとびだった。
何度もバランスを崩して、その場にへたりこんだ。



「くっそ。駄目だ・・・もう」



立ち上がろうとする気力すら沸いてこねぇ。
その時、俺の耳に声が聞こえる。







『シカマル!シカマル!こっち!!』






俺の前には、ぼんやりと、忍びの服を着たが見えた。






・・・・・・・」











『もうっ めんどくせぇなんて言ってないで、早く早く来て!!』

『だぁ・・・もうっ かったりぃんだよっ めんどくせぇな。アホ




俺の声が聞こえた。





(あぁ・・・これは・・・・・・)




記憶のあった頃の忍びのと俺との過去の幻だ。




『シカマルのばか。』



少しむくれたの顔。








「うるせぇ・・・・ばか。」






それでも、俺の薄れる意識が必死で反応するのは、目の前に見える幻が『お前』だからだろう・・・
ギリギリの力で俺は洞穴にゆっくりと近づく。



(もう少しっ もう少しだっ  、たとえ幻でも構わねぇ。俺を呼んでくれっ 
  そしたら俺、ここから生き延びてみせっからよっ)



「はぁはぁ・・・」


息があがる。
目の前まで来ているはずなのに、洞穴には辿りつけないような錯覚をおこしていた。




「ここで・・・限界かよ?・・・・」





ぼやけた視界にの姿がまた浮かんだ。




『シカマル君!』



最後に俺に手を伸ばしたのは記憶を無くした今のだった。





『ちゃんと帰ってきて!!私、ずっと待ってる。信じて待ってるよっ!!』




泣きそうな顔。
そんな顔すんな。

幻のお前だって、俺の気持ちをこんなに奮いたたせる。





・・・俺は・・・・」


(お前を愛してる)


無意識に目の前にいるを抱きしめようとした。
グッと腕を伸ばしたら、そこでの幻は消えちまった。







「へへ・・・やっぱ届かねぇか・・・」







俺はようやく洞穴に辿りついたらしい。
そこでばったりと倒れた。



頬に湿った土があたってる。



・・・・
俺は、俺はよ・・・情けねぇほど、やっぱお前が好きだ。 
けど・・・・幻でさえも、今の俺じゃぁ、お前を抱くこともできねぇんだな・・・・







ゆっくりと眠気が俺を襲う。
記憶はそこで途切れた。
































「おい。もう帰れっ・・・風邪ひくぞ・・・・」



門の前に立っている男の人に声をかけられた。



「イズモ・・・こいつ・・・奈良家で預かってる・・・確か・・じゃ?」

「あぁ・・・そうみたいだな・・・・」





二人の男の人達は私のそばにやってきた。



「シカマルからの連絡は・・・まだ無い。火影様から今朝言われたろ?とにかく今は家に帰って・・・」





「嫌ですっ 私・・・帰りませんっ」


「おいっ!!」

「コテツやめておけっ!!」


コテツという男の人は怒っているようだった・・・でも・・・



「シカマル君はきっと帰ってきます。だから・・私・・ここで待ちます」





分からない。
どうしても、胸騒ぎがする。
帰りたくなかった。


嫌な知らせも、良い知らせも、誰よりも先に知りたかった。


シカマル君の今の状況をっ!!!










「だったらせめて・・・ここで待っていろ」




イズモという男の人が門番のいる屋根のある場所へと私を連れていった。
ここからなら木の葉の門から帰ってくる人を真っ先に見つけることが出来る。







私は濡れた体を抱きしめながら、その場に立ちつくした。









寒くて体がガタガタと震えた。


朝から曇っていたから正確な時間など分からない・・・でも・・・


間違いなく、陽はくれていた。


私は結局、何時間もその場所で待っていた。


夕方・・・そう夜というにはまだ早い時間だったと思う。








「おいっ 誰か帰ってきたぞっ!!!」


コテツさんが叫んだ。





途端に生気を失っていた体に力が入る。
私は濡れた体を抱きかかえながら、まだ雨の降りしきる門の前に走りでた。






人影。何人か見えるっ!!!










