次の日、私達のスリーマンセルのチームが担当上忍に呼ばれた。


突然の呼び出しと、いつもと違う緊張した空気。
先生の一言にみんなの体が硬直した。

「緊急事態だ。火影様から他里のスパイが木の葉に潜入したらしいとの連絡が入った。
 だがまだはっきりとした情報がない。敵が何人なのか?目的はなんなのか?まだ何も
 分かっちゃいない」


ゴクリとノドが鳴る。


「木の葉の忍びは、みな2チーム合同で里の各地に散らばって、敵の動きを封じる。
 生きたまま捕獲して情報を得る目的だ。みんな気を引き締めろ!命にかかわる任務に
 なるかもしれんぞっ」

先生の真剣な顔。
こんな状況は初めてで、私は自分の手を握り締めた。
手のひらにグッショリと汗をかく。


「我が班と合同で任務を行うのは、アスマ率いる10班だ。これから合同で作戦会議を
 行う。場所は木の葉の森だ。すみやかに移動する。着いて来い。」


心臓がドキリとした。


アスマ率いる10班・・・・シカマルといのがいる!!・・・・・









先生の背中を見ながら、木の葉の森へと向かう。

これから私達が出くわすかもしれない敵との戦い。
敵の人数、強さ、忍術の種類、すべて未知数。

そしてシカマルといの・・・・

私の頭は混乱する。


----------------どうしてこうなるの?私はどうしたらいいの?-------------------



同じ班の仲間の一人、君が私を心配そうに見る。

・・お前大丈夫か?よりによって10班と合同なんて・・・」

君も私とシカマルのこと知ってるんだ・・・
その時はじめて、「みんなお前らのこと心配してる・・・」キバの言葉がよみがえる。

「大丈夫だよ・・・こんな重要な任務だもの。そんなこと考えてらんないよっ」

私は精一杯の強がりを言った。
動揺しないわけないっ
キバと会ってから、私の気持ちはシカマルといのに会いたいと強く願うように
なっていた。

でも、あんなひどい別れ方をした私達。
今更2人は私を受け入れてくれるのかな?

会ったとしても、どんな顔でどんな話しをしたらいいんだろう・・・
考えても考えても、頭が混乱して・・・
実際に2人に会う勇気は私にはまだ無いのに。


でも、10班が待つ場所は私の気持ちとは裏腹にどんどん近づいてきた。




そして、私達の視界の先に人影が見え始めた。




アスマと10班のメンバーだ。

辺りは夕方。少し薄暗くなって影になっていても、私にはわかる。
頭の上に結われた髪。
細身で背の高い体。
めんどくさそーにまるめられた背中



-------------シカマル-----------------



キバの言うとおり、シカマルは遠征から戻って来たんだ!!







「遅くなったな」

うちの班の先生がアスマに声をかける。
私ともう2人の仲間も後に続く。


「いいや、俺達も今来たとこだ。時間がない。今夜中に敵を捕獲せよとの命令だ。早速
 はじめるぞ!」

アスマの一声で私達はその場に輪になってしゃがんだ。





・・・」

遠慮がちに話し掛ける声

「いの・・・」
振り向けば、懐かしい親友の顔。

「元気・・・だった?」
「うん」
胸がジンとした。
大好きだったいのの笑顔。

もっと話しかけたいけど、何も言葉が見つからない。
いのも同じ気持ちなのかもしれない・・・

私達はそれ以上何も言えずに黙り込む。

でも、何故かそれは決して居心地の悪い雰囲気ではなかった。
懐かしく、胸が熱くなるような感覚。
私の気持ちの中に、まだいのは親友として残ってるんだなって
はっきりと分かった。


