頭がズキズキする。
耳の奥が痛い・・・・
誰か人の声が遠くに聞こえる・・・必死で誰かを呼んでいるみたい・・・・





私はうっすらと目を開ける。



「ここは・・・どこ?」









!気がついたの??」

その女の人は私の肩を掴んで、涙を浮かべてそう言った。


(?・・・って誰のこと?・・)


私はその女の人の顔をジッと見つめた。


・・・私をそう呼んだ女の人は少し年配の、そう・・・ちょうど私の母親
ぐらいの年齢に思えた。

でも私・・・・この人のこと・・・知らない。
一体、私の為にこんなに必死になっているこの女の人は誰なの???


「あの・・・起きてもいいですか?」

私はどうやら病院らしいベットの上に寝かされているようだ。
肩肘をついて、上半身をゆっくりと起こす。

頭がズキリと痛んだ。

「痛っ・・・・」

思わずこめかみを押さえた私を覗きこんで、またその女の人が言う。

「大丈夫?。」

「はい。大丈夫です。」

心配そうに声をかける女の人に私はとりあえず丁寧に言葉を返した。


ふと前を見ると、そこには同じ歳ぐらいの男の子がたっていた。
息があがっている。
どこからか、急いで駆け出して来たって感じだ。


「ドジ・・・・」


男の子は私を見て、へっ と笑った。


この子・・・誰?


髪を頭の上で1本に結い上げて、人を小ばかにしたように笑う男の子・・・・
まるで私を以前から知っているような口ぶり。
でも、やっぱりこの男の子のことも私は知らない。
見たこともない・・・・

「こら!シカマル!あんた、もうちょっと優しい言葉かけてあげられないの!!」

私の横で、女の人が男の子を怒鳴った。

「あーーはいはい。」

「はい。は一回!!」

めんどくさそーに頭を掻く、その男の子を見ると、どうやらこの女の人はこの子の
母親らしかった。


私はもう一度、男の子の顔を見た。
だって、どう考えても、この2人は私を知ってる?
でも、私の記憶の中に、この2人の顔や私との思い出は一切浮かばない。


一体この2人は誰なんだろう・・・・・


私がジッと見ていたのに気づいて、男の子がまた私に声をかけた。



「お前、頭強打したらしいじゃねぇか。もともと悪い頭がもっと悪くなるんじゃねぇの」



その一言に私はかなりびっくりした。

な、な、な、なんて失礼な人!!
女の子にかける言葉とは思えない!!!

私はかなりムッとした。


「あんた何てこと言うのよ!それが女の子に言う言葉!!だいたいあんた一体誰なのよ!!」



失礼とは思ったけど、私は人差し指を男の子に向けて、怒鳴った。



でも・・・・・・




私の隣にいた女の人の顔色が変わった。


・・・あんた今なんて言ったの?」


「私、なんて名前じゃありません。あの、失礼ですけど、あなたも・・・誰なんですか?」



一瞬、この部屋の空気が凍りついた。



「い、い、医療班の誰かを呼ばなきゃっ!!シ、シカマル!あんた、を頼んだわよ!!」


女の人は履いていたスリッパにつまづく勢いで、病室を出て行った。


私はあまりに動揺している女の人の様子を少し驚いて見送った。


「お・・まえ・・・・俺のこと・・・本当に分からねぇのか?」


気がつくと、さっきまで憎まれ口を叩いていた男の子も目を見開いて、私を見つめている。


「分からないって・・・私もともとあなたのことなんか知らないよ・・・・・」


・・・・・おまえ・・・・・・・」


「私・・・じゃない!! 人違いじゃないですか?」

(さっきからなんで「」って呼ぶの?私はそんな名前じゃないよっ
 私の名前は・・・・・・・・)




