私はその日、任務が休みだったので、
演習場で新しい術の練習をしていた。

「あーー 疲れた〜 ちょっと休憩」

大きな大木の下で一休みしていると、
向こうから、息をきらして走ってくる
人物が一人・・・・・

「あれ?ヒナタじゃん」




ヒナタはやっと見つけたっ 
なんてかわいい笑顔を向けて、
静かに私の隣に座った。
ちゃん。」
「ん?何?ヒナタ」
「こ、これっ渡したくて」

ヒナタが渡してくれたのは何枚かの
写真だった。

「わーー よく撮れてるじゃーーん!」

この写真は、ついこの間、アカデミーで
同じクラスだった仲間と同窓会って事
で、久しぶりに集まった時のものだ。

「アカデミー卒業してからは、みんなで
 会う機会なんてなかったもんね。
 楽しかったよねーー!」

私は上を向くと、木の間から太陽の
光がやわらかく降り注いでいた。


「この時の幹事って、確かシノだったん
 だよねーー」
「うん」

私もヒナタも自然と笑顔になる。

しばらく、その写真を見ながら、あの
時の事を思い出していた。

ヒナタの写真はどれも、笑えるもの
ばっかりで、

「これこれ!ナルトのやつ、赤丸のさー」

「赤丸くんかわいそうだったよね」

それは・・・・
ナルトが赤丸のビーフジャーキーを盗み
食いして、キバに追いかけられてる写真。

「けど、結局、ナルトがお色気の術で、キバ
 に抱きついてさ、キバったら、真っ赤に
 なっちゃってさ!」

「シカマル君に言われちゃったんだよね」

「そうそうっ『お前、超バカ』」

くくくく!
私とヒナタは笑いあった。

「えっと、次は〜・・・」

いのとサクラがサスケの隣の席、争奪戦で
もみあってる写真・・・・

「このあとさー サスケがキレたんだよね」

「う、うん」

「お前ら、2人ともうざい!とか言ってさ」

「みんな昔と変わらないね」

あははは!

私とヒナタは声を出して笑った。
ヒナタはくすくす程度だったけどね。

「これも笑えるーーー」

私が写真を指さすと、
「チョウジ君、お腹大丈夫だったのかな?」

チョウジが食べ物を口に詰めすぎて、シノに
背中をさすられてる写真・・・・

「あーー 全然大丈夫だったじゃん!
 だってあの後、いのとサクラがサスケの為
 に作ったっていうデザートを一人で食べ
 ちゃってさーーー」

「そ、そうだったね。ナルト君やキバ君にも
 怒られちゃってたんだよね」

「チョウジがシカマルの後ろに逃げ込んだら」

「ちょ、ちょうど、赤丸君がシカマル君の顔に
 体当たりしちゃって・・・・」

「シカマルってば、無言で影真似かけたんだ
 よね・・・・キバに!」

「そ、そうそう」

「何で俺なんだよ!
ってキバが抗議したら、飼い主の責任だ。だって」

「あのあと大変だったね」

「本当、あいつらバカばっかり!」
「でも・・・・・・」
「でも・・・何?ヒナタ・・・・」
「私はそんなみんなが・・・すっごく・・・好き・・だな」
ヒナタは顔を赤らめて言った。

「私もだよ」
私はヒナタに笑顔をむけた。

「さーーて、次はっと・・・・・・・」




ん?





その中の一枚に目が釘付けになってしまった。

そんな私の様子を見て、ヒナタが言った。

「あっ こ、これ、よく撮れてるよね。
 ちゃんにあげるよ。」

ヒナタはその写真を私の手に握らせてくれた。

私ったら、思わず、
「いいの?いいの?もらっていいの?」
なんて聞いてしまった。

だって、だってさーー その写真たら、

料理をガツ食いしてる私の隣で、シカマルが
チラッと私を見て、なにやら微笑んでるん
だもん!

これって私の見間違いじゃないよね?
自意識過剰?

いやいや、他人から見たら、余り変化ない
シカマルの顔かもしんないけど、いつも
眉間にシワを寄せて、睨まれるばかりの
私の立場から言わせると、このシカマルは
絶対、微笑んでる!

それも、私を見て、何やら幸せそうに!!

