が帰った部屋。

ガランとして、何の音もしない。
世界中から阻害された気分だ・・・・


カチコチカチコチ・・・・


時計の音がやけに響く。



あーーーーもう、うるせーよ・・・・くそっ




ふと目をやれば、もう任務に向かう時間だ・・・・・


「くそめんどくせーな・・・・・」





どこをどう歩いたかも分からない状態で、俺はとりあえず任務先に向かう。






さっきの状況をいのにどう説明したらいいんだ?
俺はいのとの関係まで壊しちまったかもしれねー・・・・
言葉に出来ない罪悪感・・・・・
あいつは、が誰より大事だと言ってた・・・
大切な友達だって・・・・

いの・・・・悪ぃ・・・・・

もいのも傷つけて、俺は最低な男だ・・・・・・










「遅い!シカマル!」

いのは腰に両手をあてて、怒ってやがる。

「シカマル。どうしたの?なんか顔色悪いんじゃない?・・・」

チョウジはお菓子を食べながら、シカマルの顔を覗きこむ。


「別に・・・なんでもねーよ。それより早いとこ終わらせちまおうぜ。こんなめんどくせー
 任務なんてよ・・・・」

言えねーよ・・・やっぱ。
ああ見えて、いのはすげー傷つきやすい。
酔った勢いだったとはいえ、俺とキスしたことだって、いのはメチャクチャ気にして
悩んでいた。
それを、にバレたなんて・・・俺はとても言えねーよ






「そうね!さっさと終わらせて、帰りましょう!だって明日は木の葉のお祭りだっしー!」

いのはそんな俺の気持ちも知らねーで、ニコニコ笑ってやがる。

「明日はいっぱいおいしい物が食べれるねー!」

チョウジもご機嫌だ。


「ねーシカマル!明日はも誘って、いつもの場所で待ち合わせしよっ」

「あ?・・・・あぁ・・・・」

・・俺達と一緒に来るわけねーよな・・・・・

思わずため息をもらしたら、いのが眉をひそめて俺の顔を覗き込んできた。

「ねぇ・・・シカマル・・どう・したの?」

俺の様子がおかしいことを敏感に察するいの。
途端に不安気な顔になる。

「別に。祭りなんてめんどくせーなって思ってるだけだ。」

俺はいのに悟られることが怖かった。
いのがあの日のキスでまた悩みだし、取り乱すんじゃないかと思うと、
にバレたことを伝える勇気は俺には無かった。

「まったー!毎年同じこと言わないのっ!どうせ一緒に来るくせにさーっ」

いのはホッとしたように笑った。

「うるせーってぇの」

俺はいのにバレなかった事にホッとする。


「よっしゃーーーっ それじゃー今日の任務も張り切っていくわよーーー!!」

『へいへい』


俺とチョウジは早足で任務地に急ぐ、いのの後ろをついていった。





俺はいつも以上に任務に集中できずに、相変わらずいのに怒鳴られながら、やっとこさ
その日の任務は終了した。












任務が終わって、いのやチョウジと別れて、俺は一人、家へと向かう。
辺りはもう薄暗い・・・

家への道のりも、のことばかり考えていた。


(俺はになんて謝ればいいんだ?あんな事して、きっと許してもらえねーよな・・・
 が何より大事なのによぉ・・・どんな顔で会えばいいんだよ・・・)


はぁ・・・さっきからため息ばかり出る。


のかわいい笑顔はもう俺に向けてはもらえねーのかな・・・・・・










「ただいま・・・」

家の玄関のドアさえ重く感じる。

「あらシカマルおかえり。遅かったわね。もうみんなで夕飯食べちゃおうかと思って
 たところよ」

母親はそっけなく答えた。

「あっそ・・・・」

靴を脱いで、リビングに向かう。


はぁ・・・飯なんか食う気になれねーっつうの・・・めんどくせーな・・・・
俺は明日、にどんな顔してあったらいいのかってことで頭いっぱいなんだよ・・くそっ




って・・・・・え?・・・・・・




テーブルのいつもの席にがいた。



・・・・・」

俺は唖然とした。
はきっとさっきの事を怒って、夕飯には来ないと思っていたから・・・
でも、ちゃんといつものように席に座ってくれている姿に少し安堵した。

「お、おかえり・なさ・・い」

は下を向いて、ぼそりとつぶやいた。

「あ、あぁ・・ただ・・いま・・・」

俺もどう答えていいのか分からず、とりあえずいつものの隣の席にドカッと
座る。


「あらやだ・・・何?2人とも・・・喧嘩でもしたの?」

何も知らない母親の呑気な声。



2人して無言になった。



「いいから、母ちゃん飯!」

俺が茶碗を出すと、はいはいとか言って奥に行った。





「お前がいるとは思わなかった・・・・」

俺はぽつりと呟いた。

「シカママに特別な用事があるからどうしても来て欲しいって言われたの・・・・
 だから来ただけよ。」

は下を向いたまま応えた。

「そうか・・・・」

それでも俺は嬉しかった。
が俺の側に・・俺の手の届くところにいることが単純に嬉しかった。

・・・・」

俺はの顔を見ないまま、そっと声をかける。

「な・・・に?」

も下を向いたままだ。

「さっきは悪かった・・・」

「・・・私・・・さっきのシカマルのこと、まだ許してなんかないから・・・」

震えているの声。

「あぁ・・分かってるよ。 でもな・・・俺は本気だからな・・・」

「・・なにが?・・・・・」

「乱暴だったかもしんねーけど・・お前に・・・その・・・キスしたのは・・・
 冗談なんかじゃねーぞ。俺は本気だ・・・」

心臓がバクバク言ってる。
こんな言葉でお前が俺を許してくれるなんて、思っちゃいねーよ。
けど・・・


「イヤッ・・・聞きたくない・・・」








の声がまた涙にくもりだしたことが俺を余計に苦しめた。


なんで俺はまたを泣かしちまうんだよ・・・・


だから俺はそれ以上何も言えなかった・・・・
だってよ・・・もう泣かせらんねーよ。
お前のこと傷つけたくねーよ。

でも、俺は今どうしたらいいのか・・・わかんねーんだ・・・






「さぁさ、父ちゃんは任務だし、3人でご飯にしましょっ」


母ちゃんが俺にやまもりの米のつまった茶碗を渡す。


『いただきます』


俺もも無言でもくもくと飯を食う。


「ねぇ2人とも・・・」

母ちゃんが突然俺達に話しかけた。
も俺もとっさに母ちゃんの顔を見る。

「あんた達って本当に似たもの同士よね。お互いに大好きなくせに素直じゃなくてさ」

母ちゃんは優しく微笑んだ




「喧嘩するほど仲がいいって昔から言うけど・・・いつのまにか仲直りしちゃうのよね
 あんた達って。結局、いつでも一緒なんだから・・・本当不思議よね」




今まではずっとそうだった・・・
どんな喧嘩をしても、いつの間にか俺達は仲直りして、お互い側にいないとさびしくて、
気が付けば、いつも2人でいた。

好きだって言葉にしなくても、お互い分かっていたつもりだった。
俺達は決して離れられないって・・・
俺もも、お互い無くてはならない存在なんじゃないかって・・・そう思ってた。


けど、今回ばかりは違う・・・俺がを裏切って傷つけた。


はきっと俺を許さねーよな・・・








「さーーーてとっ ご飯食べ終わったし、ねぇ、ちょっといらっしゃい!」

母ちゃんは嬉しそうに笑って、を畳の部屋へと手招きした。

「はい」

はゆっくりと部屋へと入っていく。

俺は一人でソファーに座って、と母ちゃんが出てくるのを待った。




しばらくして襖が開くと、中から笑顔の母ちゃんと少し複雑な顔をしたが出てきた。


「なんだよ?どうしたんだ?」

「あのね、明日のお祭り用ににあたらしい浴衣を買っておいたの!明日是非
 着てもらいたくてさっ」

嬉しそうに話す母ちゃんに、

「おばさん・・・あ、ありがとう・・・」

言葉を詰まらせたのは、きっとお前はお祭りに行く気なんか無かったからだろう・・・
だってよ・・・いつも行く祭りは俺やいのやチョウジと一緒だもんな・・・


「シカマル!明日はちゃんとをエスコートしてやりなさいよ!そんで仲直りしなさいっ!」


2人で無言になる。


俺だって出来ればそうしてーけどよ・・・・
チラッとを見る。

は黙ったまま、俯いていた。

・・・とりあえず送るから・・・・」

俺の言葉にはコクリとうなずいた。







目の前のの家の玄関まで、俺達は無言で歩きつづけた。
なんて言っていいか分かんねーよ。
でも、いよいよ玄関前で・・今日はここでお前とお別れだ。
俺は自分の手の平をグッと握りしめた。

・・・明日・・・祭りで会おうな・・・・」

できるだけ自然に話しかけた。
は明日来ないかもしれない・・・でも、俺はこのままお前と離れてしまうのは嫌だ。

「私・・・・」

はポツリとつぶやいた。

「なんだよ?・・・・」

心臓がドキドキする。

「明日は・・シカマル達と一緒にお祭りに行くよ。でも、それはシカマルのママの為だよ。
 本当は行きたくなんかない。
 シカマルといのが一緒にいるのなんか見たくないから。」

がまた泣きそうな顔をした。
胸が苦しい。をもう泣かせたくないっ

俺はとっさにの腕をひいて、小さなお前の体を抱きしめる。


「分かってる。母ちゃんの浴衣・・・着てくれんだろ?
 俺は・・・楽しみにしてっからな。お前の浴衣姿。・・・・」

俺はお前を離したくなくて、抱く腕に力をこめた。
俺の胸に押し付けられたお前は悲しそうに呟いた。

「・・なんでそんなこと言うの? どうして私を傷つけるの?」

・・・・」

俺を疑う目・・・
お前は俺を信じることが出来なくて、心の中で嘘つきって思って、軽蔑してんだろ?

本当はいのが好きなくせにっってよ・・・・

はドンと俺の胸を押した。

「痛っつ」

「シカマルなんか・・・大っ嫌い・・・・」

くるりと踵を返して玄関まで走っていった。


俺の目の前からが見えなくなる。

開けられた扉。
振り向きもしないで消える背中。
虚しく響く閉じるドアの金属音。

お前とこんな苦しい別れ方・・・はじめてだ。


閉じられたままの、の家の玄関の扉を見つめる。
お前にもう一度会いてーよ。


(シカマルなんか・・・大っ嫌い!!)

胸が苦しい・・・
どうしてだ?どうしてこんなことになっちまうんだよ?
こんな気持ち・・・俺はどうしたらいいんだよっ・・・・・・

行き場の無い俺の感情だけが、吐き出せないまま出口を求めて、さまよっている。






・・・お前は分かんねーだろ?俺の本当の気持ちなんてよ・・・

なぁ。俺はお前が好きだ・・・これからだって・・・ずっとな。







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