俺にはなんとなく分かっちまった・・・



お前が今、サスケの事を考えてたってことが。



両親がいない一人きりの生活。

そうだな。

確かに、ナルトみてぇに妙に人懐っこくて仲間の多い奴と違って、一人を好んで、
どこか人との馴れ合いを避けているようなサスケの事を思ったら・・・お前なら、心配にも
なるだろう・・・・


だけど、そのお前の感情が同情なのか、愛情なのか、俺にはそこまで分からねぇから・・・・



すげぇ辛れぇよ。







「洗い終わったね」

「あ?・・・・・そうだな。」



俺の気持ちも知らないで、は うーーん と伸びをして、かわいい笑顔で俺を
振り返る。



「シカマル君。いのちゃんとの約束の時間までまだあるの?」

「あぁ・・・そうだな。まだ早ぇ・・・・・」


お前の心が欲しいのに・・・お前は一体、今、誰を見てんだよ・・・
普通に返事を返しちゃいるが・・・・俺の心の中はモヤモヤしたままだ。





ボスッ と音をたてて、がソファーに座る。




小さい体と柔らかい髪がソファーのスプリングで少し揺れた。


それだけで、俺の心がギュッとする。


小さくて、かわいくて、愛しいお前の体・・・・・
今すぐ抱きてぇ。






なぁ 。  俺だけ見とけよ。 サスケの事なんて考えんなっ!!!







握り締めた拳に思わず力がはいった。




はソファーの横に置かれた小さなテーブルに俺が積んでおいた本を手にとって、
何やら真剣な顔をしていた。


「これって・・・全部シカマル君が読んだ本?」


突然振り向かれて、心臓がドキリとする。
俺のこんな気持ち・・・に気づかせるわけにはいかねぇし・・・・・


「あぁ・・・・まぁな・・・・」


余計な気持ちを持たねぇように、俺はから顔をそらして、それだけ答えた。


「嘘だぁ!!」

「あ?」


なんだよその人を疑うような声は!!
思わずお前の顔を見ちまったじゃねぇか!!


「だって・・・・なんかすっごい難しそうな本だよ?これ・・・活字ばっかりだし・・・」


は俺の本に顔をちかづけて、眉間にシワをよせながら、マジメな顔でそう言った。


「バーカ。活字が多いからって難しい本だとは言えねぇだろ?それに忍術の本なんて、みんな
 そんなもんだぜ」


「忍術の本?まさかこの中に色々な術のかけ方とか載ってるの?」

「まぁ・・・な。」

「だけどこんな複雑な本じゃ、わかんないよぉぉ」

「お前と俺とじゃ、ここの出来が違げぇんだよっ」

俺は自分の頭を指でコンコンと叩いた。




「ひどーい!!だったら、忍術かけてみてよ!!シカマル君なんていっつも めんどくせぇ って
 さぼってばっかりで、ちっとも忍びらしくないしさ!!本当に忍びなのかもあやしい!!」


