ナルト君の話しはどれもおもしろかった。

任務でのドジの話しや、小さい頃のいたずらな話し。
そのどの話しの中にも必ずシカマル君やチョウジ君やキバ君の名前が出てきて、
4人の絆の深さを連想させた。


「ナルトって、本当メチャクチャしてたよね?」

チョウジ君はあははと笑った。

「へぇ。どんな?どんな?」

私は興味津々でチョウジ君達の顔を覗き込む。

「そっか。はまだ思い出してないもんね。アカデミー時代の私達の話し」

いのちゃんもふふふと笑う。

「こいつは、いっつもイルカ先生に怒鳴られてよっ 本当めんどくせぇやつ」

はぁ・・・シカマル君は本当にめんどくさそうにため息をついた。

「うるせぇ!お前らだって、いっつも廊下に立たされてたじゃねぇかよっ!」

ナルト君がムクレると、

『お前もだろ!!』「あんたもでしょ!!」

チョウジ君とシカマル君といのちゃんまでもの声がはもって、

「だよな//////」

ナルト君も頭をガリガリと掻いて へへへ と笑い出す。





「けど、逃げ足の速さっつったら、やっぱキバか?」

シカマル君がにやりと笑うと

「でも、あいつバカだから、逃げ足早くても隠れた場所で必ず見つかるんだってばよっ!!」

「そうね?キバって本当単純だからっ そんでもってキバが掴まるとイモずる式にあんた達が見つかる!」

いのちゃんはくくくと笑う。

「でも、何故かシカマルだけは絶対に掴まらなかったよね。イルカ先生がいっつもシカマルだけいない!ってあたふた
 してたもんねっ!」

チョウジ君は ふふふ と笑った。

「そうそう!シカマルはたいして足も早くねぇのに、いっつもイルカ先生の裏をかいた場所に先回りして
 余裕の顔で寝てたんだってばよっ!」

「あんたって本当、そういう気転だけはきくっていうか、要領よ過ぎ!!」

いのちゃんもあきれたって顔をしてる。


でも・・・そういうシカマル君てなんか想像ついて笑える/////
私はみんなに気づかれないように笑いをこらえた。



「俺はお前らと違って、イルカ先生とめんどくせぇ追いかけっこなんてしたくねぇからよっ ちょっと考えれば
 見つからねぇ場所なんていくらでも思いついたしなっ」


シカマル君のこと良く知らなかった時だったら、きっと呆れてたと思う。でも今は・・・・
へっ なんて笑うシカマル君をちょっとかっこいいとか思っちゃう//////
だって、きっとシカマル君て、めんどくせぇっ!なんてばっかり言ってるけど、本当は誰より頭が良いんだろうな。


