そのまま、は俯いて、俺も隣で無言のまま、すごく痛む胸の鼓動を
おさえながら、かき氷を食べた。


何やってんだ・・・俺・・・・


腕にからみついたに欲情して、もしかしたら、お前をまた自分のものに
できるって思った。
今ならきっとまた前のように元に戻れる気がしてた。


だから・・・わざと去年の夏の時みたいに、お前のスプーンからかき氷を食べて、
また2人で笑い合うつもりだった・・・・


乱暴に強引にじゃなく、いつもの俺達のようにを取り戻したかった・・・・


けど・・お前があんな目で俺を見るから・・・・
すっごく恥ずかしそうに、潤んだ目で見つめてるから・・・・


今度こそ、ずっと抑えておくはずだったの俺の中の男っていう汚い感情が、
俺を突き動かして、我慢できなくなっちまったんだよっ 


・・・また俺はお前を傷つけちまったのか?
くそっ これじゃーまるで、俺は欲情した、ただの獣だよな。


に本気で嫌われたか?・・本当に何やってんだよっ 俺・・・・



隣で俯いているにかけてやる言葉すらみつからねー。
こんなにお前は近くにいるのに・・・なんでこんなに遠いんだよ・・・・

どうしたら、お前を取り戻すことができるんだ?






-----------バンッ バンバンッ バンッ!--------------






けたたましい爆音。

毎年恒例の花火がはじまる予告の合図だ。





「花火・・・」

が隣でポツリと呟いた。

「・・・行くか?」

俺はチラリとを見る。
これで断られたら、たぶん俺はもうお前に何もいえずに、お前を連れて帰る
しかねーよな。

けど・・・



「う・・ん。このまま帰るの・・嫌・・シカマル・・と一緒に花火・・・見たい。」




すげー嬉しかった。
俺がお前と離れたくないって思ってるように、お前もこんな俺とまだ
一緒にいたいって思ってくれてんのか?




「でも・・シカマル・・人ごみ嫌いだよね?」

遠慮がちに言う言葉。

「連れてってやるよ・・・」



俺達はゆっくりと立ち上がる。


「はぐれんなよっ」

「う・・ん」


の小さなかわいい手を俺はギュッと握り締めた。











シカマルの大きな手が私の手を包んで、それから、指をからめられる。
それがはぐれない為だって分かっているけど、心臓がドキドキした。





キスもできない自分が、こんなお願いをすることにすごくすごく勇気がいった。

(人ごみなんてめんどくせー)

その一言を言われたら、きっと私はシカマルに何もいえずに、このまま家へ帰るって
言っただろう・・・

でも、このまま帰ったら、私はシカマルと永久に会えない気がしたの。


だから思い切って花火に連れてってなんてお願いしてしまった。



でも、シカマルは優しく笑ってくれた。



シカマル・・・どうしてそんなに優しいの?
本当は人ごみなんて苦手なくせに・・・

いつも意地悪な事を言いながらも、私のために無理ばっかりしてくれる。
そんなあなたに私は甘えていた。

でも、あの日いのとキスしたのは、そんな私にシカマルは愛想をつかしたから?

キスの相手をシカマルにしたのは、いのも本当はシカマルが好きだったから?

2人とも今まで、私に遠慮してたの?
私のこと・・いののこと・・・シカマルが求めているのはどっちなの?
シカマルとサスケ・・・いのが本当に好きなのはどっちなの?



手をひかれながら、シカマルの背中を見ながら、私はずっと混乱する頭で
考え続けていた。







橋の上がこの花火の特等席。
水面にうつる花火と夜空に咲く大輪の花火。
両方見える場所がここだから・・・・




橋の上にはすでに花火見物の人たちでゴタゴタしていた。




「ったく。めんどくせーなっ」

シカマルのいつもの口ぐせ。





でも、私にはその言葉がグサリと胸に突き刺さった。
今はその言葉を聞きたくなかった。


私の頭はシカマルの一言でグルグルと不安な感情が回りだす。



そうだよ・・・私はシカマルを振り回してばっかりで、いつだってシカマルにめんどーな
事ばかりお願いしてる・・・・

私はいのみたいに大人で、なんでも一人でできるようなタイプじゃない。

シカマルを満足させてあげられるような事、今までだって何一つしてあげたことないかも
しれない・・・・でも私が子供だから・・・・・



いのだって、いつも私を妹のように大事にしてくれた。
いつも私の相談に的確にアドバイスしてくれて、私のためにおせっかいやいてくれて・・・
そんな私をかわいそうに思って・・・・・・・・


