教室の中はまだガヤガヤと騒がしかった。
私はヒナタの後ろの席に鞄をおいて座った。

「おはよー ヒナタ!」

「あっ・・・おは・・よ・う・・・・ちゃん」

ヒナタは後ろの私を振り返って、笑って言った。


その時、


ガラガラッ


教室の扉が勢いよく開いて、

「よぉ!おはよーーーーっす!」
威勢の良い叫び声をあげて、キバが入ってきた。

キバは周りの席をキョロキョロと見回すそぶりをみせていたが、

「ひゃっほー!見つけたぜっ!おはよーさん!」

まるで子犬が飼い主をみつけて、走り出したかのように、キバは
一目散で私の目の前へやってきて、ニシシと笑った。

「キバおはよ」
私は席についたまま、キバに笑いかけると、

「やっぱはマジかわいいぜっ!愛してるっ」
とか言いながら私を後ろから抱きかかえた。

「もう!キバったら何すんのーー!」
もがく私。

「あぁもう我慢できねーー!」
キバは私の首すじをカプリと噛んだ。

「痛いってば!!このバカ犬ーーーー!」
私がもがいて、キバを引きはがそうとしていたら、

「なんとでも言えって。俺、犬でいいしよっ!」
とか言って、一向に離れる気配なし。

遠くの席から

「キバ!嫌がってんぞっ お前、フラレんの時間の問題だなっ」
とナルトの声

「あーーー お前ら朝からめんどくせーんだよ。フラレろフラレろ」
シカマルはこっちを見て、けっと意地悪に笑っている。

「キバにははもったいないよね。」
お菓子を頬張りながらチョウジが言う。

「んだとーーー!黙れ!この大バカトリオ!」
キバが怒鳴り返したので、私の耳はキーーーンと痛んだ。

『お前に言われたかねーーーよ』

3人の声がハモっていた。


ガラガラッ

「授業をはじめるぞ!」
イルカ先生の声で一斉にみんなが空いている席についた。

キバは「ちぇっ」とか言いながら、
やっと私の体を離して、ナルト達の待つ席に向かっていった。



毎日こんなことの繰り返し。
私とキバは付き合っていて、キバは、そりゃもー私を大事にして
くれる優しい彼氏なんだけど・・・・

でも、それも最近では度が過ぎてきて、私はそんなキバの態度が
少し嫌になってきていた。






授業が終わると、私はある場所に向かっていた。
後ろでキバが

「おいっ!!どこ行くんだよ」

と叫ぶから、

「後輩に頼まれ事してんのよー」
振り返って、それだけ言うと、私は一目散に駆け出した。

だって、キバにつかまったら、

「相手は誰だ?」とか「男か女か?」とかいちいち聞かれて
うるさいんだもんっ





「あ!いた!」

そう相手は男の子。
と、言っても1年後輩で、別に恋愛感情とか一切無いけどね。

私は彼に近づいて、

「ねぇ、この間、借りたがってた忍術の本、持ってきたから、 
 どうぞ!」

私は本を差し出しながら、彼の顔を見た。



傷だらけだ!・・・・・


「ど、どうしたの?その顔?厳しい修行でもやった?」
私は彼の顔の傷を触ろうとした。

でも・・・・・


「大丈夫ですから!本当に平気ですから!」

彼はまるで私を避けるかのように、少し後ずさりした。

「そ、そう・・・・じゃ、コレ」
私はもう一度、彼の前に本を差し出した。


「あ!先輩・・・・えっと、あの・・・俺・・・もういいですソレ。」

彼はまるで私を見て怯えているように、オドオドし始めた。

「え?だって、昨日あんなに読みたがってたじゃない?」
私は不思議に思って、彼の顔を覗きこんだ。

「他の人に借りますから。先輩。俺にあまり近づかないで
 下さい。」
彼は私の目を見て、申し訳なさそうにそう言った。

「どうして・・・どうしてそんな事言うの?・・・」

訳がわからなかった。
だって、昨日まで、彼は私によくなついてくれてる、かわいい後輩
だったのに・・・・

「もう先輩とは話しできませんよ。だって、キバ先輩が・・・・」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