「でもさ、イルカ先生にも見つけられねぇ場所のはずなのに、お前だけはいつも1番にシカマルを見つけてたよな・・・」

「え?」

ナルト君がゆっくりと私の顔を振り向いてそんな事を言ったから、すごくびっくりした。

「そうね。」

「そうだね。」

「だな・・・・・・」


いのちゃんもチョウジ君も、そしてシカマル君も私の顔を振り返った。


「そ、そうなの?/////////」









いつも1番に私がシカマル君を???/////////////









「お前って本当、そういう鼻だけは利きやがんだよっ めんどくせぇって言ってんのに、
 授業出ろってうるさく言ってきてよぉ・・・・」

シカマル君は両手を頭の後ろに組んで、はぁ とため息をついた。

「そ、そう?///////」


その時の自分を今は思い出せないけど、
でも私はきっとシカマル君を誰より早く見つけたかったのかもしれない・・・・
シカマル君をきっと1番に・・・・・


「けどよっ が行くと素直に帰って来てたじゃんっ お前」

「そうそう!の言うことだけは良く聞いてたよねーシカマルってさ」

ナルト君とチョウジ君がニシシと笑ったら、シカマル君は真っ赤になった。

「そ、それは!言うこと聞かねぇとこいつがキレてめんどくせぇからだっつうの!!////////」



「そう?それだけ〜?」


いのちゃんもニシシと笑う。





それって・・・どういう意味???/////////
私も何故か真っ赤になる。




「いの!!!」

シカマル君が怒った声を出したら、いのちゃんは はいはい と言って笑った。







「ったく!!そろそろ出んぞっ ばぁさんに睨まれるとめんどくせぇだろ?」


シカマル君の声に店内を見回すと、店のおばさんが空になった皿を見つけて、私達をジッと見ていた。


「だね!出よっか!」

チョウジ君の声でみんなで立ち上がる。



「んじゃ!シカマルよっろしくね〜ん//////」

いのちゃんがシカマル君の肩を叩く。

「ありがとねーシカマル!!」

チョウジ君もえへへと笑って同じ肩を叩いた。

「シカマル!ごっそうさんだってばよっ」

ナルト君がニシシと笑ってシカマル君の手に伝票を握りしめさせた。


「ったく・・・なんでこうなるんだよっ!!」

シカマル君は また はぁ なんてため息をついてる。



「あ、あの・・・シカマル君・・・・・」

最後に席をたった私は目の前で落胆しているシカマル君を前に、どうしようとオドオドしていた。




「俺が破産したら、お前、マジ皿洗ってくれよなっ・・・頼んだぜ・・・」


シカマル君はすっごくマジメな顔でジッと私の顔を見て、頭をくしゃりと撫でて、先にレジに歩いていく。






「え?え?本当に?」


私はシカマル君の後ろをレジに向かって小走りについていく。



心臓ドキドキ・・・私本当にここで働かなきゃいけないのかな?・・・・・・・











ーーーーー!!!こっちこっち!早くおいで〜♪」


いのちゃんが店の出口で手をこまねいて私を呼んだ。


「え?あっ・・・えっと・・・・・///////」


だって、まだシカマル君のお勘定が終わってなくて・・・もし足りなかったら、私お皿を洗わなくちゃ・・・


その時、シカマル君がニシシと笑って私を振り返る。


「バーカ。マジにとんなっっての  ほら大丈夫だからっ 行ってこいよ お前って本当バカっ」


最後のセリフにはちょっとカチンときたけど、シカマル君の顔はドキリとするほど優しかったから、
なんか許せてしまった。


「う、うん。それじゃぁ・・・シカマル君ご馳走様」

「あぁ」


私はシカマル君の脇をすり抜けて、出口のいのちゃんのところに走った。













「大丈夫だから行ってこいよっ ってか?」

ナルトのバカがニシシと笑って俺をこづいた。

「いいの〜?シカマル、今月はこづかい足りないって言ってなかったっけ?」

チョウジは俺の懐を見透かして、ふふん と笑った。



「分かってんだったら、お前ら援助しろよっ はぁ・・・めんどくせぇ///////」



「素直じゃねぇってばよっ シカちゃん〜」

「本当、見栄っ張り〜」

「う、うるせぇ バカ!!///////」



レジの前で男3人集まって、外で待つ、いのやに気づかれないように、財布から小銭を
集めてみたりする。



「俺これしかねぇかんなっ!!」

ナルトは後ろポケットに突っ込んだ手を引き出して、手の平の小銭を見せた。

「僕もこれでおしまーい」

チョウジと合わせて・・・頭で計算する。

「これとこれで足りんだろ? だいたいお前、食いすぎだぜっ!チョウジ!」

「そうだってばよ!チョウジ!」

ナルトはまるで人事みてぇにチョウジの肩を小突く。

「ごめん」

チョウジは申し話なさそうに頭をかいた。

ったく!


「そういうお前が予想外に登場すっからめんどくせぇことになるんだろうが!!」

「そうだよっ ナルト!!」

チョウジが逆にナルトを小突く。

「悪ぃ悪ぃ」

ナルトも罰が悪そうに頭をかいた。




『つうか・・・・俺達、本当金ねぇ〜なっ』


顔を見合わせたら、なんかすげぇおかしくなって・・・・・




ぷははっは。



3人で笑った。









外でこれからどんな事が起こるかなんて、この時の俺達、誰もが予想してなかったはずだ・・・・・・













店からまだシカマル君達が出てこないから、私は少し心配になって、外から店の出口を見つめたいた。



「ねぇ。早く思い出せるといいね!私達の楽しかった思い出っ」


いのちゃんはそんな事気にもとめずに、青空にむかって伸びをした。


「楽しかったのよっ 私たち。」


ゆっくりと私を振り返って、いのちゃんは優しく笑った。


「うん。」


そうだよね。きっと毎日楽しかったはず。

私も思い出したいよ。

いのちゃんがいて、チョウジ君やナルト君がいて・・・そしてシカマル君がいて・・・・




きっと毎日がドキドキワクワクの連続だったに違いないっ/////////





青空から光がさして、まぶしくて、私は足にくっついた影をじっと見つめた。






「あっ!!!」



その時、いのちゃんが興奮気味な声をあげたから、私は思わず、顔を目の前の道に向けた。


逆光になって、そこに誰が立っているのか初めはわからなかったんだけど・・・・








「サスケ君〜/////////」





え?



いのちゃんの声にドキリとする。



(サスケ・・・君?!)



シカマル君の家を抜け出して、内緒で会いに言った修行風景を思い出す。
あの時のサスケ君は一人きりで、まるで何かにとりつかれたかのように一心不乱に修行していた。
その姿に私はすごく不安になったし、気になったし、心配になったんだよ。


だって、幼い頃の記憶の中で、私を助けてくれたサスケ君はとても優しくて頼もしかった。
水の中で私を抱きかかえてくれた手はあたたかかった。



なのにどうしてこんなに変わってしまったの?
何があなたをこんなに変えたの?



そして私は、必死で助けてくれたサスケ君のぬくもりに恋をしている。
でもそれは単なる憧れで、今のこの感情は同情なのかもしれない・・・・それとも友情??


サスケ君のことを考えはじめたら、頭の中がぐるぐると混乱する。




「サスケ君、どこ行ってたの〜/////」


「あっ いのちゃん!」


気づいたら、いのちゃんは勢い良くサスケ君に向かって走り出していた。
その声にサスケ君が立ち止まって私達を振り返った。



久しぶりに見たサスケ君の黒い瞳が私をジッと見た。その瞳にドキリとする。




「どうしたの?今日の任務はとっくに終わったってナルトが言ってたわよぉ////////」



遠くから見ていても分かるぐらい、いのちゃんはすっごく女の子らしい顔をして照れていた。
赤く蒸気した頬はいつものいのちゃんの何倍もかわいく見える。

いのちゃんは本当にサスケ君が好きなんだなぁと誰が見てもわかる気がした。



いのちゃんからサスケ君の姿に目をうつす。



『サスケが一人でいいかっこしやがって・・・・』


さっきのナルト君の言葉・・・・

だけど、サスケ君の腕や顔にはその時につけた小さな傷がいくつも見えた。




サスケ君はいいかっこしてるんじゃない・・・・・
いつだって真剣なだけなんだ・・・・
誰よりも真剣に本気で任務をこなしているんだ・・・・・・


どんな任務でも命懸けで・・・・




その不器用な一途さがどうしても気になる。



どうして、そんなにも自分を追い詰めるの?
サスケ君は何かを必死になって追っているように見える。
それは誰か私達の知らない対象なのか・・・それとも自分自身なのか・・・・


