シカマルが今でも自分を大事に思ってくれている気持ちに嘘は無い気がする。
それは幼馴染以上の感情で・・・

昨日、私にしたキスは本気だったのかな・・・
さっき「好きだ」って言ってくれたことも?・・・

でも・・・でも・・・だからこそ・・なんで?なんであの日シカマルはいのと
キスしたの?

その事がすごく私を混乱させた。

私だって、すごくシカマルが好き。
大切な友達のいのにだって、シカマルを渡すことなんて本当はしたくないっ

シカマルを誰にも渡したくなんかないっ!!





だから私はたまらなくて、シカマルの腕にとっさにしがみついてしまった。





ふわりと香るいつものシカマルの匂い。

私はどれだけその匂いに安心してきただろう・・・
どれだけ頼ってきただろう・・・
悲しいとき、辛いとき、寂しいとき、いつだってシカマルは言葉の替わりに
私をギュッと抱きしめてくれた。
その時、必ずしたシカマルの優しい匂い。


離れたくないよっ
いののところに行かないでシカマル・・・
私だけを見てよ・・・


シカマルの細いくせに筋肉質なその腕に、私はギュッと体をくっつけた。


シカマルはそんな私に何も言わずに歩き続ける。
背の高いシカマルのガッシリした肩。

前ならきっとこんなにドキドキなんてしなかった・・・
でも、今は・・シカマルを失ってしまう不安で、腕から伝わる温もりが余計に私の心臓の
鼓動を高鳴らせる。


こんなに近くにシカマルはいるのに・・・なのに・・・すごく遠い・・・


ねぇ・・・お願い。もう一度私を振り向いて、好きだって言ってよ・・・シカマル。
もう離さないって言って・・・
そしたら私もシカマルが好きだって言えるかな・・・

そっと上を向いたらシカマルの横顔が見えた・・・
風になびくシカマルの結われた髪。
胸がキュッと苦しくなる。


好きだよシカマル。


けど私の心は、いのとシカマルがキスをしているところを想像してはズキリと痛んで、
素直に言葉が出てこないの。


シカマルといのをまだ信じられない気持ちと信じたい気持ち。

私はどうしたらいいんだろう・・・・

2人のキスを許したら、またシカマルは私だけのものになるの?
でも、どうしても許せないこの気持ちを私はどう処理したらいいの?


こんなに好きなのに・・・・・胸が苦しかった・・・・



いつもなら、シカマルとふざけて笑って通るお祭りの縁日。
無言で歩き続けるこの時間がなんだかすごく辛かった。



「シカマル・・・ちょっと休みたい・・・」

私は小声で呟いた。

「わ、悪ぃ・・・」

シカマルはとっさに私を振り返って、すごく心配そうな顔をした。

「ずいぶん歩かせちまったな・・・足・・・痛くねーか?」

「うん・・・平気・・・」

シカマルの腕から体をそっと離したら、とたんに間を風が通りぬけた。
寂しくて胸が苦しい・・・・

「腹へってんだろ?」

優しいシカマルの笑顔。
好きだって気持ちが溢れてしまう。
私だって、まだシカマルが大好きなんだもん・・・

「なんか食うか?」

「う・・ん」

目の前にちょうどかき氷屋があった。

「んじゃお前そこで待ってろ。俺が買ってきてやっからよ」

頭をポンポンと優しく叩かれる。

大きなシカマルの手。

少し小走りに去っていく背の高い後姿。



シカマル・・・私・・・・すごくすごく貴方が好き。



だから・・・私以外の女の子と、ましてや、いのとキスしたシカマルがやっぱり
今はまだ許せない。
昨日されたシカマルの乱暴なキスじゃ、私の心はまだ癒えないよ。
もっと2人で求めるように優しいキスがしたかった・・・

いのとどんなキスしたの?
私が初めての相手じゃダメだったの?
ねぇ・・・シカマル・・・教えてよ・・・・・



私は人通りを避けるように、屋台裏の木陰でボーッと考えこんでいた。


・・・ほらよっ」

目の前でシカマルにかき氷を差し出される・・・

「あ、ありがと・・・・」

「んじゃ食うか・・・・」

「うん」

2人で並んで座って食べる。

シカマルが私に渡してくれたのはミルク金時・・・
私が一番好きなかき氷・・
シカマルは去年の夏のこともちゃんと覚えていてくれたんだ・・・











『ねー シカマル!かき氷食べよーよ』

チョウジ君が舌なめずりしている。

『いいわねー 食べよっか!』

いのも屋台の前で目を輝かせた。

『私も食べるーーーーー!!』

私は足をパタパタさせて喜んでいた。

『あーーーはいはい。めんどくせーけど食うか・・・』

『んじゃ、どうするーーー? 私はそうねーレモン・・じゃなくてやっぱりイチゴにするぅ!
 で?みんなは?』

いのがみんなに注文を聞きはじめた。

『僕ねー メロンとあとレモン? あっ やっぱブルーハワイにしよーっと。あと抹茶・・・
 でもどうせならあんこ食べたいから、抹茶金時ねっ』

『私・・・ミルク金時!』

『よーし!みんな決まったわね! んじゃ、シカマルは?』

『あーーー俺レモンね・・・』

めんどくさそーに応えるシカマルに、いのがニシシと笑う。

『はいっ ご注文を繰り返してくださいっ!』

『は?』

シカマルは眉間にシワを寄せている。

『みんなの注文よ! はいっ!ご注文を繰り返してくださいっ!!』

シカマルは胡散臭そうにいのを見てから、めんどくさそーに頭に手を置いて、目を閉じながら
応えた。

『イチゴにメロンにプルーハワイと抹茶金時とミルク金時とレモンだろ?』

『うそーーー完璧!!』

いのも私も驚いた。
みんな適当にばらばらと言っただけなのに・・・

『やっぱシカマルはこういう能力だけは凄いわっ! んじゃよろしくねーん。』

いのはシカマルの手のひらにチャリンと小銭を落とす。
シカマルは眉間にシワを作って応えた。

『は?』

『みんなの注文覚えておけるのなんて、あんた以外にいないでしょ?とりあえず
 まとめて買ってきてvv』

『あのなーーー(怒)』

かき氷屋は長蛇の列。

『なーーにぃ?なんか文句あんの?シカマル!!あんた男でしょ?』

『へいへい・・・』

シカマルは深いため息をついてから、めんどくさそーに歩いて行った。


それからしばらくして、おぼんいっぱいにかき氷を積んだシカマルがかったるそうに
帰ってきた。

『おらいの、お前イチゴだろっ』

『はーーいvv』

『チョウジ!お前勝手にもってけよっ』

『おいしそーーっ』

・・ミルク金時・・・早く取れって』

『わーーいシカマルありがとっ////』

私が笑ったのを見てシカマルが

『お前さ、ミルク金時なんて甘過ぎじゃねーの?お子様用だろ?』
意地悪な顔で笑うシカマル。

『なっ コレおいしいんだからね!』

『ふーーん。んじゃちょこっと食わせろっ』

私がすくったスプーンをパクリとシカマルが横取りして食べた。
なんかすごくドキドキした。

『あーー 甘めーーっ』

シカマルは顔をしかめた。

『そういう事いう人にはもう絶対あげないから・・・』

私が少しムクレてパクリと食べたら、

『おいしくねーとは言ってねーだろ?もう一口くれって!』

シカマルがまた私のを横取りしてパクリと食べた。

『だめーーーもうっ!シカマルはレモンでしょ!!』

『んだよっ ケチ女ッ』

『なによーーーーっ』


本当はね?私のスプーンから食べるシカマルにドキドキしてたんだよ?
だって、これって間接キスでしょ?



『あのーーーーお2人たりさん・・・イチャつくなら家に帰ってからやってくれる?』
『そうそう・・・』

いのとチョウジ君がジトーとした目でそう言った。












去年の夏のお祭り・・・すっごく楽しかったなぁ・・・・・

ミルク金時をパクリと食べながら、私はずっとそのことを考えていた。

シカマルがいて、いのがいて、チョウジ君がいて、私は10班じゃないけど、いつも3人
が私の側にいてくれた。
ずっとずっと仲良しでいたかった。
ずっとずっとこのままの関係でいたかった。

その願いは叶わないのかな・・・・




・・・・なぁ・・・・」

「え?」

急にシカマルに話しかけられてびっくりする。

「それ、一口くれよっ」

シカマルはニシシと笑った。
去年と同じ。



---------あの時に戻りたい。---------




「だ、だめ。だってシカマルはミルク金時は甘過ぎるーーって言ってたもんっ
 だから絶対あげないっ」

「んだよ・・・ちょこっとだけくれたっていいだろーが」

シカマルが私のスプーンの上のを横取りしてパクリと食べた。
今まさに食べようとしていたので、スプーンは私の口のすぐ近くにあったから、
シカマルの顔がすぐ近くにきて、私は心臓がどきどきした。

シカマルと目が合う。

なぜだか分からないけど、私とシカマルはそのまま見つめあっていた。

シカマルの真剣な目・・・私はたぶんそれに釘付けになっていたのかもしれない・・・


でも--------------------------



シカマルの手がふいに私の頬にあてがわれて、その手が私のアゴを持ち上げた・・・
シカマルの真剣な顔と唇が私の唇に近づく。


このままシカマルにキスして欲しかった・・・・
シカマルのやさしいキスを感じたかった・・・・





でも・・・・

その瞬間、いのの顔が頭をよぎった。







(いのにもこんな風に優しくキスをしたの?)







「やだっ」

私はとっさにシカマルの体を押し戻す。

シカマルの唇はあと数ミリというところで、私から離れた。

「・・・・・ 悪ぃ・・・・・」

シカマルは俯いて、ため息をついた。


シカマルの顔がまともに見れない。
今、シカマルはどんなことを思ったかな?

心臓がドキドキする。






そう、私はいつだって避けてきた。
時折見せるシカマルの真剣な顔。
2人きりでいるときは、なんとなく分かってた。
シカマルが私と幼馴染以上の関係を望んでいるってことも。

キスしたいって思ってくれてるってことも。

でも、私はすごく恥ずかしくて、今までできなかった。
シカマルを好きだから?ううん。好きすぎて?
自分でもよく分からないの。

でも、シカマルとの今の関係がすごく好きだから、一歩進んで私達の関係が
変わっちゃうことも少し不安だった。

シカマルを男の子だって意識することが、私を時々ぎくしゃくさせて、そんな私に
シカマルが時々とまどっていることも知っていた。



本当はシカマルはキスもできない私に、うんざりしてたのかな?
あまりに子供すぎる私に・・・・



私が今シカマルとキスしてたら、いのから取り戻すこと出来たのかな?
シカマルをいのに取られずに済むのかな・・・



でも、そんなキス・・・なんかすごく辛い。



やっぱり私・・・・こんな気持ちでシカマルとキスなんてできないよ・・・・




また泣きたくなった。
どうして、こんなに好きなのに・・・シカマルはこんなに近くにいるのに・・・
私達・・・近づけないの?




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