私が

「この写真さー」

と言いかけると、

ヒナタが

「シ、シカマル君が、と、とっても自然体で
 いいよね?」
だって。

え?何言ってるの?ヒナタ。

私は、この写真さー シカマル微笑んでて、
ありえないよねーって言おうとしてたのに。

だから私は相当びっくりして、

「シカマルが自然体って・・・・こんな優しい顔
 したシカマルなんて私、見たことないよー」

って言ったら、ヒナタは驚いた顔で、

「え?私が見るシカマル君はいつもこんな顔
 だけど・・・・」

といった。




え?

それっていつよ?
いつこんな優しい顔で微笑んだりしてた?
シカマルはもっと悪人顔でしょーが。

私は腕組みをして考えこんだ。


「シ、シカマル君てさ、いつも、なんとなく、
 ちゃんを見てるよ。こんな顔して。」

私はまたしても

「え?」

嘘だーーー!

だって、いつも家で会うシカマルは、私を見ると、
「また来たのかよ」
とか言って、うざったそうな顔をしてるよ。

私が思いを巡らせていると、ヒナタは

「その写真1枚しかないから大事にしてね」
と言った。
「え?焼き増しは?」
と聞くと、

「あのね、写真のネガ・・・・赤丸君が食べちゃったの。
 キバ君、平謝りしてた・・・」

「そ、そっか。」
まっ 仕方ないよね。赤丸を責めるわけには
いかないし。



ヒナタは時計を見ると、
「ご、ごめんね、ちゃん。私これから、任務
 なの。」
と言って、立ち上がり、
それじゃーまたね!と、手を振って走りながら
帰っていった。

「ありがと、ヒナタ。ばいばーーい!」

私はそう言って、ヒナタを見送った後、例の
写真を一人見つめながら、なんか嬉しくて顔が
ニヤケるのを必死で押さえつつ、立ち上がった。

「今日の練習は終わりにしよーーーーっと。」

嬉しくて嬉しくて、写真から目が離せなくて、
家への帰り道も、周りの注意も適当に、写真を
見つめながら歩いていた。

「この写真見てると、なんか仲良しのカップルっぽい
 よねー キャーッなんちゃって〜」

それは完全な独り言だったはずなのに。

突然、後ろから、

「何、お前、一人で大声出してんだよ。マジおかしい
 からやめろっ」

振り返ると、シカマルが思いっきり眉間にシワを
よせてたっていた。

ハァーーー

ほらやっぱりね、ヒナタの嘘つきーーーー!
シカマルが私を見て微笑むわけないってーー。

私の溜息を聞いて、シカマルがなお一層眉間のシワ
を深くしながら言った。

「なんだよ。。感じ悪ぃなっ 俺みて溜息
 ついてんなよ!」

だって、つきたくもなるっつうの!

「ふんだ!シカマルだって、私を見るたびに、
 眉間にシワよってますけど!」

私はツンとして、シカマルを無視して、先に
歩きだした。

「俺はもともとこうゆう顔なのっ 
 ったく、めんどくせーな」

だって。

「あっそ。」

私は、さっきのヒナタの一言に舞い上がって
いた自分を反省した。

そんなわけないよね。シカマルは私を見て
微笑むような人じゃないわよ。

でも、だからこそ、この写真は価値がある!

だって、だって、この写真さえあれば、私
はいつだって、私を見て微笑むシカマルを
見ることができるじゃない!

私は写真をギュッと胸に抱きしめて、
く〜っとうなった。

そんな私を不信そうに見ていたシカマルは

「ところで、お前が大事に持ってるそれは
 何なんだよ」
と聞いてきた。

ま、まずい!まさか、シカマルと私のツーショット
写真なんかを大事に持ってるなんて、知られたく
ないっ!

「見せろっ」
と私の腕をひっぱるシカマルに、めいいっぱい
抵抗して

「絶対嫌!」

とか言ったら、

「そう言われると、余計気になるっつうの。
 いいから、見せてみろって!」

私は体をまるめて、イヤイヤして、シカマルの
手をはらいのけようとしていたら、

シカマルが、

!いい加減にしねーと 影真似かけんぞっ」

なんて言うから!!!