でも、どっちにしても、今のサスケ君の生き方は間違っているように感じる。


こんなの辛いよ・・・寂しくないの?サスケ君・・・・




サスケ君の腕の傷・・・・
痛々しい・・・・







「サスケ君たら怪我してるじゃない!大丈夫?」


心配するいのちゃんを尻目に、


「こんなの大した傷じゃない。ほっといてくれ」

唇の動きがそう言っていた。



ねぇ・・・なんでみんなの優しさをそんなにあっさり拒絶しちゃうの?
そんなの悲しくなるよ・・・・サスケ君・・・・





私はなんだか胸がキューンと痛くなった。




そして・・・・・・




サスケ君の手に握られているどこかのスーパーの紙袋・・・・
中が透けて、カップ麺や出来合いのお弁当が何個か見えた。



どうして・・・・?



私はいてもたってもいられなくなって、無意識に私の足はサスケ君のところに向かって走りだした。














(こんなの、やっぱり間違ってるよ!!!サスケ君!!!)
(幼い頃のあなたのあの手のぬくもりは嘘じゃなかったよ!!!ねぇあの頃のあなたを思い出して!!!)

























「はい。まいど〜」

店のおばちゃんの声に俺達3人でホッとため息をつく。


「どうにか足りたなっ」

俺は ふぅ と息を吐く。

「あぶなかったってばよ!!!」

「ナルトのポケットに残ってた小銭がなかったら足りなかったね!!」

チョウジも額の汗をふいていた。


「あぁ・・・マジで皿洗いさせられるとこだったぜっ」


『あぶねぇ・・・・・・』


また3人で声がはもった。


俺達は顔を見合わせて笑いだす。



「んじゃ行くか」


俺が先頭で暖簾をくぐって外へと出る。






出口のちょうど先にの後ろ姿が見える。





「おい。どした?いの・・・は?」







俺は一瞬立ち止まる。
心臓がドキリと音を立てた。





の背中からちょうど一直線上の道の向こうに、いの・・・・・・・・そして・・・・・・   






・・・・・・・サスケ!!・・・・・・・





「なんだ?なんだ?どしたんだってばよっ シカマル!!」

「早く出てよぉぉ」


店先で立ち止まった俺の背中を押して、ナルトとチョウジも店から出てくる。


「あっ  サスケ?」

チョウジが小さい声を出した。


「あいつ。何してやがんだってばよ? なぁシカマル。」

ナルトは少し不機嫌な声を出して、隣にたつ俺のひじを小突いた。



それでも俺は何も言えなかった。
体が硬直して、まるで誰かに逆に影真似でもかけられてるんじゃねぇかって、思うぐらいに、
俺の体は固まって、目の前の光景をただボーッと見ていた。






予想外のこんな場所でサスケに会っちまったから?





違う。



店から出てきた俺達に気づくことなく、はただ、道向こうのサスケといのをじっと見ていた。





俺は今、お前の背中しか見てねぇ・・・・・・










(なんなんだよっ くそっ ふざけんなよっ )



目の前の光景に無償に腹が立つ。





お前が俺を見ようともしねぇからだよ・・・・・・・
お前の目の中にうつってんのは間違いなくサスケだからだよ・・・・・・



俺じゃねぇからだよ!!




の肩を掴もうとした。


(こっちむけよっ  !)


そう言ってしまいそうなのを必死でおさえて・・・・





俺はお前をサスケになんか渡さねぇからなっ!!!








なのに・・・・・・






手を伸ばした瞬間に、俺の目の前でのやわらかい黒髪がふわりと揺れて、さえぎられていたはずの太陽の光が
目の前を直射した。
まぶしくて、細めた俺の目にうつったのは--------------------------------------






俺から遠ざかる小さい背中。
地面を蹴りあげる、か細い白い足。
ふわりと残る優しい匂い・・・・・



一度も俺を振り返ることなく、走っていくの後姿。



俺から遠ざかる、の背中・・・・













あぁ・・・やっぱお前はサスケのとこに行っちまうのかよ・・・・・・・・・・・

俺じゃだめなの?