がそんな事言いやがるから・・・・


「あ?お前に言われたかねぇ!!少なくとも俺はお前より強ぇぞ!」

「嘘だ!私、シカマル君みたいにいつもボーッとしている人の忍術なんかに絶対ひっかからない!!」


そこまで言われると、さすがにマジでカチンときた。


「あぁそうかよっ だったら、俺の忍術から抜けてみなっ」


「いいよ!やってみて?」


「後悔すんなよっ!!」


「べーーーーーっ」






こん時の俺はまだ本気なんかじゃなかったはずだ・・・

その後、俺がマジになっちまったのは・・・・
お前があいつの名前なんか出すから・・・だから・・












本当はね。さっきの事、これで誤魔化すつもりだったの。

いつもみたいに、一緒にふざけて笑って・・・・

そしたら私のこんなズルイ気持ち・・・シカマル君に気づかれずに済むんじゃないかって・・・・

だからシカマル君のこと、ちょっとからかってみたの。

まさか、そんなにシカマル君が真剣になっちゃうとも思わなかったから・・・



「泣いてもしらねぇぞっ」

「そういう事は私が術にかかってから言ってよね!」

「めんどくせぇ。一気にいくぜっ」




その瞬間、いつものめんどくさそうなシカマル君の目が一瞬鋭くなった。
今まで見たこと無いような強い眼差しに心臓がドキリとして、背筋がゾクゾクした。


忍って・・・・・・
場合によっては相手の命も奪ってしまうほどの力を持つ人達・・・

目の前にいるシカマル君は本当に一人の忍なんだ・・・・






「影まねの術!!」





シカマル君の低い声が耳に届いた瞬間、体がビクリと硬直する。



指の一本すら、動かせない・・・・




「ばーか。 お前、簡単にひっかかってんぞっ 」



ゆういつ動かせる目で下を見たら、シカマル君の影が私の影にくっついていた。



「な、なにこれーーっ !!  影が勝手に動いてるぅぅぅっ!!」


忍なら当たり前の忍術でも、記憶の無い私にとっては、すっごく不思議だった。



「これで分かったかよっ めんどくせぇ。  お前より俺のが強ぇってのっ!」



シカマル君の目はいつもの意地悪な目に戻っていて くくく なんて笑うから・・・・
だからつい・・・


「なによ!シカマル君の術って相手を捕まえるだけじゃない!こんなんじゃ、強い敵だったら、すぐに
 倒されちゃいそうだよっ!」


だって少し悔しくて・・・・
シカマル君はいつだって私をからかってばっかりでさっ!!


「身動きとれねぇ奴に言われたかねぇよっ」


シカマル君は けっ と言った。


「私を本物の敵だと思って、大技かけてみせてよ!!」

「あ? お前にそんなこと・・・できっかバカ//////」


ほらね・・・意地悪なくせに、急にすごく優しいから・・・だからこんなに私、シカマル君を
好きになっちゃうんじゃないっ!!!
人の気も知らないで!!本当に悔しいっ!!




「できないの?シカマル君。  サスケ君だったら、きっとすごい術かけてくれるよっ!!」



こんな時にサスケ君の名前を出した私は本当にバカだよ。



「・・・・・・」


シカマル君は何も言い返してこなかった。
だけど、私に向けた目がすごく強くて怖くて・・・・・


「サスケの名前なんか出すなよっ すげぇムカつく・・・・・」

「え?・・・・・」


シカマル君の小さな声は最後まで聞き取れなかった。



それから、無言のシカマル君は無表情で私に向かって歩いて来た。
そしたら私の体は私の意志に反して、シカマル君に向かっていく。


「え?どうして?体が・・・・・」

「逃げられねぇんだよ・・・俺の影からは絶対にな・・・・」


目の前のシカマル君がこれほどにまで怖いと思ったのは初めてかもしれない・・・・


(私が敵だったら、きっと私は間違いなくこの影に掴まって殺される・・・・)


