ドヤドヤと一気に病室に人がなだれこんでくる。
白衣といくつかの医療器具。
それがみな医者だと気づくのにはそんなに時間はかからなかった。


「どれ?見せてみな。」


その中にいた髪を2つに結った若い女の人が、私の側にやってきた。


(この人・・・・誰?)


隣にいた男の子は、その女の人にお辞儀をして、後ろにさがる。



その態度で、この女の人がとても偉い地位にいる人だとだいたい察しがついた。





私の腕をとり、脈を計ったり、頭に器具をつけられたりした。



「名前は?」

女の人は優しい声で私に尋ねる。

「分かりま・・・せん」


「ここがどこだか分かるか?」

「分かりませ・・ん」


「こいつに見覚えは?」

後ろにいたさっきの男の子を指差される。

「分かりません」




「そうか・・・・」



なんだか自分が情けなくなって、不安で怖くて、また涙がドンドン溢れてくる。



「記憶喪失だ・・・たぶん頭を強打したショックで一時的にそうなってるんだろう・・・・」



(記憶喪失?・・・・)


その言葉が私を余計に不安にさせた。



「とにかくだ・・・の事は今まで通り奈良家で頼む。体の傷は完全に治癒させた。
 でもなぁ・・・こればっかりは薬でどうこうなるような問題じゃない・・・時間が解決することだ」


女の人はそう言った。


「分かりました。はうちに連れて帰ります」


さっきの男の子の母親らしき人が頭を下げる。





器具は外され、医師達も足早に病室を出ていった。



私は何をどうして良いのか分からずに、ただただ、ぐすんぐすんと泣いていた。



私はこの先どうなるんだろう・・・・・・・
不安だけが胸を締め付ける。



「さ。帰りましょ。」


男の子の母親が優しい声でそう言った。
一人でどうしてよいかも分からない私は、すがるような気持ちで返事を返した。


「は、はい。」


泣きながらも、ベットをゆっくりと降りる。


「シカマル、ボケッとしてないで、は頭を打ってるんだから、支えてあげてよ!」


「へいへい。」

めんどくさそうに近寄ってくる男の子。
この子はシカマルって言うんだなぁ・・・・・ぼんやりと考える。


聞き覚えの無い名前。今さっき会ったばかりに思える男の子。
なのに、この親子は私を知っている・・・



不思議で不安で、頭はまだ混乱していた。



寝かされていたせいか、思わずグラつく私の腕をシカマルという男の子がグッと掴んだ。


「おら。しっかりしろってのっ」

「あ・・・うん。ごめんなさい」


思わず涙がこぼれた私の頬を男の子がピンとはじいた。


「泣くなってっ 心配してもはじまらねぇだろ? とにかく帰んぞ。」

「うん・・・・・」


そうだね。今は泣いてなんていられない。
記憶をなくしてしまったのなら、取り戻さなきゃ。


私はどうやら私と相当関係の深そうなこの親子を信用してみようと心に決めた。


母親の女の人はとても優しそうだし、それに・・・・
口は悪いけど、この男の子も本当はきっと良い人だと思う。
うん。なんの根拠も無いけど・・・たぶん・・・・きっと・・・・・




「あの・・・記憶が戻るまで・・宜しくお願いします。」

私は2人にぺこりと頭を下げた。

「大丈夫よ、!記憶なんて関係ないわ。私達はあなたを幼い頃から知っているの。
 あなたは私達の家族みたいなものなのよ。」

シカマル君のママが笑ってくれた。
すごく嬉しかった。
そして少し安心した。


(小さい頃から、私の事を2人は知っている・・・それじゃあ・・・
 シカマル君は私の幼馴染なんだ・・・・・)


隣のシカマル君を見る。


「あの・・・シ、シカマル君も・・・宜しくね・・・・」


これからお世話になるんだもん。だから精一杯の笑顔で言ったのに・・・


「は? く、君づけすんなっ!!気持ち悪ぃ・・・・」


真っ赤になって、プイッと顔をそらされた。


(き、気持ち悪いって・・・・ひどい!!!)


