只今の時刻 朝の4:30。


昨日からの悪巧みで、私はなかなか寝付けづ、結局、浅い眠りのままこの時間。
外はまだ暗い。
まだ夜って感じ?
これだけ早ければ、シカマル君はまず起きないはず・・・・


私は音をたてないように、そーーっと階段を下って1階へと降りる。


ソファーの上には 眉間にシワを寄せて、窮屈そうに体を縮めて眠っているシカマル君
がいる。
寒いのか、毛布を体にぐるりと巻きつけて、まるで大きな繭の中のさなぎのようになっている。

「私の為に・・・ごめんね、シカマル君。」

私の小声に気づくはずもなく、シカマル君はぐっすり眠っている。
なのに、突然!!!


・・・」


え?!起きた?


私の心臓はドキリと音をたてた。
でも・・・



「食いすぎだろ・・・もう・・やめとけ・・・よ・・・・」


ぐっすり眠っているシカマル君は ふん と鼻で笑った。


(ど、どういう夢見てんのよっ!!まったく失礼しちゃう!!!)

寝ているシカマル君の鼻をグイッとつまんでやりたい衝動を必死で抑えて、私は
シカマル君のソファー横を起こさないように、ゆっくりと歩いて玄関についた。




まだシカパパもママも奥の居間で眠っているに違いない。



そーーーとそーーーーっと靴をはく。



心臓がドキドキと高鳴る。



かちゃり


最小限の音だけたてて、私は外へと飛び出した。



















「ん、んーーーーーーーーーーんっ」


俺は狭苦しいソファーで縮こまった体をゆっくりと伸ばしてみる。


ゴキゴキ・・・ボキ


「あーーーー 痛てて・・て・・・・」

狭いソファーで寝るのには、まだ体が慣れてねぇから、俺の体はまるでじじいみてぇに
硬く丸くなっちまって・・・朝はその体を伸ばしてやらねぇと、俺はこのまま本当にじじいになりそうだ。


「まぁ仕方ねぇか・・・・・ふあぁ・・・・・」


あくびをして階段を見る。


時計はまだ6:30。


・・・まだ寝てるよな・・・・」


母ちゃんと父ちゃんは既に出かけていねぇらしい・・・・・・


シーーーーーン と静まり返った部屋。


「さぁて・・・今日はどうすっかな・・・・午後からあいつを修行に連れてかなきゃ
 ならねぇし・・・あぁ・・・めんどくせぇ」


頭をガリガリかいて、俺はとりあえず洗面所に向かった。



俺ら家族の中に入ってるの歯ブラシ。
まるでうちの家族になったみてぇにしっくり馴染んでやがる。

お前の記憶が戻っても、ずっとここにいてくれたら・・・すげぇ嬉しいんだけどな・・・俺。


「って・・・何考えてんだ? それじゃ、俺ら夫婦だっつうの/////////」


無意識に自分の歯ブラシに歯磨き粉をぬった。



と俺が結婚ねぇ・・・・・・」


口にくわえた歯ブラシ。
俺の頭は別の妄想でいっぱいだ。



『おはよう シカマルvv』
朝からかわいいパジャマ姿で俺に飛びついてくるを思わず想像した。

柔らかいの体からいつもの優しい匂いがする。

そしたら俺はたぶんを抱きしめて・・・・

『あぁ おはよう』

そう言ってお前にキスをする。

そしたらやっぱ、俺はたぶん朝から我慢できねぇなぁ・・・・・・







は?!・・・・・・・・






歯ブラシを咥えた口元から、デロッ とだらしなく歯磨き粉がたれた。


やっぱ俺ってマジダセー。
何、妄想してんだよ・・・・死ねっ!!


口をぬぐって、シャコシャコと歯を磨きながら、俺はまだ記憶を取り戻してないの事を
すっかり忘れて身勝手な妄想をしている自分を恥じた。

いやまじ、俺、欲求不満か? イケテねぇ・・・・





顔も洗ってさっぱりしてソファーに戻る。


ぐぅぅ。


俺の腹が鳴った。


朝飯・・・何食うかな・・・・・・・・起こすか・・・・



「おーい。!起きてこいよっ 飯食おうぜっ!」



シー−ーーーン



!起きろって!俺腹減った。一緒になんか食うぞ!!」


シーーーーーン


「ったく・・・」


俺とはまだただの友達って関係だ。だから、が寝ている部屋に勝手に入るのは
ルール違反だってわかってる。

だから俺はなるべく扉の外からを起こすつもりだった。


階段をそそくさとあがって、扉をノックする。


・・・起きろっ もう朝だぜ?いつまで寝てんだよお前。そんな事だから朝修行なんて
 無理だっつったろうが」


シーーーーーーン


結構でかい声で言ったよなぁ俺。
からは何の返答もない。


・・・おい!起きろって!おきねぇと入るぞ!いいのか!」

シーーーーーーン



声がまったくしねぇ・・・・



その時はじめて俺は嫌な予感がした。



、開けんぞっ!!」




ガララッ





扉を勢いよくあける。




「嘘・・・・だろ?」



俺のベットにはまるで最初から誰もいなかったかのように、綺麗に布団がたたんであって、ベットも部屋も
もぬけの殻。
の柔らかい気配はすっかり消えて、殺風景な俺の部屋の匂いがしていた。

まるで、この世からがいなくなってしまったような錯覚が俺を襲った。


!!」


俺はあわてて階段をくだった。



嘘だろ?
お前は確かに昨日の夜、俺の部屋で、俺のベットで寝たはずだ。
どこに・・・行ったんだ? 



