「あーぁ めんどくせーな なんでこんな森ん中を
 かけずり回んなきゃならねーんだよ クソッ」

今日は朝から気持ちよく晴れてるっつうのによぉ
こんな時は風に吹かれながら草の上で昼寝ってぇのが
俺の日課だっつうの

まっ 仕方ねえか・・・いちよう俺も忍なわけだし・・・







「こらー シカマル!何ぼけっとしてんのよー!」

「あーー うるせぇっての いの」

「もー あんたがそんなんだからキャシーちゃんも見つからない
 んだかんね!お昼食べたら、本格的に調査開始よ!」

「へいへい」


キャシーってのは、いなくなった猫の名前で、相変わらず俺達
10班は、ランク最低のくそめんどくせー任務を任せられてる
ってわけだ

けどよ こんな任務より もっとくそめんどくせーことが
起きちまうなんてな・・・
ったく 俺ってマジついてねーよな



それはいのの話しからはじまったんだよ・・・・・



「いのー 早く昼飯にしよーよー」
「はいはい チョウジは食べる事しか頭にないんだから!
 まったくこれだからうちの班は・・・」
いのが頭を抱えてる

「とにかく飯だ 飯」

俺達はその辺のちょうど木陰ができてる木の下に座って
弁当を広げた

「そういえばさー シカマル知ってた?」

いのは里イモ煮をほおばりながら言った

「は?」
いのの話しはいつだって、突拍子もねぇ
主語を入れろよ主語を・・・・それだけで「知ってた」って答え
られる奴がいたら、俺が表彰してやるっつうの

いのはイモをゴクンと音をたてて飲み込み、急にこっちに
向き直って、俺の顔を見据えて言った
のことよ」

なんだ?なんだ?突然真顔でよー・・・びっくりすんじゃねえか

が・・・なんだよ」
俺はいのの迫力に、少し体を後ろにのけぞりながら答えた

ってのは俺の幼馴染で、これがまたおしゃべりで甘ったれ
で、小さい頃から俺の隣に必ずひっついてくる変わった女だ

「なんかさー 色々悩んでるらしいわよ」

は?なんだその意味深に細められた目は・・・・

「へー」

俺は、さも興味なさそうに、いのから目をはずして、弁当の
卵焼きをバクッっと食った
内心、なんか気になっちまって、早く続きを言えよ!とか
思ってたことは内緒・・・

いのは盛大に溜息をついた後、
「シカマルってさ 本当にに興味ないのね あんなに
 かわいいのにさ だいだいあんたには、あんなかわいい子
 もったいないのよ!」
自分の箸の先を俺の顔に向けて、ブンブンと振ってみせた

「あぶねーっつうの」
俺はいのの箸を手で払いながら言った

まったくなんなんだよ・・・がどーしたんだよ!
俺は内心イライラしていた

「ねーねー それでなんなの?いの?の悩みってさ?」

チョウジがうまいフォローを入れた

「うん それがさ、ある男の子から告白されたんだって」

なんだ そんなことかよ・・・・・・
俺はホッとした

は前にも、何人かの男に告白されてる
けど、一度だってオッケーしたことなんてねーんだ
理由は「シカマルが一番」だとよ・・・・

「シカマル本当にいいのー?」
いのは俺の顔を覗き込むように下から見てきやがる
チョウジまでニヤケやがって、お前ら2人とも死ね クソッ

「俺には関係ねーだろ が決めることじゃねーか」
俺はフンッと鼻をならして、さらっと言ってのけた
ちょっと余裕だしてみたりして・・・・

「はーーーぁ シカマルがそんなんだから、は決めたのね」
いのは両手をちょっとあげて、「ヤレヤレ」のポーズ

え?何を・・・・なんか嫌な展開っぽいな・・・

俺の勘は当たった

「オッケーしたらしいわよ 彼の告白・・・」

「!!!!」

不覚にも、俺は箸で挟んで口にいれようとしていた大好物の
さば煮を地面に落としてしまった

「シカマルもったいないよーーー」

地面に落ちた俺のさば煮を拾って口に入れようとしたチョウジ
の頭に、いののげんこつが落ちた

「痛いよ、いの〜」
チョウジは頭を抱えながら続けた
「でもさ、でもさ、告白をオッケーしたんだったら、は何を
 悩んでるの?」

「オッケーするにはしたけど、自分の気持ちの整理がつかないん
 だって・・・・どっかの煮え切らないバカのせいよね・・・」
いのの目が俺の顔を睨んでる・・・・

俺のせいかよ・・・・

「で、でもよ なんで好きでもないやつの告白にオッケーしたり
 すんだよ あいつは・・・・」
そうだよ いつもみてーに断わりゃいいだろっ
俺の心の中はなぜかモヤモヤしていた