・・・・・













あまりに暑い夏の日で、木陰一つないアスファルトの地面がまるで蜃気楼のようにまわりの景色をゆがませるから・・・・





俺は・・・・・・夢でも見てるみてぇ・・・・・・・
嘘だろ?
お前がサスケのとこになんて・・・行くわけねぇ・・・・・・・・・




それは真昼間に誰かが俺に見せた悪夢だ。











「シカマルっ おいっ シカマルっ!!」


ナルトにしきりに呼ばれてる。


「なんだよ・・・・・・」

「いいのかよっ!、サスケのとこ行っちまったってばよ!!俺達も行こうぜ!シカマルっ!!」

ナルトは俺の腕をゆすった。

チョウジは何も言わずに俺の顔を見ていた。



「めんどくせぇ・・・行ってどうすんだよ・・・・」


「だ、だって、お前。とサスケが仲良くなっちまってもいいのか?」


「ナルト・・・今のの心の中にいるのは、やっぱサスケだ。俺じゃねぇ・・・・・」


「あ?お前何言って・・・・・」


ナルトは眉間にしわを寄せた。
でもな、ナルト・・・お前には分かんねぇんだよ・・・・・・
分かるわけねぇよ・・・・

それは、幼ない頃から、をずっと見てきた俺にしか分からねぇ事なんだ・・・・・・





「シカマル!」

「あのなナルト・・・・・・・俺は・・・」




あいつが俺から去ってく後姿なんて今まで1度も見たことねぇんだ・・・・・

ふざけてからかって、あいつがマジんなって、怒って走っていっちまったって・・・・それでも、あいつは
途中で必ず俺をふりむいて、


『シカマルのバーーーーーカ!!』


それでも絶対俺の名前を呼んでくれたんだよ。


『めんどくせぇ。お前に言われたかねぇ・・・・』

『なによぉぉぉぉ!!!』


分かってた。
俺を振り向くがどんなに怒った顔してたって、めんどくせぇ文句をならべてやがったって、
お前が俺を振り向くときは、必ず俺を想ってくれてること・・・・・



ほらな?



やっぱお前は俺にむかって走りよってくる。


『なによ!シカマルの意地悪!!』

『はいはい。俺が悪かった。』


腕にひっつくの頭を俺が軽く叩けば、いつだって笑ってた。


俺だけのために、は笑ってくれたんだぜ?


それで俺は安心すんだ。
は俺のそばにいつでもいるんだってよ・・・・・


すぐ怒るし、いじけるし、わがまま言い放題言いやがるし、めんどくせぇ女だけどよ・・・・・
俺はがそばにいるって感じるだけで安心してた。












でも・・・・・・さっきは俺を一度も振り返らなかった・・・・・
俺のことなんてまるで忘れて・・・サスケのところに走って行っちまった。




分からねぇんだよ・・・・




俺はどうやったら、を振り向かせることが出来たんだ?
どうやったらもう一度、俺を振り向いて、もう一度名前を呼んでくれんだよ?


『シカマル』


の声が耳の奥で響く。












「分からねぇんだよ・・・・どうしていいか。もう分かんねぇ・・・のこと・・・・
 お前なら、それでも待つのかよ?」


「シカマル・・・・・」

ナルトはそれっきり何も言わなかった。



(待つってどれぐらいだよ?待ったらが俺を見てくれんのか?このまま記憶が戻らなかったら・・・・)



頭が混乱する。




「俺、先帰るわ・・・・・」






ここにいて何になる?

がサスケとたわいもない話しをして、そしてあいつの為に笑う。

友達としてじゃなく、恋する相手として、恥ずかしそうに笑うお前の顔を俺はきっと見てられない。





俺がお前を好きだって想いも、あの日キスしたことも、全部忘れて、お前はきっと、何もなかったかのように
適当にサスケとしゃべったら、別になんてこともない顔をして、俺のところに戻ってくんだろ?

『サスケ君がねっ・・・・』

いつもより弾んだ声で、サスケのためにお前がかけた言葉の一つ一つを俺に繰り返して、そして笑うんだろ?



そんなの俺、笑って聞いてやれねぇから・・・・・




あそこにサスケがいて、そんで、ちょっとだけが話しをしただけだ。



けど、お前なら・・・・記憶のあった頃のお前なら、それでも絶対俺を振り返ってくれてたよ。
そして必ず

『シカマル〜!』

俺を呼んでくれてたよ。




それだけは分かる。




いま、お前の心の中にいるのは、間違いなく、サスケだ。   



俺じゃねぇ・・・・・



























「シカマル!なぁ!シカマルってばっ 待てってばよっ!!!」


「ナルト!!」


ナルトはしきりに俺を呼んで、チョウジがそれを制止してるのは分かった。




でも、俺は振り返らなかった。
どうしていいか自分でも分からねぇから・・・
ただ歩き続けるしかなかったんだよ。

へっ

本当、俺イケてねぇよな?・・・・・・






























「サスケ君。ねぇまた修行してたの?」

いのちゃんの問いにも・・・・

「まぁな・・・」



相変わらずサスケ君はそっけない言葉で答えた。



「ねぇ・・・サスケ君。ご飯ちゃんと食べてるの?」

私は一番心配していたことを聞いてみた。


「・・・・食べてる。」

「食べてるって・・・・それ?」

私はサスケ君の手に握られている袋を指さす。

「お、お前に関係ない。」

サスケ君は私から目をそらした。




きっと毎日そんな食事しかしてないんだ・・・・




胸が痛い。



栄養や体の心配をしてくれるような人が周りに誰もいないんだ・・・・
ううん。
サスケ君の事だから、きっと誰かの心配もわざと冷たくあしらって、拒絶してしまっているのかもしれない・・・・




「お前らこそ、こんな所で何してるっ」

「私たちはみんなでそこでお茶してたのよー/////そうそうナルトも一緒だったのよ!!」


「ナルト?」

サスケ君は一瞬驚いた顔をしたけど、それから眉をひそめた。



私はその時になってやっと シカマル君達の存在を思い出した。






あっ・・・・・・





あわてて振り返る。




道向こうの甘栗甘の出口にナルト君とチョウジ君が黙ってこちらを見て立っていた。





「ほらね!みんないるでしょ?・・・・って・・・あ・・・あれ?」


いのちゃんの言葉に私の心臓がドキリとした。





シカマル君は?・・・・・シカマル君がいない!!・・・・・・・・




「やいっ!サスケ!てっめぇ!!なーにこんなとこで油売ってやがんだってばよっ!!さっきは任務でも一人でいいかっこ
 しやがってぇぇぇぇ!!」

ナルト君が袖をめくりながらズカズカとこちらに向かってきた。


「はっ。うるさいぞ。ウスラトンカチ。お前がちんたらやってるからだろう。あんな簡単な任務をこなせないようじゃぁお前もまだまだ 
 だなっ」

「なんだとぉぉぉぉっ!!!」

「二人ともやめなよぉぉ!!」

チョウジ君はあたふたと二人の間に割って入った。




でも、私はすごく気になって・・・



「ねぇシカマル君は?ナルト君、チョウジ君、シカマル君はどうしたの?」



「え?」


サスケ君と胸倉を掴みあっていたナルト君もサスケ君も、それを止めようとしていたチョウジ君も
3人の動きが一瞬で止まった。




ゆっくりと手を緩めたナルト君は少しうつむいて、言った。



「さきに・・・帰ったってばよ。」

「え?どうして?」

「なんかね・・・用事・・・思い出したって」

チョウジ君は へへへ と笑った。





用事?・・・・・

さっきまでそんな事、一言も言ってなかったのに・・・・・
シカマル君の用事って何だろう・・・・・



シカマル君の顔が頭をよぎった。
その時、



サスケ君はナルト君の手を冷たく振り払って、はき捨てるように言う。



「俺はもう帰る。お前らウザイんだよ。」



仲間を見る目って感じはしなかった。
人を遠ざけるような冷たい目。




私の心はまた一気にサスケ君に向いてしまった。
『どうして自分から一人になろうとするの?・・・・・・・・』




「うっせぇ!俺だってお前なんかウザイっつうの!!」

ナルト君の言葉も気に留める様子もなく、サスケ君は ふん と鼻を鳴らして、すたすたと一人で歩いて行く。




「サスケ君まったねぇ〜///////」

いのちゃんが手を振る。



それでも、サスケ君は振り向きもしないで歩いていく。


「俺達も帰ろうぜっ!」

ナルト君も ふん と顔をそらす。

「で、でも・・・・・」

このままサスケ君を一人で帰していいのか私は心配になった。


「いいんだってばよ。あいつといても喧嘩になるだけだかんなっ」


ナルト君はため息をついたけど・・・でも・・・その顔は決してサスケ君を嫌っているようには見えなかった。


ナルト君の言葉に、チョウジ君も私もいのちゃんもサスケ君とは別の方向に並んで歩きだす。
重なる私たちの影。




やっぱり気になって、少し振り返ると、反対の方向に歩いていくサスケ君の影だけが
一人寂しく伸びていた。






サスケ君・・・・これで良いの?・・・・・・・・・・・






「ねぇ・・・サスケ君ってずっと一人きりなの?」

私は帰り道、ポツリとつぶやいた。


「うちは一族の生き残りはサスケだけだからね・・・・」

チョウジ君もポツリとつぶやく。

「けど・・・友達のことはまるでわざと拒絶してるみたいに見えるよ・・・・
 わざと自分を一人に追い込んでるみたいに・・・・・」


私はどうしてもその事が気になっていた。


「サスケ君は強いから一人でも大丈夫なのよ。一人の方が気楽なんじゃない。」


いのちゃんは 自分に言い聞かせるようにそう言った。




でも・・・・・



「一人で大丈夫な奴なんか・・・いねぇよ・・・・・・」


ナルト君の言葉にみんな無言になった。




そうだよね・・・・一人で生きていける人なんて・・・・いないよね?・・・・・・・




心臓がズキズキする。
サスケ君・・・・どうしてあなたは・・・・・









「けどな。 お前・・・あんまサスケに関わんなっ」


突然ナルト君が私をチラリと見て言った。


「どう・・・して?」


どうしてそんな事言うの?
だって私、サスケ君の事ほうっておけない気がする。それが愛情なのか同情なのか友情なのか自分でもよく分からないけど・・・・


「今はお前自身の事を一番に考えなきゃならねぇはずだろ?・・・記憶だってまだ戻ってねぇんだし。」

ナルト君は少し怒ったように言う。

「う・・・うん。そうだけど・・・・」

それでも私には、こうして支えてくれる友達がちゃんと側にいてくれる。
今のサスケ君よりずっと幸せだよ。


「サスケ君には今はまだ誰にも踏み込んで欲しくない部分があるんだと思うの。それは、本当に一人っていう孤独を理解できる
 人でなきゃ分からない苦しみなのかもしれない・・・・・」

いのちゃんの言葉。
これ以上、サスケ君のことをあまり詮索するなという感じに聞こえた。


「とにかくさ。あんまり遅いとシカマルも心配するから、も寄り道しないで帰りなね」

チョウジ君はニコリと笑った。


「う、うん。」






みんなとの分かれ道。




私は一人でシカマル君の家へと向かう。




途中で帰ってしまったシカマル君。
そんな急ぎの用事って何だったんだろう?と考えながらも、私の頭はやっぱりサスケ君のことでいっぱいになっていた。

























黙ってあの場から一人帰ってきた自分。
いや。逃げたんだろ?

玄関の扉を開けたら、そんな自分がすげぇ情けなくなって、俺は走って2階の部屋へとあがった。


「シカマル?なに?一人なの?」


母ちゃんの声が階下から聞こえる。
でも答える気力もなかった。




扉を開けたら、俺の部屋だってのに、あいつの匂いがした。



そうだ。
今はが寝てる部屋。



くそっ。

俺は額を押さえて目を閉じる。
頭の中は自分の想いとは裏腹に、の事でいっぱいになる。


『シカマルーーーーー』


そんな顔で俺を呼ぶなよ。


記憶の中のの笑顔が余計に胸を締め付ける。


俺達、小せぇ頃から今までずっとこの部屋でたくさんの時間を一緒に過ごしてきたんだ。
笑った顔も怒った顔も泣いた顔も・・・・・
ずっとずっと俺はお前を見てきた。



頭の中に今までの思い出がいくつも浮かんで消える。




・・・・お前が忘れちまった全ての記憶は、俺の中で深く刻まれて今だって鮮明に残ってるんだぜ・・・・




お前の小せぇ頃の顔が見える・・・・・

お前を見かけると、大人達はみんなこぞって人形みたいにかわいい娘だと言った。
俺もまだガキだったけど、大人がそういうのも無理ねぇよなって思ってた。小さくて華奢な体は乱暴にひっぱったりしたら
壊れちまうんじゃねぇの?って俺だって思ってた。

だから俺はお前がこけたりすると内心ドキドキしてたんだよ。





任務で失敗して俺に泣きついてきた顔・・・・

涙も鼻水も一緒になってグシャグシャで、まるで子供みてぇに泣くお前の事を
どうしたら泣き止ませられんのか分かんなくて、いっつも小さい体ごと抱きしめて背中をさすった。
俺の胸にギュッとしがみついて泣くだけ泣いたら、お前はいつも最後に笑ってくれた。
『ありがと。シカマル/////』その顔を見るとすげぇ安心したんだよ。



なんか俺にねだる時の顔・・・・

計算なんかしてねぇくせに、上目使いの顔は小悪魔そのもので。俺はいつもその顔にやられてた。
内心ドキドキで、めんどくせぇのに最後は必ず俺に「しょうがねぇな」と認めさせちまうお前はやっぱ俺よりずっと強ぇって思った。



怒ってる顔・・・・

膨れた頬をはじいて笑っちゃいたけどよ。本当は今度こそお前に許してもらえねぇんじゃねぇかって、いつもドキドキしてた。
だってよ。いつだって俺の足りない言葉がお前を傷つける。本当はもっと素直に言えたらって思うのに、なかなか言えなくて・・・・
でも、お前は最後にいつも俺を許してくれた。お前はいつだって俺のそばにいてくれた。



はじめてキスした時の顔・・・

してる時はお互いに夢中で、お前以外何も考えられなくなった。もうお前しかいらねぇって本気でそう思った。
俺がキスする女は、・・・お前が最初で最後なんだろうってその時本気で俺は思ってた。








なぁ・・・愛してる。すげぇ好きだよ





頭の中に浮かんでは消えていくが俺を何度も呼ぶ  




『シカマル』『シカマル』『シカマル』・・・・・・・



愛しい声が俺の頭の中で反響する。


「俺・・・どうすりゃいい?」


俺の足は自然と窓にむかっていった。




そう。
はじめて、と夢中でキスした場所だ。


ガラガラと窓を開けると夕方の湿った風が顔にあたる。
そこから特製の縁側に足をおろすと、木材の湿った感触が足の裏にじんわりと染み渡る。
体全身に風がふきぬけて気持ちよかった。


その場に座ると、どっからともなくいつもの猫が俺の体にすりよってきた。

俺は無言で猫を抱き上げた。




「あいつ・・・ここに来たら思い出すかな・・・・」



だってここは俺達にとって特別な場所だろ?



当たり前だが 猫はそんな俺の言葉に答えるはずもなく、にゃー と一鳴きして俺のひざにうずくまった。


























「ただいま・・・・・」


玄関の扉を開ける。


「あら!お帰り!!」

シカマル君のママの声。




私はそっと部屋へとあがった。



そこにシカマル君の姿はなかった。





「あの、シカマル君は?」

私は台所に立つシカママに話しかける。

「2階じゃない?」

別に特別何という事もなく、シカママはちらりと振り返ってそう言った。



良かった。
シカマル君が先に帰ったことが少し気になっていた。でも、別に私が怒らせたとか、変な理由じゃないよね?
やっぱり何か用事があったんだ・・・・



私はトントンと階段をあがって、シカマル君の部屋へと急いだ。









「シカマル君ただいま」


部屋の扉をあける。


あ・・・・あれ?