お前、記憶もねぇくせに・・・一人でどこに行けるってんだよ!!



部屋中の扉を全部開ける。


はどこにもいねぇ。



!!どこ行ったんだよっ!!」



玄関に行くと、の靴が無い。


「一人で外に・・・出たのか?」


いやまて、まさか記憶の無いあいつが一人で町をふらつく訳ねぇ。
そんな事したら、方向音痴のあいつの事だ、絶対戻ってこれねぇよ・・・・

んじゃ、母ちゃんが鹿の世話に連れてったとか?
いや、いのが昨日のうちにと何か約束でもしてたのか?
それともサクラか?



記憶が無いがフラフラと朝から町をさまよって、不安に怯えてやしないか心配になる。
それ以前にもし事故なんかに遭ってたりしたら・・・・
あいつは天性のボケだからな!!

何が起ろうと不思議じゃねぇ!!


「あのバカ!これ以上心配させんじゃねぇっつうの!!めんどくせぇっ」



俺は玄関に放られた靴を乱暴にはいて、外へ飛び出た。



















薄暗い道を昨日、いのちゃん達と向かった演習場に向けて、私は走りだした。


まだ4:30・・・演習場でサスケ君に会えるとしたら・・・・5:00ぐらいかな?


ワクワクドキドキする気持ち。


朝修行をしている人なんて、きっとサスケ君しかいないよね?
こんな朝早くからサスケ君が来るかどうかは分からないけど・・・でも、きっと彼は来る!!
それまで待ってるんだぁ・・・
それで、今日こそいっぱいサスケ君とお話して、仲良くなるんだから!!


でも・・・・


頭にシカマル君の顔が浮かんだ。


「私が急にいなくなったら・・・シカマル君心配するかなぁ・・・・・」



『めんどくせぇ』
頭をガリガリと掻く姿を思い出す。



「そんな訳ないよね。きっと起きて私がいなくても、また縁側でボー−ッとしながら、昼寝でもしてるよね」




あの森の奥が演習場だ・・・・・




私はサスケ君の顔を思い出して、ドキドキする。


「待っててvv私の王子様!!」















確か・・・この辺・・・・・



草を掻き分けて、前に進む。
私ってこんなに方向音痴だったっけ?

昨日いのちゃん達と来たばかりだと言うのに、私はもう既に森の中で迷っていた。

「もう!せっかく早起きしたのにぃ!サスケ君に会えないよぉぉ!」



でも、遠くで何か音がする




シュッツシュッ!!




あの音は?!



木々の間から見えるその場所は円形に木々を切り倒してつくられた・・・そう昨日サスケ君がいた
演習場だ!!


「あ!」




私の視界に クナイを投げているサスケ君の姿が目に飛び込んできた!!






心臓がドキドキする。


サスケ君はまるで自分だけしかこの世界に存在していないかのように、一心に的に向かってクナイを投げている。


その顔は真剣そのもので・・・なんだか・・・少し怖いぐらい・・・・・・・





私は何故だか声もかけられずに、じっとその姿を見ていた。






「誰だ」





サスケ君はこちらを見ないまま、低い声でそう言った。





あ・・・あたしの事かな・・・・・




私はいけない事をして見つかってしまった子供のように、恐る恐るサスケ君の前へと出る。



「あ、あの・・・サスケ君・・・おはよう・・・・・」


・・・どうしてお前がここにいる?」

サスケ君はクナイを投げる手を休めて、驚いた顔をして私を見た。


「えっと・・・あの・・・私、忍びだった頃の自分の記憶を取り戻したくて・・えっと・・修行してる
 サスケ君の姿を見てたら、何か思い出せるかなぁ//////なんて思って・・・・」

嘘・・・だってあなたに会いたくてなんて、とても言える雰囲気じゃないもの・・・・


「俺を見て・・・お前の記憶が戻るとは思えないがな。まぁ見たければ勝手に見ていろ」


サスケ君は私には全然興味無しって声で プイッ と顔をそらして、またクナイを投げはじめた。
冷たい言い方。
胸がズキンと痛いよ。


「う・・・ん。それじゃあここで見てるね」


それでも、このまま帰るなんて出来ない。私はその場でしゃがみこんでサスケ君を見ていた。


サスケ君はそんな私にお構いなし・・・っていうか、まるで私の存在なんてはじめから無かった
かのように修行を続けていた。



はぁ・・・・


ため息が出る。

(何か話しかけたい・・・でも・・・・)

サスケ君は人と群れるのを好まないとシカマル君が言っていたけど・・・本当に何をどう話していいかも
分からない。


サスケ君といるとすごく緊張する。
シカマル君相手ならこんな気持ちになんて絶対にならないのに・・・・



「ね、ねぇサスケ君」


そりゃもう!ありったけの勇気を振り絞って、私は話しかけてみた。


「なんだ」

サスケ君は修行しながら、適当に返事をしているみたい。

「どうしてそんなに毎日一生懸命修行してるの?」

それでも私は何かの会話のきっかけが欲しくて話しかけてみる。

「お前には関係の無い事だ」

「そ、そうだね・・・・・ごめん」

あまりに冷たい返答に思いっきり凹んだ。
でも、まだめげないわよぉぉぉ!!!