「告白されたの3度目だって」
いのは飯をガツガツっと口にいれながら言った

「は?」


「同じ男の子に3度も言われたらしいわよ 好きだ!って
 もそこまで自分の事を想ってくれてるのに自分が
 答えないでいるのが、すごく悪いことみたいに思えてきた
 らしいわ・・・・」
いののやつ、飯食いながらしゃべんなよ・・・・そんなことよ・・・・・

「だからって・・・・それっておかしいだろ・・・」
俺は弁当どころじゃなくなって、なんか一人ボーゼンとしていた
そのうちマジで汗かいてきた・・・・

頭の中が混乱する
なんだよそれ・・・・んじゃよ、何度も好きだって言やー、お前は誰
とでも付き合うのかよ・・・・・・・
すげー腹たつ・・・・

「おい!いつまで飯食ってんだ お前ら!この任務の完了予定
 は今日の夕刻までなんだぞ!」

様子を見にきたアスマにどやされて、俺達はあわてて弁当をしまう

「ホラッ!ちゃっちゃと見つけてこいよ!キャシーちゃん!」

「分かってるってばーー!」
「あー めんどくせー」
「いやだーーー まだ食べてないよー お腹すいたーーー」

俺達はアスマの声を背中に、残りの弁当をかっこむチョウジをひきず
るようにして、再び森の奥へと入って行った

俺は足を進めながら、なんともいえない自分の感情にとまどっていた
・・・・冗談だろ?俺らしくねえって
だってよ、のことで頭ん中いっぱいで、昼飯なんて全然喉に
通らなかったんだぜ あーマジめんどくせー

俺は俺自身に動揺していた・・・・

「どーでもいいっつうの キャシーなんてよ・・・」
俺は小声で呟いた

そうだよ 今はそれどこじゃねーっての
俺はとにかく早くに会いたくて、イライラした
会ってどうすっかは自分でもわかんねーんだけどよ・・・・
とにかくあいつに会って、話し聞かねーといけねえような
気がしてた・・・・

「上から探すわよ!」

いのの合図で俺達は木の上へと飛び、枝を足で蹴りながら、
森の更に奥へと木から木へ渡っていく

「なんだって のやつ 俺になんにも言わねえでよ・・」

風をきって進む音で、周りに聞こえないのをいいことに、俺は
一人ぼやきながら進んでいた
頭の中はの事でいっぱいだった

「いたわよー キャシー!」
いのの声が、俺の耳の奥の方で聞こえた気がした
「シカマルーー!!影真似の術かけちゃって!」
「え?あー」

と言ったつもりが・・・・

バキバキボキボキダーーーンッ
見事なマヌケぶり・・・・忍だろ?一様・・・俺は・・・

枝から足を踏み外し、俺は地面へと落下していた




「痛っつぅぅ・・・」
幸い、下の地面は手付かずの草花がクッションになり、俺は
ケツを強打しただけで、なんのキズもつかなかったが、かなり
痛てーよ クソッ

「フギャーオ!」

しかし、キャシーとかいうバカ猫は、俺が空から降ってきたこと
にビックリして、猛ダッシュで逃げていってしまった

「何してんのよー シカマルのバカタレ!!依頼人の猫を逃がして
 どうすんのよーー!!そんなんだから、まで逃しちゃうんだ
 かんねーー! 本当、シカマルってバカなんだからーー!」