前言撤回・・・・・・
シカマル君だけは用心しておこう・・・・
この人、やっぱり嫌な人かもしれない・・・・・


じーーーっとシカマル君を見て、私は少し身構えた。



そんな私達のやり取りを隣で見ていたシカマル君のママは、一人
楽しそうに笑っていた。











「記憶喪失」

火影の口から出た言葉。
あぁやっぱりなと思う自分と、この先どうしてやったらは治るんだ?という
不安とで、俺は複雑な思いでを見ていた。


『こいつに見覚えは?』

『分かりません』



正直、の言葉に俺はすげぇ傷ついた。


記憶が無くなったら、俺のことも忘れちまうのか?お前は・・・


記憶の無いを俺の家で引き取ることになって、これから今まで以上にお前と
一緒にいられる事は正直嬉しかった。
でも、のよそよそしい態度。

「シカマル君」

なんて呼ぶなよ。

それじゃ、まるで、お前と俺はただのあかの他人みてぇじゃねぇか。


違うぜ。


お前と俺は・・・・・・・


なぁ・・・早く思い出せよ・・・頼むから思い出してくれ。
んじゃなきゃ、俺の方がマジで倒れそうだ。



やっぱ俺ってイケてねぇな・・・















3人で病室を出る。

ロビーまできたら、シカマル君のママから『受付に用事があるから、先に外にいるように』
といわれた。


シカマル君と2人で歩き出す。
入口の自動ドアがブイーーーンと開いた。


そしたら、一気に外の空気がなだれこんできて、少し肌寒い風がふわーっと体中に吹き抜けた。


「うおっ 寒みぃ」


シカマル君が肩をすぼめる。


温かい病室にずっといたせいか、私の体もビクリと震えた。

(本当・・・寒いなぁ・・・・・)

でも言葉にはしなかった。
だって、シカマル君と会話するのが、少し怖いんだもん・・・・・
また怒りそうだし・・・・


でも、


「ほらよっ」


シカマル君は自分が首にしていたマフラーをスルリと取って、私の前に突き出した。


「え?」


なんかすごく驚いて、私はシカマル君の顔を見上げていた。


「んだよっ いらねぇなら、俺がまたしちまうぞっ」


シカマル君はジロリと意地悪な目でそう言った。
いらない!!
って言ってやりたい気もするけど・・・・実際は本当に寒くて、目の前の
マフラーにゆっくりと手を差し出す。

シカマル君は へっ と笑った。


「あ、ありがと//////」


シカマル君のマフラーを首にくるりと巻きつける。
さっきまでシカマル君がしていたせいか、マフラーはちょうどぬくぬくとあったかくて、
それだけで、体がポカポカしてくる気がした。


「あったかーーい///////」


思わず言葉が漏れた。
なんか恥ずかしくて、とっさにシカマル君の反応を見ようと上を見上げたら、シカマル君は笑っていた。


今度は意地悪でもなんでもなくて、その笑顔はすっごく優しくて・・・・・
なんかドキドキした。
本当は意地悪なくせに・・・その笑顔は反則だよ・・・・//////
なんで私がシカマル君に照れなきゃいけないのよぉぉぉ


私は首に巻かれたシカマル君のマフラーをギュッと掴んで、俯いてしまった。
だってきっと私は今真っ赤な顔してると思うから。


「おい・・・顔赤ぇぞ・・・記憶なくした後は風邪か?相変らず忙しいやつだな、お前。」

上からシカマル君の声。


「違うよ・・・マフラーがあったかいからだもんっ・・」

私は俯いたままそう答えた。
(やっぱり意地悪っ!!)


でも、そっとシカマル君の手のひらが私のおでこに伸びてきて、ピタリと張り付いた。


シカマル君のポケットの中で温められていた手のひらはやっぱりポカポカあったかくて、
私はまた真っ赤になった。

一人で照れてる私に気づかないまま、シカマル君は当たり前のように、そうやって、
そして、

「熱ねぇな・・・」

なんて呟いている。


なんでこんな簡単に私に触るの?/////////
私とシカマル君てそんなに仲良しだったのかな?・・・・
それとも、シカマル君にとっては、こんな事、誰にでも出来る事なのかな?


私はジーーッとシカマル君を見上げていた。

「なんだよ」

私の視線に気づいたシカマル君がジロリと私を見た。

(怖い・・・・)

「な、なんでもないです。」

緊張して体が硬直する。



そしたら、シカマル君は へっ と鼻で笑った。



「どーでもいいけどよ、お前、小せぇから、引きずりそうだなっ」

「へ?」


私はあわてて、自分の体を見る。
シカマル君は背が高いから、確かにこのマフラーは私には長すぎた。
中途半端にだらりと体に垂れ下がっているマフラーは、やっぱりちょっと変かも・・・


そしたら、シカマル君の手が今度は私の首に伸びてきて、巻いたばかりのマフラーに手をかける。
離れて見たら、なんか抱きしめられてるみたいに見えそうなぐらい、シカマル君の体が
近くなって、私はまたドキドキした。

(男の子がこんなに近くにいるなんてっ 恥ずかしいよぉぉ//////)


シカマル君はお構いなしに、私にくっついて、マフラーをもう1重、首にクルリと巻いた。


「あぁ似合う。かわいいな」

「え?」


シカマル君に急にそんな事を言われて、びっくりした。
顔をあげたら・・・・


「だるまみてぇだ・・・・・・」


ニシシと笑われた。



確かにシカマル君のマフラーがぐるぐるに巻かれて、首とか無くなってて、
おまけに私は小さくて、なんかずんぐりって感じだけどさ・・・・


(だるまって何よぉぉぉぉ!!!)