「私も・・・その・・・忍びの修行一緒にしたいな・・・・・」

ニコリと笑った私の笑顔は完璧にひきつっていたに違いない


「悪いが、記憶の無いお前の面倒を見れるほど、俺は暇じゃない。修行に付き合ってほしいなら
 他をあたってくれ」

「そ・・・そうだよね。ごめんなさい。」

ガックリとうなだれてしまった。
あぁ・・・・やっぱり私とサスケ君には大きな溝があるみたい・・・・・
それとも私・・・嫌われてるの?


「あ、あのね・・・サスケ君。私ってどういう忍びだったか覚えてる事教えて欲しいな・・・・」


もう一回!もう一度だけ話しかけてみよう!
拳を握り締めて次の質問をしてみる。
だって、こんな状態じゃ、せっかく早起きしてきた意味ないもんっ!!


「お前か?・・・ドジで・・・必ず他人に迷惑をかける奴だったな・・・・」


ふっ と鼻で笑われた。


え?


一瞬ゆるんだ口元が私の心臓をドキドキさせる。

(なーんだ・・・笑えるんじゃない・・・サスケ君もちゃんと笑えるんだ・・・・)

初めてサスケ君の笑った顔を見て、なぜだかすごくホッとした・・・・


でも・・・・よく考えるとサスケ君、今結構ヒドイ事言ったよね?


「私って・・・・いいところ・・・・無いの?」


その答え・・・・ものすごく悲しいんですけど・・・・


「いいところ?・・・何にでも一生懸命ってとこか・・・まぁその分、周りがお前の尻拭いするのが大変だった
 とも言えるがな」

サスケ君は チラリと私を見る。

「だいたいお前、ここに来るのは・・・ちゃんとシカマルに断って来たのか?」

「え?・・・・ううん・・・・」

突然シカマル君の名前を出されて、すっごくビックリした。

「・・・・そういうのを迷惑かけてるって言うんだ。」

サスケ君に はぁ とため息をつかれた。

「でも・・・シカマル君は私の事、心配なんてしてないよ・・・・」

そうだよ。
いつだって二言目には『めんどくせぇ』って・・・・
頭をガリガリかいて、ため息つくんだから・・・・


「どうだかな・・・・」




サスケ君・・・・なんでそんな事言うの?


膝を抱える手に力が入った。


どうして?
・・・サスケ君までシカマル君の名前出さないでよ。
まるで私とシカマル君はセットみたいに・・・・そんなのヒドイよ。
だって私はサスケ君が・・・・


「とにかくお前は帰れ。お前はここに来るような人間じゃない」


突き放すように言われて、すっごく傷ついた。


「どうして?どうして、そんな事言うの?・・・・」

サスケ君は、動揺して泣きそうになる私の顔をじっと見た。


「お前に・・・俺は何もしてやれない。お前には・・・もっとお前を大事にしてくれてるやつ
 がいるだろ?」

「・・・・・大事に・・・・・・してくれる人・・・・・??」


「とにかく・・・お前は帰るんだ・・・・修行の邪魔だ・・・・」


「やだ。」

だって・・・だって・・・せっかく勇気を出してサスケ君に会いたくてここまで来たんだよ?
そんなに簡単に帰れないっ!!


「ったく・・・・だったらもう俺は何も言わない。勝手にしろ。」


サスケ君はまた はぁ と一つため息をついて、修行をはじめた。



それからは何も話しをせず、私はひたすらサスケ君の修行する姿を見ていた。



どうしてみんなシカマル君のこと言うの?
私、シカマル君のおまけじゃないのよ・・・・・・


サスケ君・・・・あなたは私を命懸けで助けてくれたのに・・・・・


幼い頃のあんな記憶なんて・・・サスケ君にはどうでも良いことなの?
私・・・あの時のあなたの優しい腕が好き。
他の記憶が無くたって、私はちゃんと思い出したんだよ?・・・・


思えば思うほど切なくて、苦しかった。


サスケ君はそんな私の気持ちに気づくはずもなくて・・・・







時間を忘れて、私はただじっとサスケ君を見つめ続けていた。


一人で黙々と何かに追われるように頑張るその姿・・・・・
私には何故かすごく寂しく思えて胸が痛んだ。










「サスケくーーーーーーーーーーーんvv」





遠くから聞き覚えのある女の子の声。



(げっ!この声はもしかして・・・・・サクラちゃん?!)