いのは軽やかに木から舞い降りて、腰に片手をおきながら、もう片
方の手で俺を指さし、仁王立ちで怒鳴った

当の俺は、情けなくその場にしゃがんで尻をさすりながら答えた

「あーあー 悪かったなっ けどな、の事と俺の事は関係
 ねーだろ!」

俺は半分キレてたかもしんねぇ
いつもだったら、テキトーに誤って、誤魔化すところだけど、
の事を言われたら、相手はいのだってのに、むしょうに腹が
たってきちまった

「あっ あっちに隠れてるよ! あれキャシーじゃない!」
チョウジの指差す木の陰に間違いなくキャシーがいた

「でかした!チョウジ!シカマル!今度こそ失敗しないでよ」

「へいへい」

俺はゆっくりとキャシーに近づき、

「影真似の術!」

今度はやったぜ 
やつは自分の体が動かないことに怯えた様子だが、俺の動きに
は逆らえず、じょじょに近づき、俺との距離を縮めた

「つかまえたぜ!」

俺はすばやく影真似を解いて、キャシーを抱きかかえた・・・・

「フギャーーオォォォーー」

バリバリバリ〜ッ









「シカマル大丈夫?」
チョウジが心配そうに俺の顔を覗き込む

「大丈夫に見えるかっつうの・・・」

キャシーに思いっきりひっかかれて、俺の顔を傷だらけだ・・・・
その後ろで、いのがぎゃははははとお腹を抱えて大笑いして
やがる

「シカマルのドジー!あんたがヘマするなんてめっずらしーー!
 ねー やっぱり、の事が気になってて集中できなかった
 んでしょーー??」

いのは笑い過ぎて涙目になった顔で、まだ半分笑いながら言った

「んなんじゃねーよ」

俺はムクレながら、いのから顔をそらした
いや、そりゃ事実だけどよ・・・・認められるかっつうの

「無理しないのぉ!にちゃんと気持ち伝えなきゃダメよ!
 あんた、ただでさえ愛想ないんだからさ こういう時ぐらい
 素直に好きって言わなきゃ、に伝わらないよー」

いのは、半分からかうように腰をがめて俺を覗き込んで言った

「なんだよそれっ!俺がいつ を好きって言ったんだよ!
 マジ興味ねーっつうの!」
俺は焦って、柄にもなく大声を出しちまった

「シカマルおかしいわよ!ってモテるんだから!他の男だった
 ら絶対ほっとかないわよ!あんなかわいくて、良い子いないって!
 本当にシカマルってバカよ!」

逆ギレされてる・・・・・
うるせーな本当によー マジ関係ねえだろ おせっかいいの!
俺は頭をガリガリかいて俯いた・・・・
 だってよ、文句言ったら、まためんどくせーし・・・・

いのは続けた
「けど・・・どっちにしても、もう手遅れか・・・・」
いのはいつのまにか真剣な顔をしていた

その言葉はなぜかエコーがかかったように、耳に響いて、
俺は焦った・・・・

「な、なにがだよっ」
俺の心臓はドキンドキンと音を大きくした

「シカマル、今までに全然優しくなかったしさ、
 はいつだって、あんなにあんたのこと好きだって言って
 くれてたのに あんたはいつもそっけない態度ばっかだった
 じゃない・・・ いつも落ち込んでたんだから・・・」

は?そんなの初耳だ・・・が落ち込んでた?俺がそっけないから?
 知らねーよ そんなこと・・・

はいつだって、俺の前で笑ってて・・・
俺がめんどくせーって言ったって、お前、いつも俺の腕にからみついて
笑ってたろうが?

そんなに辛かったんだったら、なんで俺に言わねーの?

「シカマル・・・・・・・他の男のものになっちゃうよ?」
いのは、これが最後の忠告・・・・と静かに付け足した

そのいのの言葉が俺を突き刺した すげー痛い

でも俺はまた心とはうらはらに、答えてしまった

「知るかよ、そんなこと めんどくせー」

いのはそんな俺にあきれたんだろう

「シカマルには関係ない・・・か・・・あんたって本当、女には興味
 ないもんね はその男と付き合って正解だわ」
と苦笑いして見せた

「かもな」

俺は表面上はとても冷静に答えた

俺は俺らしく答えたつもり・・・・けど内心は・・・・・
吐き気がするくらい、モヤモヤしていた・・・・

なんなんだよ!この感覚・・・・俺らしくねーって
心がすげーズキズキ痛むんだって・・・・ 
クソッ マジ死ね!俺!

けどよ・・・・・だよな?つうか、マジかよ・・・
そうか・・・そうだよ・・やっぱりそうなんだ・・・よな?