そんな気すらした。



シカマル君は強い・・・・・・・








目の前まで来て、シカマル君はまた 手を不思議な形に組んだ。


「そんなに術かけて欲しけりゃ、かけてやるよ。泣いたって・・・俺は知らねぇぞ」

「シカマル・・・君・・・」


その時、私はムキになった自分を後悔した。
怒っているはずのシカマル君の目はどこか寂しそうで、辛そうに見えた・・・・


「影首縛りの術」


静かな声は冷たく耳に響いた。



「え?」



私の体をシカマル君とは別の影の手がグイグイと締め付けるように足元から巻きついてくる。


「い、痛いっ」


とっさに上を見上げたら、シカマル君と目があった。


その目にドキリとする。






冷たくて、どこか凶器じみていて、強くて鋭くて・・・
シカマル君はきっとこんな風に敵を・・・人を・・・殺すんだね・・・・・・







どうにか動けないかと体に力を入れれば入れるほど、シカマル君の影の手は私を強く締め上げた。




「言ったろ?俺の影に掴まった奴は、そのまま俺の影の腕に絞め殺されるんだよっ 簡単に人なんて殺せる・・・」




寂しそうな・・・悲しい声だった。


シカマル君をすごく傷つけてしまったような気がした。
こんな台詞をシカマル君に言わせた自分がすごく嫌だ。


「もう・・・やめて・・・・・」


涙があふれてきた。
バカみたいだ・・・・私。


その瞬間、私を締め付けた影の腕はスルスルと解けていった。
急に開放された体はふわりと軽く感じる。


だけど、私の涙は止まらなかった。




「ほれみろ・・・やっぱ泣いた・・・だからやめとけっつったんだよ・・・・」


もういつものシカマル君の目に戻っていた。
だけど、泣いた私よりずっと辛そうな顔をしたシカマル君を見たら、余計に泣けてしまった。


「もうこんな事しねぇから・・・・泣きやめよ、


シカマル君の腕がギュっと私を抱きしめた。


「・・・ヒク・・・ヒク」

シカマル君の胸に顔をくっつけたら、自分のこの想いを言葉にできなくて、涙ばっかり流れた。
違うの・・・シカマル君のせいじゃない・・・・・



「泣くなよ・・・・」


だけど涙が止まらなくて・・・・


「悪かったな・・・。柄にもなくムキになっちまった・・・体・・・痛てぇのか?」


私を心配して、シカマル君は私をもっと強く抱きしめてくれた。
でもね・・・シカマル君・・・悪いのは私の方・・・・


「違うのっ・・・」


やっと言葉が出せた。


「え?」


私が泣いてるのは、そんな事じゃないの・・・




「シカマル君は優しい人だよ・・・だから・・・簡単に人が殺せるなんて、嘘言わないでっ」



そう言うのが精一杯だった。


シカマル君に辛い言葉を言わせてしまったのは全部自分のせいだと思った。


シカマル君はすごく驚いた顔をしていた。



だって、本当はシカマル君は忍なんて仕事は向いてないって言ったよね?
それは、めんどくさいからじゃない・・・やさしいシカマル君が戦でたくさんの人を殺すなんて考えられない。
そのたびにきっとシカマル君は傷つく。




「そう・・・だな。簡単じゃねぇよ・・・けど・・・お前にも前に言ったろ?」


頭を撫でられた。


「え?なに?」


「簡単に人を殺すなんて俺には出来ねぇ。でもな・・・大事なものを守る為なら俺は命がけで戦う。」


「う・・・ん・・・・」


そうだね。シカマル君はきっと大事な人を見捨てたりしない。
大事な人を守る為なら相手を殺して自分が傷ついたとしても・・・きっとそういう道を選ぶ。


「俺は・・・・サスケみてぇに強くねぇから・・・・いつでも命がけじゃねぇと勝てねぇしなっ」

へって笑った。



そんな事ないっ!!



「そうじゃないよ!!」


私には分かる。


「サスケ君はきっと一撃で相手を倒してしまうほど強いと思う。きっと目的の為なら簡単に敵を殺すこともできるような
 術をもっているんだと思う・・・・でも・・・・」


シカマル君は私の顔をじっと見ていた。


「でも・・・シカマル君の術は・・・仲間を助ける・・・守る為に使う術でしょ?影まねは相手を捕らえる術みたいだもの。
 その間に仲間を逃がすことも、相手を傷つけないで掴まえることも出来る・・・・」


「まぁ・・・・な・・・・・・」


「やさしいシカマル君には、うってつけの術だよね?」


私は精一杯の笑顔をした。
シカマル君にも笑ってほしいよ。


サスケ君が攻めの術なら、シカマル君は守りの術。
同じ忍びでも、その質と内容はまったく正反対だ。
まるで二人の性格みたいに・・・・・



「やさしいやさしい言うなよっ・・・バカ。 俺は別に・・・やさしかねぇし・・・・」



その言葉ひとつで真っ赤になるシカマル君はやっぱり優しいんだよ///////



私は目の前で頭をがりがりかくシカマル君を見て、くすくすと笑った。



「笑うなってのっ//////」


ぴんとおでこを弾かれた。



「だって////あはは」



心の中で思った。


やっぱり私・・・・はっきりさせたい。
自分のシカマル君とサスケ君への気持ち・・・きちんと答えを出そう。


いつまでも、この人の優しさに甘えていてはいけない気がした。















ピンポーン













二人で笑っていたら、玄関のチャイムが鳴った。




「やっべ。いのだ!」



シカマル君はあわてて玄関に走っていく。



いの・・・ちゃん・・・・・



そう・・・・いのちゃんはもしかしたら・・・命がけでシカマル君が守りたい人・・・かもしれない。




二人だけの時間があまりにも長すぎて、シカマル君をどんどん好きになっていく自分。
でも、シカマル君が本当に大事に想って見つめているのは・・・私じゃなくて・・・いのちゃんかもしれないのに・・・


玄関先から聞こえるいつもの元気な明るいいのちゃんの声と、シカマル君の声が混じりあって聞こえてくる。


私はそんな2人を見るのがなんだか辛くて、さっきシカマル君に抱きしめられた場所から一歩も動けずに、じっと
立ち尽くしていた。
下にさげていた自分の手をギュっと握り締めながら。











。めんどくせぇけど、うちの姫がお怒りだぜ。 お前も早く来い!」







玄関先からシカマル君の声。






うちの・・・姫か・・・・




いのちゃんはきっとシカマル君とチョウジ君10班の中のお姫様だ。
綺麗で強くて。でも、かわいくて・・・・
私なんて足元にも及ばない。


やっぱりシカマル君はいのちゃんが好きなの?