あ・・・・・アレ?・・・・・・




「おい!冗談やめろよっ マジ怒るぞ!!」

男の子が私のところまでかけてきて、ぎゅっと肩を掴まれた。


「い、いやーーーっ!!」

私はとっさに叫んでしまった。
急に男の子に乱暴にされた事がすごく怖い。


「わ、悪ぃ。 ご、ごめん・・・・・」


さっきの態度とはうって変わって、男の子はすごく困った顔をした。


「お前・・・さ・・・・どこまで覚えてる?」


おそるおそる私の様子を見るように、男の子はゆっくりとそう言った。


「どこまでって?・・・・」


それはどういう意味なんだろう・・・・
えっと・・・・私は・・・私の名前は・・・えっと・・・??

私がオドオドしていると・・・


「よしっ 分かった・・・今から俺が言う事、よく聞けよ」

「え?」



男の子は、ベット脇の椅子にゆっくりと座ると、低い、でも優しい声で話しをした。



「あのな・・・お前、任務で木から落ちたんだ・・・・・・分かるか?」

「任務?」

「お前・・・それも・・・覚えてねぇのかよ。」

男の子は はぁ と一つため息をついた。

「?」

「あぁ・・・任務っつうのはな・・・その・・・お前は忍びなんだ・・・・俺と同じだ」

「私が忍び?」

頭が混乱する・・・そんなの・・・嘘でしょ? 私が忍び??
思い出そうにも、自分の今までの忍びとしての過去など何も浮かんでこない。

この男の子は私を騙しているんじゃ?・・・



すごく不安になった。


でも・・・だったら私はどこの誰なの?
だいたい、私の名前は・・・・?


・・・お前本当に何も覚えてねぇのか?」


男の子が私の目をジッと見ている。
その目は真剣で、とても私を騙しているようには見えない。


「私・・・本当に何も分からない・・・何も思い出せない・・・・」

「嘘・・・だろ・・・・・・」


男の子の目が不安そうに揺れている。


自分が何者なのかも分からない・・・・
私はどうしていいのか分からなくなってきて、頭が混乱する。
怖くて怖くて、そしたら自然と涙が溢れてきた。



・・・悪ぃ。不安にさせちまったな?」


私はヒクヒクと泣き続けた。


「大丈夫だって。今、火影様が来てくれる。お前は何も心配すんなっ」


頭を撫でられる。




すごく不思議な感覚。




この男の子はどう見ても私と同じ歳にしか見えないのに、この子が言う言葉一つ一つに
なんだか聞き入ってしまう。
そして優しい言葉と頭を撫でるあったかい手に私はすごく安心した。

















冗談だろ?・・・いの。


「シカマル!ねぇ聞いてる? ・・・・」

「聞いて・・・る」




それは、つい30分ぐらい前。
俺の家の玄関の呼び鈴が、けたたましく鳴らされて、昼寝ぶっこいてた俺は、


「はいはい・・・誰だよっ ったく めんどくせー」


半キレ状態で玄関の扉を開けた。
そこには息をきらせて、真っ青な顔をしたいのが、はぁはぁと呼吸をしていた。


「あ?どした?いの」

が!が大変なのよ!シカマル!!」

「あ?あのドジ・・・。また何かしでかしたのかよ?」


だってよ、の天然ドジはみんなの知るところだ。
は毎日飽きもせず、なんやかんややらかしては傷つくって帰ってくるような奴だ。

だから、今度もどうせ大したこと無いって思ってた。

ドジやって泣いて、んで、俺に迎えに来いとか言ってんだろ?
あぁ・・・めんどくせーな ってよ・・・・


けど・・・いのの目にみるみる涙が溜まって・・・




----------------嘘だろ?---------------------




息をきらしているせいで、途切れ途切れになるいのの言葉、いつもより早口で
すげぇ聞き取りずらくて・・・でも・・・俺の心臓はいのの言葉に敏感に反応して、
ドキドキと高鳴り続けていた。




--------------冗談だろ?--------------------




「とにかく行って! 意識が無いのよっ あぶないかもしれないの!!」



が任務中に足を滑らせて木から落ちた。そして頭を強打した。
呼びかけにも意識が無く、危険だと判断した上忍が医療班を呼んだ。
担架に寝かされたまま、は即座に病院に運ばれた。



「シカマル・・・大丈夫かな?死なないよね?」

いのが泣いてっから・・・

「落ち着けよ・・いの。がそう簡単に死ぬたまかよ?」

「う・・・うん」


嘘だ・・・正直、俺は心臓が壊れるぐらい鼓動が激しい。
・・・・お前が死んじまうんじゃないかって・・・本当は足が震えてた。


「木の葉病院にいるから・・・シカマル、早く行ってあげて。」

「分かった。 お前には・・・後で必ず連絡すっから・・・心配すんな」

「うん」

俺はとにかく、靴に無意識に足をつっこんで、それから走った。


「シカマル!あんたのママが先に病院に行ってるはずよ!」


いのの声は俺の向けた背中のずっと向こうから響いてきた。
俺は柄にもなく、途中で一度も足をとめることもしないで、走り続けた。



「嘘だろ?。お前が死ぬはずねぇ・・・・」


息が苦しい。
でも、お前の姿をちゃんとこの目で見るまでは・・・俺は絶対に止まったりしねぇ。






木の葉病院の受付に走りついた時、咳をきったように激しい呼吸に言葉が出なくて、
俺はとにかく

・・・は・・・は・・・」

それだけ言った。

受付の女は、事務的に冷静に 「503号室です」とだけ答えた。





エレベーターを待ってる余裕も無くて、俺は階段をひたすら駆け上がった。

俺・・・どうかしてるぜ・・・何やってんだ?・・・一番落ち着いてねぇのは俺の方だろうが?



5階の表示を見ると、俺の足はゆっくりと病室に向かう。


落ち着け・・・はここにいる。元気でいる。絶対大丈夫だ。



心臓が高鳴って、息はまだ上がったままだった。
足が重いのは、家からここまで止まらずに走ってきたせいだけじゃねぇ。
もし、がここで死んじまってたら・・・とかアホな事考えてる俺は、
やっぱ全然イケテねぇ派だよな。




病室からかすかに聞こえる母ちゃんとの声。


はぁ・・・・・

ため息が出て、俺はようやくホッとした。



は生きてる・・・・
良かった・・・・・






なのに・・・なのにだ。
なんなんだよ・・・お前。

のやつは俺に向かって、「あんた一体誰なのよ!!」と叫びやがった。


おいおい・・・マジ勘弁してくれ・・・俺はそういう冗談には笑えねぇタチなんだよ・・・


そう思って、いつもみたいにデコの一つでも弾いてやろうと思ってた。
けど、どうやらそれは嘘でも冗談でもないらしい・・・・


頭を強打すると、一時的に記憶を無くすやつがいるってのは医療にド素人な俺でも
知ってることだ・・・


けど、それが実際に目の前におきていて・・・その張本人が俺の一番大事な女で・・・
そんでもって・・・その女は俺を綺麗さっぱり忘れてやがる・・・・
しかも、どうやら俺のことだけじゃねぇ。全てをだ・・・・


これって・・・どうよ?


俺はなんだか不安になった。
こんな現実、嘘であって欲しかった。


でも・・・・目の前でお前に泣かれて・・・・


一番不安なのは、なんだって、分かった。
俺がしっかりしてやんないで、どうすんだよ?
が余計に不安になっちまうじゃねぇか・・・


くそっ しっかりしろよ!俺!



「もうすぐ火影様が来てくれる。お前は何も心配すんなっ」



いつもしてやっているように不安がるの頭を撫でた。

そんな俺を涙目で見上げるの目に、俺は一体どううつってるんだよ?
は俺を他人のように見ている。
そんな目で見んなよ。




俺は一体どうすりゃいいんだよ??










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