俺は気づいちまった
本当の自分の気持ちに・・・
俺は・・・・・俺は・・・・・

が好きなんだよ・・・・・・







任務が無事終了し、猫のキャシーの飼い主のばばぁは泣きながら
俺達にお礼を言っていた

「本当にありがとう!この子がいなくなってから、心にぽっかり穴が
 あいたように寂しかったわ!」
ばばぁは愛おしそうにキャシーに頬を摺り寄せた

「もう 誰かにつれていかれちゃったかと心配してたの
 この子が他の人の子になっちゃうなんて考えられないもの!」


俺の心がまた痛んだ・・・・
・・・・お前も他の男のものになっちまうのかよ・・・・・

ばばぁはいのやチョウジの手をとり、握手をしてきた
最後に俺の手をとった時、

「あら、ぼうや その顔の傷・・・・うちのキャシーに?」

「え?ああ・・・これっすか?いや、俺がドジ踏んじまっただけです
 から・・・・」
俺に申し訳なさげに頭を下げるばばぁにちょっと同情した

「俺は平気っすよ それより、キャシー・・・もう2度とこいつを
 一人にしないでやって下さい」

そうだよ 俺はをいつも一人にさせてたかもしんねぇ・・・

あいつがたまには外で遊びたいと言っても、いつもめんどくせー
から一人で行ってこいよとか言って、俺は自分の部屋で寝っころ
がってた・・・はいつも隣でムクレながらも、そんな俺につき
あって、日が暮れるまでそばにいてくれた・・・・

「キャシー、 一人で森の中で、とっても寂しかったみたいです」
といのが言う

・・・お前も寂しかったのかよ・・・・・
下を向いて俺は唇をかんだ・・・・

「はい・・・・・そうします 二度と寂しい思いはさせませんわ」

ばばぁはそう言って、何度も振り返ってお辞儀をしながら
帰っていった

今は日没前・・・・
俺の混乱する気持ちとは裏腹に、任務は無事に予定時刻前に
完了したのだ

「よーし!お前ら、よくやったな!任務完了!今日は解散!」

アスマの声で俺達はようやく家路へと向かうことができた



夕焼けから夜へとうつりゆく空
息を吸うと、鼻がジンと痛んだ

「それじゃーまたね!」
いのが元気よく手を振って、別れ道を自分の家へと向かって
走っていった

「おう またな」
「またね!いの!」
小さくなるいのの背中を見送る

俺とチョウジはもう2つ先の道でお別れだ

俺達は並んで歩きだした
いつもの任務帰りの、いつもの光景

でも今日の俺はいつもと違った

いつのまにか、暗くなった空に浮かぶ星を見ても、
綺麗だとも思えない・・・優しい感情は押しつぶれたように、
苦い感情だけが心を支配していた

の顔が浮かんでは消えていく
マジ手遅れかもな・・・・

隣でチョウジは歩きながらもお菓子をほおばっている
俺は、ポケットに手をつっこんで、俯き加減にチョウジの
横を歩いていた

「ねぇ シカマル・・・・」
突然チョウジが呟いた
「あ?」
「さっきからさ、ずーーっと、の事考えてるでしょ?」

俺は驚きの余り、前にけつまづくところだった・・・
げっ チョウジのやろう・・・ボーッとしてるようで以外と
するどいんだよな・・・・俺は内心焦った

「んなことねーって、さっきから言ってんだろ!
 は俺にとっちゃー マジでただの幼馴染ってだけだ」
焦る俺を尻目に、

「シカマルってさ、嘘つくのヘタなんだよね・・・僕には分かるの
 シカマルは頭はすごく良いけど、嘘つくのはヘタなんだー」
チョウジはなぜか満足気に笑っている

「な・・・なんだよっ それっ!!」
俺は顔が赤くなった
こいつは誤魔化せねーかもしんねー
心を見透かされてる気分だぜ

「シカマル・・・・」

チョウジは急に真顔で俺を見た

「な・・・・なんだよ」

それから急に満面の笑顔でこう言った

「大丈夫だよ シカマル! だってシカマルには影真似の術
 があるじゃない!」

「は?」

俺のマヌケな声と同時にチョウジは

「あっ ここでお別れだね!またね!シカマル」

歩いているうちに、いつのまにかチョウジとの家の別れ道に
ついていたらしい
あいつは俺に背中ごしに手をふって、帰っていった

別れ道に立ち尽くす俺はただ呆然とチョウジの後ろ姿を見送って
いた

ーーーだってシカマルには影真似の術があるじゃないーーーー

チョウジの言葉と笑顔が俺の頭をグルグルまわっている

「なんだ?そりゃ?意味わかんねー」

俺はクルッと踵を返して、自分の家の方向へと歩きだした 
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