部屋には誰もいなくて・・・・窓が少し開いていて、カーテンが部屋の方になびいていた。


そっと近づいて窓を開ける。




いかにも手作りっていう2階にくっつけてある縁側風のベランダにシカマル君が背を向けて座っていた。



「よぉ・・・・おかえり」

シカマル君は振り向きもしないで、そっとそう言った。

にゃーーーーーご



シカマル君のひざの上には猫が座っているらしい。


「うん。ただいま。シカマル君、用事があったんでしょ?」

私はそっとその縁側に出て、ちょこりとシカマル君の隣に座った。




「・・・・・・まぁ・・・・な」



シカマル君は猫の背中をゆっくりと撫でると、猫は背をグニーーーと伸ばして気持ちよさそうにあくびをした。



「そう・・・・・」

なんだか元気無いように見えるのは、気のせいかな?・・・・・
私はひざを抱えたままそんなシカマル君の横顔を見ていた。




「きょ、今日のあんみつ・・・すごく美味しかったよ。」

私はなんとなくきまづいこの雰囲気をいつもみたいに戻したくて、そっとつぶやいた。


「そうか・・・・そりゃ良かったな・・・・・」


どうして私の顔・・・見てくれないのかな?・・・・
シカマル君はひざに眠る猫を優しい瞳で見ていた。



空を見上げたら、夕方から夜に変わる途中の空に星が一つ光って見えた。
綺麗・・・・・・


「ねぇシカマル君」

「ん」

「ここって気持ちいいね・・・・・」

私は少し肌寒く感じる風に目を閉じた。


「・・・・そうだな・・・・・・」


シカマル君の声は穏やかだ。


「ねぇ・・・・」

「なんだよ・・・・・・・」




「私たちって、前にもこうして縁側で2人きりで話しとかした事ってある?」




なんとなくそう聞いた。
シカマル君はその時はじめて私の顔を振り向いた。






「・・・・」






何も言わず、ただジッと顔を見られて、すごくとまどった。


「え?/////な、何?もしかして無い?・・・・・・」


シカマル君の気持ちが読めなくて・・・・・
シカマル君はその後も少しの間、私の顔をジッと見ていた。

その目がすごく寂しそうに見えて、私は何かまた間違ったことを言ってしまったのか?と心配になった。



でも・・・・・・



「・・・・・・さぁ・・・・・・どうだかな・・・・・忘れた・・・・・・・・・」


シカマル君は最後にいつもみたいに へっ と笑った・・・


けど・・・・なんで?
最後はすごく悲しい顔に見えた。


その時・・・



「シカマルーーー ーーーー ご飯よぉぉ!」


1階からシカママが私たちを呼ぶ声がした。




シカマル君は無言で立ち上がった。



「あっ・・・・待って・・・・・」


私もあわてて立ち上がってシカマル君の背中を追う。
その時、私の頭の中でシカマル君の背中にもう一人のシカマル君の背中が重なったように見えた。



あ・・・・・あれ?



頭の中がグイーーンと揺れた。















『よ、呼んでんな?・・・・行くか・・・・////////』

『う、うん///////』




目の前に見えているのは、どうやら過去の残像らしい・・・・・・






今と同じ・・・・・私より先に立ち上がったシカマル君の背中を私は追って立ち上がった。


『シカマル・・・・』


私がシカマル君を呼び捨てで、そう呼んだ。
シカマル君はゆっくりと振り返った。



『私、今日のこと・・・・一生忘れないから////////』




私の言葉にシカマル君が今まで見たこともないほど優しく微笑んだ。








一生・・・・忘れないから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








その言葉が耳に反響する。






ねぇ・・・・なに?
今の私の言葉は・・・・なに?












グラリと視界がゆがんだ。









!!・・・・どうしたっ!!」

「え?」



突然、薄暗い縁側に立ち尽くしていた私のところにシカマル君が走りよってくる姿が見える。





「な、なんでもない・・・・」


まだ頭がクラクラする。
今まで見ていた過去の残像は跡形もなく頭の中から消えてしまった。
目を手で覆ったら、シカマル君が私の体をぐっと抱き寄せた。



今の映像は何?
シカマル君と私はここで何をしていたの?
一生忘れないって何?


また頭が混乱する。



!」


ダメ。シカマル君が心配しちゃう・・・・


「大丈夫・・・平気・・・・・」


気力を振り絞ってそう答えた。
でも息があがって・・・苦しいっ


「バカ。大丈夫なわけねぇだろ?貧血かよ?」


シカマル君が私の体を両腕でぐっと抱きしめてくれたら、急に全身の力が抜けた。


「し、シカマル君・・・私・・・・」


かすかに残る記憶の断片・・・・聞かなきゃ。言わなきゃ・・・・・・・


でも言葉がうまく出てこなくて・・・・私はたまらずシカマル君の肩をギュッと握った。




「いいからっ!お前しゃべんなっ めんどくせぇ!!」




その時、シカマル君にグイッと体を抱きかかえられた。


「シカマル君・・・・・」


なんで、この人はこんなに優しいんだろう・・・・
いつも私に無理ないように、私を気遣って・・・・・


「大丈夫だから・・・お前は何も心配すんな。少し横になれば落ち着くだろ。」



シカマル君は私を抱きかかえたまま部屋の中に入った。
私の体に無理がないように、ゆっくりと部屋を歩いて、そっとベットに横にならせてくれた。
いつものベットが私の重みでぎしっと音をたてる。


やわらかい布団から、シカマル君と同じ匂いがする。

どうしてかな?
その匂いは私を落ち着かせる。

だからたまらなくて、私は布団をギュッと握った。




「タオル冷やしてもってくっか?」


シカマル君は はぁ とため息をついてベットの横に座ってそう言った。


「ううん。もう平気・・・・」


本当はそのとき、聞くべきだったのかもしれない・・・さっきの縁側での私たちの過去の出来事について。




でも・・・・



あの時、私はシカマル君に『一生忘れない』と言った・・・・・



なのに・・・・私は・・・・私は忘れてしまったんだ。
何かとても大事なことを・・・・・・・








どうしていいのか分からず、私は無言でシカマル君を見ていた。





「お前、目ぇ閉じて少し寝てろ・・・・」



前髪をそっと撫でられた・・・・・



心配してくれてる姿に胸がズキズキする。



だって・・・私・・・いつもフラフラしてる。
シカマル君はこんなにそばにいてくれてるのに・・・こんなに優しいのに・・・・
なのに私は今日、サスケ君のことばかり考えてた・・・シカマル君のこと忘れて・・・・・・

本当は私・・・誰のことが好きなんだろう・・・・・

幼い頃のサスケ君のあったかい手のぬくもり・・・私を命がげて助けてくれた優しさ。頼もしさ。
そして、今のサスケ君の変わりよう・・・・


私はサスケ君に確かめたいだけなのかもしれない・・・
それとも私は本気でサスケ君を?・・・・・


でも私・・・シカマル君のことも・・・・・




汚い自分の感情が私の頭を混乱させる。
もうヤダ。こんなの!!




鼻先がジンジンする。
涙がじんわりあふれてきた。



「シカマル君・・・私ね・・・どうしていいか分かんない・・・・サスケ君・・・・いつも一人で・・・
 そういうの見てると・・・辛くて・・・でも、私・・・シカマル君のこと・・・・・・」



自分でも、余計なことしゃべってるって分かっているのに・・・・でも抑えられなかった。
もう自分を偽ったり、シカマル君にこれ以上甘えてる自分が耐えられなかった。

だって。

それって、すごくズルくて、嫌な女だよ・・・・・
そんな自分がもう許せないんだよ・・・・・




涙がとめどなく溢れてきて、嗚咽がもれはじめる。
続きは言葉にも出来なかった。悔しくて、情けなくて、自分が大っ嫌いで、もっともっと泣いてしまった。






「お前・・・もう悩むな。お前の好きにしろよ・・・・・・」






突然のシカマル君の言葉に顔をあげる。シカマル君はこっちを見ないまま、そっと私にそう言った。



「バーカ。泣いてんなよ。めんどくせぇ・・・・俺に気なんか使うなっての。サスケに会いたきゃ・・・
 会いに行けよ・・・・・」


「シカマル君・・・・・」


それはシカマル君の本心じゃないんでしょ?だって、シカマル君は私の顔をまっすぐに見ていない。


「私・・・・・・・」


さっきの記憶の中の私はシカマル君を「シカマル」と呼んだ。
私たちはあの縁側でとても大切な思い出を作った。

今は分かる・・・シカマル君と私はただの幼馴染なんかじゃない。私たちの関係は--------------------------------------




「お前はなんも悪くねぇ・・・・だから・・・・悩むことなんてねぇんだよ・・・・好きにしていい。」


「で、でも・・・本当は私とシカマル君は・・・・」



シカマル君がどうしてそんな事を言うのか分からなかった。
だって。私たちには何か大切な思い出があるんでしょ?それは一生忘れられないような・・・・・
そして私達の関係は幼馴染ってだけじゃないんでしょ?
なのに・・・・・


「俺とお前はただの幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ」

シカマル君の低い声が耳に響いた。


え?

それは、予想外の言葉で・・・・


「嘘っ・・・そんなの嘘なんでしょ?だって私とシカマル君は・・・・」


だったら・・・あの記憶は何?
私の頭はまた混乱していく。

でもシカマル君は・・・・

「お前、何か勘違いしてんじゃねぇのか?・・・・あぁこれだから女ってのは、めんどくせぇな・・・・。
 俺に変な気まわすなよ。記憶のねぇお前の面倒見るだけだって、めんどくせぇんだからよっ」
 


冷たく言い放つ言葉・・・チラリと見た目の冷たさ・・・・。
今までのシカマル君と全然違う・・・どうして?なんでなの?



「嘘・・・嘘でしょ? シカマル君・・・」



心臓がバクバクと大きく鳴っている。
私のこと・・・やっぱりめんどくさいの?記憶が無い私なんて・・・いない方がいいの?
そんなの嘘だって信じたいのに・・・・
シカマル君の一言が胸に突き刺さって、心の中がズタズタに傷ついていくのを感じていた。

「本心じゃ・・・ないよね?・・・ねぇ・・・シカマル君・・・・」

涙が出そうなのをぐっとこらえた。
だって、こんなの嘘だよ。シカマル君はまた冗談言ってるんだ・・・・

「なにが?お前、俺にどう言って欲しかったんだよ・・・・はぁ・・・・めんどくせぇ」


はき捨てるように言う言葉・・・・・
私からぷいっと顔を背けたまま、シカマル君は深くため息をついた。



どうしてそんな事いうの?


さっきの思い出も、今まで私にしてくれた優しさも、私に触れる優しい手も、私の中に残るシカマル君の思い出全部が粉々に砕けてしまったように感じた。





うっ・・・・


(私・・・・どうしたらいいの?・・・・・・)


言葉が詰まったら、涙がどっと出てきた。



「俺、先に下、いくからよ・・・・・・・・」


シカマル君はスッと立ち上がって、部屋を出て行った。


部屋の扉がバタンと音をたてて閉まった。
残された私はこの世でたった一人きりになってしまったみたいに寂しかった。


頭がまだ混乱してる。
シカマル君のこと、信じてたのにっ 
私はベットの上で、どうしていいのか分からずに布団に顔を埋めて わーーー と泣いてしまった。



なんでこんなヒドイ事いうの?どうして?
シカマル君のバカ。-------------------------------------------------------------------------






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