現在は午後8時。
予定より少し早く任務が終わった。

に会いに行くか?にしてもちょっと
 中途半端な時間だな・・・・・・)

俺は疲れて肩をコキコキならしながら、そんな
事を考えていた。

「奈良先輩!」

後ろから聞きなれた声がする。

あーーーこの声は俺の隊で一番ドジで足でまとい
の後輩くのいち。

「あんだよっ」
俺はぶっきらぼうに振り返る。

「もう!イヴに彼女に会えなかったからって
 私に当たらないで下さいよぉ!」
頬を膨らませて怒っていやがる。

「けっ 別にお前に当たってねーだろうが。」

ったく。

俺は彼女を無視して帰り支度を始めた。

「ちょっと!ちょっと!奈良先輩!」

彼女は俺の肩を後ろからつかんで、呼び止めた。

「だからなんだっつうんだよっ!」

俺はこの女に関わるのも正直めんどくせーから、
ついつい大声をあげてしまった。

すると彼女は急にしゅんとしてしまった。



おいおい・・・まさかこいつ泣かねーよな・・・・


俺はそれもめんどくせーから、ちょっと優しい声
で聞いてみた。

「俺に何か用かよ・・・・・」

「先輩・・・・約束・・・・忘れたんですか?」

彼女はジトーとうらめしそうに俺を睨んだ。

「は?」

俺は頭の中にこの女との今までの会話を思い出してみた。
俺の隊が小隊だからといって、この女との会話なんて
今までも数回しかない・・・

約束だ?・・・・
全然、全く思い出せない・・・・

「なん・・・だっけ・・・か?」

そんな俺に詰め寄って、彼女は言った。

「相談に乗ってくれるって言ったじゃないですか!」

「ん?・・・・・・・」

(あーーーーーーーあれか・・・・・・・)

確か・・・・・1週間ぐらい前。
こいつは任務で、ぼろぼろにヘマをやらかした。
こいつがヘマするのはいつもの事だが、その日はさすが
にあまりにもひどかったので、

「お前さー・・・なんかあった?」

部下の失敗は隊を統制する立場の俺にも責任があるからな。

任務後に何気なく聞いてみた。
そしたらこいつは難しい顔をして、

「彼の気持ちがわからないんです・・・・・・」
とほざきやがった。

「は?」

「先輩はかわいい彼女とどうやって仲直りしてるんですか?
 どうやって気持ちをつないでおけばいいんですか?
 何をしたら喜んでもらえるんですか?
 どうして・・・・」

怒涛のように続く彼女の質問攻めに、俺はさすがにおじけ
づいて、その場しのぎに、

「分かった分かった!今度任務が一緒になった時、
 相談にのってやっから」

と言ってその場を逃げおおせた。







「あーーー あの時ね・・・・」

「やっと一緒の任務になれたんだもんっ!今日は私に付き
 合ってもらいますからね!」

彼女はえっへんとか言って、威張りながら、俺の腕を掴んだ。
なんつー強引な・・・しかも威張るとこじゃねーしよ・・・


「そうと決まれば行きますか!」
なにやら一人で納得している様子だ。

(なにが決まったんだよっ 何がっ)

俺は約束した手前、従うしかなく、しぶしぶと彼女のあとに
ついて行った。

歩きながら彼女は俺に言った。
「明日は彼氏とツリーを見に行く約束してるんです」

「あーーー。」

俺もだよっ   とは言わなかった。
言ったらまためんどくせーし。

「久しぶりに会うんです。彼と・・・・」
「ふーーん。あっそ・・・」
全然興味ねーし・・・・・・・

「だからなんか緊張しちゃって・・・・」
えへへとか頭をかいている。

こいつも女なんだなーとかしみじみ思う。

「で?どこ行くって?」

「明日のシュミレーションでツリーを一緒に見に行って
 下さい!」
真っ赤な顔で頼む彼女・・・・・

「は?なんで?明日、お前の男と行きゃーいいだろっ」

「ダメなんです!」
間髪いれずに否定された・・・・・・

「彼と2人で会うの緊張しそうで・・・・今日、練習して
おけば、本番に緊張しないで会えるかなーなんて・・・・」

「なるほどな・・・・・なんの気も無い俺となら、別に緊張も
 しねーでツリーを見れるから、練習になると・・・・」

「はい」
ものすごい笑顔・・・・・・・・・・お前なー(怒)

「失礼なお願いだけど・・・・仕方ねーか。約束だし・・・」

俺が溜息まじりに言うと、

「お願いします!奈良先輩しか男の人の知り合いが
 いないんです!」

と言われ、俺はしぶしぶ

「はいはい」

と答えた。






ツリーの周りは案の定カップルばっかで、人だかり。

はーーーーマジめんどくせー

俺は盛大に溜息をついた。

「寒いですねー」
彼女は人事みたいに隣で呟いている。
「お前が連れてきたんだろーが・・・マジ寒いってぇのっ
 くそっ」

俺がぼやくと、彼女は
「すいません。んじゃ、寒さしのぎに缶コーヒーでも
 おごりますから待ってて下さいね!」

彼女は元気よく手を振って、走っていった。
俺はツリーの下に一人残された。

まったく冗談じゃねーっての。
まわりはカップルばっかだし・・・・俺だって、
来たかったってんだよ!くそっ

「だーーー寒みぃーなーもう。」

俺は吹き抜ける風に身を縮めた。






遅い・・・・・・遅いってんだよっ!
まったくあのボケ女はどこまでコーヒー買いに行って
んだよ!まったくめんどくせー女。

俺は内心イライラしてきた。
辺りをキョロキョロ見渡してみるが、彼女の姿は一向に
見えない。

「んったくよー」

俺がぼやいた時、息をきらせた彼女の声がした。

「奈良先輩!買ってきました!」

「遅っせーぞ」
俺は文句を言ってやった。

そしたら彼女は申し訳なさそうに、
「すいません。さっき自販機の前でコケちゃって、お金が
 自販機の下に落ちちゃって。んでもって、
 買った缶コーヒーが手から滑り落ちて転がって、拾う
 のに時間がかかっちゃったんです!」

彼女はすまなそうに微笑んだ。



ああーああーそうかい・・・・・・・・



どこまでマヌケなんだこの女は・・・・
表彰もんのバカだな・・・・こいつは・・・・・・

「でも、相談に乗ってもらえるお礼に、先輩のコーヒーは
 新発売のプレミアムデラックスゴールデンコーヒー
 にしました!」

えっへんと大いばりの彼女にちょっと笑えた。

「おお 悪いな・・・」

なんか出来の悪い部下だが憎めない奴だよな・・・・・
妹をみるような感覚で俺は彼女に微笑んだ。

「仕方ねーから彼氏の相談に乗ってやるよ」

俺と彼女はツリーをみあげた。

「その前に・・・前から気になってたことがあるんで
 すけどー・・・」

ちょっと意味ありげな彼女の言い方に、俺は
ツリーから目をはずして、隣の彼女の顔を見た。

すると彼女の手がふいに俺の首にからめられた・・・・


「え?」


俺は内心焦った。
なんだ?こいつ・・・・何すんだよっ・・・・・













はーーーーー 疲れた。



俺はかなり疲労困憊してようやく家の前に到着
した。

真向かいはの家だ。
現在は午後10時30分。
の家の電気は消えていた。

「少し顔でも見たかったけど・・・・・・・もう
 寝ちまったのか?やけに早えーな・・・・」

けど、の事だ、明日のクリスマスは朝早く
から俺の部屋に来るに違いない・・・・
そして有無を言わさずに起されるんだろう・・・・

「俺も早く風呂入って寝るか・・・・」

ふぁーーーーー

俺は大きく伸びをして、自分の家の玄関をあけた。










「シカマルーーーー!いい加減に起きなさい!」


分かったっての・・・・うるせーな、は・・・・って?
ん?

俺を起しにきたのは母親だった。

「今・・・・・・・何時?」
まだ半分しか覚醒していない状態だったが、かろうじて
質問することが出来た。

「もう3時! あんたって子はいつまで寝る気なんだい!」


俺の布団をひっぺがして、お袋は俺の顔をマジマジと
覗きこんだ。

「あんたこんな時間まで寝てていいの?」


午後3時・・・・・・あれ?  
なんで・・・・・来ねーんだ?



「なぁ・・・お袋・・・・」
俺は目をこすりながら、たずねた。

「今日って、何日?」

お袋は あきれたって顔をして、ぶっきらぼうに言う。

「25日でしょーが!クリスマスって日を知らないの?
 あんたって子は本当にまったく・・・ちゃんと約束
 でもしてるんじゃないの?」

お袋はと俺のことをよく知っている。

「してる・・・・」

俺が呟くと、

「何やってんのよ!またちゃんを待たせてるん
じゃないだろうね!早く迎えに行きなさい!」

お袋に投げ捨てられるように、俺は部屋を追い出された。


ノソノソといつもの服に着替えて、歯を磨きながら考える。


(いつもなら、が俺の窓から部屋に飛び込んでくる
 はずだ・・・・早く起きてよーとか言いながら・・・・なのに・・
 あいつ・・・どうしたんだ?)


でもあまり深く考えていなかった。


(もしかして、ケーキに手こずってるのかも・・・・毎年凝りも
 せず、失敗ギリギリの微妙な味のケーキを手作りしてくれる
 ・・・・・)

「はーーーーー またあの微妙な味のケーキを食わされる 
 のかよ・・・・・」


グチュグチュペッ


歯磨き粉の味がまだ口の中に残っていたが、失敗して
落ち込んでいるかもしれない、かわいい彼女の顔を覗きこんで
からかって笑ってやるのも悪くないなー
とか思って、俺は速攻で準備をして、の家を尋ねてみる
ことにした。









尋ねるっつったって、の家は俺の家の目の前だかんな。

俺はヒョコっとの家の門をくぐって、玄関の扉を叩こうと
手をゲンコツにした瞬間、タイミング良くガチャリとドアが開いた。
もちろん中から出てきたのは、だ。

はドアの前にちょうど俺が立っていたのに驚いたのか、
目を見開いて突っ立っている。

「よぉ。」

俺はの顔を覗き込んだ。
そんな俺を無視して、
は俺から顔をそむけて、横を通りすぎて行こうとした。

「おいっ 、お前どこ行くんだよ」

俺はの腕を掴む。

「触らないで!」
はこっちを振り向きもしないで、俺の手を振り解こうと
もがいた。

正直驚いた。

な、なんで?なんで怒ってんだ?やっと会えたのによ・・・・

次の瞬間、俺はの言葉に固まった。

「シカマルなんて大っ嫌い・・・・・」

何も言えなかった・・・・・なんで?何言ってんだ・・・・?

俺はの腕を掴んだまま何も言えず黙ってしまった。
は俺の顔を見た。
すごく冷たい顔で・・・・・・・・・
「もうシカマルの顔なんて見たくないっ 離して!」

俺の頭は混乱した。

「なんで??・・・・・冗談だろ?」

「シカマルなんて大ッ嫌い!!」

叫びに近い、の声。
俺の頭に響いている。

何言ってんだよっ 意味わかんねーし。

必死で抵抗しているの両肩を掴んで、俺は
を正面に立たせる。

「なんなんだよっ 急に。 理由を言え!」

は抵抗をやめた・・・・

俺はの手首を掴んで、の家の玄関に
を強引に連れもどし、ドアを閉めた。

暗い玄関。
は俺を見て震えている。
それが俺を怖がっているのか、それとも怒りなのか
分からなかった。

「理由を・・・・聞かせてくれよ・・・・・・・」

俺は、震えるにゆっくりと、静かに言った。

「昨日・・・・任務なんていうのも嘘なんでしょ?」
は泣いている。

え?

俺は確かに、めんどくせー任務で里を離れていた。
嘘なんかじゃない・・・・

「誰と会ってたの?」

「誰って・・・・俺は任務で・・・・」

俺の言葉をが遮った。

「嘘つき!私見たんだから・・・・」

は涙をためて潤んだ瞳で俺を睨みつけた。

「私だって、シカマルとツリー見たかったんだから・・・
 なのに・・・シカマルは・・・私じゃなくて・・・・」





の言っている意味がハッキリと分かった。





「違う!あれは・・・誤解だって!!」

は見たんだ・・・・ツリーの下で俺と部下の彼女が
いるところを・・・・・・

「誤解? 私、見たもんっ 私がシカマルを見間違うわけ
 ないでしょ?」

の目からは大粒の涙がとめどなく溢れている。

「だから!あれはな!・・・・・・彼女は俺の部下で・・・俺は
 その相談に乗ってやってて・・・あいつには彼氏もいる
 んだって・・・・それで・・・どうしても話しを聞いて
 やらなきゃならなくなってよ・・・・」

言えば言うほど、なんだか言い訳に聞こえる。
落ち着け 俺!
やましいことなんかなんもねーじゃねーか。
しかし、声をついて出る言葉は、どれも嘘のように
聞こえてしまう。
焦る俺を見て、は言った。

「ただの部下?どうして、イヴの夜にわざわざツリーの下
 で相談にのらなきゃならないの?
 ただの部下なら、相談なんていつだって良かったじゃない!」

それはその通りな気がした。
やっぱり俺はあいつの相談なんかに乗るべきじゃなかった。
ましてやツリーの下なんかに行くべきじゃなかったんだ・・・・


俺は黙ってしまった。



「私があんなにイヴの夜を楽しみにしてたの知ってて・・・
 それでも会いたい人なんでしょ?彼女は・・・シカマルに
 とって大切な・・・・」

「違う!」

違うって・・・・・・それは絶対違げーよ・・・・
俺が心底大切に思ってんのは・・・・心から大事に思ってんのは・・
お前以外にいねーよ・・・

そう言葉に出して言いたかった・・・・

でも、の言葉は俺を黙らせた・・・・・

「もう別れて・・・・シカマルなんて嫌い・・・・だから、
 私のことなんて忘れていいよ・・・・・・」




俺は頭が真っ白になった・・・・・・・・・



気がつくと、玄関の扉をあけて、は一人、外へと
出ていった。


俺は追いかけるべきだったのかもしれない・・・・・
けど出来なかった。
きっと追いついて、を抱きしめても、
俺を拒むだろう・・・・昨日の真実を話しても、
きっと俺を信じないだろう・・・・

イヴの夜にツリーの下で語りあった俺達の姿を見たなら、
すべての真実もまるで嘘に聞こえてしまうだろう・・・

鈍感な俺でもそう思うぐらい、あのツリーの場所は、
恋人同士にとっては特別な場所に見えた。

そこに俺が以外の女といたのをが見たん
だったら・・・





俺は真っ暗な玄関先で、主のいない静まり返った家の
中でしゃがみこんだ。

私のことなんて忘れていいよ・・・・・・・・

の声が頭の中で何度も繰り返された。

「忘れられるわけ・・・・ねーだろ・・・・・」
どうしていいか、もう分からなかった。














何時間そこに座っていただろう・・・・
帰ってこない・・・・・

外はもう真っ暗だ・・・・

俺は重い足をひきづって、自分の家の玄関を
あけた・・・・

「あら?お帰り・・・・・早かったね・・・」
出迎える母親の言葉も耳を通り過ぎるだけだった。

ふいに廊下で電話がなっている。

のはずは無い・・・・・・・

俺はボーッとしながら、2階の部屋にあがろうとした。


「シカマル。ナルトから電話よ」
母親の声。

俺はのぼりかけた階段から転げ落ちそうになりながら、
乱暴に受話器を奪った。
かすかな希望を胸に抱きながら。

「もしもし」

『よぉ!この浮気者!』


そうか・・・・はナルトのところに行ったんだ・・・
俺はなんとなく安心した。

・・・・いんのか?」
俺は受話器を握りしめて小声で聞いた。

『女泣かすような奴には教えねーってばよっ』

受話器の奥でナルトは笑っている。

「バカッ!違うってんだよっ」
俺がそう言いかけると、ナルトは

『分かってるってばよっ お前はそんな甲斐性あるやつじゃ
 ねーもんよっ』

「う、うるせーっての。」

こんな会話だが、俺はナルトがいてくれて助かったと心底
思った。

『今、俺ん家で7班メンバーでクリスマスやってんだってばよっ
 そこにが来たってわけだ・・・・今、サクラちゃんと笑って
 話してっけど・・・かなり無理してるって顔だってばよ・・・・・』

「そっか・・・・・」

『シカマル・・・・とにかく俺の言う通りにしろっ』
ナルトの急にまじめになった声が受話器の奥から響いてきた。

「な、なんだよっ どーすんだよっ」












『あーーーーぁ せっかくサクラちゃんに迫る、いい機会
 だったってのによー』
「分かったよっ お前の言うこと、なんでも聞いてやっから。」
『ふふふーーん。シカマル、そりゃ当然だろ?』
「けっ で、何すりゃいいんだよ?」
『一楽ラーメン1カ月おごれってばよ!!』
「あーーーーぁ めんどくせーな。」

俺とナルトは電話口で大笑いした。

『もう泣かすなよっ』
「あぁ・・・・分かってる・・・・・・・・・」

その言葉を最後に俺達は電話を切った。
俺は急いで、コートとマフラーをつけると、玄関から
飛び出した。

「シカマル、また出かけんの?」

後ろで母親の声がしたが無視して、俺はガラにもなく
全力疾走した。

「もう絶対離さねーからな・・・・」















「よぉ、ー」

誰かに電話していたナルトが私を手招きして呼ぶ。

「なに?」
私がナルトの側に寄ると、ナルトが耳元で囁いた。

「ちょっと付き合って欲しいところがあるんだってばよ」



ナルトは私の返事も待たずに、腕をつかんで玄関先に
連れて行った。

「カカシ先生〜!ちょっとと出てくっけど、すぐ
もどるから、ケーキとっといてくれってばよっ」

ナルトはそう告げると、私を引きづるように、ドアから
外に出た。

冷たい夜風が耳に当たって、体がブルッと震えた。

「ねー 何? ナルト・・・どこに・・行くの?」
私の質問にナルトは急に深刻な顔をして、言った。

「広場のツリー・・・見に行かねーか?」
それはとても以外な発言だった。
ナルトはシカマルと似ていて、ツリーなんてまるで興味
もない奴だと思っていたのに・・・・

でも、私は気がひけた・・・・
あのツリーを見たら、思い出す。
シカマルと私の知らない彼女の姿・・・・
ツリーなんてこんりんざい見たくなかった・・・・・・・

「いやよっ・・・サクラを誘って行けば?」
私がもう一度部屋に戻ろうとすると、ナルトは、サクラちゃん
のことで相談に乗ってほしいんだってばよ・・・・
と言う。

「だったら、ツリーまで行かなくてもいいでしょ?」
私はなおも抵抗した。
でもナルトは
「俺だって・・・・俺だって、ツリー見てみてーし。一般の
 恋人ってのが、どんな風なのか興味あるし・・・・」

なんだか恥ずかしそうに俯くナルトがかわいそうに思い、
私は仕方なくオーケーした。

(そうよ・・・私はシカマルとはもう別れたんだもん・・・・
  思い出したって平気・・・もう関係ないわ・・・・)

強引に自分にそう言い聞かせた・・・・・・・・






ツリーの周りは夜だというのに、大勢のカップルがいた。
当然といえば当然だ・・・今日はクリスマスなのだから・・・

昨日、シカマルが女の子といた場所に、私はナルトと2人で
立っている・・・・
複雑な気持ちだった・・・・ううん・・・不思議な気持ちって
いうのかな・・・・・

ぼーっと立ってツリーを見上げる私にナルトが言った。

「ここで待ってるってばよっ」

「うん」

なぜだか分からないけど、去っていくナルトを見ても、
何の疑問もわかなかった・・・どうでも良かったのかもしれ
ない・・・・もう誰が隣にいようと、一人でこんなところに
立っているのを誰にみられようと・・・・もうどうでも良かった。

だって・・・・だって・・・・私が隣にいて欲しいのは・・・・・
私のそばにいてほしいのは・・・・・・本当に大切なのは・・・・



「シカ・・・・マ・・・ル」

もう呼ばないって決めた、愛する人の名前・・・
輝くツリーがボヤケてゆがんで見える・・・・
私、また泣いてしまったのかな・・・・・・
違うよ・・・ツリーがあまりに綺麗だから感動したんだよ・・・
頬をつたう温かいものは涙なんかじゃない・・・・
冷たい風に目が凍えて、体から温かいものが流れてしまった
だけだよ・・・・・

でも、なのになんで?なんでこんなに胸が苦しいのかな?
私が選んだ別れなのに・・・・

こんなに会いたいって思っちゃうのはなぜなの・・・・

「シカマル・・・・」

そう呟いた時、私の首が急に温かいもので包まれた。



え?



振り向くとそこには・・・・・・・

「シカマル・・・・?」

私の首を包んでくれたのは、シカマルの誕生日に私が
あんであげたマフラーだった。

シカマルは初め、何も言わず、私を見つめていた。
私は目の前に一番会いたいと思った人が現れたことに
驚いて黙っていた・・・・・

シカマルはゆっくりと静かに私の目をみつめて口を開いた。
「やっと会えた・・・・・」

私は何も言えなかった。

シカマルはナルトが俺達を引き合わせてくれたんだ・・・
と静かに言った。

その時初めて、ナルトが強引に私をここに連れて来た
意味を理解した。

・・・・俺は・・・・が好きだ・・・・誰よりも・・・」

シカマルは一つ一つ言葉をかみ締めながら、ゆっくりと
私にそう言った。

私の胸はドキンドキンと音をたてた・・・・・。

目の前のシカマルの優しい瞳・・・嘘じゃないような気がした。

「わ・・・・私・・・・・」

口を開きかけた瞬間・・・・・・・

「奈良先輩!」

私達の方へかけよる女の子
それは昨日の彼女だった・・・・・・・・・

「おっ!お前!」

シカマルは驚きの声をあげた。



私はまた口をつむいだ。

やっぱりシカマルは・・・・・・・・・・

でもその子の隣には、シカマルより少し背の高い、おとなし
そうな男の子が立っている。
よくみると、彼女達は手をつないでいた。

「やっぱり奈良先輩も彼女さんと一緒なんですね!」
彼女は満面の笑みでシカマルを見た。
それから私をマジマジと見て

「やっぱりかわいいですねー!奈良先輩が夢中になるの
 分かります!」

と言った。

私はまだこの状況が掴めず、彼女とシカマルを交互に見て
いる。
シカマルは私の顔をチラッと見て、口の端をニッとあげて
笑った。



え?何?どういうことなの?



「昨日、奈良先輩に無理言って、相談にのってもらって
 よかったです!ほらっ」

彼女は男の子とつないだ手を私とシカマルの前につき
出して見せた。
隣の男の子は真っ赤になって、よせよっとか言っていた。

「それから、このマフラーすっごくかわいいですね!」

彼女は私に顔を近づけて小声でつけたした。

「奈良先輩がいつも大事にしてるから、絶対彼女さん
 からのプレゼントだって踏んでたんです」

奈良先輩はいっつも照れて教えてくれないから、
昨日強引に首から抜きとろうとしたら、睨まれちゃって。

テヘッ

なんて彼女は笑っている。


でも結局、教えてくれたんですけどね・・・・・

「これは、俺の彼女が編んでくれた世界で一つのマフラー
 だかんなっ 愛情ってやつがこめられてるんだよっ」
なんて言ったんですよーーーーー


彼女に肩をバシバシ叩かれて、私はよろめいた。


「こらっ お前!人の彼女に暴力ふるうなっての! 
 それから、余計な事、言ってんじゃねーよ」

シカマルは私の体をギュッと支えながら、真っ赤な顔
で言った。



私の頭の中で、昨日みた光景が頭をよぎった。

シカマルの首にまわされた彼女の腕。
ささやかれた言葉・・・・・
立ち尽くしたままのシカマル・・・・・
あれは・・・・・・そういうことだったの・・・・・

私はその場で立ち尽くしていた。

そんな私に彼女は内緒ですけど・・・・と
付け足して、耳元でささやいた。


「彼の気持ちが分からなくなってて・・・・
 奈良先輩に相談したんですけど・・・
 最後に奈良先輩、私に言ってくれたんです」

俺はお前と彼氏のことをどうこう言えるような
立派な恋愛してねーから何も言わねー・・・・
けど俺がお前に言ってやれるとしたら・・・・

俺は自分の彼女に特別な事は何もしてやれねーけどよ。
誰よりも愛してやるって自信だけはあるぜ・・・・
俺の命なんて、あいつの為なら捨ててやるよ。




私は真っ赤になった。




「私も・・・・彼を全身で愛してあげる自信あります。
 どんな事があっても・・・・
 奈良先輩がそれを教えてくれたんです・・・・」

それから彼女は元気よく手を振って、
奈良先輩また貴重なアドバイスお願いしますねー
と言って去っていった。

「断る!もうお前らの相談にはのらねえからなっ 
 もう冗談じゃねーぞっ」

シカマルは小さくなる2人の後ろ姿に叫んだ。





ツリーの下に残された私達。

しばらく無言で向かいあって立っていた。

「シカマル・・・・・ごめんね・・・・・」
私の誤解で、私はシカマルを傷つけてしまった。

「あーーーー・・・・・もういいって・・・・」
シカマルは頭をかきながら呟いた。

「けどよ・・・・・」
シカマルが言葉を続けた。
「もう2度と言うなよ・・・・嫌いだって・・・・
 俺、マジへこんだ・・・・」

私はシカマルの胸に飛び込んだ。
「言わないよ。もう2度と!
 シカマル大好き。この気持ちは永遠だよ!」

シカマルは私の体をギュッと抱きしめた。
もう痛いぐらい・・・・・
そして耳元で呟いた。
「なぁ・・・・・しよう・・・・か?」

「え?何?シカマル・・・・」

「ナルトから聞いたんだ・・・・今日はイヴじゃ
 ねーけどよ・・・・でも、ここはツリーの下だし・・・
 1日ぐらいずれたって効力あんだろ?」


え?


シカマルのあったかい手がいつものように私の
頬に触れる。その手がいつものように私の頬の
ラインを下に伝って・・・顎をもちあげられる。

そして私達はツリーの下で一日遅れのキスをした。


恥ずかしがり屋のシカマル・・・こんなに人がいる中
で、私の為に?
温かい唇から、大好きって気持ちも一緒に伝わって
くるみたい。
大事に大事に私の体を抱く腕。

輝くツリーに包まれて、私とシカマルの体は熱を
もっていく。
好きだよ・・・大好き・・・・こんなにも好きだよ・・・・

・・・・ねぇ・・・・私・・・もうシカマル無しじゃだめだよ。

バーカ・・・それは俺のセリフだっつうの。

ずっとずっと抱きしめられて、私もシカマルの背中に
しがみついて、私達の思いが、繋がる体から溶け出して
一つになるみたいに。
それはとても温かで、幸せな時間だった。



今日はクリスマス。
人生で最高の一日。


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