私は教室のドアを開けるなり、大きな声で叫んだ。

「キバ!ちょっと来て!」

教室の隅でナルト達と何やら騒いでいたキバが
こちらを向いて、驚いた顔をしている。

「早く来て!!」



私が怒鳴ると、

「ヒューヒュー!相変わらず仲良しで、いいじゃねーの」
ナルトが冷やかすように、キバをこずいた。

でもキバは私が怒っているのが分かったらしく、ちょっと
ブスッとした顔をして、ゆっくりとこちらに歩いてきた。

私の目の前にきてキバは
「なんだよ」
とぶっきらぼうに言った。

私はキバの手をとると、小走りに、学校の裏の庭までひっぱって
いった。

「おい!、お前、授業サボる気かよっ」
キャンキャンッ!!
キバの後を赤丸が追いかけてきた。
キバは私に手を引かれながら、驚いた様子で聞いていたけど、
私は答えなかった。


裏庭は木で覆われているし、今は授業中だから、私達の他に
人気もなく、辺りは静かだった。


私はキバの手を離すと、キバの方に向き直って、言った。

「キバ・・・・・いい加減にしてよ!」
私は自分より背の高い、がっちりとしたキバを睨みつけた。

「なんだよっ」

キバは不機嫌そうに私を睨み返す。

「彼に何をしたの?」
私はさっきの後輩の男の子の顔の傷のことを話した。

「あぁ・・・・あいつか・・・・・」

キバは全然反省するでもなく、両腕を頭の上に組んで、フンッと
顔をそむけて言った。

「あいつさ・・・・のことが好きなんだとよ。だからよ、
 ちょっと脅かしてやっただけだ・・・・」

「どうしてそんな事するのよ!」
私はなおもキバを睨んで言った。

「どうして?そんなの当たりめーだろっ!!
 は俺の女だ!ちょっかい出しやがる男なんざ、
 俺がみんなぶっ倒してやるよ!」

キバの目は真剣だった。
怒ったキバがすごく怖かった。
でも、それは私を好きだからなんだ・・・・・キバは私の為に
こんなことをするんだ・・・・・

そう、頭では分かってるつもり。
でも、もう限界。
キバのせいで、私は大事な後輩も無くしてしまった。

「もう・・・嫌。そんなの全然優しくないよ・・・私はそんなキバ
 嫌いだよ・・・・」

私は静かにそう言った。

ううん。本当はキバのことは好きだ。
でも、私を守ろうとして、むやみに人を傷つけてしまうキバが怖い。


キバは私の体にギュッと抱きついてきた。

・・・・なんでだよ? 俺、お前のこと真剣だ。マジで好きだ。
 そんな事・・・・言うなよ・・・・・・」

耳元で聞こえるキバの声は急に弱弱しくなった。
キバの足元で赤丸もクゥーーンと悲しげな声をあげた。

「どうしてキバは私が男の子と話すだけで怒るのよ!」

でも、私だって、辛いんだよ!

「不安なんだよ!分かんねーのか?お前が俺以外の男に惚れる
 んじゃねーかって、そう思うと、俺は不安なんだ!」

肩を掴む力がすごく強くて痛かった。

「だからって・・・こんな事しないでよ!!
 こんなことばかりされたら、私、本当にキバを嫌いになっちゃうから!」
私は叫んでしまった。


キバは私の両肩をに爪を食い込ますほどグッと掴んで、

「だったら!お前は平気なのかよ?俺が他の女と一緒にいても
 なんとも思わねーのかよ!!」

真剣に私を見つめる目。


「わ、私は全然平気!そんな事で怒るほど私はガキじゃないわよ!」


大きく見開かれたキバの目・・・・
突然、キバの手が私の肩から力無く離れた。


「そうか・・・・分かった。」

キバは小さい声でそう呟くと、赤丸を抱きかかえて、
私に背中を向けた。

それからゆっくりと振り返って

「お前は俺がお前を想うほど、俺のことが好きじゃねーんだよ・・・・
 だから、俺の気持ちなんて、分からねーよ・・・・」

その顔は今まで見たこともないくらい、寂しそうで、
悲しそうで、痛いたしかった。

「キバ・・・・・・」






キバは勢いよく走って行ってしまった。
キャンキャン!
キバを追いながらも、赤丸は何度も何度も私を振り返って見ていた。
まるで、「!キバを追いかけて来て!」と叫んでいるみたいに見えた。

