「ど、どうですか?」
「見てみる?」

お正月。初めて着る晴れ着。
結構な時間をかけて、丁寧に着せてくれたシカママは満足気に笑った。


「ほら。見てみて。

姿見の布をくるりとめくって、シカママは私の背中を鏡の前へと押し出した。

おそるおそる目をあげて鏡の中の自分を見る。








「うわぁ////////」


真っ青な空のような鮮やかなブルーに輝くように散りばめられた花々。
シカママの選んでくれた晴れ着は、とても綺麗だ。
はじめて後ろで結い上げた髪の毛。

首筋がちょっとスースーする。

でも・・・・


自分で言うのもなんだけど・・・いつもの2倍・・・ううん。思い切って3倍は
今日の私は大人びて見えるよね。


(シカマル・・・喜んでくれるかな//////)



鏡の前で立ち尽くす私の肩に手をおいて、シカママは耳元で囁いた。




「うちのバカ息子もきっと驚くわよ〜。早く見せてらっしゃいな。」 

「は、はい///////」



(よっしゃーーーっ 今日こそシカマルに女として見てもらうんだから!!)

心の中で拳を握りながら、私はいつもより狭い歩幅でチョコチョコと早歩きしながら、シカマルの部屋へと続く
階段を上っていった。














「シ、シカマル」


扉の前で、急に恥ずかしくなって小声で呼んでみる。






シーーーン







恐る恐る扉をあけたら・・・・・



目の前のベットの上にあぐらをかいて座ったまま、シカマルはグーグーと寝息をたてて眠っていた。




「もうっ!待っててねって言ったけど、寝ていいなんて言ってないよっ!!」

私はプリプリ怒りながら、シカマルの肩をユサユサと揺らす。

「シカマル、シカマルってばっ 初詣行こうよーーーっ」



座っているせいでバランスが悪いのか、シカマルの体はグラグラ揺れた。



「だーー。うるせぇ」


寝ぼけたシカマルに肩においた手をパシッとはたかれて落とされた。


「もう!!バカマル!起きろぉぉぉぉぉ!!」


中腰だと帯がきつくて大変なんだから!!


私は必死でシカマルの肩をもう一度ユサユサと揺らした。
シカマルは相変わらずグラグラゆれる。

「きゃっ////」

シカマルの肩につかまってたのに、あんまりシカマルがゆれるから、私までバランスを崩して、
思わずシカマルの胸にドンッと体ごと倒れこんだ。


「ご、ごめん。シカ・・・/////へっ?」



シカマルは寝ぼけたまま、私を両腕でぎゅっと抱きしめた。



「も・・う・・・・離さ・・・ねぇ・・・・」

寝ぼけてムニャムニャ言ってるけど、シカマルは確かにそう言った。

(え?/////嘘でしょシカマル///////)

・・・・・」

名前を呼ばれて余計に心臓バクバク。



だって、だって、私達はまだちゃんと付き合ってる訳じゃないし/////////
二人で出かけたって、デートらしいムードにもなった事ないのにぃぃぃ/////


(は、晴れ着?これはもしかしてこの晴れ着効果なの???/////)


勝手に浮かれて、私はシカマルの腕の中でドキドキしてた。
てっきりもうシカマルは起きてると思ってたし。




でも・・・・・



突然、シカマルの大きい手で肩を掴まれて胸に押し付けられた私の体は、引き剥がされた。


(な、何?今度は何されちゃうの私////////)




明らかに寝ぼけたシカマルは半分開きかけた目で言った。

「なんでだよ・・・・・テマリ」












(え?・・・・・・・・・・・・・・・・・)








一瞬、耳を疑った。


でも・・・・


聞き間違いなんかじゃない。
シカマルは確かに今「テマリ」って言ったよね?・・・・・・












引き離された体から力が抜けて、私はぺたりと床にへたりこんだ。




シカマルはゴシゴシと目をこすっている。




(今の・・・寝言だ・・・寝言で、私の名前とテマリの名前をシカマルは言った・・・)





私の名前を最初に呼んでくれたけど、でも・・・最後にテマリの名前が出た事がすごく
不安で、なんかすごく嫌で、私はただただ呆然と目の前のシカマルの顔を見ていた。


どういう意味なのか分かんない・・・
シカマルの心の中にいるのは私?テマリ??





寝言を言ったことを覚えていないのか、シカマルは突然大きなあくびをして、
「やーーべ。夢見た。寝ちまったぜ・・・・」

まるで、独り言のようにそうつぶやいて、ふと、目の前にへたりこんでいる私をじっと見た。

「・・・お前・・・何やってんだ?」







言葉が出てこない。
なんて言っていいかわかんないし、どう聞いていいかもわかんない。








「お前があんまり遅せぇから寝ちまったみてぇだな・・・悪ぃ悪ぃ。」

シカマルはベットに座ったまま グーーッ と伸びをした。

「う、うん・・・・」

私は動揺して、うまく返事も返せない。


「あんだ?お前どした?」

曖昧な返事をする私を変に思ったのか、シカマルは伸びしたまま、片目でジロッと私を見た。」

「べ、べつに」


「ったく・・・なんでお前そんなとこ座ってんだよ。ほら立てよ」



目の前にシカマルが手を伸ばして、私の腕を掴んでグイッと持ち上げた。


人形みたいに、ストンと立ち上がらせられる私。



「へぇ・・・・」

シカマルはベットからゆっくりと立ち上がって、目の前で立ち尽くす私を下から上までゆっくりと見あげた。





私はさっきのシカマルの寝言が気になって、まだボンヤリしていた。



「似合うじゃねぇか・・・・・・以外と。」


ボケッとした私の額を ピシッ と指先ではじいて、シカマルはニシシと笑う。


「い、痛いっ」

突然の痛みに、急に現実に引き戻された感じ。


「ほら。行くんだろ初詣。めんどくせぇけど、そんなに着飾られちゃぁ行くしかねぇな」


シカマルは ニタリ と意地悪い顔をして笑って、私の手を引いた。



「なによもうっ さっきまでシカマルがぐーすか寝てたくせにっ」

「うるせぇ」


振り返ったシカマルにムギュッ と鼻をつままれる。

「もう!!痛いってばっ!!」

なんか腹立ってきた。



「マジ・・・似合うよ 晴れ着・・・・」

シカマルは真剣な顔をして・・・・思わずドキッとしたら・・・・

「赤鼻とバッチリな」

シカマルは カハハ と笑う。

今度こそシカマルに「綺麗だ」って言って欲しかったのにっ
いっつもふざけてばっかり・・・・

「もう!本当に怒るからね!!」

「へいへい。悪かった悪かった」

それでもシカマルは楽しそうだ。

(本当はね、さっきの寝言のこと、シカマルを問い詰めて聞いてみたかったよ・・・でも、それよりも、
今、私の目の前で笑っているシカマルを離したくなかった。だれにも渡したくない。シカマルを問い詰めて、
めんどくさい女だって思われるの嫌だもん)


















「遅っせぇな・・・おいてくぞ」


「待ってよぉぉ」


なれない草履をギュッツギュッと履いて、ただ歩いてるだけなのに、私の先をどんどん行くシカマルを
追いかける。





シカマルは家が見えなくなるまで坂を下ったところで、私を振り返る。




「ま、待ってってばぁ」


必死で追ってるのに。



「ペンギンか!お前は!!」


シカマルは遠くでまた アハハ と笑っていた。







(せっかく晴れ着きて、少し大人になったつもりでいたのに、シカマルには全然通用してない。
やっぱり私なんて、何を着ても、子供にしか見えないのかなぁ・・・)