「コテツ!イズモ!!」





遠くから叫ばれた声はシカマル君では無かった。
それでも、私はあきらめなかった。

少しでもいいっ
シカマル君の情報が欲しいっ
そして、生きているという証が欲しいっ!!









4人の隊員が木の葉の門へと戻ってきた。








「それで?ゲンマさんは?シカマルはどうした?」




イズモさんが隊員の一人に声をかけた。


隊員の誰もが、はぁはぁと粗い息をし、何時間も森をさまよったのだろう・・・疲れきって見えた。
でも、その隊の隊長は 途切れ途切れながら必死で答えてくれた。




「だめだ・・・見つからないっ はぐれたと思われる場所まで戻ったんだが・・・霧も深いし、
 声にも反応が無いっ・・・あそこは道が幾重にも分かれているからな・・・もし道に迷ったとしたら・・・
 食料も体力も残っていない彼らでは・・・・・もう・・・・・」


節目がちに小声になった隊長の言葉。
でも、私には信じられなかった。
信じたくなかった!!



「違う!!そんなはずありませんっ!!絶対生きてます!!お願い!もう一度探して?
 シカマル君が死ぬわけないのっ!!!お願い!!お願い!!」



私は思わずその人の胸もとを両手でグッと掴んだ。
わかってる。
この人たちは霧と雨の中、必死で探してくれた。
でも、でも、お願いっ もう生きてる保障が無いなんて言わないでっ!!
 



「やめろっ !!」




イズモさんに抱きかかえられた。




「だってっ!!」


「わかってる。シカマルやゲンマさん達が死ぬなんて思っちゃいないよ。ただ・・・今日はもう捜索は無理だ・・・
 じきに夜になる・・・この霧と雨じゃ・・・二次被害も考えられるしな・・・明日の朝が勝負だ・・・」





それは正論だ・・・
けど・・・私には許せなかった。
だって、この闇の中、この霧と雨の中、どこかでシカマル君は必死で生きようとしているかもしれないっ
救助を持ってるかもしれないっ

それなのに、朝までなんて待てないよっ!!





「とにかく、火影様に連絡を!」

「あぁ」



帰還した隊員達は一斉に火影様のところにむかった。






残された私はイズモさんの腕につかまって、わーわーと泣いた。





「泣くなよ・・・お前も記憶が無いとはいえ、忍びだろうが・・・こんなことは・・・これから先もしょっちゅうあるぞ」




コテツさんは私の頭をポンポンと叩いた。
それはきっと、コテツさん琉の慰めだったのかもしれない・・・





でも・・・・

違う。
違うよ。
私はシカマル君が帰ってこないから泣いてるんじゃないっ・・・


愛する人がどこかで苦しんでいるのに・・・・私には何もできないっ
無力な私が悔しいの・・・許せないの・・・
私がシカマル君を助けてあげられたらっ!!!


忍びとしての記憶さえ戻るなら・・・いますぐにでもあなたを助けに行きたいのにっ!!!


悔しいっ 悔しいよっ


私はそのまま泣き続けた。











それから何時間も経った。









「帰れっ」

「そうだぞ・・・もう今日は帰った方がいい。」


さんざん二人に言われた。



でも私は帰らないって決めたの。


私の手で助けてあげられないのなら、シカマル君を真っ先に迎えてあげるのは私だって
・・・そう決めたから・・・


「帰りませんっ シカマル君がちゃんと戻ってくるまでここにいますっ」


空気は一段とつめたい。
雨は柔らかくとも、そのせいで気温はぐっと下がっている。
もうきっと夜・・・・
里を歩く人影は無い。





「お前・・・頑張るな・・・一応、奈良家には連絡しといたが・・・明日の朝には帰れよ・・・・」




イズモさんは はぁ とため息をつきながらそう言った。




「明日の朝・・・また救助の隊が出るそうだ・・・だからお前の役目なんてねぇぞ」



コテツさんもぶっきらぼうにそう言った。



「いいんです。それでも・・・朝までずっと待ちますから・・・・」






ふぅ・・・・ 二人は同時にため息をついていた。

















その時・・・・・・・・



























ベチャッ ズズ













遠くから、かすかに何かの音がする。








コテツさんもイズモさんも 門の先に向かって、グッとクナイを構えた。







夜の闇と、霧と雨のせいで、前方に何が近づいてくるのか、何も見えなかった。





!お前は下がれ!!・・・」



緊迫した空気が張り詰める。




サーーーーーサーーーーー



柔らかい雨音にまじって、明らかに木の葉の門に近づいてくる、妙な音。






べちゃっ べちゃっ ずず・・・・











黒い塊のような影が遠くに見えてきた。









心臓がドキドキする。






私はコテツさんとイズモさんの背中の後ろで目を凝らした。





それがたとえ敵だったとしても、私は逃げるつもりなんてさらさらなかった。







でもそれは・・・・・

















「ゲンマさん!!!」



声と同時に、コテツさんもイズモさんもゲンマさんのところに走り寄っていく。





ゲンマさん・・・シカマル君も?シカマル君もいるの?




3人で一斉に走り寄った。







「ゲンマさん!大丈夫ですか!!」



ゲンマさんは、シカマル君を呼びにきた時の姿より、ずっとやつれていた。

はぁはぁと肩で息をして、背中でぐったりした仲間をおろすと、朦朧としている意識で言った。



「こいつを早く木の葉病院へ!!急げ!!まだ助かるぞ!!」


自分だって、もう少しで死にそうな顔をして、ゲンマさんはそう叫んだ。






仲間を守る為に、どれだけ苦しい思いをして、木の葉まで帰ってきたんだろう・・・・

ゲンマさんも怪我してるのにっ!!




「ゲンマさんは大丈夫なんすか?」

「俺は大丈夫だ。ここで休めばなんとか歩けるよ」

「分かりましたっ!!こいつは俺が連れていきますっ!!」




コテツさんは意識のない仲間を背負うと、木の葉病院へと連れていった。










「それからな・・・あいつも・・・シカマルも重症だが生きてるっ」 





(シカマル君は生きてる!!!)




ようやく聞けたっ シカマル君が生きてる証がようやく見つかったっ!!
体の力が抜けて、私はその場にしゃがみこんだ。




「シカマル君っ!!良かった・・・・」

心臓がドキドキして、体が震えた。



「俺達は道を迂回して、前の隊のやつらとは別ルートで帰って来ていたんだっ 」

「別ルート?どうりで後から追った隊が見つけられなかったはずだ・・・」


イズモさんが呟く。


「いいか・・・戦闘地点から俺達は本道を通りまっすぐに進んだ。前の隊とはぐれた時点で、約5KM前進。右手に見えた尖った岩
 を目印に迂回し、約3KM走った先でシカマルは崖に転落した。
 救助を・・・出してやってくれっ この夜に耐えられる体力があいつに残っているとは思えない・・・」



「はっ!! すぐに火影様に連絡を取ります!!」


イズモさんが ぼんっ という音とともに消えた。



「シカマル君がっ」


生きてはいても、危険な状態に変わりはないんだっ
心臓は相変わらず高鳴っていた。
助けたいっ シカマル君を助けて欲しいっ!!!