「意地悪!!!なによもうっ!!」

シカマル君を殴ってやろうと拳を握り締めて、片手をあげたら・・・・

「だるまは手ぇ無ぇんだろ?」

またからかわれた。

「シカマル君のバカ!!」

今度こそ許さないんだからーーーーーー!!!

ぽかぽかとシカマル君の腕を殴り続けた。


「痛てっ 痛ってっ やめろって」

シカマル君は私の攻撃をやけられずに、腕にヒットし続けた。

ザマーミローーー!!

べーっと舌を出してやりたい気分。


「そんだけ元気なら大丈夫そうだな・・・


え?


殴っていた腕を突然グッとつかまれる。


「はい。めんどくせーから、もうおしまい」


シカマル君がそう言った瞬間に、自動ドアがブイーーンと開いて、シカマル君のママが
やってきた。


「2人ともお待たせ〜 さぁ帰るわよっ!!」

「へいへい」

腕をパッと離されて、シカマル君はママの後ろをめんどくさそうについていった。





さっきのは・・・・何?

もしかして、元気の無い私を元気づけるためにわざとからかったの?
そして、わざと私に殴らせたの?

それとも、やっぱりただ私をからかってるだけなの?


シカマル君の真意が分からなくて・・・・・

何よりまだシカマル君という人がどういう人なのか全然理解できなくて、私はさっきシカマル君に
つかまれた腕を見つめていた。

本当はよけようと思えば、よけられたくせに・・・・
すぐにでも、私の腕を掴まえてしまえば、あんな痛い思いしなくて良かったくせに・・・・


本当、変な人・・・・


でも、私の思いは複雑だった。
握られた手首がじんわりあったかい。






ボーーッとしていたら、シカママとシカマル君が振り返る。



っ!ボケっとすんな。寒いっつうの!めんどくせー」


眉間にシワを寄せた顔。
(め、めんどくせーって・・・・)

今度は怒ってるの???




「ま、待って」




やっぱりシカマル君はよくわからないよぉ。



2人を追いかけながら、ため息をついたら、白い息が空へと舞い上がった。








私はシカマル君達を追いかけながら、門のところをチラリと振り返る。
 木の葉病院 という文字が見えた。
やっぱり見覚えの無い名前



それから、私とシカマル君とママはゆっくりとシカマル君の家へ向けて歩きだす。




私は5歩ぐらい間をあけて、シカマル君の後ろを歩いた。
だって、近づいたら、また意地悪なこと言われそうなんだもんっ!!!



周りの景色をキョロキョロと眺める。


里の家々。
人びとの笑い声。
色々な店。


懐かしい感じがするのに、やっぱりどこも見覚えがあると感じるものは
見当たらなかった。




すると、シカマル君はチラリと振り替えって眉間にシワを寄せて言う。



「お前、一人でキョロキョロすんな!! 早く来ねぇと迷子になるぞっ!!!」

「へ、平気だもんっ」

「嘘つけ!俺の家なんて覚えてねぇくせしてよ!!」

「うっ」

こいつぅぅぅ!それが記憶を無くして傷ついている女の子に言う言葉!!!
でも言い返せない自分が情けない。




「こら!シカマル!がはぐれないようにしてあげてよ!!」

先頭を歩くシカマル君のママが、すぐ後ろにいた意地悪な息子を怒ってくれた。
シカマル君のママは本当に優しい・・・目の前の悪魔に比べて、ママは救世主に思える。



そう思った瞬間・・・・




「ったく、めんどくせー」

眉間にシワを寄せた悪魔がこっちに向かって歩いてくる。
私はギョッとして身構えた。

(きっとまた意地悪なこと言う気なんだっ!!シカマル君のママ助けて〜!!)