手をふりながら走りよってくる。
私はここにいる事がバレるのが少し怖かった。

サクラちゃんはしゃがんでいる私を驚いた目で見つめている。



「え?!!! ちょっとちょっとぉぉぉぉぉ!!なんでがここにいるわけ?」


サクラちゃんに指をさされて、心なしか顔が怖くて・・・・


「えっと・・・あのね・・・その・・・・なんていうか・・・・・」


!あんたシカマルに黙って来たでしょ?シカマルが必死であんたの事探してたわよ?」


「え?」


シカマル君が?・・・・・・・
突然、目の前に現実を突きつけられた気がした。



サササーーー−ーーーーーーーーーーーーーーーー



顔から血の気が引いてみるみる青ざめていくのを自分でも感じる。
まさか、シカマル君が私を探し歩くなんて・・・昨日は私をほったらかして寝てたくせにっ・・・なぜ?


それより・・・シカマル君はきっとまた怒ってるにきまってる・・・
眉間にシワを寄せて、『このバカ!!』 怒鳴られるのを想像した。


(わーーーん 怖いよぉぉぉぉ)


目の前のサスケ君より、怒った顔が想像できる現実身のあるシカマル君の顔が私の頭をいっぱい
にした!

(どうしよう!なんで?どうして?なんでシカマル君がこんな朝早くから私を探しにくるのぉぉぉ)


、早くもどりなさいよ!シカマル、心配で死にそうだって顔してたわよん♪」

サクラちゃんはそんな私をからかうように、ニシシと笑った。

「嘘・・・そんなの嘘・・・・」

「だったら自分で確かめてくれば?」



私の事が心配で死にそう???あのめんどくさがりの意地悪なシカマル君が?・・・・・



サクラちゃんはきっとサスケ君と2人きりになりたいからってそんな嘘言ってるんだ。
シカマル君は『めんどくせぇ』って顔したり、『バカ!』って怒る顔をしても、私の為に心配して死にそう
なんて・・・一体どんな顔よそれ・・・・・


でも・・・・やっぱり帰ろう・・・・怒られるなら早い方がいい。後回しにしたら、なんか帰りずらいし・・・・・


もしかして、私本当にシカマル君に見捨てられて、その辺に捨てられちゃうかも・・・・
記憶ないのに、どうやって生きていけばいいのぉぉぉぉぉ


シカマル君が眉間にシワをよせて、『めんどくせぇからお前の世話やめた。出てけ』
そんな事を言う姿が頭の中でいっぱいになる!!


「サスケ君、サクラちゃん・・ま、ま、またね!」


私はサスケ君とサクラちゃんにあたふたと挨拶をして、走りだした。


「じゃあねーーーvv もうシカマルに心配かけちゃダメよぉぉ//////」

二人を振り返ったら、サクラちゃんはちゃっかりサスケ君の腕を掴んでいた


(ずるいよぉサクラちゃん〜・・・)


「うざい/////」

サスケ君なんだか照れて見える。




はぁ・・・・・・なんか今日はもうダメ。
サスケ君はあまりに遠い存在だって事がよく分かったわ・・・・・・・


幼い日・・・必死で私を助けてくれた王子様は・・・今は私の手も届かないところで、
女の子のアイドルになってしまっていた。


今の私とサスケ君には、接点もなにも無い。




!またね〜」



笑顔のサクラちゃんに見送られ、私はトボトボと森を後にした。
私・・・サスケ君と本当に仲良しになれるのかな?
考えれば考えるほど落ち込んだ。
そしてこれからシカマル君に怒られると思うと、私の心はもっともっと沈んでしまった。



















俺は必死でを探した。

母ちゃんのとこにもいなかった。
いのに電話したが、何の約束もしてないという。
偶然会ったサクラも、とは会っていないと言っていた。

(それじゃぁ一体、お前はどこに行ったんだよ?)





初めて記憶の無いを見た時、俺はこれは全て夢なんじゃないかって思った。
ここにいるのは、に似た誰か別のやつなんじゃないかって・・・・

今、俺はこのまま、お前が消えてしまうんじゃないかと思ってる。


すべて夢だった・・・・



俺が愛したは本当はどこにも存在なんかしてなくて・・・すべて夢で・・・・
お前はどこにももういないんじゃないかって・・・・

バカな事を想像する自分がすげぇ情けねぇってわかってる・・・・


でも俺は・・・まだ何も受け入れて、実感して、理解なんかしちゃいねぇんだ・・・・・


記憶の無いお前の事・・・・・まだ俺は・・・・・全部を受け止めてやれてねぇんだ。



「はぁ・・・はぁ・・・・」


息が切れる。


どこに行ったんだよ?・・・・お前が今望んでんのは何なんだよ?・・・・・


訳わかんねぇ・・・・


いなくなって初めて、俺はその弱く脆い存在に気づかされた気がした。
記憶がなくなって、まっさらになった心で、お前を一体何を思ってんだ?


どうして俺になにも言わねぇで行っちまうんだよ・・・・
なんでお前はいつもそう勝手なんだよ!!
なんでこんなに心配ばっかさせんだよ!!



「このまま消えたりしねぇよな?・・・帰ってくるんだろ?お前」

心配な事が言葉になって出る。
俺がどんだけ不安か、お前全然分かってねぇ!!




はぁはぁ・・・粗くなる呼吸に頭がもうろうとして、俺は思わず、その場で
背中を屈めて膝に手をおいた。


でも・・・



「休んでる場合じゃねぇ・・・・」



辺りにの気配を感じ取ろうとチャクラを練って印を結ぶ。
耳元に集中するチャクラを感じる。
たくさんの雑音の中から、の音を感じようと俺は意識を集中させた。



ここにもはいねぇ!・・・・・



「どこにいんだよっ バカ」


どんぐらい走った?もう訳わかんねぇ・・・・
額から顎に汗のしずくが流れ落ちてくる。

ったく・・・修行でもこんなに走り続けた事なんてねぇのによぉ・・・・・


腕にしてある時計の音だけが、俺の耳にうるさく響く。


時間がたてばたつほど、の存在が消えちまいそうな気がして、俺を
急かすんだよ・・・・



「けっ・・・情けねぇ・・・・ダッセェな俺・・・・」


何怯えてんだ・・・・
さっきから手が震えんだよ。


もう二度とお前を失う恐怖を味わいたくねぇ・・・・・


そう思うだけで、こんな臆病になっちまうなんてよ・・・
マジダッセェよな・・・・


・・・どこにいんだよっ・・・・」


もう理由なんてどうだっていい!
お前が生きて俺の前に現れてくれたら、それだけでいい!

だからを・・・俺に返してくれ・・・・・







・・・・俺からを・・・・これ以上・・・もう取らないでくれよ・・・・・・・・・神様・・・・





笑えるよな。普段、神頼みの一つもしない自分がなに必死こいてんだっつうんだよ・・・・















でも・・・・・神ってのは本当にいるのかな・・・・・・







・・・・・」




そこは演習場に続く森の入口だった。




「ご、ごめんなさい。シカマル君」


朝の陽の光に照らされて、か細いお前の体が少し震えて見える。


はぁはぁ・・・

必死で走り続けたせいで、きれる息を整えながら、
俺はゆっくりと無言でに近づいた。


(良かった・・・お前・・・ちゃんといるじゃねぇか・・・・ちゃんとここに存在してくれてるじゃねぇかよ・・・・)



俺の目にうつるの頬はほんのり赤くて、体は相変らず白くて・・・風にひらりと揺れている毛先は柔らかそうで、
大きな瞳は少し潤んでて、ギュッと結んだ唇は小さくてかわいくて・・・・


お前ちゃんと生きてるよな?


・・・お前、怪我とかしてねぇか?」

「え?」

は少し驚いた顔をした。

俺はを抱きしめたいと思う気持ちをグッとこらえて、代わりにの頭に手を置いた。


















絶対怒られるって覚悟してたのに・・・・・



私を見つけたシカマル君はゆっくりと私の前に来て、そして少し笑った。


・・・お前、怪我とかしてねぇか?」

「え?」


それは私の予想もしていなかった言葉だった。


「うん。大丈夫。」

「そうか・・・良かった」

シカマル君の大きな手がポンポンと私の頭を軽く叩いた。


「シカマル君・・・私、勝手に家を出てったりして・・・怒らないの?」

私は恐る恐るそんなシカマル君を見上げた。

「怒るのも・・・もうなんかめんどくせぇしな・・・・・」

へッ と笑って目をそらしたシカマル君の額にはたくさんの汗のつぶ。



『シカマルが必死であんたの事探してたわよ?』
さっきのサクラちゃんの言葉は本当だったんだ・・・・
きっとたくさん走ってくれたんだろうな・・・・・




「迷惑かけてごめんね・・・シカマル君。」

「もう・・・・いいって・・・・・」

なんで?そんな優しい言葉を言うの?
私の心臓がドキドキした。
今までサスケ君にあんなにドキドキ緊張してたのに・・・・
シカマル君がくれるドキドキは優しくて・・・
私、誤解しちゃいそうだよ。

「本当にごめんなさい」

勝手なことをして、こんなにシカマル君に迷惑をかけてしまった自分を
今更本気で後悔した。

「もう・・・いいから・・・謝んなって」

「・・・・うん」

怒られる方が良かったかも・・・
なんか私・・・泣きそうだよ。


「帰るぞ」

「・・・一緒に帰ってくれるの?途中で捨てたりしない?」

「あ?」

シカマル君は一瞬 キョトン とした。

でも・・・・


「アホだなやっぱは・・・・くくく」

シカマル君はお腹を抑えて、笑っている。

「だって!前ケンカした時、捨ててきてやろうか!って言ったもん」

「捨てても返されんだろ? こんな我がまま小娘いらねぇってよっ」

「ひっどーーい!!」

「はいはい冗談冗談。悪かったってっ」

「もう!!!意地悪!!!」


私はシカマル君の腕をポカポカと殴っていた。
シカマル君はそんな私の手を腕で防御しながらも笑っていた。


なんか・・・すっごく心があったかくなる・・・・
シカマル君といるとホッとする。


「とにかく、戻ろうぜ 

それでも、殴っていた腕をギュッとつかまれたら、私の心臓はドキリと跳ね上がる。


「う、うん/////////」



それから、一緒に歩いて帰った。

恋人というには距離があって、ただの友達というにはやけに近すぎて・・・

私にはシカマル君がわかんない。

隣を歩くシカマル君を気づかれないようにそっと見る。

本当はその細くて筋肉質で浅黒くやけた腕にくっついて歩きたい気分だった。
でも・・・そんなの変だよね///////


私は、サスケ君が王子様だって分かったんだもん・・・・・


だから何も言わずに隣を歩いた。


シカマル君も何も言わなかった。


どこにいた?
どうして勝手に出てった?


もし聞かれても答えずらい事ばかりだけど・・・・でも、何も聞かないシカマル君が不思議で・・・。
それがもしかして優しさなのかと思うと、やっぱり私はドキドキした。







「あ!ーーー!! シカマルーーー!!」



前からいのちゃんが走ってきた。



「よぉ いの!」

シカマル君が右手を少しあげる。


「よぉじゃないわよ!ったらあんた勝手にどこ行ってたわけ?シカマルから電話もらって心配でっ」



そっか・・・いのちゃんも私の事心配してくれたんだ・・・・


「ごめんなさい。いのちゃん」

「ごめんねじゃないわよ!!理由を言いなさい!理由を!!」


シカマル君よりいのちゃんの方が怖いよぉぉ
だってまさか、サスケ君に会いたくて、明け方こっそり家を出ましたなんて、明らかにサスケ君を
大好きないのちゃんには言えないよぉぉぉ・・・・

私はどう答えていいのか分からなくて、シカマル君の後ろにそっと隠れてしまった。


「悪かったな、いの。俺の勘違いでよ。朝修行に付き合うって約束してたの忘れちまってたんだ」


え?
シカマル君、なんで?・・・・・・・・・私をかばって??


「あんたが忘れてたですってぇぇぇぇ!! あんたの大ボケのせいで私がどれだけを心配したと思ってんのよ!
 こら!シカマル!!」


いのちゃんはシカマル君の胸倉を掴んで鬼のような顔をした。


「悪かった。許せ!いの!」

いのちゃんに詰め寄られても、シカマル君はまるでいつもの事って感じで、へへへ なんて笑ってる。



「このカリをあんた何で返す気?」

「お前の好きなあんみつ奢ってやるから・・・・・」

「はい決まり!約束したわよ!シカマル!」


いのちゃんの手はようやくシカマル君の胸から離れて、いのちゃんはニシシと笑った。


「もっちろん、の分もあんたの奢りよねぇ?シカマル?」

「ちゃっかりしやがって 俺だってそんなに金ねぇっつうの」

いのちゃんのおでこをツンとこづく姿。


その瞬間
私の胸はキュンッ と痛んだ。

そっか・・そうだよ・・シカマル君は誰にでも優しい。

不器用で、そっけなくて、意地悪も言うけど、シカマル君は本当は優しい人だから・・・・

私だけ特別なわけないじゃない・・・・



目の前で、からかうように話している二人を見ていて、私は取り残されたような気分に
なった・・・なんていうか・・・寂しい・・・・


だってもう・・・なんとなく分かる。


シカマル君の彼女は・・・・やっぱりいのちゃんなんだよね?
10班の仲良しメンバーのいのちゃん。
でも、シカマル君といのちゃんの関係はそれだけじゃない気がしてた。
本当は2人は付き合ってるのかも・・・・・・・





当たり前のように、じゃれたり、冗談言える2人。
そんなに仲良くしないでよ・・・・
言葉にしそうなほど、胸がキシキシ痛んだ。




「とにかく・・・が見つかって良かったじゃない?シカマル。
 あーーぁもう心配して損した!
 あたし店番ほったらかしてきちゃったじゃない!!」

いのちゃんはやれやれって顔をした。


「ご、ごめんなさい。私・・・・」

そこまで言いかけたけど、シカマル君が言葉を遮った。


「あんみつ奢るって言ってんだろ?もうそれで勘弁しろよ いの。」

「分かってるわよ!それじゃ、私帰るわね!約束は明日はたしてもらうわよ?シッカマル〜♪
 も、またねvv」

「ありがとうな・・・いの。」

シカマル君は優しい瞳でいのちゃんを見ていた。

いのちゃんは笑顔で手を振って帰っていった。
その後ろ姿を、私とシカマル君はずっと見えなくなるまで見ていた。

「仲良し・・・・だね。シカマル君といのちゃんてさ・・・・」

私は思わずポツリと呟いた。

「そうか?あいつとも付き合い長げぇからな。お前と同じで、俺とチョウジといのは幼馴染ってやつだからよ」

シカマル君が歩き出した。
私はあわててその後を追う。

「そう・・・なんだ。」

(でも、本当は幼馴染ってだけじゃないんでしょ?シカマル君の彼女なんでしょ?)

その言葉はいえなかった。
どうしてって・・・自分でもよく分からないけど・・・・

聞いてしまって、

『そうだよ。いのは俺の女だ』

シカマル君の口からそんな言葉を聞くのがなんか怖い・・・・


でも・・・・なんで?それでいいじゃない・・・・シカマル君といのちゃんはすごく似合ってる・・・・・
なのになんで私はその答えを避けたいと思ってしまうんだろう・・・・・


自分の気持ちがよく分からなくて、私はとまどいながら、シカマル君の背中を見ていた。
突然シカマル君が私を振り返る。


「何してんだ?お前。 行くぞ。」

「う、うん」

あわてて背中を追いかける。

私の目にはシカマル君の背中と青空・・・、私は自分の心をぐるぐるとまわる複雑な思いにとまどい
ながら、背中を追い続ける。


「待ってよぉ」

「待ってんだろ?」




あぁ私・・・・このまま帰りたくないなぁ・・・・・・
今はどうしても、シカマル君と一緒に歩きたいの。
側にいたいの。

どうしてか・・・・本当もうわかんない。











そのまま家に帰るんだと思ってた。
でも、シカマル君は奈良家とは反対の道を歩きだした。


「ちょっと寄ってくか?」

「え?どこに?」

「いいから・・・ついて来いって」

シカマル君の歩幅に合わせるために少し早歩きをしながら、私はシカマル君についていく。





そこは昨日チョウジ君とであった 甘栗甘 という甘味処だった。




「腹減ったな。お前もなんも食ってねぇんだろ?」


シカマル君は店の前でお腹をさすっていた。

もしかして、朝ごはんも食べずに私を探してくれていたの・・・・・
シカマル君の自分に対する優しさが痛かった。


「私・・・平気。シカマル君食べて?」

だって、あんな勝手なことまでして、この後におよんで、お団子まで奢ってもらうなんて悪いよ・・・

なのに・・・


ぐーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私のお腹は容赦なくなった。


「何遠慮してんだよ?バーーーカ////」

シカマル君はくくくくと笑った。

「///////////だって//////////////」

私って本当かっこ悪い////


「いくら俺が金ねぇっつったって、団子ぐらい買えるっつうの。」

頭をずいっとこずかれた。
さっき、シカマル君はいのちゃんにも同じ事してた・・・やっぱり私だけに特別優しいわけじゃない。

私の胸はまたズキリと痛む。

(私が好きなのはサスケ君だよ・・・そうでしょ?・・・・)

心の中で言い聞かせるようにつぶやく私。

(そう、シカマル君はお世話になってるおうちの一人息子で、私の仲良しさんの幼馴染・・・それだけ)





「おばさん。団子4っ包んでくれ」



シカマル君は金色に輝く甘いタレをつけたみたらし団子の入った袋をさげて、私の前に現れた。


「いい天気だから、いいとこ連れてってやるよ。」

シカマル君の笑顔はとても優しかった。
だから私はふたつ返事で

「うん」


て答えた。







背の高いシカマル君の背中が私にはすごく男らしく見える。





なんでかな?やっぱり私の心臓はまたドキドキする。



ねぇその腕にくっついて歩きたいよ。



さっきまでサスケ君に夢中だったのに・・・シカマル君が側にくると、
そんな事を思ってしまう自分が本当はすごくすごく嫌。

私って本当に嫌な女だって思う。













。着いたぜ」

「え?」

顔をあげて思わず声がもれた。

「うわーーー。綺麗。」



広い土手に出た。
目の前の川が青い空を映し出して、キラキラと輝いている。
空はどこまでも続いて見える。

土手の草はいきいきと緑の葉を揺らし、ちょうどよいクッションになりそうだ。


「どうだよ?最高だろ?」

シカマル君はそこにごろりと寝転んだ。

「うん綺麗で気持ちいいところだね」

私もシカマル君の隣に座る。
ふわりと心地よい風が私の髪をゆらした。


「食う?」

シカマル君が袋からお団子を出して、私に差し出した。

「///////いただきます」

今度は変に遠慮するのはやめて、私は差し出されたお団子を手にとってぱくりと食べた。


甘くてトロリとしたタレがおいしい///////


「なーーに幸せいっぱいって顔してんだよっ お前ってマジ笑える」

シカマル君はお腹を片手でおさえてまた くくく と笑った。

「だって・・・・景色も綺麗だし、余計にお団子もおいしく感じるんだもん//////」

「そうか・・・そりゃ良かったな」

ははっは ってシカマル君は笑う。

「もう/////////」

また私バカにされてる?///////


「かわいいよ・・本当」

「え?///////////」

かわいい・・・?
シカマル君がそんな事を言うから、私はすっごくびっくりして・・・そんでもってすっごく恥ずかしくて
真っ赤になった。
隣で寝ているシカマル君もやっぱり真っ赤で・・・・