草履でぺたぺたしながら、私はシカマルの背中にやっと追いつた。




少し息がきれて、私はシカマルの背中の服をキュッと握る。


「く、苦しい・・・」

「悪ぃ。ふざけすぎたな」

シカマルはその手をとって、ぎゅっと握ってゆっくりと歩きだした。


「手/////つなぐの?////」

「掴んどかなきゃ、どうせ転ぶじゃねぇか。お前」

「ふんだっ/////」

だけど、シカマルに優しくされたら、やっぱりうれしくて、でも、本当はただ子供な私だから、
優しくしてくれるだけなのか、シカマルの気持ちが分からなくて、私はまた俯いた。






ブワッと吹く北風。






「寒ぃな・・・」

シカマルは肩をすぼめる。


「けど、空、すごく綺麗だよ」

私は真っ青な空をゆっくりと風に流れていく真っ白な雲を見上げた。


「だな・・・いい空だ」

隣でシカマルは目を閉じて、スーー と深呼吸した。


私もゆっくりと目を閉じて、シカマルと同じように、綺麗な空気を思いっきり吸った。









「気持ちいいね///////」


ゆっくりと目を開けたら、私の左頬にシカマルの手が触れて、シカマルの親指が私の唇にそっと触れた。


「え?////////何?シカマル?///////」

「あ・・・いやっ/////」


引っ込められた手と真っ赤になって顔をプイッと反らしたシカマル。




「は、早くいくぞ。冷えちまうっ」

「う、うん////////」




今のって・・・何だったんだろう?//////////

よく分からなかったけど、シカマルが真っ赤になったことと、触れられた頬と唇にいつまでもシカマルの
感触が残ってるのがすごく恥ずかしくて、うれしくて、ドキドキしてた。






(ねぇシカマル。そんな顔されたら私。うぬぼれちゃうよ?・・・大好きだって胸いっぱいのこの想いを
おさえられなくなっちゃうよ)


だからお願い。


(さっき寝言でテマリを呼んだのは、聞き間違いなんだよね?・・・・。)












「はぁ・・・やっぱ激混み・・・うぜぇ・・・」


シカマルのため息まじりの声で はっ とわれに返る。


目の前の神社へとつづく道はぞろぞろと人だかり。
お参りするには、5人並びぐらいの大きな列が永遠と続いていた。


「で、でも。初詣はしようよぉ。一年のお願いいっぱいしたいし。おみくじとか、屋台も出てるしさ」


「やっぱ帰ろうぜ」なんて言い出しかねないシカマルの袖をグイグイとひっぱって、必死で懇願した。






シカマルはしばらくそんな私の顔を じーっ と見て、


「わーったよ。めんどくせぇけど、そんな顔されちゃ断りずれぇっての・・・」

最後はゴニョゴニョ言っていたけど、しぶしぶ了承してくれた。


「えへへ///////良かったぁ」



私たちは列の最後尾に並ぶ。





一応、みんなきちんと並んでいるんだけど、たくさんの人でゴミゴミしてる。

背の低い私は、大きな男の人の腕や、肘に当たって、ヨロヨロ立っていた。




「ったく・・・おまえは危なっかしいな」

「だ、だってぇ」

「しょうがねぇやつ」



仕方なくって顔をしながらも、シカマルは私の背中に腕をまわして、肩を掴んだ。






(うわぁ////////なんか恋人同士って感じだよぉぉぉ///////)

心臓バクバク!






そんな時、私たちの列の右側の、お参りを済ませて帰る人たちの中から、





「よぉ!!お二人さんっ!デート?デート?」


ものすごく大きな声で、ナルトが手を振りながら走りよってきた。



「あーーめんどくせぇのにつかまったっ」

シカマルは、やれやれって顔をして、私の肩にまわした手をそっと下ろす。



「おぉぉ。なんだなんだ?!着物じゃん!綺麗だってばよ!」

ナルトは私を見て、目を丸くした。

「あ、ありがとうナルト///////」

シカマルは絶対に言ってくれない言葉をナルトはサラリと言ってくれる。
男の子に褒めてもらうのって、やっぱり嬉しい///////

「憎いねぇコノコノ!の色気に暴走すんなよ〜シカマル」

ナルトはニシシと笑って、シカマルを肘でこづくような素振りをした。

「暴走って//////」

私が真っ赤になっていると、

「するかバーカ」

シカマルは平然とそう言った。


そうだよね。
ナルトが思っているような感情が少しでもシカマルにあってくれたら・・・
そんなはしたない事を思ってしまうほど、シカマルって全然私を女扱いしてくれないし・・・


「けっ どうでもいいけどよ。お前は一人なのかよ?」 


シカマルがそう言うと、ナルトの顔は急に真っ青になった。


「やっべーっ サクラちゃんとはぐれちまったんだってばよ!今頃、鬼みてぇに怒ってる!
 そんじゃーな!シカマル!!」



ナルトは風にように去っていった。




「相変わらずせわしねぇなぁ。めんどくせぇやつ」

「だね」

私たちはもうすでに見えなくなりそうなほど遠ざかって行ったナルトの背中を見送った。





すると今度は・・・




「お!シカマルとじゃねぇの!!」



その声にシカマルは はぁ とため息をつく。









前からキバが シシシ と笑いながらやってきた。

「あーーー今度はキバかよっ」



シカマルが けっ と、しかめっつらをした。



キバはそんなシカマルにはお構い無しに近づいてきて・・・




「おまえらって、本当いつも一緒にいるな。実際、どこまでいってんだよ?」

私とシカマルの顔を交互に見る。

「どこまでって///////そ、それは////////」

なんの進展も無いよ、無いけど、一応キバの目から見たら、私たちってそんな関係に見えるのかと
思ったら、なんか緊張して、顔は真っ赤だし、言葉が出てこなかった。



「もったいぶるねぇ?、いい加減教えろよっ」

ニシシと笑うキバ。

「えっと、だからね//////」

しどろもどろに返事をしようとする私を手で制止して、

「こいつの言うことなんか、マジで相手すんなバカ」

隣でシカマルは額に手を置いて、はぁ とため息。



(そうだよね。相手するも何も、私たち、なんの進展も無いわけだし・・・・)


そう考えると一人で落ち込む私。


「お?ところで、!おまえ、何?着物?」

キバは私をマジマジと見下ろした。

「へ?////あ・・・・うん//////」

改めてシカマルじゃない男の子から間近でジロジロと見られると、着慣れてない着物がすごく
恥ずかしい//////


「なんか・・・エロいな///////」


キバは口元を押さえながら、真っ赤な顔をした。




「エ、エロイって////////どういう感想よっ///////」

キバに言われると、褒めてんのか、からかわれたのかよく分からなくて、なんか超恥ずかしい/////

私も真っ赤になって膨れてうつむいた。



「シカマル・・・襲うなよ」

キバもナルトと同じように、肘でシカマルを小突くような格好をして、ニシシと笑った。


「お、襲うって///////」

どうしてシカマル以外の男の子ってみんなこうなんだろう・・・
私が本気で女扱いして欲しいのはシカマルだけなのになぁ・・・・



また落ち込んだ。



「だぁーーーお前もウゼぇ!マジ帰れ!!」


シカマルは額に怒りマークをつけて、キバをにらんだ。



「へいへい。邪魔者は消えてやるよっ んじゃな。!・・・シカマルには気をつけろよ!!」


最後はシカマルに聞こえないように、私にそっと耳打ちをして、キバはヒラヒラと背中ごしに手を振って去っていった。





「何言われたんだよっ」

キバが見えなくなってから、シカマルは不機嫌そうに私に聞いてきた。


「シカマルには気をつけろって・・・・」

「ったく、どいつもこいつも・・・・・・・本気にすんなよっ いいなっ」

「わかってるよ」


答えてはみたものの、本当は本気にしたいぐらいだなんて、絶対に言えないよね。


はぁ・・・今年こそ、シカマルと進展したいけど・・・やっぱりまだ無理なのかなぁ・・・
私がもっと女らしくならなきゃ駄目なのかなぁ・・・


(晴れ着も効果無しかぁ・・・・)


そんな事を思っていると・・・・


「・・・はぁ・・・なんかまた不吉な出会いがある気がすんなっ 冗談じゃねぇっつうの!」

シカマルは眉間にシワを寄せた。

「まぁまぁ。落ち着いてシカマル」

私がシカマルをなだめているとシカマルの言葉通り、また前から声がした。







ーー!シッカマルー!あけおめ!ことよろ〜♪」


「げっ この軽いノリ・・・・今度はいのかよっ」


シカマルはまた深いため息。
でも、私は、お正月早々、親友のいのに会えてうれしかった。


「いの!どうしたの?一人?」


「それがさぁ。サイ君を見かけて追っかけてたんだけど、見失っちゃってさっ!
 お茶でも誘おうと思ってたのに〜っ!でもまだ諦めないわ!絶対見つけてデートするんだから!!」


「正月からご苦労なこって。まぁ頑張れよ」

シカマルはヒラヒラといのに手を振った。


「なぁによっ!!その勝ち誇った言い方〜!!シカマルのくせにムカツクぅ!!
 あんたこそ、今日ぐらいにバッチリアピっとかないと、誰かに取られちゃうわよーん」 

いのは シシシ とわざと意地悪気に笑った。


「けっ くだらねぇ。」

シカマルは吐き捨てるように呟いた。


「あら?ずいぶん余裕ね〜シカマル。あんた知らないの?って結構人気あんだからね!」


いのがそんな事を言うから、私はあせって、


「い、いの!!!何言ってんのよぉぉ///////」


ただでさえシカマルになんとも思ってもらえずに苦労してるっていうのに、余計なこと言っちゃいやーーっ
シカマルに誤解されちゃうよぉぉ・・・


私は恐る恐るシカマルの様子を伺う。


そしたら、シカマルはチロリと私を見下ろして、


「わかってるよ・・・」


ポツリと呟いた。



(あれ?今のって・・・なんか以外な反応・・・・???)


少しは私のこと・・・気にしてくれてるの?
ま、まさかね。
シカマルに限ってねぇ・・・だけど・・・ん?んんんん・・・・

シカマルの言葉は、あまりに予想外すぎて、私の頭の中は混乱した。

言葉の真意はなんなのか、冷静に考えることも出来ない。



そうこうしていると・・・




「どうでもいいけどよ・・・お前、早く行かねぇとサイと会えねぇぞ」


シカマルの言葉に

「いっけない!!それじゃぁまたね!・・・着物。超似合ってるわよん♪シカマルもメロメロだってさ!」

いのは大きく手を振って、駆け出して行った。




私はあっけに取られて、何も言えないまま、手を振っていのを見送った。




「元気なやつ・・・」

「ね、ねぇシカマル?////////今の本当?」

「あ?何が?」

シカマルは横目でチラリと私を見下ろした。

「だ、だからさ・・・私の着物姿にメロメロになってんの?」


いのがそう言ったから、すごくドキドキして・・・でも・・・





「けっ くだらねぇ。マジにとんなっつうの。いのの言うことなんかよっ」

シカマルは私から顔をそらすように空をみあげて言った。


「ひどいよ。シカマルだけだよ。褒めてくんないのっ。ナルトもキバもいのもみんな
 綺麗だって言ってくれたのにさ・・・・」


私はぷくりとむくれた。


「よくあんな軽々しく言えるよな・・・・・俺には分かんねぇよ・・・」

シカマルは空を眺めながら言う。

「え?」

私も空を眺めながら考える。

まぁ確かに・・・シカマルに会うなり、
!すげぇ晴れ着似合ってるよ!綺麗だ!」
なんて言われたら、「悪い冗談やめてよ!!」って言っちゃうかも・・・



「あんな風に言われたら・・・お前満足するわけ?」

「そりゃもちろん・・・心がなきゃ嫌だよ・・・」

「だろ?・・・」

「うん・・・」

「本当に心があったら、軽々しく言えねぇっつうの・・・」

「そうなの?・・・・」

(それって、シカマルが心から私を綺麗だって思ってくれてるからってこと?

思わず、シカマルを見る。



「さぁな」

シカマルはわざとはぐらかすように、私のおでこをツンとこずいた。


なんか腑に落ちないけど、列が動きだして、シカマルが手を引いてくれたから、
まぁいいか・・・なんて思いながら、シカマルの指をキュッと握った。


そんなことをしても、「何?」とか聞かないでいてくれるシカマルが私はやっぱり好き・・・


言葉は足りないけど・・・ちゃんと私のこと思ってくれてるよ・・ね?・・・シカマル。












「やっとここまで来たか」


目の前にやっとお賽銭を投げ込んで、さまざまに祈っている人たちが見えだした。



ジャラジャラと無造作にポケットから小銭を出して、シカマルはコインを1枚私にくれた。

「ほらよ。」

「シカマル・・・私このコインじゃないのがいい」

「あ?お前また欲張ってたくさん祈る気だろ?やめとけやめとけ。」

シカマルはクククと笑った。



「違うよぉ私のお願いは一つだけ!・・・これがいいの!!」

シカマルの手のひらから、真ん中に穴のあいたコインをもらった。



「それ・・・・さっき渡したやつより安いぞ」

シカマルは疑うような目でチロリと私を見る。


「いいのこれで・・・だってこのコインだと、ご縁があるんだよ?」


そう。私の願いはただ一つ。





          (シカマルと縁がありますように!!!!)





「ふうん・・・・・」


シカマルは興味が無いのか、気の無い返事をした。










賽銭箱が近づいてくる。






「シカマル。せぇので一緒に投げよvv」

「めんどくせっ」


そう言いつつ、シカマルは私の掛け声と同時に、親指でピンッと器用にコインをはじいて
箱に投げ入れた。







パンパンッ!!







二人で笑っちゃうくらい大きな拍手を二回。


目を閉じて、お願い開始ーーーーーっ!!






(えっと、えっと・・・・シカマルとこれからも仲良く・・・じゃないか・・・えっと、シカマルと
 付き合いたいです。・・・ってストレートすぎるかな?じゃぁ・・・シカマルともっと近づきたい・・・
 って、なんか変体っぽいし・・・・なんて言うか・・・・シカマルととにかくもっと仲良くなって、もっと
  女の子扱いしてもらえますように!!!そしてなんとか進展がありますように////きゃっ言っちゃった!)



「よし!!」


目を開けると、隣で祈っていたはずのシカマルがいない。


「あ、あれ?」


キョロキョロしていると。









!こっちだバカ!どんだけ祈ってんだよ!!お前は!!長げぇっつうの!!」



シカマルがめんどくさそうに遠くから片手で手招きしていた。






「ご、ごめん。今、行・・・・く・・・・」

シカマルに手を振って、そう言った私の心臓はドキリとした。



シカマルの隣に・・・・テマリがいる。





さっき、シカマルが寝ぼけてテマリの名前を読んだことを急に思い出した。






私はあわてて石の階段を駆け降りた。







「バカ。転ぶぞっ。走るな」

シカマルの叫ぶ声が聞こえたけど、そんなこと気にしてられないよ!!
だって、なんでテマリが一緒なの?