でも、私は追わなかった。
だって・・・・そんなことしたら、また同じことの繰り返しになるだけだよ・・・



それでも、残された私の胸はズキズキと痛んだ。

キバのことは好き・・・・けど・・・・・私はキバの言う通り、
もしかしたら、キバが私を想ってくれるほどには、キバを好きじゃ
ないのかもしれない・・・・・

キバはいつでも私を好きだと言う。
でも、私はキバにちゃんと好きだと言えないでいる。

好きって気持ちはあるのに・・・・素直に言えない自分。


それはもしかして、本当はそれほどキバを想っていないってこと
なのかな?



風が木々を揺らして、ざわざわと音をたてた。
その音はまるで私の心のように不安な音に思えた。








教室にもどると、ナルトが私のところにソソソとやってきて

「なーなー!お前、キバに何言ったんだってばよ?」
と私の耳元に手を添えて、小声で言ってきた。

「な、何って・・・・・キバがどうかした?・・・・」
私がそう答えると、

「あれ・・あれ・・」
ナルトが指をさして見せた。


そこには、席にドカッと座って、腕組みをし、もの凄く怖い顔
で一点を見つめているキバがいた。

「キバのやつ、教室に戻ってくるなり、ずっとあの調子なんだってばよ。
 さっきなんか、机にぶつかった奴をいきなり殴るし」

私は はぁーーーーーっと溜息をついた。
まるで子供じゃない・・・・そんなキバにまたあきれた。

「ほっときゃいいよ。ナルト。そのうちまた元気になるでしょ」

私はそれだけ言うと、またヒナタの後ろの席に向かって歩きだした。










放課後、私はお昼を食べようと、廊下に出てみると・・・・


「なぁ、今度、俺とデートしよーぜー」

キバが隣のクラスの女の子を廊下の壁際に追い詰めて、顔を
近づけて迫っていた。
女の子は困った顔で
「えぇ?でも・・・えっと・・・その・・・」
なんて言っている。

キバは私の顔をチラッと見てから、フンッと顔をそむけた。

(キバのやつ!!)

私にやきもちをやかせようとしているのが、明らかに分かる。

(その手にはのらないからね!!)

そりゃー キバが本当にあの子とデートに行っちゃったら、
嫌だけど、キバは絶対行かない・・・ただ私に怒ってもらいたい
だけだ・・・・

私はわざと何も見なかったように、ふつうに2人の横を通り
過ぎた。

「おいっ 待てって!」

やっぱりキバは、今誘っていたはずの女の子そっちのけで
私の後を追ってきた。

私はしらんぷりして、どんどん廊下を歩いていった。

キバはそんな私の横に並んで、

「なー?俺が他の女といるの見て、嫉妬した?」

とか聞いてくる。

私はキバの方を向きながら、

「別に・・・・女の子がかわいそうに思っただけ・・・・」
わざと冷たい目でキバにそう言うと

「あーーーーそうかよっ!マジムカついたぜ!俺は本気で
 他の女とデートしてやる!お前なんか忘れてやる!
 今日でお前とは別れてやるよ!!じゃあな!」

キバは私に怒鳴ると、ダッシュで走り去っていった。




ふ、ふーーーーーんだ。何よ、キバのバカ!
どうせ、本気じゃないくせに!

そう思いながらも、少し不安になってきた。

今まで、キバからそんなヒドイ事を言われたことなんてなかった
から・・・なんだか、急に悲しくなった。

私とケンカした時、いつだってキバは
「やっぱが誰より好きだ」
って笑ってくれた。

私が落ちこんでる時、いつだってキバは
「絶対俺がお前を守ってやる」
って抱きしめてくれた。

いつだって、キバは私を1番に想ってくれてた・・・・


だから、さっきの言葉は嘘だよね?
さっきの言葉、私は絶対信じない・・・・・・・


NEXTへ


戻る

55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット