その夜は眠れなかった。

いのとキスしたのは本当だ。
でもそれは好きとかいう感情じゃなくて、単なる実験みたい
なもんで・・・でも、実験でするキスってなんだよ?
そんなんで、が納得するわけねーしな・・・・

第一、と俺はちゃんと付き合ってる訳じゃねーから、
こっちから言い訳すんのもおかしいような・・・・
しかも、言い訳しよーにも、事実でもある訳だしな・・・・

俺はさんざん頭を悩ませては ううーーん と唸り、
布団に入っては、出てを繰り返し、真向かいに見える
部屋をときおり見た。

電気の消えたの部屋。


お前は今、何を考えてんだ?・・・・・・・











俺は結局眠れないまま朝を迎えた。

チュンチュンッ

朝を知らせる小鳥の声さえも耳障りに思えるほど眠ぃ・・・・
頭がボーーッとする。
睡眠不足は俺にとっちゃー致命的だ・・・・
もう、何も考えらんねー・・・・めんどくせー・・・ 
こうなりゃ、なるようになれだな・・・・・

結局だした結論はこれかよ・・・

はぁ・・・・

俺は朝から、超深い溜息を漏らしながら、台所へ向かった。

そこには、見慣れた人影が・・・・・

「え?」
俺は寝ぼけ眼をこすりながら、台所のイスを見た。

・・・・・」

「おはよ・・・シカマル」

ニコッと笑った顔。

「シカマルのママとパパならもう任務で出かけたよ・・・・」

「あ・・・・そぅ・・・・・」

俺は予想外のの出現に動揺しまくった。


はまるで何事もなかったかのように、「寝ぼすけっ!」とか
言って、俺にお茶を入れてくれた。

「うるせー・・・・」
俺は内心動揺しまくり・・・の顔もまともに見れねー・・・・



俺はの入れてくれた茶をすすりながら、そっとの顔を見る。
隣の席で俯いた横顔は急にふと寂しく見える。



・・・・・・・お前、やっぱ無理してんだろ・・・・



そんな事を思いながらも、どう声をかけてやったらいいのかも分からない
俺は、また茶をすすった・・・・
本当・・・俺ってダメなやつだな・・・・・・



「シカマル・・・今日はいの達と一緒に任務ないの?・・・・」
はそっと呟いた。

「あぁ・・・これ・・・から・な・・・」

「そぅ・・・・・・」

なんか気まづい・・・・
のいのって言葉にはトゲがある気がするのは俺だけか?・・・

「お前も後からまた焼肉屋来いよ・・・・どうせまたチョウジのやつ
 が昼は焼肉だってうるせーだろうからよ・・・・」

「え?」
は俺の顔を見て、少し悲しい顔をした。


そんな顔すんなよっ・・・・


「な?・・・来んだろ?」
俺はの顔を覗きこむ。

「今日は・・・ごめん・・・行かない・・・・」
はうつむいた。

「なんで?」

分かってる・・・俺といのが一緒にいるからだろ?
お前は誤解して・・・気でも使ってるつもりなんだろ?
それは違うっつうの・・・誤解なんだよっ・・・・

俺は内心イライラしていた。
でも、どう説明していいのか分からねーから、余計に自分に腹がたつ。

「だって・・・私、10班じゃないもん・・・毎回一緒に焼肉行くのって、
 なんか・・・迷惑でしょ?」

歯切れの悪いの言葉。
俺に気を遣って、言葉を選んでるって感じだ。


「んな訳あるかよ・・・お前といのは親友だし、お前は10班のメンバー
 みてーなもんだって、アスマも言ってたじゃねーか」

もしかして、今、俺余計なこと言ったか?

「親友・・・」

はギュッと唇をかんで、下を向いてしまった。

「でも、やっぱり私はイノシカチョウのメンバーには入れないよ・・・
 私には私の班の仲間がいるし・・・・・」

悲しい顔で笑うに俺の心臓がズキズキと痛んだ。



なんで、なんでそんな事言うんだよ・・・
それじゃーまるで、これからは俺たちと一緒にはいられねーみてーな
言い方じゃねーか・・・・


冗談じゃねーぞ。
こんなことで、俺達離れていっちまうのかよ?

でも、どうすりゃいいんだ?どうすりゃこの誤解がとけるんだよ!!!



「シカマル・・・任務・・・遅れちゃうよ?」

頭の回転が止まって、ボーッとしていた俺にが小声で呟いた。

「あ?あぁ・・・」

の顔を見る。

まるで俺に行ってほしくないような、悲しい目では俺を
見ている。

このまま俺が何も言わずに任務に行ったら、お前は一人で何を思うんだ?
誤解したまま、どうせ泣くんだろ?・・・・

胸が苦しかった。
を泣かせるのは嫌だ。


「お前、誤解すんなよな・・・・・・・」
とっさに出た言葉に、は驚いた顔をした。

「な・・・・なに・・・を?」
その顔は怯えているようにも見える。

「俺と・・・いのは・・・なんでもねーから・・・・・」

俺・・・何言ってんだ?それは今言うべきセリフなのかよっ おいっ

俺は自分に問い掛ける・・・でも、もう勝手に口をついて出た言葉を
取り消すわけにもいかねー・・・・

「嘘つき・・・・・・」

の目から、大粒の涙がこぼれてきた。





あーーーー やっぱり泣かしちまった・・・・・





俺の心は何かでえぐられたような痛みがはしった。


「なんでそんな嘘言うの?シカマルといのが付き合ってる事、私
 知ってるんだよ?」
の肩は小刻みに震えている。


「だから・・・それは・・・誤解なんだよ・・・・・」

バカ!これ以上の言い訳はできねーぞ・・・・俺・・・どうすんだよっ・・・・


「私がシカマルを好きだから?かわいそうに思ってかばってるの?」
今のの目は完全に怒っている。

「ちげーよ・・・・」

「私がいつまでも子供だから、本当のことを言ったら、傷つけちゃう
 とでも思ってるんでしょ?」

バカにしないでっ は顔をそらした。

「だから、そんなんじゃねーよ・・・俺といのは付き合ってなんかねーんだって・・・・・」
俺はの顔をジッと見た。

「キス・・・・したじゃない・・・・いのと・・・・・・・」

は俺の顔をキッと睨んだ。
目からは涙が溢れている。

「それは・・・・・」
俺は何も言い返せず、黙ってしまった。
だってよ・・・なんて言えばいいんだよ?
どうしたら、の誤解をとけるのか、全然分かんねーよ・・・・・

あーーーーもう めんどくせーなっ IQ200のこの頭でも、の前じゃ
なんの役にも立たねーのかよっ 


「じゃあシカマルは好きでもない人とキスするの?だれでも良かったってわけ?」


「いや・・・それは・・・・だから・・・・・」
俺の心臓はバクバクと音をたてている。


もう、なんて言っていいのか分かんねーんだよ・・・・くそっ
この場から、ちょっとタイム!!とか言って、逃げ出してーよ・・・・

「そんなの・・・最低!シカマルもただの男ねっ」

吐き捨てるように言われて、顔をそむけられた。

「なんだよ・・・・そうだよ・・・・俺はただの男だっつうの・・・
 俺がなんか特別にでも見えてたのかよ?お前は・・・・」

責められて、俺はなんだか無償に腹がたってきた。
なんで俺の気持ち、分かんねーんだよ!!
俺が好きな女はお前だけなんだよ!!


「シカマルがそんないい加減な人だとは思わなかったよ・・・・」
涙をためながらも、俺をキッと睨む


俺を軽蔑するの目。
俺の心にずっとかけておいた理性という名の鎖がプツリと切れた。






「んだよっ うるせーな・・・・んじゃ、こうすりゃ良かったのかよ!」

俺はをグッと抱き寄せた。

そうだよっ 俺はただの男だ・・・・
好きなやつにキスしたいって思うのは当然だろ?


の驚いた顔・・・・俺は頬に手をかけて、顎をグイッと持ち上げる。


もう知るか! お前が悪ぃんだぞっ
いつまでも子供で、俺がお前にキスしたくたって、そんなことさせてくれるような素振りも
全然ねーし。
俺が今まで、どんだけ我慢してきたと思ってんだよっ!!



「やだ!なに!やめてよシカマル!」
抵抗しようとするを力で押さえつける。


もう、俺は我慢できねーっ・・・・
お前を泣かせても、ここから逃がしてなんかやらねーよっ!!




--------------俺の気持ちを伝えるまで、絶対離さねーぞっ!!!-----------------



俺の体が興奮してる。
抑えていた感情が制御しようとするもう一人の自分を押さえつけて、乱暴にでも、
奪えと命令する。
頭が混乱して、お前の怯えた顔すら愛しくて、たまらない。



「離してよっ!シカマルっ!やだったら!!」


俺の心臓の音がドクンドクンと波打つたびに、の声が遠ざかって、もう何も聞こえない。
目の前で本気で抵抗しているの姿だけが俺をただただ興奮させる・・・


(をまた泣かせちまうっ  もうやめろ!!)


心の声が俺に言う。


でも俺は・・もうっ



「うるせーな 黙れよっ・・・俺がしたいのはお前だったんだからなっ」

俺は嫌がるを強引に引き寄せ、の唇にくいつくようにキスをした。


力を入れすぎて、の体は壁にゴンッとあたった。

それでも俺は何度も何度もキスを繰りかえす。
逃げようと、もがくの唇を自分の唇で塞いで。

止めなきゃいけないのは分かってる、でも、キスをやめたら、そん時は
きっとはもう二度と俺のもとには戻らない・・・

そう・・・分かってたんだよ・・・・・



あーーーーー最低だな・・・・俺・・・・・・
今まで、ずっと、を傷つけないために我慢してきたのに・・・・
俺は今を一番傷つけるやり方で、を追い詰めてる。

これは愛情なんかじゃねーよな・・・・・・
俺のただのエゴだよ・・・・







バチンッ






思いっきり頬を叩かれる。

「どうしてこんなことするの?いのが好きなんでしょ?」

はぁはぁと苦しそうに息をして、は体を震わせている。
俺をみて怯えてるのが分かる。



「ちがう・・・いのを好きなんじゃねーよ・・・・」



そんな目で見ないでくれよ・・・・



俺はなおも震え続けるの腰を抱き寄せた。



たのむから、今、逃げないでくれ・・・・・



「やだよ・・・離してっ シカマル・・・・」

「なぁ・・・聞いてくれ・・・・・・俺が好きなのは・・お前なんだよ・・・」

抱き締める腕に力を入れたら、余計には暴れだした。

「やだ・・・嘘つき・・・大ッ嫌い・・・離してっ 」

「嘘じゃねーって・・・・・」



信じてくれ・・・俺はの顔を覗く。



「いの・・・・は? じゃあ、なんでいのとキスしたの?どうして私じゃなくていのなの?」

俺を疑うの怯えた目。
そんな目で見んなって・・・・

「だから・・・そ、それは・・・・」

そう・・・・いのとのキスは事故みてーなもんだった・・・・けどよ、事実に違いない・・・・・
にちゃんと言えない俺は、やっぱりにとっては嘘つきで最低な男
にしか見えねーよな・・・・・・・


「私・・・シカマルのこと・・・もう分からないよ・・・・」
は泣きながら、呟いた。

・・・・・」


泣くなよ・・・


「・・・いのもシカマルも私を騙してたんでしょ?・・・・私がシカマルを好きな
 こと知ってて、嘘ついてたんでしょ?・・・・・2人してひどいよ・・・
 こんなことまでして・・・シカマルが何考えてるのか全然分からないよ・・・・」


「それは誤解だ・・・」

でも、それ以上の言い訳もできねー。


「嘘つきっ!!」


は声を荒げて、ボロボロと泣いている。
胸が苦しい。
もう泣かないでくれよ・・・・


「俺もいのもお前を騙してなんかいねーよ・・・・・あのキスは・・・・
 練習だったんだ・・・そう・・・お互い酔っ払ってて・・・・冷静に判断
 できなくて・・・それで・・・・・」

「練習?意味分かんないッ それでも、いのとキスしたシカマルは嫌いっ」

はドンッと俺の胸を押して、逃げるように出て行った。




もう・・・・だめだ・・・・・・・




俺は人生最大のミスを犯した・・・・・・・
俺の一番大切なものを自分の手で無くしてしまった・・・・
そうあの夜の出来事がすべてを壊しちまったんだよ・・・・

そして、暴走した俺がにしたキスはただの暴力だ・・・・・・









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