「はぁはぁ」

二人に近づいたら締められた帯がきつくて息が切れた。


「ったく・・・お前は。」

シカマルははぁとため息をついた。



って言ったか?テマリだ・・・よろしくな。」

テマリは私の気も知らないで、人懐っこい笑顔で笑った。





(テマリって近くで見ると、綺麗な人だな・・・・)

中忍試験の残酷なイメージは全然無くなって、穏やかな顔になっている。
それに、今日はテマリも晴れ着姿。
真っ赤な着物に艶やかな花がテマリを艶やかに見せていた。


一瞬息を呑んだ。あまりに綺麗で、緊張して・・・

でも、ちゃんと挨拶しなきゃ。テマリと面と向かって会うのは初めてだし・・・

です・・・あの・・・・えっと。あの・・・・・・」

ドキドキして、頭が回らなくて、言葉が途切れた。

「あぁ・・・なんだ。こいつとは幼馴染でよ。なんつうか。こういうの一緒に来るのが習慣つうか・・・  まぁ・・・・癖みてぇになってんだよ俺達」

シカマルは頭をガリガリとかいて、そう言った。





シカマルが言ったことは間違いじゃない。
でも、テマリに『幼馴染』『習慣』そんな言葉をシカマルの口から言われると、胸がギュッと痛い。


「そうか。幼馴染か・・・いいな。そういうの」

テマリはにこりと微笑んだ。


「そういや、なんか今日は感じが違げぇと思ったら・・・へぇ。お前もそんな格好すんだな」


シカマルはテマリをじっと見つめた。


「あぁ////初めて着たんだ。木の葉のしきたりだって、火影様が無理やり・・・」

「なるほどな・・・あの人ならそういう節介やきそうだ」

シカマルはくくくと笑った。


「似合ってないからあんまり見るなよ//////」

テマリは照れていた。





(そんなこと無い。すっごく似合ってる・・・すごく大人びて見えて・・・綺麗。)





私は言葉に出来なかったけど、目の前のテマリに見とれた。
そんな私の隣で・・・


「そんなことねぇよ・・・似合ってるぜお前。」









何気なくかけたシカマルの言葉。










『似合ってる』










(どうして?・・・テマリにそんな事言うの?・・・・)




すごくショックだった。




「そ、そうか?/////あ、ありがとな」

テマリは真っ赤になった。

「それ着てっと、普通に女って感じに見えるぜ?」

「それはいつもは女じゃないって言いたいのか?//////」

「そうはイワネェけど・・・近いもんはあるな」

あははと笑うシカマル。

「一言余計だ!!/////////」

怒りながらも、照れてすごく女の子らしいテマリ。

「砂の里でも、正月に着物ってしきたりでも作ったらどうだ?まぁ初詣はめんどくせぇけどな」

シカマルがテマリにそう言って、優しく笑う顔を見るのがつらかった。
それに・・・私には『女に見える』なんて言ってくれたことないのに・・・
それって、テマリを女として見てるってこと?
なんでそんな思わせぶりな言葉をテマリには優しく言うの・・・・・








部屋で聞いたシカマルの寝言・・・・










シカマルの心の中にいるのは・・・私じゃなくてテマリなの?













胸がズキズキする。








なんかすごく悔しいっ














「ところで・・・初詣は済ませたのか?」

「いや、まだだ。これからカンクロウと我愛羅と待ち合わせしてるんだ。」

シカマルの問いに、テマリは照れくさそうに答えた。

「・・・まさか我愛羅まで初詣かよっっ柄じゃねぇのにっ・・・ なぁ?」

シカマルは笑いながら私の顔を覗き込んだ。

「う、うん・・・・・」

うまく笑えないよ。
だって・・・テマリと話してるシカマルはなんか楽しそうに見えて・・・



けど、そんな私の素振りにシカマルが気づくはずもなくて、二人の会話は私を置き去りにしたまま
どんどん進んでいく。



「まあな。木の葉の良い面は砂の里にも取り入れたいって言ってた。色々と変わったのさ我愛羅も・・・
 あいつのお陰でね・・・・」

「あぁ・・・ナルトのお陰ってやつか・・・」

「あぁ・・・ナルトには感謝してる。・・・もちろんお前にもな」

テマリは優しくニコリと微笑んだ。

「俺はなんもしてねぇよ・・・」


そう言ったシカマルは照れたのか、足元の玉砂利をジャリっと踏んだ。






(いつも一緒にいなくても、二人はとても信頼しあっている気がした。)

(いつまでも子供で、任務でも全然役に立てない私より、シカマルを大蛇丸の部下から
 守ってくれたテマリの方がずっと強くて頼もしくて・・・魅力的だ・・・)

(シカマル・・・だからテマリを好きになったの?)









テマリとシカマルが話しをするだけで、胸が痛い。
早くこの場を去ってしまいたい。









「ね、ねぇシカマル。おみくじ引こうよ・・・ね?」

私はシカマルの袖を引っ張った。


「あ?あぁ・・・そうだったな・・・」



これでやっとまたシカマルと二人きりになれる!ってそう思ったのに。


「テマリ。お前、みくじなんて知らねぇんじゃねぇのか?一緒に引くか?」

シカマルはなんの躊躇もなくテマリを誘った。


「みくじ・・・なんだそれは?」

テマリはキョトンとした。


「まぁ来いよ。お前も色々知りたくてここに来たんだろ?」

「いいのか?」

テマリ・・・すっごく嬉しそう。


「いいも何も・・・砂の里に貢献するのも俺の任務の一つでもあるからな」

シカマルはサラリとそう言った。






心の中がグチャグチャする。




(なんで?なんでよ!!せっかくの二人きりの時間・・・シカマルにとって、私との時間は
 大事なんかじゃないの?私より、テマリが一緒の方がいいってこと?)









私の想いなんか、これっぽっちも気に留めていないシカマルは、気軽に声をかけた。




「んじゃ、めんどくせぇけど、このチビも行きたがってることだし・・・行くか?」


シカマルは私の頭をポンポンと軽く叩いた。
そして小声で私の耳元で囁く。



「テマリって案外普通の女だろ?お前も友達になってやってくれよっ いねぇんだあいつ。
 女友達ってやつがよ」



(返事できなかった。だって・・・なんでそんなにテマリのこと気にするの?私がなんでテマリと
 友達にならなきゃいけないの?・・・テマリは私の恋敵だよ?それなのになんでっ!!
          わたしはシカマルにテマリと仲良くしてほしく無いんだよ!!)



でも、何も言えない。
だって・・・私はシカマルの彼女でもなんでもないもん。
テマリと仲良くしないでなんて言う権利もないし、それはシカマルの任務でもあるから、
私が何を言ったって、シカマルとテマリの仲を裂くことだって出来ない。




「おいっ 。なにボーっとしてんだっつうの?ただでさえお前はいつも抜けてるってぇのによ」

シカマルは私のおでこをツンと小突いた。


「シカマルのばか」




私には、ふざけてばっかり!!
テマリは女で、私は子供なの??





・・・?何カリカリしてんだ?変なやつ」




シカマルは全然わかってないよっ





私は プイッ と顔をそらして、おみくじのところまで一人でスタスタと歩いて行った。









「おいっ 待てって。あんまし急ぐと転ぶぞ?お前、草履履きなれてねぇだろ?」


また・・・私のこと馬鹿にしてっ!!そりゃ草履なんて慣れてないけどさっ!!
悔しくて、私は後ろのシカマル達を振り返る。


「ほっといてよ!!・・・きゃっ!!」




強く振り返ったせいでバランスを崩して、履きなれない草履がすべった。








ぐらりと体が前のめりに傾く。








(やっぱり私みたいな子供に着物なんて似合わないんだっ)










でも









グッと腰を抱きかかえて、私を支えてくれたのは・・・



「だから・・・気をつけろっつってんだろ?ったくお前は。あぶなっかしくて見てらんねっ」





シカマルは私の手をグッと握った。





「テマリ。こっちだ。」


私の手を握ったまま、シカマルはテマリを呼んだ。



「あ、あぁ」

テマリはこっちに向かってスタスタと歩いてきた。


「驚いた。お前もあんなすばやく動くこと出来るんだな」

「あ?」

私の手を握り締めて歩いていくシカマルにテマリは横に並んで歩きながらそう言った。



「うるせぇよっ//////こつがいつまでたっても面倒ばっかかけさすからだっ ったく、めんどくせぇ」

「ご、ごめんねシカマル」

テマリがいても、変わらず私を助けてくれるのがシカマルでよかった。
素直にうれしい気持ちになった。



「謝んなよ・・・バカ」

シカマルは私の顔もみないで、まっすぐ前を見たままそう言った。







「もしかして・・・シカマルとは・・・恋人ってやつか?」

テマリはからかうでもなく、まじめな顔でそう言った。



「え?///////」

テマリの言葉にドキドキした。


「そんなんじゃねぇよ・・・俺達は」

シカマルはつぶやくようにそう言った。






変だよね。
シカマルのそんな言葉一つでまた胸がギュッとする。
繋がれたままの手。でも、心はいつも途中で途切れてしまう。


気持ちが上がったり下がったり、もどかしいよ・・・・









「どうやるんだ?」

テマリはおみくじに興味津々だった。





「こう・・・するの」

ぎこちない口調で私はジャラジャラと木箱をゆらして、棒を一本出した。

巫女さんがその番号と同じ木箱から、私におみくじをくれる。





ただの運試し。
でも、なぜかお正月に引くおみくじの結果って、その1年を左右するみたいで、ドキドキする。
それに、今日はなんかいつもよりずっと結果が気になるよ。
だって隣にテマリがいるんだもん。
シカマルと二人きりじゃない初めてのお正月。
悪い結果なんて見たくない!!




「さ、三人で一緒に見よう///////」

テマリに言うでもなく、シカマルに言うでもなく、私は小声でつぶやく。
だってまだテマリとはうまく会話できない。


「お前、たかがみくじぐらいでいつも真剣だな。」

シカマルは シシシ と意地悪に笑った。



「うるさい!!いくよ!せぇのっ」











「私は・・・・大吉?って書いてあるぞ」

テマリはその意味が分からないのか、首をかしげている。


「俺は・・・中吉・・・可もなく不可もなくってとこか?・・・まっ こんなもんだろ・・・」

シカマルは興味なさげに、そう言った。


「・・・・・・・・・・・」





「で?お前は?」

シカマルにおみくじを覗かれる。







シカマルは笑いをこらえながら、私の肩をポンポンと叩いた。






「大凶ってお前・・・っある意味すげぇな。俺、今まで生きてきて初めて見たぜっ」


「う、うそ・・・・・」

私だって初めて見たよっ 何これ!!



テマリも興味津々で私のおみくじを覗きこんだ。

「何何?・・・願いごと叶わず・・・・待ち人こず・・・清き心をもって精進せぬもの・・・
 思わぬ横槍に大事なもの奪われる・・・・」










私のおみくじを読み上げたテマリは少し心苦しそうにしていた。

でも、なんかすごくイライラした。





(テマリが大吉で私が大凶!!しかも、思わぬ横槍に大事なものを奪われるって・・・
 テマリのことなんじゃないのかな!!??)




大事なもの・・・
私にとって大事なものって言ったら、シカマル以外にいないよっ

何も言えないぐらい、ショックだった。
だって・・・シカマルが本当にテマリに取られちゃうんじゃないかって・・・
苦しくて・・・






「そうショック受けんな・・・ほら・・・貸してみろよ」



シカマルはおみくじを持って、唖然としている私の手から スルリ とおみくじを抜き取った。




「こうしときゃ大丈夫・・・って・・・・知らねぇだろ」


「え?」



シカマルは近くにたくさんおみくじが巻かれた背の低い木のてっぺんに、私のおみくじを結んだ。



「悪いみくじは、こうして木にくくっときゃ、いいこと起きんだぜ?しかもてっぺんに結んでやったから、
 もう気にするこたぁねぇってわけっ」


「シカマル///////」

不安だから、優しくされると余計にドキドキする。

「めんどくせぇけど・・・こればっかは、チビのお前じゃ無理だからよ・・・ったく世話かけさすよな」

シカマルは ふんっ と鼻で笑った。


「あ、ありがとう//////」

憎まれ口でも、それでもうれしかった。


「良かったな」

テマリはにこりと笑った。


「あたしのは・・・持ってていいんだよな?」

テマリは初めて手にしたおみくじが余程気に入ったのだろう。
頬を高揚させていた。


「あぁいいんじゃねぇ。そいつは財布にでも入れて、お守り代わりにでもしとけよっ」

シカマルが言うと・・・

「やったぁ/////カンクロウや我愛羅にも見せてやらなきゃなっ」

テマリは満面の笑みで微笑んだ。




あっけにとられた・・・無邪気に笑ったテマリは本当に綺麗だった・・・・




「お前さ・・・・・・いつもそうして笑っとけよ。」

シカマルはポツリと呟いた。

「な、なんだよ急に/////」

テマリは驚いた顔をした。








「戦っているお前より、笑っているお前の方がずっといいからだよ」











テマリは真っ赤になった。














(ずっといい・・・それってどういう意味?・・・人間としていいってこと?それとも・・・
 笑ったテマリが好き・・・・・ってこと?
 










(もう胸が張り裂けそうだよ・・・シカマル。)















「まだ時間あるか?」

シカマルはテマリにそう声をかけた。


「初詣にはつきもんだ。ついでにお守り買ってけよ。破魔矢って知ってっか?
 砂の里にもツキがまわってくるかもなっ」

「あぁ買ってく。教えてくれ」

テマリはうれしそうに笑った。




二人のやり取りが遠くで聞こえてる気がした。
私とシカマルの時間・・・・
私とシカマルの温度差。
私とシカマルの想いの相違。



胸が痛い。










お守りを売っている場所にはまた列が出来ていた。


「ちっ また人ごみかよっ」

それを見て、ぼやいたシカマル。


「いいよシカマル。私一人で買ってくるっ お前、人ごみ苦手だしなっ
 木の葉の仕来たりはおもしろい!!砂の里にも参考に出来ることがいっぱいだ!ありがとうな!!」

テマリは私たちにニコリと微笑んで、足早に向かっていった。





「そうか。またな」

シカマルは 笑った。




私はまだ心の整理が出来ないまま、無言で二人のやりとりを見ていた。






着慣れない着物・・・帯のせいなのか、この心の痛みのせいなのか、ずっと胸が苦しかった。







「どうする?・・・俺達も行くか?めんどくせぇけど、母ちゃんに破魔矢頼まれてっからよ」

シカマルは頭をガリガリとかいた。


「やだ・・・・行かないっ」

言葉がボロリとこぼれた。



「なんで?」

シカマルは急に不機嫌になった私を不思議な顔で見下ろした。


「行きたくないっ 」


私は肩に力をいれて、体をこわばらせた。


「どうしたんだよ?お前・・・変だぞ?」

シカマルは全然気づいてない。



私がどんな気持ちでいると思ってるの?
テマリばっかり大事にしてる
私なんてどうでもいいんでしょ?



「お守りなんていらないっ 買わないっ 列になんて並ばないっ 買いたきゃシカマル一人で行ってよっ」

だって、あそこにはテマリがまだ並んでる。
本当は、シカマルはテマリと一緒にいたいだけなんじゃないの??



「なんで・・・お前もどうせ買うんだろ?」

シカマルは眉間にシワを寄せた。



「だからいらないって言ってるじゃんっ!シカマルこそ、本当はお守りなんてどうでもいいくせにっ!!」

最後は叫ぶように大きな声を出した。


「あ?どういう意味だよっ」

シカマルはますますシワを深くした。




「あそこにはテマリがいるから・・・だから・・・シカマルはただテマリと一緒にいたいだけでしょ?」


うつむいたら、涙がにじんだ。
泣くなんて悔しいから、必死でこらえた。




「あほか。なんでそうなんだよっ」

シカマルは はぁ とため息をついた。





「テマリと二人っきりになりたいなら、私に気を使わないでよっ」




「お前になんの気を使うんだよっ!めんどくせぇ・・・なんの誤解をしてんだお前はっ
 テマリは関係ねぇだろ?・・・砂が本当に平和を望むっていうなら、こういう行事は必要だからだろ?」


「誤魔化さないで!!砂のためなんかじゃないくせに!全部テマリのためでしょ!!」




「お前さ・・・なんの焼きもちだよ・・・くだらねぇ」



シカマルは けっ とあきれたように言った。




「シカマルはずっとテマリのことばっかり褒めてたじゃないっ 着物だって、似合うって・・・
 笑顔がいいって・・・私には何も言ってくれなかったのにっ」



シカマルはしばらく無言になった。
そして、あきれたように はぁ と一つため息をついた。



「そんな事で焼きもちやくなよっ・・・」


「だ、だって・・・」

シカマルには分からないよ・・・私がこんなに不安なこと
だって、シカマルは私が思うほど、私のことなんか好きじゃないから・・・・




それでも、シカマルを信じたかった。
小さい頃から、ずっとそばで私を守ってくれたシカマルだから・・・
私をずっと見ていてくれたのはシカマルだけだから・・・・



でも・・・・




シカマルはまじめな顔で言った。


「テマリには言えても・・・お前には言えねぇこともあんだよっ」

「シカマル・・・」

瞳に涙がにじんで目の前のシカマルがぼやけて見えた。


それって・・・テマリの方が綺麗だから?
私には言えないって意味?


シカマルの足りない言葉は、余計に私を傷つけた。












「シカマルのバカ!!もういいよっ テマリが好きなら、はっきりそう言えばいいじゃない!!
 私だって、今年こそシカマルなんかじゃなくて、もっと優しい男の子を好きになるからいい!!
 シカマルなんか大っ嫌い!!」











シカマルの胸をドンッと押して、私は人ごみでごった返す屋台の並ぶ通りに逃げた。

今は、シカマルの影真似につかまりたくなかったから・・・
情けなくて、泣く自分を見られるのは悔しかったから・・・







っ!待てって」








逃げ出した私の背中にかけられたシカマルの声はすぐに人ごみにかき消された。























なんで、着物なんて着たんだろう・・・

「バカみたい・・・シカマルに綺麗だなんて言ってもらえるわけないじゃんっ」

だって、テマリの方がずっと綺麗・・・私になんて全然似合ってないのに。

ちょっと走っただけで息がきれて、苦しい・・・・
もう走れないっ・・・
でもシカマルには会いたくないっ










屋台の通りの裏は、誰もいない草むらが続いていた。
ところどころに立つ大きな木々の幹は、私の体を隠してくれそうだ。
ここなら、どんなに泣いても、きっとシカマルにも見つけられないはずだ・・・・









私は人ごみに紛れながら、そっと屋台裏に入り、大きな木の幹に隠れた。
こらえていた涙が一気に出てきた。








シカマルへの怒りとかじゃない。

あんなに小さい頃から、ずっとずっとシカマルのことが好きだったのに・・・
なんであんな事を言っちゃったんだろう・・・・
本当は、今日の晴れ着姿を見て、シカマルが私を真剣に女として認めてくれたら、ちゃんと
気持ちを伝えて、シカマルの彼女にしてもらいたかった。



大っ嫌いなんて言うつもりなかったのに・・・・




急にさっきのおみくじの言葉が頭を回った。

「清き心をもって精進せぬもの、思わぬ横槍に大事なもの奪われる・・・・」




その通りだ。

テマリに会ってから私はテマリの事を心から受け入れて、話しをしてあげることも出来なかった。
木の葉に親しい女友達のいないテマリ。
私がその一人になってあげられたかもしれないのに・・・・

汚い嫉妬心で私はテマリを見ていた。

こんな私がテマリに、勝てるわけない。


本当にシカマルは私なんかに愛想をつかして、テマリと付き合っちゃうかもしれないっ




けど・・・そうなったら私・・・もう・・・生きていけないよっ











涙の理由はすべて後悔だった。










「シカ・・マル・・・・エーーンエーン・・・ひっく・・ひっく」



言葉にして名前を呼んだら、余計に泣けて、体が震えた。










「なんで泣いてんだよ・・・・」


「え?」


背中から・・・・そっと体を抱きしめられた















振り返らなくても、分かる。








「ど、どうして??・・・・・先輩??」







それは、医療忍術を指導する二つ年上の先輩。


女の子には誰にでも優しくて、今までにも、たくさんの女の子ととっかえひっかえ付き合って、
夢中にさせては簡単に捨てちゃうような遊び人。

シカマルとは正反対のタイプ。

私の最も苦手なタイプの男の人だ。







はいつもかわいいけど。今日は何倍もいいね。着物、似合ってるし。」

先輩は後ろからまわした手をギュッと強めて、私を抱きしめた。

「せ、先輩・・・////////っ 」

なんで?なんで?こんなところに先輩が現れるの?
訳が分からなくて、頭が混乱していた。

「せっかくこんなに綺麗な着物姿なのに、なんで泣いてんの?」

抱きしめられたままだから、自分の頭の後ろに先輩のくっつけた唇の感触が伝わる。

そういうの免疫が無くて、先輩のこと好きじゃないのにドキドキする。
このままじゃダメだっ

「先輩には・・・関係ないですっ・・・離してくださいっ」


もがくけど、先輩の腕がぜんぜんほどけない。



「やだね。だって、泣いてんじゃん。俺、こんなかわいい子泣かすような奴の所になんか
 返す気ないしぃ」


先輩はどうして、シカマルに願っても、絶対に言ってくれないようなドキドキする台詞を、こんなに簡単に
言ってくれちゃうんだろう・・・


「なぁ・・・今日から俺と付き合えよ。お前のこと大事にするし。」



先輩は私の耳元近くに口を寄せた。



「や、やめてくださいっ 先輩、彼女いるじゃないですか」


が俺を選ぶっていうなら、すぐ別れてやるよ。知らなかった?俺、ずっとお前狙いだけど?」



心にも無いこと言ってるってわかってるのに・・・このままだと、この人のペースだ。



「うそですそんなの!!大体私のどこを好きだって言うんですか!!」


一生懸命もがきながらそう言った。




「小さくてかわいいとこ。純情で心が綺麗なとこ。それに・・・・・着物着たら、すげぇ色っぽいとこ・・
 とかかな?・・・・」


「冗談ばっかり・・・・」




先輩の言葉に余計に涙がこぼれた・・・だって、シカマルは冗談だって、そんなこと一言も言ってくれたこと
なんて無いもんっ

嘘でもいいから、一度でいいから、言って欲しかったよっ


シカマルに言ってほしかったのにっ



の好きなとこ・・・もう一個あったわ。・・・涙が綺麗なとこ・・・」



「え?」




先輩はくるりと私を前に向かせて、肩を掴んで、顔を近づけてきた。



「好きだよ、。俺と付き合ってよ。」















先輩のことなんて好きじゃない。



でも、なんか体に力はいんない・・・



シカマルに言って欲しかった言葉全部・・・先輩が言っちゃうんだもん・・・・。








もうどうだっていい・・・この人とキスしたら、シカマルのこと忘れられるのかな・・・・










先輩の吐息が近づく。








遠くでぼんやりと屋台ではしゃぐ人の声が聞こえてる。
頭がボーッとする。






(キスって好きな人とするものだって思ってた。  その相手は絶対シカマルがいいって思っていたのに・・・)


先輩を拒めなくて、目を閉じたら、涙がポロリと個ばれ落ちた。





(あたし・・・先輩とキスするんだ・・・好きでもないこの人と・・・)





(そんなの嫌だよっ・・・)





・・・・・・・シカマルっ 助けてよっ!!・・・・・・・

















「何おまえ・・・コイツが俺より優しくていいっつう男なのか?」






「へ?」

声の方に振り返ったら、シカマルが立っていた。



「て、てめぇ・・・影真似とけよっ!!」



先輩は体も顔もこわばらせたまま、ギロリとシカマルをにらんだ。










「コイツに出会うために、あんなに真剣に祈ってたのかよっ」


シカマルは先輩を無視して、私を怒った顔で見た。


「な、なんのこと?」


「さっき、コインわざわざ変えて祈ってたじゃねぇかっ 縁があるようにとかなんとか言ってよっ」



シカマルは不機嫌そうな顔で私を見ている。




さっきって・・・あの一緒に祈ったときのこと?