「なにそれっ! 反則だよ!」

私は興奮して言い返すときに、思わず癖で、片手
を腰に、もう片方の手はシカマルを指差すポーズ
で文句を言ったら・・・・・・




ヒラヒラ〜ヒララララララ〜


ちょうど風が吹いてきて、あっという間に、写真は

土手を越えて、河原の草っぱらまで飛んでいって
しまった。

「あ!」
私もシカマルも呆然と、その光景を眺めていた。







「シカマルのバカーーー!」

「悪かった・・・・・」

今回ばかりはシカマルは本当に反省してるみたい。
けど、怒りがおさまんない!

「見つかるまで、絶対探すもんっ」

「あーー 俺も手伝うから・・・・
んで、あれは何だったんだよ」
シカマルが溜息をつきながら聞いてきた。

「だから、教えないって言ったでしょ。」
私は半べそ状態で答えると、

「あ? ものが分かんなきゃ、探せねーだろっつうの。
 めんどくせーな」
シカマルは頭をかきながらヤレヤレって顔をしてる。

「いいもんっ シカマルなんかに手伝ってもらわなく
 ても一人で探すから!」

私は、意地になって、シカマルからプイッと顔をそら
すと、土手を下って、自分の背丈ほど生い茂った
草をかきわけて、中に入った。

シカマルは何も言わないで、土手の上に座って、
そんな私を見ていた。

ぐすん。ぐすん。

くやしくて涙が出てくる。
この世でたった1枚しかない写真なのに・・・・

草はらに入りこむと、思っていた以上に、生い茂った
草が邪魔をして、先の方なんて何も見えない。

もしかして、もう見つからないかも・・・・

で、でも、あきらめないもん!

私は草をギュムギュムと音をたてながら、
ふみつけて、進んでいった。

草をかきわける度に、私の腕に草の葉がすり傷
を作っていく。

「やめとけって。見つからねーよ。」
土手から声がしたけど、

「絶対見つけてみせるもん!」
私は叫びかえした。

それから2時間ぐらいたっただろうか・・・・
私の息もはぁはぁと苦しくなってきた。

腕も傷だらけ・・・・・

シカマルはきっと、あきれて帰っちゃった
んだろうな・・・・

振り返ってシカマルがいた土手を見上げ
たら、やっぱりそこにはシカマルの姿は
なかった。

わかってたけど、なんか急に悲しくなって、
私は泣き出してしまった。

「シカマルの・・・・・ばか・・・・・」

「誰がバカだって?」

「え?」

いつのまにか、私のところにシカマルが
来てくれていたんだ。

「なんだそりゃ?、腕傷だらけだぞっお前」

「へ、平気だもん。まだ探せる!」

私はまだ強がっていた。

はぁーーーー

シカマルはまた頭を掻いて、溜息をついた。

「そっちは、河に近けーからあぶねーんだよ。
 こっち来い。」

わざわざそれを教える為に、土手をおりて
ここまで来てくれたの?
私はぼーっとシカマルの顔を見ていた。

そんな私にしびれを切らして、

「ほらっ 早くしろっ」

シカマルはこっちに手をのばしてくれた。

「ひ、一人で大丈夫だもん。シカマルなんかに
 頼らないもん」

私は恥ずかしくてまた強がった。

シカマルは

「そうかよ」

ってプイッて後ろを向いて土手の方へ
と歩きだした。

シカマルの背中を見たら、私は
すごくいけない態度をとってしまったって
後悔した。

だから

「待ってよ シカマル!」

私は小走りにシカマルの後を追おうとした。


けど、そこは河に近いこともあって、地面が
ぬかるんでいたらしく、
私は土に足をとられて、

きゃーーーーっ

思いっきり尻餅をついて転んだ。

私の叫び声を聞いて、あわててもどって
きたシカマルは

「まったくドジだな、はよ」

と言った。そしてとっても優しい声で、

「お前が何を無くしたのかは知らねーけどよ。
 まっ なんだ・・・・その根性は立派なんじゃ
 ねーの。褒めてやるよ」


そう言って私の手を掴んで、引き上げて、
立たせてくれた。

「めんどくせーけど、お前が探し飽きるまで、
 付き合ってやっか」


シカマルはそう言って、頬をぽりぽり掻き
ながら、私を見て微笑んでくれた・・・



そう その顔は、あの写真の顔と同じだった。




私の心臓は急にドキドキした。

そうか、そうなんだね。
シカマルはいつだって、私が何かしようとしてる
時、すこし後ろで、微笑んで見守ってくれてる。

決して、安易に手をかしたりしないけど、私が
本当に困っているときは、必ず私の手を握って
くれる・・・・・・

「なんだよ?どうした?

