ぱちん ぱちん



将棋の駒をさす音だけが聞こえてる。



中忍になってからのシカマルはとっても忙しくて、
なかなか会えなくて。

けど、今日は久しぶりにシカマルが休暇をもらっていて、
私は、とても楽しみに会いに来たんだけど・・・・




さっきからずっとこんな調子。



「ねぇ・・・・シカマル・・・・」

「あ?」

こっちを見るわけでもなく、シカマルは将棋板を睨んだまま
心ここにあらずって感じで答えるだけ・・・


「私・・・なんか・・・シカマルを怒らせることした?」
 
「なんで?」

ぱちん ぱちん

相変わらず、私のこと見てもくれない・・・・


「だって・・・・・・・」

でも、続きは言わないことにした・・・だって・・・きっと言っても
何も変わらない気がしたから・・・・


さっきから、私はずっとシカマルの背中を見てる。


あぐらをかいて、将棋板とにらめっこしてるシカマルの丸まった背中。





一緒にいるのに寂しい・・・・・・





私はゆっくりと音をたてないように、シカマルの後ろにいって、
自分の背中をシカマルの背中にくっつけて座った。

シカマルはチラッとこちらを振り向いた。

「・・・重てぇ・・・・・・」

「けち・・・・・・・」


くっつけた背中は温かいのに・・・今日のシカマルは変だよ。




私はたまらず、シカマルの背中に腕をまわして、背中に頬をくっつけて
抱きついた。

「シカマル・・・・・」

将棋を打つ手が止まった。


けど、何も答えてくれないから、私はまわした腕をギュッと強くした。


「痛てぇよ・・・・・バカ・・・・・」

「だって・・・なんで何も言ってくれないの?・・・・・」


しばらく黙ったままだったシカマルが溜息をついた。

はぁ・・・・・・・

「あの・・・・よ・・・・・・」
言いにくそうに、シカマルが呟く。


私は何も言わなかった。


「明日から・・・・俺・・・・・里外の任務にでる・・・・・・」


くっつけた頬から、シカマルの鼓動だけが聞こえている。


「そう・・・・・・」


・・・・」


シカマルの鼓動は少しだけ早くなった。


「シカマルの背中・・・あったかーい。それにさ、シカマルの匂い
 するよぉ」
えへへ。
続きを聞くのがなんだか怖くて、私は笑ってみせた。



「お前さ、いつもそう言うな・・・・俺の匂いか・・・・・」

「うん。 私の大好きな匂いだもん」

へっ シカマルは小さく笑った。

「けどな・・・もう、その匂いってやつも変わっちまうかもな・・・・」
将棋板の一点をじっと見据えてシカマルが言う。

「・・・・・・なんで?」
私の心臓もドキドキと高鳴った。


・・・・・・俺は・・・」

「うん」

私は唾を飲み込んだ。
シカマルはゆっくりと言った。

「俺はな・・・・・きっと任務の為だと割り切って、
 人を殺す・・・これから先・・・・何人も・・な・・・・・・」


私は黙ったままでいた。




ぱちん


「王手だ・・・・・・」
シカマルはゆっくり王の駒を握りしめた。

「いつか、俺は将棋で相手の駒を落とすように、人を殺すことに
 ためらうことも無くなっちまうのかもしれねー・・・・・」

それは自分に言い聞かせているように・・・・シカマルの目は
自分の手のひらを見つめていた。





「シカマル・・・・好きだよ・・・・・」
私はシカマルの背中に頬をくっつけて、さっきより強く、
シカマルを抱き締めた。
だって、そうでもしないとシカマルが目の前から消えてしまい
そうだったから・・・・・