「あ、あれは違うよっ あれは・・・・」





シカマルと縁があるようにって・・・・


でも、いえなかった。
さっき大っ嫌いとか言ったばかりなのに・・・・








「てめぇ!俺を無視すんなっ!!」








先輩はさっきから同じように体をこわばらせたまま叫んだ。





「うるせぇな・・・っ」





シカマルは小さい声でつぶやいて、ゆっくりと先輩の顔を見た。






「ずいぶんこいつに好き勝手してくれてんな・・・あんた」

シカマルはギロリと先輩をにらみつけた。


「あぁ??誰に口聞いてんだ。」

その態度が気に食わないのか、先輩の額に青筋が出ている。


「お前、シカマルとか言ったな?先輩にはむかうたぁいい度胸だ。早くこの術をとけ!!」



シカマルの影真似のお陰で、私から離れた先輩の体は、いまだ、シカマルの影と繋がったまま、
身動きがとれないでいる。



「いいっすよ・・・・でも・・・・軽々しくこいつに触った罪は重いぜ・・・先輩よぉ」




シカマルの言葉は最後はゆっくりと低く響いて、怖かった。

シカマルが怒ってるんだってすぐに分かったから。






スルスルスルとゆっくりと先輩から影が引いていく。







「バァカ!影さえなけりゃぁお前なんざ怖くもなんともねぇんだよ!!」






先輩が印を結ぶ。






何かの術をシカマルにかけるつもり?





「シカマル!!危ない!!」



私はシカマルに駆け寄ろうとした。







「来るなっ」







シカマルの言葉にとっさに体が固まった。
さっきシカマルのこと大っ嫌いって言っちゃったから・・・
やっぱり私のこと怒ってるの??











先輩は風の術をつかって、何本ものクナイをシカマルめがけて投げつけた。












「やだっ やめて!!」

私は、無数のクナイがシカマルの体に突き刺さるのを想像して、とっさに目を伏せた。






でも・・・・







「ばーーか。お前はもうちょっと俺を信用しろっつうのっ」


シカマルの声。



「え?」


恐る恐る顔をあげると・・・・



無数のクナイの穴にシカマルの影がくくられ、まるで手が握っているかのように
器用にその矛先は唖然と立ち尽くす先輩に向けられていた。







「残念だったな先輩・・・あんたの単純な攻撃ぐらいよめるっつうの。あんたの影と繋ぐ前にちゃんと伏線張ってんだよ。」


「な。なにぃ?」

先輩はいつ飛び出してくるか分からないクナイを警戒しながら、シカマルをにらみつけた。


「周りを見てみな。・・・大体、こんな真昼間から、ここにこんなに影が出来ると思うか?・・・・・
   あんた甘めぇんだよっ」



先輩はゆっくりと周りを見回す。


すると、今まで林の木で出来ていたと思っていた影がグニュッとうごめいて、先輩を取り囲んでいた。



「ま、まさか・・・この影全部・・・」



先輩の額から汗が流れ落ちた。







「その通り・・・・俺の影から逃げられると思うなよ・・・・」




影は不気味にグニャリと先輩めがけて近づいてくる。





「や、やめろ」



先輩の声は震えていた。






「どうすんだよ。このクナイであんたの自慢の顔に傷でもつけてやろうか?それともこの足元の影で
 腕の一本でも折って欲しいのか?」




先輩の目の前でシカマルの影がクナイがクルリと回し、足元の影が先輩の足首までまき付いた。




「わ、悪かったよシカマル。じょ、冗談だって・・・・は返す。なんもしねぇ。」







「冗談?なんもしねぇ?・・・・お前、こいつに気安く触ってたじゃねぇか・・・・・・」



「いや・・・だから、それは謝る・・・」


先輩はしどろもどろになった。
いつもの気取った自信満々の先輩からは想像できない態度だった。




「もう遅せぇよ・・・・俺の女に手ぇ出す奴は・・・・たとえ年上でも・・・許せねぇ」








シカマルが今まで見たこともないほど怒った顔で、先輩をギロリとにらんだ瞬間、
シカマルの影がおもいきりしなって、無数のクナイが先輩めがけて飛び出し、足元に絡んだ影が
グニャリと先輩の右腕にからみついた。










「ぎゃーーーーーーーーーーーーーっ!!」











先輩の叫び声が辺りに響き渡った。










「だめ!シカマル!やめてぇぇ」


私が叫んだとたん、体がふわりと浮いた。




「ばーか。ありゃ幻術だ」



木の下で泡を吹いて失神した先輩のまわりには、クナイがカラコロと転がり、腕を砕いたはずの
シカマルの影はあとかたも無くなり、おだやかに風にゆれた木に合わせて、木の陰もゆるやかに揺れていた。






シカマルは私を抱きかかえて、ゆっくりと先輩から遠ざかる。








「シカマル?」


「本気でやるかよ・・・めんどくせぇ。まぁ・・・お前があんなやつに触らせたりすっから、
 ちったぁマジになっちまったけどよ。」


「え?/////////」



そういえば、さっきシカマルは先輩に私のこと、俺の女 って言ってた・・・・





あまりに緊迫した状況に、思わず受け流してしまったけど、改めてシカマルの台詞を思い出したら 急に恥ずかしくなった。






「シカマル・・・ねぇ・・・あの・・・・/////」



「お前、俺のこと大っ嫌いなんだろ?」



シカマルは先輩の姿が見えなくなったところの木の陰に私をゆっくりとおろした。







「そ、それは・・・だって・・・シカマルがテマリを・・・」




言葉につまって、それっきり黙った私をシカマルはジッと見つめていた。



「どうしたら、俺とテマリって発想になんだよ・・・俺がいつも一緒にいるのはお前だけだろうが?」



シカマルは はぁ とため息をついた。


「だって、だってさっき!!」


私はシカマルの部屋での話しをした。





「俺が寝ぼけて・・・テマリを呼んだ?・・・・」


シカマルは眉間にシワを寄せて、考え込んでいる。


「聞き間違いなんかじゃないもんっ!って言ってくれたあと・・・なんでだよテマリって・・・
 シカマルはそう言ったよ!!」


シカマルに誤魔化されるのは嫌だから、私は必死に話しをした。
するとシカマルは少しの間、黙って・・・それから、

「あぁ・・・あの夢のことか・・・なるほどな」

シカマルは何かを思い出したかのように ニタリ と笑って、私の頭に ぽんっ と手をおいた。


「俺・・・夢の中でお前を抱きしめた・・・」

「え?////////」


確かに寝ぼけたシカマルに もう離さない って言われて抱きしめられたけど・・・??
それって、本当に夢の中で私を抱きしめたの??

突然のシカマルの言葉にドキドキしちゃう。


「んで・・・俺の腕の中にいたお前が俺を見上げた途端、テマリに変わってたんだよ・・・
 そりゃさすがにビビるだろ?・・・とっさに、引き離して聞いたよ・・・何でだよテマリ!!ってよ・・・」



「・・・・・」


そう言われたら、シカマルの言ってることで辻褄は合ってる気がする。


けど、本当に信じていいのかな・・・??


