「シカマル〜来たよぉ!」
玄関で靴を脱ぎながら、私は大きな声を出す。

「あぁ・・・見りゃ分かる・・・・先あがっとけ」
シカマルは玄関にノソノソと現れて、それだけ言うと、
くるり背をむけて、リビングに歩いて行った。

「あれ?今日はパパママいないの?」

「あーー・・・・2人そろって出かけた・・・」
シカマルは私に背を向けたまま、台所にたって、お茶の準備中。

「ふーーん。仲良しな夫婦でいいねー 理想的・・・」
「なーに言ってんだ!いっつもケンカばっかしてんのお前知ってんだろーが?」
「ケンカするほど仲がいいっていうよー」
「けっ くだらねー」
シカマルは振り向いて、
「今いくから、先あがれって」
「はーーーい」
私はトントントンと軽快に階段をあがって、シカマルの部屋に向かう。


ガラッ


扉をあけるとシカマルの匂い。

私は、んーーーーーっと伸びをした。
やっぱシカマルの部屋にくると落ち着く〜。




「なにやってんだよっ 早く入れっつうの」

お茶のセットをおぼんにのせて、シカマルが私の後ろに立って
眉間にシワをよせていた。

「あ!シカマル気がきくね〜」

私はへへへと笑って、シカマルのベットの下に座りこむ。


折りたたみ式の小さい机を器用に足で寄せて、シカマルは
その上にお茶セットを置いた。

「いただきます」

私は手をあわせて言った。

「俺のも入れて・・・・」

シカマルは床にゴロンと寝転んで、落っこちていた雑誌を開いた。

「うん」

コポコポ
私専用の赤い模様の湯のみとシカマル専用の青い模様の湯のみにお茶をそそぐ。

これはシカママがいつも遊びに来る私の為に買っておいてくれたもの
なんだけど・・・・

お揃いの湯のみ・・・・・
なんか夫婦みたい・・・・
そう思うと一人でに笑顔になってしまう。

「お前、何ニヤケてんだよ・・・・」
「なんでもないもん・・・・・」
「変なやつ・・・・」


いつものシカマルと私・・・・
幼馴染でいつも気がつくと一緒にいる私達



だけど、私とシカマルは、ある時、お互いの気持ちに気づいてしまって、
それは幼馴染ってだけじゃ割り切れない気持ちだってことが分かって、
男とか女とか意識するようになって・・・・・


今はなんていうか・・・・照れちゃうけど、親も公認の恋人同士・・・・・



でも、普段の私達は前の私達と少しも変わらない・・・・
ある事を除いては・・・・ね・・・・・・・・・






「シカマルーーー」
私はお茶をあちちとすすって声をかける

「あ?」
雑誌から目を離して、私を見るシカマル。

「この間さーーー」
ぷぷぷ 笑っちゃうなぁもう!

「なんだよっ 気になんじゃねーかよ!」
シカマルは雑誌を床に伏せて、私の前に座りなおした。


「だってさー ナルトがねーーー」

「あぁ・・・・」
ズズズと机のお茶をすするシカマル。

話すことはいつも任務でのハプニングや友達の話題や最近オープンした
店とか?まぁ くだらない話し。

「それでねー ナルトったらさー」
「やっぱあいつ超バカ・・・あいかわらずイケてねーな・・・」

シカマルは ハハッ と笑う。
私はキャハハと笑った。


机を真ん中に目の前にいるシカマル。


「ねーシカマル・・・・」
「あ?」
「ここきて?」
私は私のすぐ隣の床をポンポンと叩いた。

「は? めんどくせーからやだ・・・・」
シカマルはプイッと顔をそらして、床の雑誌に手を伸ばす。
本当は嬉しいくせに!
シカマル顔真っ赤だよ!