震えている私をなだめるようにゲンマさんの優しい声がした。



「・・・・お前、名前はだっけか?」



ゲンマさんは、地べたに倒れこんだまま、うっすらと笑った。



「は、はい・・・・」


「そんな顔すんな。シカマルは俺達木の葉の仲間が絶対に助けるっ!もう心配いらねぇぞ。
 一人でずっと朝からここで待ってたのか?こんなに濡れちまってよっ」


ゲンマさんは ふっ と笑った。


「シカマル君は本当に・・・本当に・・・生きてますよね?大丈夫ですよね?」


自然と涙がこぼれた。
もう・・・嘘だなんていわないで・・・
安心させて・・・・


「あぁ・・・あいつも馬鹿だな。こんなかわいい彼女がいるくせによぉ・・・・お前を悲しませないようにって、
 火影さまに条件までだして、こんな過酷な任務に出たくせに・・・結局てめぇのせいで泣かしてんじゃ、世話ねぇな。」


「シカマル君が火影様にだした条件?・・・私を悲しませないため?・・・・・」

はじめ、意味が分からなかった。




ゲンマさんはニヤリと笑った。



「シカマルが任務に出てから、お前のところに山中いのが来なかったか?」


予想外の言葉に記憶を辿る。
そういえば・・・・シカマル君自信も知らされていなかった急な任務だったはずなのに、いのちゃんはいち早く私の所に
来てくれて・・・しかも、シカマル君の任務のことを既に知っていた・・・・



「シカマルが火影様に頼んだんだよ。・・・・・」
 


















『めんどくせぇけど、話しを聞いたら出発しますよっ ゲンマさんをよこしてまで俺を呼ぶってことは、
 俺を必要とする任務なんすよね?』



『相変らず生意気だなっ けど・・・その通り、今回はお前の頭脳が必要だっ やってくれるか?』



『はい。・・・でも一つだけお願いがあるんすけど・・・』



『お願い?なんだ・・・言ってみろ』







俺はシカマルの隣で、任務に出るのに条件をつけるたぁ・・・こいつもちゃっかりしてやがるな・・・とか
思ってた。
まぁでも・・・今回は命賭けの任務だ。多少のわがまま聞いてもらうってのもありかもな・・・そんな風にも思ったよ。




でも、あいつが出した条件ってのは・・・・




のそばに山中いのを付けるよう命じてください。』


『山中いの?・・・お前と同じ・・・確か10班の?いのいちの娘か?』



隣にいた俺も、さすがの火影様もびっくりしていたよ。



『はい』


『・・・どうして?』


はまだ記憶が確かじゃねぇ・・・気持ちも不安定なことが多い・・・俺が傍にいてやれねぇなら、
 いのが一番あいつの気持ちを理解してやれる。もし俺がこの任務で命落とすことになっても、あいつが傍にいて
 くれたら・・・は大丈夫だと思うんで・・・』






俺は耳を疑ったぜ。






これから命張って任務に赴くヤツが、てめぇより女の心配してるんだからなっ。





『よし。その条件はのもう。今後この任務が完遂するまで、山中いのには任務はつけない。の傍にいさせる
 よう配慮する』


『どうも。』


『で?シカマル・・・お前の条件とはそれだけか?』


『はい。後は・・・なんもいらねぇ。こんな任務は正直俺の柄じゃねぇっすけど、受けたからには命かけて引き受けますよ』













火影室を出るとき、俺はもう一度シカマルに聞いたよ。





『お前、やっぱりさっきの娘はお前の女なんだろ?じゃなきゃこんな条件一つでこんな過酷な任務受けるか?普通』


からかったつもりだった。
何、今更、照れてんだよっ って言ってやるつもりだったよ。

でも





『だから・・・違うっすよ。あいつは俺の女じゃない。・・・・でも、俺にとっては何より大切な女です』







いつもめんどくせぇばっかり言ってやがって・・・中忍になってからも、頭だけはキレるが、こいつには
本当に木の葉を守る気構えがあるのかっていつも疑いたくなるようなフヌけたヤツだと思ってた。