目をギュッとつぶった途端・・・・


きゃっ////////


シカマル君は私の腕をグイッとひっぱって、手を握った。


「お前は本当ちょろちょろと落ち着かねぇ奴だかんな。こうしてれば、はぐれることも
 ねぇだろ?///////」


「あ、ありがと・・・・」


よく分からないけど・・・なんか嫌な気は全然しなかった。



だって、意地悪で悪魔のようなシカマル君は、耳まで真っ赤にして、それでもちゃんと
私の手を離さずに握って歩いてくれている。


すごく嬉しかった。


誰かに捕まえてもらえているだけで、すごく安心するんだよ。


だって、私は誰かに必要とされている人間だったんだなぁって思えたから・・・・










仕方ねぇよな。
考えこんだって、答えなんざ出てくるもんじゃねぇ。

記憶はきっと自然に戻る。
そんで、俺がお前にしてやれる事っていったら、いつもみてぇに、普段通りに
接してやる事ぐらいだ。


冗談言って、お前がむくれて、その頬を弾いてやるぐらいのもんだ。


だけど、時々不安そうになるお前を、ふいに消えちまいそうなお前を、見逃さねぇように近くで
見ててやんなきゃ、・・・俺まで不安になんだよ。


あーーーぁ くそっ 柄じゃねぇよな。こんなこと。
めんどくせーぜ まったくよぉ。


手を繋いだまま、チラリとだけ後ろのを見る。
いつもと同じ顔。いつもと同じ髪。いつもと同じ小さい体。


でも・・・・お前は俺の繋いだ手に少しだけ緊張して、お前の作る表情は、
まるで他人のように見えた。



あぁ・・・なんか辛れぇな俺。



前に向きなおして、青い空を見上げる。
いつもと変わらない空。


と俺だけが、迷い込んじまったありえない現実世界。


お前はいつも・・・勝手に一人で暴走して、勝手に何かしでかして、そんでいつも俺の心を
勝手にかき乱していっちまうんだよっ

まったく、どんだけ心配させりゃぁ気がすむんだ?お前は・・・・






なぁ
早く思いだせよ。
俺はいつもこうやってここに、ずっと前からお前の隣にいつもいたんだぜ?



















何故だか分からないけど、青空に向かい風になびくシカマル君の髪を見て、私はふと考えた。

私は前にも、この人の後ろ姿をこうして手を握られながら歩いていたような気がする。






シカマル君と私・・・・一体どういう関係なんだろう・・・・・・?






意地悪ばかり言うくせに、最後はちゃんと優しくしてくれる。
ただの友達って感じには思えない。


もしかして・・・いや・・・まさかこの人・・・・でも・・・・まさかね?
頭の中で信じたくないような、でもここまでしてくれるってことは・・・・もしかして?


手を握られながら、私の頭の中はとある疑問が浮かんでいた。




「ねぇ・・・シカマル君・・・・・・」

私は勇気を出して話かける。

「なんだよ?」

めんどくさそーにシカマル君が振り返った。

「私とシカマル君て、どういう関係?」

「は?///////どういうって・・・」

シカマル君はなぜだか真っ赤になった。
私は自分の思っている事を思い切ってシカマル君に話してみた。


「シカマル君のママは私のママじゃないよね?」

「あたり前だろ・・・バカ」


シカマル君は はぁ とため息をついた。


「じゃあ・・・なんでシカマル君は私にこんなに優しくしてくれるの?」

「なんでって・・・・////////////」

シカマル君はそれ以上何も言わずに真っ赤になった。




(やっぱり・・・・そうなんだ・・・・・・・・)



私はなんとなく妙に納得してしまって、そのまま話しを続けた。






「分かったよ私。シカマル君は私の・・・母親違いの・・・・お兄ちゃんなのね」


「は?」


歩いていた足が急に止まったから、私は驚いて、シカマル君の顔を見上げた。
その時のシカマル君の、困ったような怒ったような驚いたような複雑な顔・・・・・・・・



え?シカマル君どうしたんだろう・・・もしかして・・・ち、違ったのかな?



「なんですって?シカマルがの? あははははははははっ」



先頭を行くシカマル君のママは何故だかお腹を抱えて大笑いしている。


「ご、ごめんなさい。違ったみたいですね・・・・」

「いいのよ。そうねぇ、とシカマルは残念ながら血は繋がって無いわ。でも・・・・
  ある意味それぐらい近い存在かもね・・・・」

「母ちゃん・・・余計なこと言うなよっ 」


シカマル君は少し怒ったようにそう言って、しかめっ面をした。


(あ・・・・私・・・・・もしかして、シカマル君のこと、すっごく怒らせちゃった?)