「やだ・・・・・きてくれなきゃ帰る・・・・」
ちょっと意地悪してみた。

「あっそ・・・・んじゃ、帰れば・・・・・」

シカマルはこっちに見向きもしないで雑誌を開く。


ちょっと悔しい・・・・絶対止めてくれると思ったのにさ・・・


私はガタと音をたてて、机に両手をついて立ち上がろうとした。


シカマルはさすがに驚いた顔で私を見上げた。
「おい・・・?・・・・・・」

「ふふーーーん!本気だと思った?」

「お前なーーーーー」



シカマルは目を細めて、私を睨んだけど、よっこらしょって立ち上がって、
ノソノソと私の隣にきてドカッと座った。

「あーーーーぁ めんどくせーな。 まったく・・・・」
頭を掻きながら溜息。

「なによぉ。かわいい彼女にその態度はないんじゃなあい?」
私は少し膨れてシカマルを見る。

「あーーー はいはい。これで満足ですか?わがまま姫・・・・・・」

棒読み。

「結構です・・・・王子様・・・・・」

ズズズとお茶を飲む私。

「けっ バーーーカ」

横からほっぺたをピシッと指ではじかれた。

「へへ」
私はシカマルの肩にそっと頭を傾ける。

シカマルは私の頭が肩から落ちないように、雑誌にグググと手を伸ばして
とって、また読み始める。

私は寄り添ったままボーッとしていた。

シカマルのゴツゴツと骨ばった肩が頬に食い込む。
ちょっと痛いけど、シカマルの肩だからまぁいっか・・・・・


チラッと覗くとシカマルが雑誌を読む目が見える。
規則的に上下され、文字を追う目。
真剣な目。
私はドキドキしてしまう。


シカマルの恋人になってから、私はシカマルに触れていたいって
思う事が多くなった。
それから見つめていたいって思うことも・・・・・・
好きになるってこういう事なのかな・・・・・・


でも・・・・シカマルはどうなんだろう?
いつもそっけないしなー・・・・
触れるのはいつも私からだし・・・・・
シカマルには、そういう気持ちって無いのかなぁ・・・・・・
ちょっと焼もち・・・・・


そっと見ていたはずが、いつのまにか私はシカマルを凝視していたらしい。

「なんだよ」
シカマルがジロッとこっちを見る。

「な、なんでもないもん・・・・・」

私は目線をそらす。


・・・・お前さ・・・・顔、真っ赤だぞ・・・・・おもしれーな」
くくくと笑うシカマル。

「うっさい!」
分かってるもん、そんなこと!
言わないでよ、シカマルの意地悪!

私がフンと顔をそらそうとしたら、

「けっ かわいくねーな」
シカマルがそっけなく言った。


なんだかちょっと悲しくなった。
私がチラッとシカマルの方をむいたら、シカマルは笑っていた。

「バーーーーーカ。冗談だよっ」

「なによもぉーーーー!」
腕を振り上げたら、ギュッと手首をつかまれた。

シカマルは私の行動を予測していたかのように、あっさりと私を
捕まえて、腰に手をまわしてグッと抱き寄せた。



「シカマル・・・・・」

「ん・・・・・」

シカマルは私の顔をじっと見つめる。
シカマルの瞳には私の顔がうつっていた。





・・・・・・ただの幼馴染ではなくなる瞬間・・・・・・






ふいに片手が優しく頬に触れた。
シカマルの親指がゆっくりと私の唇をなぞる。
シカマルの目が私の唇をみつめている。


心臓が壊れそうなほどドキドキする・・・・・


いつも憎まれ口ばかり言うシカマルの唇・・・・
いつもへの字に曲げられているシカマルの唇・・・・

でも、私はそんなシカマルのキスが好き。


鼻先がそっと触れて、
愛しい唇が私に近づき、ゆっくりとキスされる。



私は目を閉じて受け入れる。






付き合うようになってから、幾度となくしてきた。
たぶん会うたびに・・・
それは恋人としての2人を確認するみたいに・・・・・
認めあうように・・・・・
それでも私はまだ慣れなくて、いつでもドキドキが収まらない。






優しくて、やわらかくて、あったかくて私の大好きなキス。







私はシカマルの肩をギュッと掴む。



シカマルはそれを合図に唇を離す。

「苦しいか?」
「うん」

いつもはそれで終わり・・・・でも、今日のシカマルはいつもと違う。



私の腰をずっと抱いたまま・・・私を見つめたまま・・・・じっとしている。

「シカマル?」
私は恥ずかしさもあって、そっとシカマルの顔をしたから覗き込むように
してみた。

「あのよ・・・・俺・・・・もうあんなもんじゃ足りねーーんだけど・・・・」

「え?」


シカマルは私の腰をギュッと引き寄せて、驚いている私に少し強引にキスを
してきた。



いつもと違うシカマルに動揺する私。


「え?ちょっとちょっと待っ・・・・」

私の言葉を遮るように、何度も離れてはキスされる。
抵抗しようとしたけど、肩にまわされたシカマルの腕の強さが強くて。

やっぱりシカマルは男なんだなって・・・・


唇が離れるときに一瞬だけ合う目線。
すっごく優しくて、ドキドキする。

私が貴方に触れたいように、シカマルも私にもっともっと触れたい
と思ってくれてるんだね・・・・

嬉しさと、永遠に続くような激しいキスに意識が朦朧としてくる。

おぼれていく自分と夢中になっていくシカマル・・・・・

これでいいのかな・・・・私達・・・・・・・・・
・・・・・・でも、やっぱりまだ早いよ・・・・・

「・・・シカマル・・・・」
唇が離れた一瞬にシカマルの顔を見る。

「嫌か?」

「ううん。ちがうけど・・・」
私は首を横に振る。

「なぁ・・・んじゃ、もっといい?」

そんな目で見ないでよ・・・・

「だ、だめだよ・・・やっぱり・・・」
私の気持ちは、もっとキスしたい自分と、これ以上はいけない事
のような気がして、とがめる自分とのはざまで、揺れ動いていた。



でも、シカマルの一言が私の心にグッと突き刺さった。



が好きだから・・・もう俺、限界・・・・
    でもよ・・・お前が嫌なら・・・もうしねぇ。」

どんな時でも私の気持ちを優先してくれる。
シカマル・・・私・・・・

「嫌じゃ・・・・ない」

私のその言葉を聞いた瞬間、シカマルの骨ばった指が
私の髪の中に入ってきて、グッと引き寄せられる。
その感触に体がゾクゾクと震えた。
そして次のキスの瞬間、私の口の中にシカマルの舌が入ってきた。

初めての感覚・・・・


絡められる舌の感触。
「ん・・・ん・・・」
たまらず、私は吐息を漏らす。

私の体を引き寄せるシカマルの右手。
そして、シカマルの左手は私の体をなぞって、だんだん上にあがってくる。


私を本気で想ってくれてる・・・・・
私だって、シカマルのこと、本気だもん。
私・・・・シカマルになら・・・何されてもいいよ・・・・・



高鳴る心臓、シカマルの舌と手の感触・・・・・
もう頭の中がからっぽ・・・・・
シカマルの手が私の胸に置かれて・・・・・・










ガラッ!
「帰ったぞーーーー!!」




え?



突然開けられたシカマルの部屋のドア・・・・




そこには、大きな紙袋を持って、目を点にさせたシカパパと、
突然のことに、体が硬直し、抱き合ったまま呆然とシカパパを見上げる
私とシカマル・・・・・





え?





とっさの事で私もシカマルも思考停止・・・顔面蒼白・・・




「あーーーーあのな・・・お前達に土産をだな・・・・買って・・・きたぞ・・・・」
遠慮がちに真っ赤な顔で言うシカパパ。


「あぁ・・・・そう・・・・・・」

シカマルは体を硬直させたまま、目を点にしたまま答えた・・・・

「あーーー・・・その・・・なんだ・・・・・」
頭をガリガリと掻くシカパパ。



私は顔面蒼白でカチンコチンに固まったままだ・・・・・
もちろん思考はいまだ停止中。



「・・・・・土産・・・な・・・・・・・ここ置いとくぞ・・・・・・」

ドカッと床に置かれた紙袋・・・・


「あ・・・あぁ・・・・悪ぃな・・・・・・」

カチンコチンに固まったまま答えるシカマル。



「シカマル・・・・・・・・」
シカパパの真剣な目

「な・なんだよ・・・・・・・」

どうしよう・・・・シカマル殴られちゃうかも!
私の体は硬直したままだったけど、心臓はドクンドクンと高鳴った。
目はシカパパを凝視する。

「シカマル・・・お前な・・・・・・・・」

シカパパがゆっくりと近づいて、私達の前に屈んだ。
(やっぱり殴られる!)
私は目をギュッとつぶった。



「いい加減に・・・・・・・・離せよっこの手・・・・・・・・・」



え?



固まったまま、私の胸をムギュッと握ったままのシカマル。


「うわ!」

気づいて、思い切り手を離す。



シカパパはニヤーッと笑って


「若いっていいねーーーーー」
と顎ひげをさすってガハハハと笑った。


大きな笑い声を頭にめいいっぱい浴びながら、
私とシカマルはお互い真っ赤な顔で、またも硬直。


そんな私の頭をシカパパは大きな手でなでて、


ちゃん・・・・本当にコイツでいいの?
 俺に似ないで、できの悪い息子でごめんねーーーー」

心底楽しそうに ニヘラ〜 と笑っているシカパパ

「い、いえ・・・・そ・・・・そんな・・・・・」
私・・・・・・かなり動揺・・・・・・頭の中はからっぽ。

「ふふーーん。ちゃんは相変わらずかわいいなーーー」

シカパパはそれだけ言って、立ち上がり、鼻歌を歌いながら扉まで歩いていく。



だが急に
扉の前でピタと足を止めるシカパパ・・・
私達はビクッと体が反応する。



「大事な事言い忘れてたぜ・・・・・シカマル・・・・・・」

ユラ〜リと振り返ったシカパパの顔はすっごく怖かった。

ゴクリッ

シカマルの喉がなった。




ちゃんを泣かすなよ・・・・・・」




「わ、分かってるって・・・・・・・・」
真っ赤な顔でボーゼンと答えるシカマル・・・・

ある意味、こんなにカラッポ状態のシカマルを見るのは、はじめて。
隣の私は言葉も出ずに、シカパパの顔をただただ見てるだけ・・・・

「んじゃ、ごゆっくり〜」




ガラガラ・・・・ピシャ



閉められたドア。











しばらく無言で俯く私達・・・・・


どうしよーーー
この先、私はどうしたらいいのーーーーーー?

頭が混乱して倒れそう・・・・・





「あーーーーあのよ・・・・・」
先に言葉をかけてきたのはシカマルだった。

「え・・え?な・・・・・なに?」

私はまだうまく言葉が話せない・・・・・

「うちのバカ親父のせいで、恥ずかしい思いさせちまって。・・・悪かった・・・・・
 ごめん・・な・・・・」
シカマルが頭をガリガリと掻いた。

「もういいってば・・・・・・」
あははと笑う私。


「まぁ・・・・その・・・・・なんだ・・・・・・俺はお前を泣かせるような
 ことはゼッテーしねーから・・・・」
俯き加減にテレながらシカマルが言ってくれた。

「うん」
嬉しいよ・・・シカマル・・・・・

「親父に約束しちまったしな・・・・・・」

「そ・・・だね・・・・・・・・」


なんとなく照れ笑いの私達。


でもね・・・・

「信じてるよ・・・シカマル」
「ん」


目を閉じて、チュッと軽くキスをした。
それは永遠を誓う約束のキス。


やっぱり私はまだこのキスのままでいい。



続きはもう少しお互い大人になってから・・・・・・・・
それまで大切にとっておこうね・・・・シカマル・・・・





「私、そろそろ帰る・・・ね」
「お、おう・・・・んじゃ、送ってく・・・・・」


2人で
階段を下がっていくと・・・・



二へラーーーーーと笑うシカパパがいた。



「なんだ?ちゃん帰るのか?
 かあちゃんまだ帰ってこないから、続きしてきていいぞ!」


ガハハハハハハ!



シカパパの大きな笑い声の中、
真っ赤な顔で俯く私と、頭を抱えるシカマル・・・・・



あーーーーやっぱりシカパパには一生頭があがりそうもない私達です・・・・・・




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