だからシカマルは・・・・・
だからいのは・・・・


お互いに好きだっていう本当の気持ちを私に伝えられないままだったのかな・・・
今までずっと私のためにお互いの気持ちを我慢して・・・


だから、あの日・・私がいなかったあの日に2人は秘密のキスをした・・・・・




それが全ての答えのような気がした。
私にはシカマルを信じる自信が・・・もう無い。








「ごめんね・・・シカマル・・・・・」


私がとっさに口にした言葉。
シカマルは慌てて私を振り返る。

「バカッ!別にお前に言ったんじゃねーよ。」

(いいの・・もう・・・そんな風に優しくしないで・・・もっと惨めになっちゃうよ・・・)

眉間にシワを寄せて、すごく困った顔をしているシカマル。

(そんな顔しないでっ・・・私なんかのこと、もう心配してくれなくていいのっ・・・)

私の肩を掴もうと、のばされたシカマルの手を見て、私はとっさに身をかがめた。
そんな私の姿にシカマルの手はビクリと反応し、ゆっくりと下にさげられる。

橋の真ん中で私とシカマルはその先の言葉が見つからずに、お互いに向き合って俯いた。


でも・・・・
人ごみが私とシカマルを引き離そうとした時、とっさに腕を引かれた。





私の体はシカマルの胸に押し付けられる。
そして痛いぐらいにギュッと抱きしめられた。




・・・俺から離れんなよ。」

低い声で耳元で言われたら、私の心臓はやっぱりドキドキしてしまう。


なんでこんなにシカマルが好きなんだろう・・・
どうして素直にいのに渡してあげられないんだろう・・・


だってだってもう無理だよ。
幼い頃からずっとずっと側にいてくれたのはシカマルだった。
私の思い出の全てにシカマルがいる。

大好きで大好きで、ずっとシカマルだけを見てきたんだもんっ・・・・


なのに・・ひどいよ・・2人とも・・・
どうして私にずっと嘘ついてきたの?
なんでもっと早く私に教えてくれなかったの?
こんなにシカマルを好きになる前に・・・どうして?




-------------------ヒューッ  バンッ バンッ------------------------






目の前が急に明るくなった・・・夜空に花火が咲き乱れる。
まわりの観客から一斉に歓声があがった。





でも、今の私は花火を見ている余裕も無かった。
上を見上げて、シカマルの顔を見たら、私はきっとたまらなくなって泣いてしまう。


「苦しくねーか?」

人ごみがすごくて、私は抱きしめてくれているシカマルの腕の中で身動きもとれない状態
だった。

「・・・・・」

言葉が出ない・・・シカマルに優しくされたら、私はもうどうしていいか分からない。

「どした?・・・花火上がってん・・ぞ・・・」




知ってるよ・・・だって水面に花火が綺麗にうつってる・・・・
でもさっきから歪んでぼやけて、良く見えないんだってば・・・



・・・お前・・泣いて・・・・」


「シカマルのバカ・・・大っ嫌い・・・・」


シカマルの優しい腕が私を大事に抱きしめているから、シカマルの胸の鼓動が私と
重なっているから、こんなにも近くにシカマルを感じてしまうから・・・

だからもう堪らないよ・・・

シカマルの優しさが苦しいんだよ・・・・




泣き出した私をシカマルはギュッと抱きしめる。

私を大勢の人から守ってくれていたシカマルの優しい腕は、まるで私の体を縛りつけるように
強い力で私を抱く。

「ごめんな・・。俺はお前を泣かせてばっかでよ・・・・
 もういい。嫌いになれよ・・・俺、最低な男だから・・・」

耳元で囁かれたシカマルの声は、とっても悲しそうで、とっても寂しそうで、
とっても切なくて、胸が苦しい。

「シカマル・・・の・・・バカ。 本当に嫌いなんだから・・・大っ嫌いだよ・・・」

だけど私はシカマルの胸にしがみついて、シカマルはそれ以上何も言わずに、
空をみあげる大勢の人たちに紛れて、私とシカマルはずっとずっと抱きしめあった。


「シカマルのバカ!」

(なんか言ってよ!!・・・・・)