でも、こいつはもしかすると・・・他の誰よりまじめで、一本気な男なんじゃないかって、俺はそのとき、
大人びて見えたシカマルの顔をマジマジと見ちまったよ。


悔しいぐらい、あいつはかっこいい男に見えたしな。





『バーカ。そういうのは本人前にして言ってやれっ 』


『言わないっすよ。たぶん・・・死ぬ間際ぐれぇなら・・・言うかな?・・・』



へへへと笑ったシカマルの顔はやっぱ幼い顔だったけど・・・それでも、こいつは信頼できるって俺はその時
初めて、シカマルを中忍として本当に仲間として認めたんだ。


















「う・・嘘・・・・」



涙が止まらなかった。

シカマル君がいない間、私はいのちゃんが傍にいてくれて、どれだけ救われただろう・・・
それは、シカマル君が私のために考えて・・・ちゃんと私のことを分かっていてくれて・・・そうしてくれた事だった・・・・

シカマル君は私を・・・私を悲しませないために・・・死ぬ覚悟で任務に行った。
たとえそこで命を落とすことになっても、その後、私がちゃんと立ち直れるように・・・一人きりにならないように・・・
火影様に条件まで出して・・・


私のためにシカマル君は・・・・・
何も言わずに行ってしまった・・・・・・
私への気持ちを決して口に出さないままで・・・・・






どうして・・・どうしてそんなに私のことを想ってくれるの?
愛してくれるの?



私は・・・私は・・・シカマル君に何もしてあげてないのにっ























泣くなっ・・・あいつが帰ってきたら、受け止めてやってくれ。
 シカマルは絶対お前のために帰ってくる。 お前に会いたくて、死ぬ気で帰ってくるはずだっ」












「ゲンマさん」









もう泣かないっ!!
私はその時、決心した。








私はシカマル君に何をしてあげられる?
私はここでただシカマル君を待っていたら、受け止めてあげたらそれでいいの?









違う・・・もうシカマル君の愛情をただ受け入れるだけの自分なんて嫌だっ






私は・・・私は・・・・













「シカマル君の転落場所までの道を教えてください」



「あ?」










倒れたままのゲンマさんは不思議そうに私を見ていた。








「教えてください。」






私はじっとゲンマさんを見ていた。







「そう・・だな。 あの道は、年中湿気てる。木を渡るのは危険だ。地上から走って行けば、正常な忍びの足なら半日ってとこか。
 道は・・・・・・・」





ゲンマさんは木の葉からの道順を覚えている限り正確に教えてくれた。






。分かるか?」




「はい」



「よし。じゃあ、間もなく到着するだろうイズモが連れてくる救助部隊にこの事を早急に伝えてくれ。」




「いいえ。」




「あ?」









ごめんなさい。ゲンマさんに迷惑をかけるかもしれない。
でも、これは私が決めたこと。
傷を負って体力も奪われているゲンマさんに、私を止めることはきっと出来ない。


だから許して・・・・・




だって、私・・・私は・・・・





「もう受け入れるだけなんて嫌です。私があげたいんです。私の精一杯の想いを、今度は私からちゃんと
 シカマル君にあげたい。」



?」



「私が助けに行きます。 そして必ずシカマル君を無事に木の葉に連れて帰ってきます!!」



「忍びとしての記憶も無いお前には無理だ・・・ここは救助部隊を待って・・・」






私の体はゲンマさんの言葉の途中で何の躊躇もなく走りだした。





!おい!待て!! !!」






背中の向こうにゲンマさんの声が聞こえた。



でも、私は止まらなかった。









ねぇシカマル君。


今まで、たくさんの愛情をくれてありがとう。
私を好きになってくれてありがとう。


いつも、もらうばっかりでごめんね。


傷つけてばっかりでごめんね。







だから私・・・今度こそ絶対。
あなたのその愛情にちゃんと答えてみせるっ!!!



私がシカマル君を想う全ての気持ちをあなたにあげる。



私が絶対にシカマル君を助けだすからっ!!!















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