急に黙りこんだ私を心配そうにシカマルが
覗き込む。

私は、私は・・・・・
写真なんかより、ここにいてくれるシカマルが
好き・・・・・・


「シカマル・・・・・・・・・・」


私はシカマルの胸に抱きついた。
なんか涙が出てとまらなかった。

「お、おいっ 
シカマルは初めは驚いたみたい・・・けど、すぐに、
「まったく世話がやけんな。は」
と言って、
私の背中に手を回して、ギューッと抱きしめて
くれた。




。もういいのか?探さなくてよ。」
シカマルはいつまでも泣いている私の背中を
さすりながら、耳元でささやいた。

「うん。もういい。」
と私がシカマルの顔を見上げて言うと、

「なんだよ。それ」
と不思議そうな顔をして、私に、
結局何だったんだ?お前の探し物は?
と聞いてきた。

これ以上秘密にしておくのは悪い気がしたので、
私は正直に言った。

探しものは、私を見て微笑んでいたシカマルの写真
だったって事。
シカマルが私に微笑んでくれてるのを見て、すごく
嬉しかったって事。

私は顔を真っ赤にして教えてあげたのに、

シカマルったら

って、本当バカだよな」
だって。

私はなんだかじれったくて、
「だって!私ばっかりシカマルが好きなんだもん。
シカマルに私の事、もっと好きになってほしいん
だもん」
と言ってしまった。

シカマル・・・顔、赤い。それからシカマルは私から
目をそむけて、

「だから、バカだっつうんだよ」
と言った。

「私が恥ずかしいのを必死で言ったのに、
 バカって何よーー!」

私が真っ赤な顔で抗議すると、
シカマルは急に私の腕をひいて、自分のほうへと
引き寄せた。

私は驚いてシカマルの顔を見上げたら、シカマルの
手が私の頬に触れて、
「俺の方がお前よりずっと好きだっつってんだよ」

え?

シカマルはそう言うと、私の顎をグイッと持ち上げ
て、そっとキスしてくれた。


シカマル・・・・


柔らかくて、優しくて、シカマルがどんなに自分を
大切に想ってくれてるのかが、重なった唇から
伝ってくるような気がした。




このまま、時間が止まってくれたらいいな・・・・・




そっと唇が離れると、なんだか切なくて、私は
シカマルの上着の片口をギュッとつまんだ。

シカマルはそんな私の想いを見透かすように、

「写真なんかより、ここにいる実物の方がいいだろ?」

と、ちょっと意地悪に笑ってみせた。

「そ、だね。」

恥ずかしかったけど、今日は文句言ったりしないよ。
だって、本当にその通りだもん。

めんどくさがりの貴方が私を待ち続けてくれてた・・・
それだけで答えはわかっていたのに。
私はきっとシカマルの言葉で、その行動で、答えを
伝えて欲しかっただけなのかもしれない・・・・・・・

「ほらっ 帰んぞっ」
手をひっぱられて、土手を登る。

「シカマル大好きだよ」
私はシカマルに手をひかれたまま、シカマルの背中に
そう言った。

「あーー 俺もな」


シカマルは振り向いてはくれなかったけど、つないだ
手をぎゅっと握ってくれて。
きっと今シカマルは夕日の先の道を優しく微笑んで
歩いてくれているんだろう。

これから先もずっとずっと
私と一緒に。











後日、キバが私のところにやってきて、

「この間よ、土手を赤丸と散歩してたら見つけたから
 に持ってきてやったぜ」

「あ、あれ?」
それは、この間の写真だった。

そっか、風に吹かれて、土手にもどってきたのか。

のガッつく姿も相変わらずだけどよ、シカマル
 のこの無愛想な顔も相変わらずだよなー」

と言ってキバは笑った。

「え?」

嘘?このシカマルは笑ってるじゃんーーー。
笑ってる・・・・・よね?

もしかして、このシカマルの微妙な顔の変化は私にしか
分からないものなのかしら?
それともやっぱり、私って自意識過剰なの?

難しい顔で写真を見つめる私に、
キバは不思議な顔して問いかける

「ん?どしたんだ??」

「ん?んんんん−−−−」

「な、なんだ?」






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