そっとシカマルを見る。


私を見る様子なんてかけらもなくて、シカマルはみんなの輪から少し外れたところに座って、
黙ったまま、アスマと私の先生の話しを聞いていた。


怖いぐらい真剣なシカマルの顔。
まるで人を寄せ付けないような冷たい雰囲気。
シカマルが別の人に感じた。



「シカマル・・ずっとあんな調子なんだよ・・・」

いのの言葉。





シカマル・・・どうして?・・・・


『あの子・・ずっと笑わないのよ・・まるで心を閉じちゃったみたいにね・・』
シカママの言葉が頭をよぎる。





、ボケッとすんなっ 気を抜いたら死ぬぞっ!!」

先生の一声にハッとする。

「すいません」

私をチラリと見るシカマル。
一瞬、目があった。
でもシカマルはすぐに視線を先生に戻した。

私・・・やっぱり嫌われてる・・・・
そうだよね、あんな別れ方をして・・・今更普通になんてできっこない。

でも私の心臓は、ドキドキしていた。
シカマルが近くにいるだけで、すごく心強くて、すごく安心して・・・
たとえシカマルの心が私に向いていないとしても、あなたに会えて私はやっぱり壊れて
しまいそうなほどドキドキしてる。
今でも心から大好きな人。
あなたにやっと会えた!!!・・・・






「敵と遭遇した場合、まずシカマル、影真似でお前が足止めだ。複数を捕らえることに
 成功した場合、チョウジとで攻撃を開始する。」

「何匹かを影真似で逃した場合は、お前の幻術で足止めしろっ」

私の班の男の子にアスマが命令する。

「いのとは敵が捕獲出来る状態になるまで待機。もしも俺達がやられた場合、状況判断で
 すみやかにこの場から退避し、火影様に状況報告に向かえ!」


『はい!』



緊張した空気、私達2チームが任された場所、木の葉の森でそれぞれ気配を消して
草陰や木の上で待機する。

敵がここに現れるかどうかは分からない。
何人いるかもわからない。

心臓の音だけがドクドクと時を刻んだ。

暑くもないのに額から汗が流れ落ちる。

「大丈夫だ。焦らずいけっ お前らならやれるっ」

「はいっ」

声をおとした先生の声。







その時、羽音を消した一羽の鳥が先生の肩に静かに舞い降りた。


先生の表情が強張るのが分かる。
私の心臓はドキドキして、体がふるえてきた。
先生は真剣な顔で隣の私に小声で囁いた。


『アカデミー近くの林で敵と遭遇した。担当チームがだいぶ苦戦しているらしい。
 応援要請が出たから俺は抜けるぞ!いいかアスマの言う通りに動けよっ!』

『はい』

敵と遭遇・・・現実として目の前に突きつけられる死への恐怖。
でも、私達はどんなに子供であったって、忍びなんだ・・・木の葉を守るために戦わなければっ
こんな事は、これからもいっぱいあるはずだ。

なんとか高鳴る心臓の音を静めようとする。

大丈夫・・・みんな一緒だもの。
シカマルがいてくれるもの。







-----------------------ガサッ------------------------------








木々が異様な音をたてた。
暗がりに何人かの見知らぬ人影。
敵だ!!


「シカマル!そっちだ!」

暗がりにアスマの声が響く。


『ちっ 待ち伏せかっ!』

見知らぬ男の声


「忍法!影真似の術!」


『なにっ!!体が動かねーっ』


シカマルが敵を捕らえた!!


「チョウジ!一人逃した!頼んだぞっ」

シカマルの声に、みんなが一斉に暗がりにもう一人の敵の気配を必死で追う。
その時、真っ黒い人影が ザクッ と枝を蹴って、下の草はらを駆け抜けて行くのが見えた。

「チョウジ君、そこ!!」

私はとっさに木の上から声をあげる。

「オッケー!任せて!  肉弾戦車!!」

ものすごい轟音と草木が折れるようなすさまじい音!

『ギャーーーーーーーーーーーッ』

「よし!一人捕らえたな!いの捕獲しろ! チョウジ油断するなよっ いのを援護しろ!」

アスマは高い位置から的確に指示を出す。

『はい!』

いのがチャクラを練りこんだ特殊な縄を持って、駆けつける姿が見えた。




まずは一人!確実に捕らえられるはず!!




安心してホッとため息を漏らすと、




!こいつに攻撃しろ!もう影真似じゃもたねーぞっ!」

シカマルの影に捕えられた敵が、大量のチャクラを練り込んでいるらしい。
いくらシカマルでも、上忍クラスの敵を長い間足止めするのは無理だ。

「分かった!敵は、いのとチョウジが捕獲してる奴とコイツだけか? やってやるぜっ」

が投げたクナイが急所を避けて、敵に命中する。
瞬間に影真似が解かれた。





---------------------ボンッ--------------------------



その一瞬の間に、敵の姿が煙とともに消えた。



「しまった!分身か!やばい逃げられた!」

の焦る声。

「ちっ あの一瞬で分身を使うのかよっ こりゃこっちもマジでいかねーと、やられるぞ 」

「あぁ分かってる・・・」

とシカマルは逃した敵の気配をさぐっている。


高鳴る心臓。





暗闇の中、私達はそれぞれの場所から必死でもう一人の敵の気配を追う。

ザザザッ

とシカマルが慎重に辺りの様子を伺いながら、森の奥へと進んでいく。

(どこ?どこにいるの?)

実戦経験の無い私は、この緊迫した状況にまだ体がついていけない。
私は木の上から、みんなの動きを追うのに精一杯だった。




「これ以上奥に逃がすなよ!この暗がりじゃ捕らえきれねーっ 必ずここで足止めするんだ!!」

アスマの緊迫した声。

心臓がドキドキと高鳴った。


「きゃーーっ」


その時、いのの叫び声が響いた。
チャクラを練り込んだ縄を敵が抜けようと必死でもがく様が見える。

チョウジの怪力でも抑えきれないほどの力。
暗がりでも、敵のチャクラが体から溢れているのがはっきりと見える。

あんなチャクラ、演習でも見た事が無いっ
あきらかに上忍レベルっ!!

これが・・・敵の・・・力。

「やはりあいつら2人じゃ無理か! シカマル、、もう一人はお前らに頼んだぞっ!」

アスマがいの達のもとへと向かう。




大丈夫・・・アスマがいればきっと確実に捕らえられる。
いの達へと向かうアスマの頼もしい背中に私はホッとする。










「くそっ もう一人はどこだ? シカマル、分かるか?」




「気配は消してるが近くにいるぞ!」





安心するのはまだ早い。
さっき分身をつかって逃した敵がまだ近くにいるんだ!!

そしてそれを捕らえるのは私だ!
私はチャクラを練り込んだ縄をギュッと握り締めて、とシカマルの次の合図
を待った。

心臓は再び高鳴りだす。








その瞬間、目の前がパッと明るくなった。
夜だというのに、森は朝の小鳥のさえずりが木霊する。


「これは・・・」

「これは幻術だ!! 回避しろっ」

シカマルの声。

幻術という言葉に、私の体はとっさに幻術返しの術を発動する。







ずっと以前に

「これだけは覚えとけよ!」

いつもめんどくさがりで私の修行になんて適当にしかつきあってくれないシカマルが
いつになく真剣な顔で私に教えてくれたのを思い出す。









「解!!」

寸前で幻術を免れることが出来たみたい・・・

目の前はゆっくりとまたもとの通り、暗闇の森にもどった。


は?シカマルは?
木の間から2人の気配をうかがう。


!どこだ!」


シカマルの声。
良かった、シカマルは無事なんだ・・・


「シカマル、ここ!」



シカマルの声に振り返る瞬間、暗闇がキラリと光るのを見た。





----------------------しまった!!!-----------------------




目が釘付けになる。体が動かない。 目の前に鋭い刃先が私に向かってくるのが見えた。
このままでは確実に命中する!!!



なのに・・・どうして? 体が動かないの?



!どうした!早くよけろ!!」

シカマルの声がいつもの冷静さを失っている。


だって・・体が・・・

「シ、シカマル・・・私・・・・」





解いたつもりの幻術に私の視神経がひっかかった。
脳に送られる信号が混乱している・・・思考が追いつかない。
視界が捕らえた幻術の一部が私の脳に体を硬直させる信号を送っているんだ!!

やられた。

これが敵の能力!!

だめだ・・・命中する!







目をギュッと閉じた。



私はきっと・・・ここで・・・・死ぬ・・・・




                 グシュッ!!


生々しい音が私の耳に残った。



この世で最後に聞く音は、愛しいシカマルの声でも、仲間の声でも無い・・・
肉体をえぐる、無機質な金属音。


あぁ・・・死ぬって一人なんだな・・・そのうち心臓が止まって、じきに私は死ぬ。



目を閉じた私の前は完全な暗がりで包まれた。
おおきな黒い影が私の目の前を遮っている。

これが敵が最後に私に見せた幻術なのか、それとも死の前に現れるという死神の姿なのか?