私、今すごく、いのちゃんに嫉妬してる。
自分だって、気持ちがいつでもぐらぐらしてるくせに・・・・私って本当に嫌な女だ。




私はそっと玄関に近づいた。








「やっと来たわねっ ! もう!あんた達、何分待たせんのよっ!!」





いのちゃんはすごい剣幕で私を怒鳴った。




「ご、ごめんなさい。」


正直すっごく驚いた。
女の子に・・・・こんなに怒られるなんて初めてな気がした。



「あぁ悪かった・・・いの。寝坊しちまってよ。」


シカマル君は 頭をかきながらそう言った。
そんなの嘘なのに。


「誰が?」


いのちゃんは隣に立っているシカマル君をギロリと睨んだ。


「お、俺・・・・・・」

「そう。あんたがね・・・・」





「痛ってぇっ!!!」



その瞬間、いのちゃんがシカマル君のほっぺたを ムギュッとつねったらしい。





「あんたねー!!約束の時間に来ないから、に何かあったかと思って心配しちゃったじゃないよぉ!バカ!」



怒っていたはずの、いのちゃんの目に涙がたまったのを見て、私の心臓はドキリとした。






私を心配して・・・・いのちゃんは・・・あんなに怒ったの?・・・・・





「そうだな。悪かったって・・・ごめんな。いの・・・・」




シカマル君はいのちゃんの頭に手をポスンと優しく置いた。


「うっさい!!悪いと思うなら、あんみつと団子おごってよね!!」

「へいへい。喜んで・・・・・」


シカマル君は へへ と笑う。
その隣でいのちゃんは涙をぬぐいながら べー と舌を出した。






本当は友達思いで優しいいのちゃん。
でも弱みを絶対に仲間に見せないように強気に振舞ういのちゃん。

その彼女の気持ちをちゃんと理解してあげていて、彼女を傷つけないように慰めてあげられる方法をちゃんと
知っているシカマル君。


すっごくお似合いな2人だなぁ・・・・・・


胸がキュンとして痛いよ。













「チョウジは先に甘栗甘で待ってるからねvv」



いのちゃんはスキップするような軽快なあしどりで私とシカマル君の前を歩いて行く。



「もう先に3人前ぐらい食ってんぞっ チョウジのやつ」


シカマル君はめんどくせぇ なんてつぶやきながら、はぁ とため息をついた。


「大丈夫よvv」


いのちゃんが笑う。


「なにが?」

シカマル君は眉間にしわを寄せる。


「だってぜーーんぶシカマルの奢りだもん!ねーーvv」

いのちゃんに肩を抱かれて顔をのぞかれる。

「う。うん//////」

「お前らなぁ・・・」


あははと笑ういのちゃんの笑顔はとてもまぶしくて、やれやれって顔でしょげてるシカマル君の間で私の心臓は
ずっと高鳴りっぱなし・・・・












甘栗甘について暖簾をくぐったら、チョウジ君の大きな体が見えた。



「いたいた!チョウジ〜♪」


いのちゃんが呼ぶと、


「おーい。いの、シカマル、〜」

にっこり笑って手を振ったチョウジ君の口のまわりには、みたらし団子の甘いタレのあと。


「おいおい。マジかよっ・・・・ チョウジ、お前何皿食ってんだぁ?」

シカマル君がため息まじりに言うと。



「まだ3皿だから大丈夫vv」


チョウジ君が ニシシ と笑った。



「もう食うなっ!あとは自分で払えよチョウジ!!」

「えーー!!シカマルのケチーーー!!」

「ケチケチ〜♪」

いのちゃんはチョウジ君にちゃっかり便乗してそう言って笑った。

「うるせぇ バカ!死ね!!」


ぎゃははとわははと色んな笑い声で10班の2人は笑う。
眉間にしわを寄せながらも、シカマル君も へっと笑ってる。
楽しそうな10班のメンバー。


私は少し後ろでそんな3人を見ていた。


シカマル君が私をそっと振り返った。


。こっち来い」


隣でボーっと突っ立っている私の肩をグイッと抱き寄せてシカマル君がチョウジ君といのちゃんの前に
私を立たせた。


え?なに?・・・・・



「俺の小遣いで払えない場合は、が皿洗いして稼いでくれるからよっ!!」


シカマル君はニシシと笑った。



は?



「得意だろ?皿洗い。料理は微妙だけどなっ」


今朝のお味噌汁のことを思い出した。


「なによぉぉ!もうシカマル君のバカーーーーー!!」



「やっちゃえ!!」

いのちゃんが笑う。

が勝ったら、全部シカマルが奢るって!!」

チョウジ君があははと笑う。


「もう!シカマル君のバカーーー!」

「痛てっ 痛てぇっつうのっ やめろって!!」


ぽかぽかとシカマル君の腕をぶってたら・・・・



「あぁもう分かったっ!参った。俺の負けだ!!・・・・俺がまとめて全部払ってやるよ!めんどくせぇっ!」








『やったぁぁぁーーーーーーー!!!』





今度はいのちゃんとチョウジ君と私の声が3人重なって・・・思わず3人で目が合って・・・・
そしたらすっごくおかしくなって、3人で ゲラゲラ笑った。




気づいたら、シカマル君も笑ってて、私の頭をポンと優しく叩いた。



10班のみんなは本当の仲間だ。
でも3人はその中に絶対に私を入れてくれる。
私も仲間にしてくれる。

きっと記憶があった頃の私はいつもこんな風に10班のみんなの中で一緒に笑っていたに違いない。



チョウジ君とはじめて会った時に言われた言葉。



はいつも幸せそうに笑ってたよ』



それはきっと10班のみんながいつも一緒にいてくれたせいなんだね・・・・・・・///////











「店内ではお静かに願います!!」




おしぼりとお水をもった、パートのおばちゃんが私たちをギロリと睨む。




『すいませーーーん!』



4人でまた声があって、今度は小声でくすくすと笑いあう。



「とりあえず座ろうぜっ あぁ 疲れた」


シカマル君の声ではじめから座っていたチョウジ君を除いた私たち3人で一斉に席につこうとした。



店から入って正面の窓際に座っていたチョウジ君。
私はシカマル君にチョウジ君の前の窓際の席をゆずった。


「あぁ・・・さんきゅー」

シカマル君はノソノソとチョウジ君の前の席につく。
そのシカマル君の隣にちょこんと私が座ったら・・・・・

いのちゃんがニシシと笑った。



「へぇ・・・はやっぱりそこなんだvv」



「え?なに?//////」


何の疑問もなくシカマル君の隣に座った私。でも・・・それって・・・・違うの?・・・
私はあたあたと動揺してしまった。



「いいのよ。。いつもの席なんだからvv」



気がついたら、いのちゃんだけでなく、チョウジ君もシカマル君も笑っていた。


「あのね 。私とは日焼けを気にして、窓際にはいつも座らない。
 それから、いつもチョウジの隣が私で、その前が。シカマルはの隣の窓際・・・・
 いつもこうやって私たち4人で座ってたのよvv」



「そう・・・・なの?///////」


隣のシカマル君を見たら、シカマル君はほほ杖をつきながら、チラリと私を見て、


「あぁ・・・そう。いつも俺たちはこの席。」


へっと笑った顔はすごく優しかった。



。だから言ったでしょ?記憶がなくたって、大丈夫。はちゃんと覚えてるじゃない?
 僕たちはいつも一緒で、ずっと仲間ってことだよ!」



チョウジ君が へへ と優しく笑ってくれた。



「う・・・うん//////」





嬉しかった・・・・仲間・・・・友達・・・・記憶をなくしてから、こんな暖かい気持ちになれたのは
はじめて。一人じゃない・・・みんないてくれるんだ・・・その時本当に嬉しかった。








私たちはあんみつを6つ(チョウジ君が3つ食べるから)頼んで、何気ない会話をしながら待っていた。





でもほとんど、しゃべっていたのはいのちゃんで、その間、チョウジ君と私は時折、
「へぇ」とか「それで?」とか相槌を打っていた。
隣のシカマル君は聞いているのかいないのか、窓の外をボーっと眺めたり、時々コップの水をごくりと飲んでいた。



でも、話しが任務の話しや、いのちゃんの悩みになると、「それは違うだろ?」とか言う。



聞いてないようで、ちゃんと耳に入っているところがシカマル君らしいなぁと関心した。

でもそれは、いのちゃんの話しだから?ちゃんと聞こうとしてるの?

時折、そんなシカマル君の顔をチラリと見ると、シカマル君と目が合った。



「なんだよ」

「なんでもない」


あわてて下をむく。



長椅子に左手をポテッとおいたら、隣のシカマル君の手とぶつかった。


「ご、ごめんなさい」

「別に」


小声でやりとりしてたのに、目の前のいのちゃんに気づかれた。



「ちょっと!何こっそりと2人でイチャついてる訳〜!!」

「シカマル・・・節操ない・・・」

チョウジ君まで はぁ なんてため息をつく。



「お前らいい加減にしろ!バカ!」

シカマル君は眉間にしわを寄せて怒るし・・・・


「イチャ・・・ついてなんて/////ないよぉ//////」


言われてすっごく恥ずかしかった。



『冗談だよ〜ん♪』

2人にニシシと笑われて、同じくシカマル君と2人で真っ赤になった。



でも・・・・なんでだろ?
さっきぶつかったシカマル君の手の感触。




私の左手は熱をもったように熱い。




一瞬、視界がぼやけた。


あははは


いのちゃんやチョウジ君の笑い声が遠くに聞こえる。




あっ・・・・・・



何かが頭の中で重なりそうだった。
それは私の頭が作り出したぼやけた映像で・・・私の記憶の中に前にも同じようにこうして4人でここに
来ていたような幻覚があらわれる。


私の左手はあいかわらず熱くて、でもその熱が私の心臓をドキドキさせてる。



そして、前にも同じようなことを いのちゃんに言われて・・・・


『何2人でイチャついてんのよっ!!』














頭がズキリと痛んだ。


でも、もう少しで思い出しそうな記憶がある・・・・この左手の熱さは・・・何?








「よぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっす!!」






突然、耳元で大きな声がした。


私の一瞬の記憶はそこで プツリ と途切れてしまった。






「ナルト!!!」




シカマル君が叫んだ。



みんなで一斉に振り返ると・・・・



「よっす!何やってんだってばよっ!」

任務帰りなのか、洋服を汚したままのナルト君が私たちの机の脇にニシシと笑って立っていた。




「なーにやってんだお前。今日は任務で夜までだって言ってたろうが」



シカマル君は はぁ とため息をついた。


「それがよぉ。予定より早く終わったんだってばよっ ったくサスケの野郎が一人でいい格好しやがって・・・・
 これじゃぁ俺。汚れ損だってぇの・・・・くっそぉ」

ナルト君は私のすぐ脇の机の端に顔をうずめてしゃがみこんだ。




サスケ君・・・・名前が出ただけでドキリとした。




「きゃーーっvv さっすがサスケ君!一発で任務完了ってわけ?」

いのちゃんが興味津々て顔でナルト君を見た。


「さくらちゃんまできゃーきゃー言っちゃってよぉ・・・あーーーぁ 俺凹むってばよぉぉぉ」

「そりゃ、あんたとサスケ君じゃねぇ・・・・」

いのちゃんはわざと はぁ なんてため息をついた。

「相変わらず、手は抜かないよね。サスケってさ」

チョウジ君はあまり興味なさそうに、店内をきょろきょろと見回しながらそう言った。

「めんどくせぇ奴だなっ お前も落ち込んでねぇで何か食えよっ」

シカマル君は頬杖をつきながら、ナルト君にへっと笑った。


「俺・・・金ねぇもん」


ナルト君はじとーーーとシカマル君を見る。


「大丈夫だよ。シカマル君がおごってくれるって」

ね?と隣のシカマル君を見たら、シカマル君は目を見開いた。


「あ?何お前!勝手な事言うなっつうの!」


シカマル君にワシッと頭をつかまれる。


「きゃーーやめてよぉぉ」

「シカマルサンキュー!愛してるってばよっvv もサンキュー」


シカマル君にもナルト君にもワシワシされて、私はキャーキャー笑った。



しばらくすると・・・・


「やっときたよぉぉ/////」


チョウジ君の待ちわびた声


注文のあんみつが私たちの机にやってきた。


10班メンバーと私・・・そして突然参加のナルト君をお誕生日席に座らせて、私たち5人で一緒にあんみつを
食べた。
話題はいつまでも尽きなくて、そのたびに私は笑った。














私、サスケ君のこと・・・その時までは完全に忘れていたのに・・・・・・・。








NEXT



戻る
 



55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット