「よぉ」
薄暗くなった道の向こうから
シカマルが右手をあげてみせる。

「おかえり!」

坂をゆっくりと登って、シカマルが家に
向かって歩いてくるのが見える。

カーキのベスト。
それは中忍以上が身に付けさせられる
特別なもの。

「なんか・・・・似合ってないかも・・・」

「うっせーぞ。

照れてるシカマルを玄関先で出迎えて、
私は笑っていた。

「あら、本当に似合ってないわね」

中からシカマルのママもからかうように
笑ってでてきた。

「ほっとけよ!めんどくせーな」

嘘嘘・・・本当はすごく格好いいよ。
私はまた一つ男として成長したシカマルが
まぶしく見えた。

シカマルは中忍になった。
まわりの男の子達のだれよりも早く。
それって凄いよ。凄いことだよシカマル。

シカマルはのそのそと自分の家に上がりこんで、
テーブルの上のりんごをガリッと噛んだ。

「あら、夕飯はいいの?」

シカママの言葉に

「あぁ。アスマ達と食ってきた。」

シカマルは胃のあたりをさすって、眉間にシワを
つくりながら答えた。

「チョウジも一緒だったら、焼肉でしょ!」

私が顔を覗きこむと

「あたり・・・・」

かったるそうに返事を返す。

「ったく、こう毎回毎回焼肉ばっか食ってっと、
 胃がもたれるぜ。あーぁ めんどくせー」

シカマルは頭をかいている

「シカマルってば、親父くさーーーい」

私が笑ったら、

「うっせー。がガキなんだよっ」

シカマルは私の頭をコツンと叩いた。

食卓で新聞をひろげていたシカマルのパパは
チラッと顔を出して言った。

「お前が中忍か。シカマルよぉ。お前もちったー
 成長したんだな。けど、やっぱベストは似合って
 ねーぞ。」

くくくっと笑っている。

「あーーー もう聞き飽きた。そのセリフ。
 、上、あがんぞ。」

かじりかけのりんごをゴトッと机に無造作に置いて、
シカマルは部屋に続く階段を上っていく。

「あっ うん。」

私はシカマルの背中を見ながら、トントンと階段を
上っていった。

ちゃん ごゆっくりー』

シカマルのパパとママの声が階段下から聞こえた。

ガラッ

扉を開けるとシカマルの匂いがした。
夜の窓は暗く、鏡のように私達をうつしていた。

「久々に縁側にでも出て、星でも見っか。」

「そだね。」

2人で窓の外に出て、シカマル特製の縁側に
座りこむ。

夜風が心地よい。
空には満天の星。
隣で空を見上げているシカマル。
改めて見ても、やっぱりシカマルはカッコイイよ。
私がボーッと見つめていたのに気づいて

「んだよっ ジロジロ見んなっての。
 そんなに変かよ。この格好・・・」
シカマルは眉間にシワをよせて、口を尖らせた。

「違うよ。本当はすごーく似合ってる。
 カッコイイよシカマル」

私がそういうと

「ば、バカ言ってんじゃねーよ。さっきさんざん
 笑ったくせして。」

周りはもう暗かったけど、でも分かるよ、シカマルの
顔が赤くなったことぐらい・・・・・

くすっ 

私はそんなシカマルが微笑ましくて笑った。

「笑うなっての。」

シカマルが私のおでこをこづいた。

「痛いよぉ。」

「へへへ・・・仕返しぃ・・・」

シカマルがニシシと笑った。

それから2人でまた夜空の星を見上げた。
私もシカマルもしばらく黙ったままの時間が過ぎる。

私は隣にあなたがいる。そんな日常が好き。
何気ない会話も、途切れても心地よいこの空間も
すべてが私にとっての幸福な時につながるの。

シカマルも私と同じ気持ちでいてくれたらいいな・・・

上に高く結われたシカマルの髪が夜風に揺れて
いる。

・・・寒くねーか」

シカマルは空を見上げたまま、私に聞いてきた。

「ちょっと寒いかも・・・」

私も空を見上げながら答えた。

シカマルはふいに立ち上がって、部屋へ入って
いった。

後に続こうとしたら止められた。
「そこにいろって」

シカマルはベットから毛布をもって、縁側にきて
くれた。

「ほらよ」

頭から乱暴に毛布をおとされて、私は前のめりに
つぶれた。

「なにするのよーーー」
私はガサゴソと毛布の下で体勢を整えて、座り
なおして、やっと外に顔を出した。

「ぷはーッ 苦しかった!もう!シカマルのバカ!
 私を殺す気!」

ニヤニヤ笑いながら隣で私を見下ろしているシカマル。

「あ?毛布の下敷きになるほどチビだとは思わなかったぜ」

くくく。

シカマルは必死で笑いをこらえている様子。

(ムカーーーーー!!)

「ふーーんだ。どうせチビですよ!」

私は毛布から顔だけ出して、くるりと体にまきつけた。


その瞬間、冷たい夜風が私の顔を優しくなでるように吹いた。
鼻先がジーーンとした。

シカマルは私の隣で両腕を組みながら、体を屈めて、
「っくそ。 やっぱ夜はまだ寒みーな。」
と呟くと、私がくるまっていた毛布の端切れをバサッ
とめくって、顔を近づけて言った。


「なぁ、俺も入っていい?」

「だめ」


「あ?誰の毛布だ?誰の!」

シカマルは有無を言わさず、隣に座って、私と反対側の
毛布の端を体にまきつけた。

「うぉー。あったけーな。」

「あーーー ダメって言ったのにぃ!」

「うるせー」

文句でも言ってやろうかと、シカマルを睨んだ瞬間、
シカマルは毛布の中から私の腰の辺りに手をまわして、
自分の体にグイッと近づけた。
驚いた私の顔をチラッと見て、

「別に変な意味ねーぞ。 くっついてた方があったけーん
だって・・・」

といってプイッと顔をそらして、また空を見た。

私の体は右半分がシカマルに密着し、左半分を
しっかり毛布に包んで、余りの毛布を冷えてきた鼻先
までくるっとまきつけた。

「あ・・・・・・・」

私はとっさに声に出してしまった。

「な、なんだよっ」

シカマルがちょっと紅くなった頬で私の顔を見る。

「シカマルの匂いがする・・・・」

鼻にくっつけた毛布からシカマルの匂いがした。

「お前は・・・何言ってんだ。バカ・・・」

シカマルは耳まで真っ赤。
言った私も真っ赤ッ赤。

「だって・・・」

シカマルの匂い好きだよ。
安心するんだもん。
言葉では絶対いえないけどね・・・・・・


星がキラキラと光って、星座がいくつも重なり
あうように空を埋め尽くしている。

「星・・・綺麗・・・・」

「そうだな・・・・・」

私はなんとなく、隣のシカマルの腕に自分の
右腕をからめてみた。
お互いに毛布をかぶってるから、傍目には
分からないけど・・・・

シカマルは一瞬ビクッとした。
「な、なんだよっ」

「別っにー。深い意味なんて無いよ。こうしてると
 温ったかいの!」

「そ、そうかよ・・・・」

シカマルはちょっとしかめっ面をしていたけど、
それ以上は何も言わなかったし、避けもしなかった。


「ねぇ・・・・シカマル・・・・まだちゃんと言って
 なかったよね・・・」

「なにが・・・・・」

「中忍・・・・・・おめでとう・・・・・・・」

「あぁ・・・ありがとよ・・・・」

シカマルの短い返事。
でもきっと喜んでくれてるよね・・・・・

「本当に凄いよ、シカマルは。」

私が呟くと、

「別に。俺はなんもしてねーよ。あの試合だって、
 途中でギブアップしたしな。中忍なんて
 マジめんどくせーって。」

それだけ言うと、 はぁー なんて溜息をつく。

シカマルらしいや。

でも、あなたはめんどくせー なんて言いながら、
中忍としての任務をきっちりとこなしていく・・・
・・・・そしてきっと誰より先に上忍になって・・・・


そんな事を考えていたら、急に不安になった。
私はからめた腕をギュッときつくした。

・・・・どした?」

「なんだか・・・シカマルが遠くの人になっちゃい
 そうなんだもん・・・・・」

シカマルは驚いた顔で私のことをしばらく見ていた。
でも、

「ばーか。俺の隣にはお前がいつもいるじゃねーか。
 どんな時でも、は俺の所におしかけてくん
 だろ?」

意地悪な横目で私を見て、ふんと鼻をならす。

「でも、でもさ・・・中忍になったら任務も忙しく
 なっちゃってさ・・・なかなか会えなくて・・・」

「っんだ?それっ。 めんどくせーな は・・・」

ギュッとからめた腕をとかれた。

(離さないでよ・・・シカマル・・・・)

私は泣きたくなった。

でも、その手は離れるのではなく、私の体に
まわされ、引き寄せられた。
毛布でくるんだお互いの体と顔がグッと
近づいた。

「くっだらねーことで心配すんな。中忍なんつーもんに
 なろうと俺は俺だ。変わらねーよ。
 だから・・・のままでいりゃーいいんだよ。
 俺達はこのまま・・・・・・」

シカマルの言葉は途中で途切れた・・・・
シカマルはいつになく真剣な表情で私をみつめている。

「・・・・シカマル・・?・・・」

「俺達は・・・・このまま仲のいい幼馴染・・・・で・・・・・・・・
 やっぱ・・・いられねーか・・・・・」

・・・・・・・・!!・・・・・・・・・


私の心臓はドキドキと高鳴った。
(どうして?どうしてこのままでいられないの?やっぱり
 私達、離れていかなきゃならないの?)

私はどうしようもなく悲しくなった。
シカマルの顔をじっと見た。

「なんで?どうしてそんな事言うの?どうして私達、
 今まで通りじゃいられなくなっちゃうの?・・・」

涙がでそうなのを必死でこらえて、私はシカマルの腕を
握った。

・・・・俺は・・・俺がな・・・・もうダメなんだって・・・」

「シカマルが?・・・ダメってなに?」
私は必死で、シカマルの気持ちをもう一度自分に近づけたくて、
顔をのそきこんだ。

「俺はお前をよ・・・だから・・・幼馴染ってだけじゃ・・・もう
 すまねーってことだ。」

シカマルは私の顔をまともに見てくれない。

「意味がわからないよ・・・・」
私が呟くと、シカマルは目を閉じて、深呼吸した。
私はそんなシカマルの言動をジッと見つめていた。

「あー。だから・・・なんつうか。俺はの事、好きだから・・・
 特別に思ってっから・・・・もうただの幼馴染なんつー扱いじゃ、
 俺はもう限界・・・・」

シカマルの骨ばった細い指先がゆっくりと私の髪に触れた。

「シカマル・・・?」

「 まぁ めんどくせーけど、俺の女になれっ つうことだ。」




あ・・・・・・

私の緊張の糸がプッツリと切れた・・・・・・・
自然と涙がこぼれた。




「うわ・・・泣くなって!なんで泣くんだよっ 
 俺、なんかやべー事言ったか?・・・
 、頼むから。泣くな。」

私が急に泣いたから、シカマルは動揺してる。


「ち、ちがうの・・・・」
私は涙をこらえて、そう言うのがやっとだった。

だって・・・だってさ・・・・・・やっと言ってくれたね・・・シカマル。
私だって、もうただの幼馴染じゃ、限界だよ。


はぁーーーーーシカマルは大きな溜息をついた。

「で?・・・・お前の気持ちは?・・・・・・」



「・・・・シカマル・・・・大好きだよ・・・・・・」
私は心配そうに見つめるシカマルの首に自分の顔を
コトンとうずめて、その細い首すじに唇をおしつけた。
温っかくて、ほんのりとシカマルの匂いがした。


「・・・・・なぁ・・・・俺もすげー好きだって・・・・」

シカマルは私の体をギュッと抱きしめて、反対に私の首に顔を
うずめてギュッと吸い付くようにキスをしてくれた。
私の首すじはシカマルの唇を感じて、熱をもっていった。


「シカマル・・・・」


シカマルはグイッと毛布をひっぱって、頭からかぶせてしまった。


「へっ これなら誰にも邪魔されねーだろ。」


毛布の中で私達は抱き合って、唇を重ねてキスを繰り返した。
今までの想いが溢れ出すみたいに、もう止まらなかった。


ねー 私を離さないでね・・・シカマル

あー 離さねーよ・・・・



それは誰にも内緒の私とシカマルだけの2人の約束。
星空の下で・・・・・・
シカマルの匂いの毛布にくるまって、シカマルを感じて・・・・



これからも・・・ずっとずっと・・・・・一緒にいよう・・・・ね。






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