そんな私のモヤモヤした心を見抜いてくれたのか・・・・

「まだ腑に落ちねぇって顔だな・・・言いてぇことは今言えよっ お前は心の中にしまっとくなんて
 出来っこねぇんだからよっ なんでも答えてやっから・・・」


シカマルは優しい顔でそう言った。


(そうだよね・・・このままじゃ、シカマルのこと疑ったままになっちゃうもんっ)


私は意を決して、心の中にモヤモヤしたものを吐き出した。


「シカマルは私との関係を誰かに話すとき、絶対、めんどくさそうになんでもないって言うよね。
それって、本当は少しも私のことなんて、女の子に見えてないってこと?」


「/////////そ、それは・・・」


さすがにシカマルも言葉に詰まって、真っ赤な顔をして、私から目をそらした。


ここからさっきの屋台までも距離があって、周りには私とシカマル以外誰もいなくて、奥深い木々が風にゆれて ザワザワと音をたてている。



「それに・・・テマリのこと、たくさん女の子として褒めてたのに・・・私にはいっつもからかって
 ばっかりで・・・」


そこまで言ったら、目に涙が浮かんできて、どうしていいか分からなくて、私はシカマルを
まっすぐに見ることが出来なかった。



・・・悪かった。泣くなよ・・・お前を泣かせたくねぇ・・・」



シカマルはうつむいた私の頭をグッと抱きしめて、ポツリポツリと話しだした。



「テマリとか・・・いのとかよ・・・ほかの女には言えても・・・お前には言えねぇんだよ。
 今日の晴れ着だって・・・すげぇ似合ってるって思ってるし・・・それに・・・まじ
 綺麗だって・・・思ってる・・・・でも・・・お前の顔をまともに見て言えねぇんだ・・・」




「どうして?」



「バカ///////だから・・・それは・・・す、好きだからだろ?お前が・・・・///////」




















へ?





















好きだって・・・シカマルが今そういって・・・・






















頭が真っ白になった。












「お前との関係をめんどくさそうにしか答えてねぇのは・・・お前と本当にちゃんと付き合えた時に
 きちんと言うつもりだったからだ・・・」


「軽々しく言って、それだけの関係に終わりたくなかったんだよ・・・分かるか?」



ぽけっとしたままの私の頬にシカマルの手がくっついた。






「だから・・・お前に軽々しく触ったあいつを本当は憎くてしかたねぇよ・・・」

シカマルは私を辛そうな目で見つめてる。



先輩とのこと・・・私が勝手にやけになって、抵抗もせずに先輩を受け入れようとしたから、
シカマルをこんなに傷つけちゃったんだね・・・


(シカマルはこんなに私を想ってくれてたのに)


「ごめんねシカマル」


そう言ってシカマルを見上げると、両肩を掴まれて、木にグッと体を押し付けられた。


「なぁ。。・・・すんなよ・・・俺以外のやつと・・・」

「え?」




それはスローモーションみたいにシカマルの顔がゆっくりと近づいて。




「お前に嫌いだって言われて、正直すげぇ落ちた。けどよ・・・もっかいお前を振り向かせてみせっから」



つぶやくような優しい声の後・・・



あ・・・・・





シカマルの唇と私の唇が重なる。






風が木々を揺らす音しか聞こえない。
それはとても優しくて、この世にシカマルと私、二人しかいないみたい・・・






(シカマルのバカ////私がシカマルを嫌いになんてなれっこないのに////
 今だって、もう私はシカマルに心も唇も奪われちゃってるよ)




ドキドキと高鳴る心臓。だけど、心はすっごく温かい。




(好きな人とするキスはこんなにも気持ちいいんだね・・・)



ゆっくりと離れた唇が物足りなくて、さびしくて、私はシカマルの腕をギュッと握って、 もう一度顔を近づけた。





「やだ・・・もっと・・・シカマル」




「俺も足んねぇ・・・」










二人の影が、木の陰と重なって、風の音に隠れるように、何度も何度も
夢中でシカマルとキスした。












苦しくなって唇が離れたら、急に恥ずかしくて、しばらく木にもたれてお互い顔も見れずに抱き合っていた。









「・・・あのね。」

「なんだよ・・・」



先に切り出したのは私。
だって、さっきシカマルに言われたことが気になってたから・・・・




「さっき、初詣で祈ったのはね・・・シカマルとご縁があるようにって・・・そう祈ってたんだよ。
 すごいね。もうご利益あったよ////」

私が ふふふ と笑うと・・・

「バカ・・・もうとっくの昔っから、お前しか見てねぇっつうの。」



「え?そうなの?///////」


シカマルの腕の中、そっと顔を見上げた。



「鈍感・・・・////////」


シカマルは頬を赤らめたまま、チロリと私を見下ろした。




「じゃぁ・・・シカマルは?シカマルはなんて祈ったの?」


「知りてぇの?」


シカマルは意味深にニシシと笑った。



「う・・・うん・・・」












とSEXしてぇ・・・・」


「は?////////////////」






思わず、シカマルの胸をドカッと押して、私は体を離した。







「また・・・//////冗談ばっかり///////」



あんなに女扱いして欲しいって思ってたのに、目の前でシカマル本人から言われたら、
なんかどうしていいかわかんないっ。






「マジだぜ?・・・好きな女がいつも隣にいたら、そう思うのも当然だろ?
 俺も男だかんな・・・ナルトやキバの言ってたこともまんざら嘘でもねぇってわけだ。」

シカマルは ふふん と笑って私を見下ろした。
私ははじめて見る、シカマルの男の子としての本能に ドキドキ して少し後ずさりした。


「付き合うってことはそういうこともありだろ?・・で?お前はどうなんだよ?・・・俺とは嫌か?」

シカマルはまた急に真剣な顔をする。

だけど、だって///////なんて答えればいいの?
私はあせりながら言いかえした。


「シカマルの事は好きだよ。でもさ、私たち、今、初めてキスしたばっかりじゃない!!」






好きな気持ちと、体は別だもんっ ドキドキしながら、冗談にも笑えず、私は真っ赤になって答える。





「はじめてのキスねぇ・・・」


シカマルは頬をポリポリとかいた。



「え?」


「お前よ。いっつも俺の昼寝の隣でマジ寝してんだろ・・・無防備すぎ。」


「ど、どうゆうこと?」


「とっくに奪ってるっつうの。お前は気づいてねぇだろうけどなっ」













平然と答えるシカマルの態度。
でも、私///////そんな事はじめて知ったよ!!!




「シカマルのバカァ////////」



思わず、もう一度駆け寄って、シカマルの胸を叩いた。



その腕をグッと掴まれる。







「だから・・・もう待てねぇよ・・・・」

シカマルの真剣な顔。


それから、もう一度 グッ と抱き寄せられた。



「いい加減、覚悟決めて、俺だけのものになっちまえよ・・・な・・・





なんて強引で、自分勝手な言い草・・・






だけど・・・

ねぇ・・・なんでだろ。
木々から差し込む優しい陽の光は、冬なのにとても温かくてキラキラしてて・・・
とても綺麗だったの。
それは私をとても神聖な気持ちにさせた・・・・だから。










「いいよ」


私はジッとシカマルの顔を見上げる。



「私・・・シカマルのものになる」





覚悟を決めた私の頬にシカマルはそっと触れる。





「やっぱお前にはかなわねぇな・・・」









シカマルの優しい笑顔。 辺りに陽の光が反射して、私たちの周りだけキラキラ輝いて見える。












初詣なんてめんどくさいってシカマルは言ってたけど・・・。

だけど、やっぱりはじまりの1年。
神様にお参りにくるっていうのも結構いいかも/////



だってほら・・・私達ちゃんと願いが叶ってるよ//////



これもきっと神様のお陰・・・だよね?///////








今日この日から、私とシカマルの『恋人としての』特別な1年がはじまる---------------------------
















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