思わず口に出してしまった言葉。
私なんかと《きょうだい》なんて言われるのが、イヤだったのかな・・・・
なんかすごく自己嫌悪。

しゅんっ としてしまった。


「大丈夫よ、。きっと今に思い出すわよ。シカマルがあなたにとってどんな存在
 だったかね。」

「は、はい・・・・・」

シカマル君のママは優しく微笑んで、私の顔を覗き込んだ。

私は恐る恐るシカマル君の顔を見る。

シカマル君はそれっきり何も言ってくれなくて、また眉間にシワを寄せて、プイッと
顔を反らされてしまった。
やっぱり・・・怒ってる?・・・・・




それから、シカマル君はポケットに手を突っ込んだまま、少し俯き加減で私の前を歩いた。

手はもう繋いではくれなかった。
なんか・・・どうしてか分からないけど・・・寂しかった。

前を行くシカマル君の背中。
揺れる髪。
もう一度何か言って欲しいのに・・・






私もそれからはずっと無言だった。

だって、シカマル君が怖いから・・・・・・



でも、時々、シカマル君は私がちゃんと付いて着ているかを確かめるように、ほんの少しだけ
チラリと振り返って、私の姿を確認してくれていたのを私は知っている。



この人・・・やっぱり本当は優しい人なんだ。



でも、時々見えるシカマル君の横顔はいつも眉間にシワがよっている。
優しい言葉もかけてくれないばかりか、何も言ってくれない。 


だから私はすごく落ち込んだ。


嫌われたのかな・・・それとも、もともとシカマル君と私はそんなに仲良しでも無いし、
あまり親しい間柄でもないのかもしれない・・・・・


シカマル君の後ろ姿をずっと見つめながら、
(さっきからシカマル君は何を怒ってるんだろう・・・どうして何も話してくれないんだろう・・・・)
とそのことばかりずっと考えていた。


はぁ・・・・私、やっぱりシカマル君は苦手かも・・・・



そう思うとため息が出た。


「お前なぁ・・・・ため息つきてぇのはこっちの方だってんだよっ 俺のこと忘れやがるし・・・・

「え?」

突然振り向かれてかけられた言葉。
語尾が小さくてよく聞こえなかったけど・・・

シカマル君のその顔!!やっぱり怒ってるんだぁぁぁぁ


「ご、ごめんなさい・・・・何?」

「なんでもねぇよ・・・バカ//////」

「バ、バカ?」


うううううううぅ。


もう嫌・・・シカマル君はよい人なのか意地悪な人なのか・・・全然わかんない・・・・・


私は泣きたい気持ちを必死で抑えてシカマル君の後ろを歩き続けた。


















何がお兄ちゃんだよ!くそっ・・・・


俺がお前の兄貴だったら・・・今ごろお前をこんなにも心配なんかしてねぇっつうの。
記憶が戻ったら、絶対頭はたいてやる・・・このバカ!!


記憶を無くして、天然度がさらに増したが正直うらやましいぜ。


俺が今どんな気持ちでいんのか、思い知らせてやりてぇよ。くそっ


でも、俺はきっと何も言えねぇんだよな・・・


言ったらお前がまた不安になるって分かるから・・・
だってお前はまだ俺のこと、たった今知り合ったばかりの無愛想な男としか思ってやしねぇ
んだろ?


あきらかに、俺に怯えて、気なんか使ってやがるが、すげぇ遠く感じる。


手を伸ばしたら、いつだって抱きしめてやれる距離にお前はいるってのに・・・・
お前の心は俺からずっと遠くにいっちまったみてぇだ・・・・

お前の顔をまともに見るのも、なんか辛れぇよ。



「俺のこと忘れやがるし・・・・」



それは俺がうっかり漏らしちまった本音だ。


こんぐらい言ったってバチ当たんねぇよな?
ったく、本当にお前ってやつは、人の気も知らねぇでよっ






本当、めんどくせー 







チラリと振りむいたら、心配そうな顔で俺を見上げていると目が合った。


バカッ


んな顔すんなってのっ


俺は今、なにもしてやれない自分がはがゆかった。
何をどう話してやっていいかも分かんねぇんだよ。  っくそ



だからやっぱりプイッと顔をそらした。



いくじねぇなぁ・・・・俺。





俺と並んで歩くことも出来ずに、少し後ろを心配そうについてくるの姿。
まるで他人同士だ。
今までの俺たちの関係すべてが、お前だけ真っ白にリセットされちまって、取り残された俺は
どうしていいのか分からずに、きっとまたお前を不安にさせてんだろ?


あぁ・・・自分が情けねぇ・・・・


こんな時、他の男ならきっと気の効いた言葉とかかけてやんだろうけどよ・・・・


俺は無理。


どうやらそういう能力だけは他人より極端に低いらしい・・・・


昔から俺を知ってるお前ならともかく、今のお前に俺がどううつっているのか、
俺はまた不安になる。


少し離れてついてくるこの距離がすげぇもどかしかった。






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