でも・・・・・シカマルは私を抱きしめたまま、それっきり何も言わなかった-----------------------




夜空に爆音。
目の前が輝くように明るくなっては、歓声を聞く。

この橋の上の誰もがきっと幸せな気持ちで空を眺めていることだろう・・・

でも、私とシカマルだけ、まるで別世界に取り残されてしまったように、悲しくて、苦しい
胸のうちを必死でおさえながら、お互いに何も言わないまま、ずっとずっと抱きしめあっていた。
もう何も言う言葉なんて見つからないよ・・・

だってもう・・・シカマルと私はあの頃には戻れない・・・・
許せない私と何も語らないシカマル。
信じあえる心を閉ざしてしまった私達。


だけどまだ好きだという気持ちが消えてくれなくて、私はシカマルにギュッとしがみつく。
シカマルもまた私をギュッと抱きしめる。


苦しいよ・・・悲しいよ・・・辛いよ・・・シカマル。









花火が終わると、ぞろぞろと橋の上から人々が散り散りに去って行った。
私とシカマルのまわりにひしめき合っていた人達もだんだんに減り、まわりに空間ができた。


まだずっとシカマルの腕の中にいたかったけど、私もシカマルもゆっくりと体を離す。


お互い何も言わないままで。



人ごみに流されるように、私とシカマルはゆっくりと歩きだす。
私とシカマルの間を見知らぬ人が通りすぎていく。
肩がぶつかり、私はよろけた。
シカマルは私を抱き寄せて、手を握ってくれた。

繋いだ手はこんなにも暖かいのに、心はまるで氷のように冷たかった。


とっさに言ってしまった嫌いという言葉・・・でもシカマルはそれを受け入れた。


もうきっと私達はダメなんだよね?そうなんでしょ?シカマル。






繋いだこの手のぬくもりが、いつかいののものになる-----------------





たまらない孤独感と苛立ちが私の心を支配していた。
悔しくて目に涙がたまった。
けど、泣きたくない。
今は同情で優しくなんかされたくない。

私は溢れそうになる涙を必死でこらえた。
















「あ、シカマルーーーー!ーーーーーー!」


聞き覚えのある声が私達を呼んだ。

ハッとして、お互いにパッと手を離す。


駆け寄る人影。


---------------------------いの!!------------------------------



あんなに大好きだったいの。
私の親友で、私達はどんな時も一緒だった。
辛い時は誰より先にいのに相談した。

だって私達親友だったでしょ?

なのに・・・なんで?


私はいのに嫉妬した。
笑いかける余裕もなく怒りに手が震えた。

『シカマルはしか見えてないもんねーっ 本当お似合いよ!とシカマルって!』

いつものいののセリフ。


いのの・・・嘘つき!!






・・・ど、どうしたの?なんか目が赤いしさ・・・シ、シカマル、ねぇなんか言ってよ・・」

いのは私とシカマルを交互に見て、オドオドしている。

「悪ぃ・・・いの。」

シカマルが小さい声で呟いた。

「悪いって・・・ちょっとまってよシカマル!あんたの誤解解いてくれたんじゃ・・・」

「誤解?」

私はキッといのを睨んだ。

・・・」

いのは私を怯えたような目で見た。
でも、私は許せないっ

「誤解なんかじゃないじゃないっ!シカマルとキスしたくせにっ!」

「違うの・・あれは・・・」

「違わないよ!私にはシカマルがお似合いだとか言っておきながら、本当はいのもシカマルの事が
 好きだったなんて・・・どうして黙ってたの?いのの嘘つき!」

「違うって・・・違うよ・・・」

いのが涙ぐんでいる。
はじめて見た。いののこんなにも弱弱しい姿。

やめろ! いのが悪いんじゃねーんだよっ 俺が酔っぱらって勝手にしちまったんだよ」

シカマルに腕をつかまれる。
いのを思って嘘を言ってるのが分かる。
だから余計に私も止まらなかった。

「どうしてシカマルなの?ねぇなんで?私が好きだって知ってて、どうしてシカマルとキス
 すんの?・・・いのなんて大っ嫌い!もう親友なんかじゃないよ!!」

!!」

いのの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
それを見た瞬間、私の胸は何かに突き刺されたように痛んだ。




もう終わりだ・・・・これで全て・・・・・・



言いたい事は全部言った。
そうだよっ いのの事なんて大っ嫌い!!
でも、なんで?どうして?
泣き出したいのを見たら、苦しくて、辛いよ。



!お前ちょっとこい!!」

シカマルに強引に腕をひかれて、私はいのの前から引き離された。
残されたいのが俯いて泣きじゃくる姿が見えた。


「痛い!痛いってばっ やめてシカマル! 離してよっ!!」


シカマルは何も言わずに、すごい力で私の腕を掴んで、嫌がる私を人通りの無い木の陰に
連れて行く。

きっと私の腕には痣が残るだろう・・・シカマルの背中、すごく怒っているのが分かる。



ちょうど誰もいない暗がり。
シカマルに腕を離された。

つかまれた腕がジンジンする。

「痛いってば!なにすんのよ!シカマル!」

シカマルの眉間には深いシワ。
すごく怖い目で睨まれた。

「お前が俺を嫌いになるのは構わねーよ。けどな、いのはお前の親友だろうがっ!
 あいつを嫌いになるのは俺が許さねーぞ」

「なに・・・それ・・・・」

心臓がドキドキした。

「あいつは今だってお前の事を1番大事な親友だって思ってる。今回のことで1番悩んで
 たのもたぶんあいつだ!あいつはお前の気持ちを踏みにじるような奴じゃねーって、
 お前が1番よく分かってんだろ?」

「言ってる意味が分かんないよ・・・」
(だってシカマルとキスしたのはいのなんだよっ!!)

「あれは俺が酔ってしたことだ。あいつのせいじゃねー。いいか! お前といのはまた
 親友に戻れんだよ!!」

シカマルの怒ってる目。
なんで?なんでそんなに・・・・
私はまた泣きたくなった

「なんでいのをかばうの?」

声が震えた。

「いのがお前を必要なように、これからもお前にはいのが必要だ。
 お前の気持ちを1番分かってくれんのは、いのしかいねーよ。お前だって分かってんだろ?」

優しくさとすようなシカマルの声。

そうだよ・・・私はいつでもいのに頼ってきた。
男のシカマルに言えないことでも、いのには言えたんだよ・・・
ずっと信頼して、誰よりも信じて、必要としてきた・・・


-----------------だから許せないんだよっ!!--------------------



「いいか?。・・・いのは悪くねー。だから、いのともう喧嘩すんな。
 その変わり、俺を嫌いになれ。
 それでお前の気持ちがおさまるなら、俺のこと一生憎んで、嫌いになれよ。」

シカマルは私をずっと見つめていた。

(俺を嫌いになれよ・・・・)

その言葉が私の頭をグルグルと回っていた。

(嫌いになっていいの?私が一生シカマルを憎んで、嫌って、シカマルはそれでもいいの? )








「私が・・・他の男の子のこと好きになっても・・・いい・・の?」

(そんなのダメだって・・言ってよ・・・・)

シカマルはすごく寂しそうに笑った。

「仕方・・ねーだろ?・・・お前がそうしたいなら・・・・」




-------------------シカマルにとって私は必要な人間じゃないんだね----------------------




目の前が真っ暗になった。
お祭りの雑音が耳の奥でぼやけてこだましている。


もうこれで終わりなんだね私達・・・・




----------------------------さよなら・・・私の一番大事な人-------------------------------







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