それってどういう意味?・・・・・



私の心臓はドキドキと高鳴った。


「/////いや・・・なんだ・・・そのだから・・・団子食って、ふくらんだその顔がふぐみてぇで
 かわいいっていう意味だぞ/////////」

「な、なにそれ////////」

なんだ冗談かぁ・・・でも・・・やっぱりちょっと嬉しかった。/////////




シカマル君も寝たままお団子を食べている。



のほほんとした顔。
ときおり目を閉じて、太陽の光に当たっている幸せそうな顔が見える。



シカマル君こそ、なんかかわいい・・・・・

そう思って、私は一人照れてしまった。


「シ、シカマル君はいつもここに来てるの?」


私はそんな自分をかき消すように、シカマル君に話しかけた。

「家にいるのもめんどくせぇ時は大抵ここに来る。俺はここで空とか星とか見んのが好きだ。」

「空・・・星・・・」


いつもシカマル君がぼんやりと上を見ているのは、いつも空を見ていたんだね。


「どうしてシカマル君は空ばかり見てるの?」


あ・・・もしかして、さっきのサスケ君の時みたいに、私また余計な事聞いてしまってるかな?
チラリとシカマル君を見る。

でも・・・シカマル君は空を見上げたままゆっくりと答えてくれた。


「お前は忘れちまってるかもしれねぇけどよ・・・忍びの世界ってのは、血なまぐさい事ばかりだろ?
 戦にもなれば、俺だって敵対国の相手を殺す。楽してのほほんとしてるだけじゃねぇんだよ。」

忍びとは本来そういう仕事なんだろう。
その事は記憶の無い私でもわかる。
大きな戦の裏で、一体何人の忍びが命を落としているだろう・・・


「時々考える事もあんだよ。俺に国なんて、守る力あんのか?ってよ。」

「うん」

私達はまだ大人じゃない。
でも、それでも忍びでいる以上はそれは言い訳にはならない。
国の命令となれば、殺し合いをしなきゃならないんだ・・・・・

胸がズキリと痛んだ。


「けど、空みてるとそんな事全部忘れられんだよ。気持ちが穏やかになって・・自分が正直になれる。」

「うん」

「そん時思うんだ。俺は国や里を守るとか、そういう優秀で強い忍びになるような器じゃねぇ」

「え?」

それは以外な言葉だった。
だって、本来は国や里を守るためにいるのが忍びでしょ?


シカマル君はゆっくりと体を起こして座った。


「俺が忍びになったのは・・・忍びでい続けてる理由は・・・大事なものを守りたいからだ・・ただそれだけだ。」


「大事な・・・もの・・・・」


シカマル君の大事なものって・・・・・・・・


「そんな事大人達に言ったら、殴られるかもな。けどよ、空をみてっとそれでいいんじゃねぇかって思えて
 くるんだ。少なくとも俺の大事なものは木の葉にある。だから俺は木の葉を守る忍びでい続ける。」

いつもぼんやりしているシカマル君の目は、青い空にむかって強く光って見えた。
シカマル君はやっぱり男の子なんだ。強いなぁ・・・って本当にそう思った。


 「めんどくさがりで、なまけ者のこの俺が、国なんてたいそうなもん、守れっこねぇだろ?
  けどよ・・・これだけは誓える・・・
  俺の大事なもの・・・それだけは絶対に守りきってみせるぜ・・・
  その為なら・・・・俺は命をかける・・・・」


「命を・・・・・かける・・・・・」


急に川でおぼれた私を必死で助けてくれた幼い日の男の子・・・・サスケ君の事を思い出す。
あの時、あなたは少なくてもあの時だけは、命をかけて私を助けてくれた・・・・

男の子ってみんなこうなんだろうか・・・・

かっこいいけど・・・もしその大事なものっていうのが自分だとしたら嬉しいだろうけど・・・・
だけど、愛する男の子が自分のせいで死んでしまったら・・・やっぱり残された女の子はかなしむよ・・・・


「シカマル君の大事なものって・・・・なに?」

私はとっさにそう聞いた。
でも、その時いのちゃんの顔が浮かんだ・・・・

「もしかして・・・それって・・・・・いの・・・ちゃん?」

言葉にして はっ とする。
その答えは絶対聞きたくなかったはずなのに・・・・・・



シカマル君はすごく驚いた顔をして私を見た。
それから、ゆっくりと少し笑った。



「さぁな・・・・・・・」



でもその笑顔は何故か寂しそうに見えた。





シカマル君・・・・否定・・・しなかったね・・・。
やっぱり・・・・やっぱりシカマル君はいのちゃんを・・・・・・



そう思ったら、私の心臓はズキズキと痛かった。




















いの・・・・か・・・・・・


そうかお前にはそう見えるのか・・・俺といの・・・・


その言葉はすごく俺を傷つけた。



やっぱな・・・分かってはいたが・・・お前の心の中に俺という男は決して恋愛対象には無いんだろう・・・・


なぁ・・・めんどくせぇし、柄じゃねぇけど、俺はお前の為なら命がけでお前を守るよ・・・どんな時だってよ・・・





そう言葉にしたら、お前はまたきっと驚いた顔をして、そしてまた困った顔をするんだろ?・・・
俺が抱きしめたら・・・・お前はまたその小さい体を震わせて・・・俺を拒むんだろ?・・・・




だから俺は今は何も言わねぇ・・・・








陽の光が少し傾いて、頬にあたる風が少し冷たくなった。





「帰るか」

「・・・・・・うん」



俺はズキズキと痛む胸をおさえて、と一緒に家へ向かって歩き出した。



(ねぇ胸が痛いよ・・・・)

私はいのちゃんとシカマル君の仲良しな姿を思い出して、なぜだかすごく傷ついた胸をおさえて、
シカマル君の後ろをついて歩いていった。



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