どっちにしろ・・・私はここで死ぬんだ・・・・
覚悟を決めなきゃ・・・


でも・・・・


最後にもう一度だけ、シカマルの顔が見たかった。
あなたの頬に触れて、一言 ごめんね って言いたかった。
あなたに抱きついて、大好きだよ って言いたかった。



そして、もう一度だけでいいから、あなたに名前を呼んで欲しかった・・・・


・・」


愛しい声が聞きたかった。






その瞬間・・・・私の耳に聞こえてきたのは・・・


・・・」

これは・・・幻聴?
私はゆっくりと目をあける。






・・けがねーか?・・・」





「え?」   




驚いて目を見開く。
目の前にいるのは幻術でも死神でも無い・・・・
私の愛しい人の優しい顔。

(嘘?・・・で・・しょ?)


体中から血の気が引いていくのが分かった。
額から冷たい汗が流れ落ちる。

(どうして・・・どうして私の前にシカマルがいるの?っ)

でも、私の目の前でシカマルはまるで何事も無かったかのように、いつものように へっと鼻をならした。

「ドジ。 幻術だっつったろうが・・・返しの術・・ちゃんと修行しとけっつったろ・・・」

「う・・・うん・・・・」

心臓がバクバク言ってる。

「シカマル・・・」

私は目の前のシカマルを見つめる。

(ねぇ・・これは夢?これは夢でしょ?)

体がブルブルと震えた。




シカマルはそんな私を見て、笑った。

「へっ 間に合ったぜ・・・・・・無事で・・良かった・・・」

「シカ・・マル・・・」

はぁはぁ・・・

目の前のシカマルの呼吸が突然粗くなる。

私はどうしていいのか分からず、ただただシカマルを見つめて、震えていた。
頭が混乱して、体が動かない。


(これは・・夢だ・・・嘘だ・・・シカマルが・・・こんなっ・・・・)


「シカマル!!大丈夫か! 早く!誰か医療班を呼べ!!」

の叫び声・・・









大丈夫かって・・・何?
医療班がここに来て何をするの?


やだよ・・こんなの・・・夢なんでしょ?シカマル・・・・・


涙がボロボロと出て、体の震えが止まらない・・・・
その時、シカマルの腕がゆっくりと私に伸びてきて、骨ばった指先が頬を優しく撫でた。

、泣くなよ・・・」

「シカマル・・・・・・」

シカマルに抱きつきたい・・・だってこんなに近くにいるじゃない。
ずっとずっと会いたくて、ずっとずっと謝りたかった・・・あなたの側にいたかった。
今、目の前に私の一番欲しかった人がいるじゃない・・・なのに・・・どうして?




私はこんなにも震えている・・・




どうしてなの・・・シカマル・・・どうしてそんなに苦しそうな顔をしてるの?
どうしてなの・・・やっと会えたのに・・・こんなの嫌だよ・・・・
こんなことなら・・・あなたに2度と会わない方が良かった・・・・・・



私が伸ばした手をすり抜けるように、力を無くしたシカマルの体はズルリと
傾いて、まるで人形のように動かないまま下に落下していく。
シカマルの背中には数本のクナイがグッサリと刺さっていた。


「嘘・・・・うそだ・・・こんなの・・・・・・」



私の頭が混乱して、呼吸があがって苦しい・・・・

「シカマル!!」

暗闇に落ちていく真っ白いシカマルの顔。
手を伸ばしても届かないまま、暗闇の中に吸い込まれていく・・・・


「やだ!誰か!シカマルを助けてっ!!!」


叫びに近い私の悲鳴のような声。




その瞬間、幻術が解かれたがシカマルの体を抱きとめるのが見えた。






ゆっくりと下に寝かされるシカマルの体。
シカマルの背中に刺さったクナイから大量の血が流れていた。




(私をかばって?・・・どうして?シカマル・・・)
私は何も言葉にできずに、シカマルの動かない体に震えていた。

「はぁはぁ・・・・」

あがり続ける呼吸に目の前がクラクラと歪んで見えた。
もう立っているのもやっと・・・・



他のみんながシカマルに駆け寄る。



アスマが暗がりから、敵の死体を担いで現れた。

「アスマ!生きて捕獲するんじゃ・・・」

いのの言葉をアスマが遮る。

「状況が状況だ・・・仕方ねーんだよ・・・・こいつがシカマルにクナイを・・・」


違う・・・そいつが狙ったのは私だ・・・・・・


アスマは担いでいた死体を捕らえたもう一人のいる草むらに無造作に放り投げる。

ドスンッ

人間の死体をはじめてみた。
まるで人形・・・心を無くしたそのものは、ただの肉の塊でしか無い・・・・




アスマは横たえるシカマルを抱きかかえる。
それでもシカマルはピクリとも動かない。


心臓が壊れるほどにドキドキしている。
いっそこのまま私を壊して・・・そして私のかわりにシカマルを助けてっ!!
私の体はガクガクと震えたまま、涙がとまらない。




「シカマル大丈夫だよね?ねぇアスマ!!死なないよね?」

「チョウジのバカ!シカマルが死んじゃうわけないじゃない。こんなめんどくさがりの
 いい加減なやつが・・・こんなことで死ぬなんて・・・ね?アスマ!」


チョウジといのがアスマに詰め寄る。

 
「お前ら!ちょっと黙れっ!!」

アスマの怒鳴るような声。
私達はビクリと体を硬直させた。

私の目の前で、シカマルは目を閉じて、今だピクリとも動かないままだ。

アスマは心音や脈を確認している。





「アスマやめて・・・シカマルは死んでないっ シカマルにそんなことしないでっ」





もう何がなんだか分からなくて、私は半狂乱になる。

目がかすんで苦しくて、シカマルに駆け寄ろうとした私をやチョウジに止められて、
それでもシカマルに触りたくて、もう一度声が聞きたくて、私は2人の腕の中で暴れまくった。
みんなが私を制止しようと体を押さえつけている。懸命に話しかけられているが、私にはもう何も
聞こえない。


「離して!シカマルは私が助けるの!」


何度も何度も同じセリフを繰り返して、私は暴れていた。
シカマルの側に行きたい!


何人もの医療班が駆けつけてくる姿。
あわただしい人の動き。
担架に運ばれるシカマルの体。



嘘だ・・・シカマルは死なないよ・・・誰か助けて・・・夢なら覚めてよ。



なおも暴れる私をとチョウジが懸命に抱きかかえてくれていた。

「離してよ!シカマル!シカマル!」

遠ざかるシカマルの担架が暗闇に消えていく。
その光景がすごく怖かった。
だれかがシカマルを闇の中に連れて行ってしまうような恐怖。


「シカマル!シカマル!行かないで!」

私の声が森中に響きわたる。
鳥たちがばさばさと羽を動かす音が聞こえた。


!!!」

半分狂っていた私を突然現実に引き戻す声。

いのが私に駆け寄ってきた。





「いの・・・私・・・シカマルが死んだら・・・私も死ぬから・・・・」







薄れる意識のなかでそんなことを言ったような気がする。



バシンッ



頬に強烈な痛みが走った。


「シカマルは死なないよ!!あんたがシカマルを信じないでどうすんの!!
 しっかりして!じゃなきゃダメなんだよ!」

肩をつかまれて、爪が食い込む。
その痛みが私を除除に覚醒させる。

!めんどくさがりのあいつが諦める前に、あんたが呼びもどすのよ!分かる?
 がシカマルの側にいてやらなきゃダメなんだよ!あいつを救えるのはだけ
 なんだよ!!」

「いの・・・・・・」

視界がはっきりと晴れた・・・いのが泣いてるのが見える。
私とシカマルのために必死になって・・・




あぁ・・・私の目の前にいるのは、やっぱり私の一番大切な親友だ・・・・・・





今なら分かる・・・あなたははじめから私とシカマルを傷つけるようなことをする人
じゃない・・・
シカマルといのがキスしたのは・・・
あれは酔っ払ったときのちょっとした事故だった。

それを許せなくて、うらんで、憎んで、私がシカマルもいのも傷つけた。

一番悪いのは私・・・・






「いの・・・シカマルの病院に連れてって・・・私が絶対シカマルを死なせたりしないから・・・」









いのが私の手をギュッと握る。
そして私達は手を繋いだまま、病院に向かう。
暗闇が私達を包み込む。
それでも私の気持ちは揺るがなかった・・・・

(シカマルを絶対死なせたりしない!!たとえあなたが死の淵で迷ったとしても、私が必ず帰るすべを
 あなたに伝えてみせる!絶対に逝かせないっ 絶対にシカマルを取り戻すから!!)



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