「これからはもう俺の匂いなんかしねーぞ。きっと。
 俺の体は俺が殺してくやつの血の匂いに変わるんだからな・・・・・」


とっても冷静で、とっても悲しげな声・・・・・



「だから・・・・なに?」

シカマル・・・あんたがずっと黙っていた理由が今はわかる・・・・・・

「なぁ・・・・・・・」

だって、シカマルの側にずっといたから・・・シカマルのことなんでも
分かるんだから・・・

「きっとお前は俺といるのが辛くなる・・・・・」

「・・・・・・だから?」

シカマル・・・あんたって人は・・・・・

「俺達・・・・今のうちに・・・別れたほうがいい。」

ほらやっぱり・・・
いつだって、一人で先読みして、いつだって私の答えも聞かずに、
いつだって勝手に一人で決めちゃうんだから・・・・・





「バカ・・・・・!!」

私はシカマルの前に置かれた将棋板を乱暴にどかした。

シカマルは驚くわけでもなく、ただじっと目の前の私を見つめている。
とても冷たくて、悲しくて、寂しそうな目で・・・・


「あのね、シカマル・・・・・私はあんたが好きなの。たとえ私が傷つく
 ことがあったとしても、シカマルを失うことの方がずっと辛いよ・・・・・」

私は必死の思いでシカマルの顔を見つめた。

「だから私、シカマルと別れないっ 」




シカマルは へっ とうっすら笑った。




「お前は何も分かってねーーー」

「どうして?」
なんでそんな風に言うの・・・・・・・・


「人を殺めた手でお前に触るんだぞ?」

「そんなの・・・・・平気・・・・・・」
なんでだろう・・・・シカマルがぼやけて見えるよ・・・・


「任務の帰りには、血まみれで薄汚れて帰ってくんだぞ?」

「私が・・・・私が洗って流してあげるよ・・・・・」
なんでかな?涙が止まらないよ・・・・・


「人を何のためらいも無く殺すような男に抱かれて、お前平気かよ?」

「平気じゃないよ!」


シカマルの目が見開かれた。


「シカマルは人を平気で殺せる人なんかじゃない!きっと誰より
傷ついて帰ってくるでしょ?だから私がシカマルを抱き締めてあげる!
 傷ついて穴の開いたシカマルの心を私が埋めてあげるから・・・・・」


私はシカマルの首に腕をからめて、わーーーーーーっと泣いた。




バカだよシカマルは!
めんどくせーって言いながら、
いつだって、一人で一番重い荷物を背負っていっちゃうんだから・・・・

私をかばって・・・・・・私の為に・・・・・・私を置いて・・・・・・・


それが私にとってどんなに辛いことか全然分かってないんだから・・・・・



シカマルは優しい。でも、それは時折、私を痛いほど苦しめてること、
あなた分かってる?



悔しくて、悲しくて、涙が止まらなかった。


(私はどんなにボロボロになったって、シカマルのそばにいられれば
   それでいいんだよ・・・・・・)




シカマルの細くて、でもガッシリした腕がゆっくりと私の体に
まきついて・・・・ギュッと抱き締められた。


「泣いてんな・・・・バカ・・・・・・」

「変なこと言うな・・・・バカ・・・・・・」
私は鼻をぐすんとすすった。

くっとシカマルは笑った。


「お前、相当もの好きだな・・・」

「ふーーんだ・・・・・」
シカマルの腕がもっと強く私を抱き締めて、

「その返事・・・・もう変えさせねーぞ」

耳元で低く響いたシカマルの言葉。

「女に二言は無いよっ」

「言ってくれんじゃねーか」



2人でやっと目が合って、今日はじめてのキスをした。


「もう!やっとキスしてくれたーーー!遅いよ!もうっ」
シカマルの胸を叩く。

「あーーーー やっぱキスだけじゃ足りねーか」


「え?」





そのまま後ろに押し倒されて、シカマルともう一度キスをする。
絡めた舌から熱い吐息と一緒に、熱い熱い想いが伝わってくる。


「もう不安にさせないで・・・・」

「あぁ・・・・一生俺の側にいろよっ」

「う・・・ん」


シカマルにゆっくり服を脱がされて、優しく抱きしめられて、
見つめ合って、何度もキスを繰り返す。
大好きだから、離れない。
愛してるから、離さない。

これからも、ずっとずっと一緒にいるよって誓うよ・・・・


私の体を伝う、シカマルの手。
ときおり強められて、握られるたびに、反応する私の体。
シカマルの背中にたてる爪、優しく撫でられる私の髪。
熱くて溶けていく感じ。

もっともっと・・・と私の体が懇願する。
シカマルの舌は優しく私の体を這って、欲っしている体
の奥まで探しあてる。

足りないの・・・・もっと・・・足の先から頭の先まで悲鳴の
ような声をあげる私の体。

シカマルはその声を埋めるように、私を抱き締めていく。

「シカマル・・・シカマル・・・・」
うわごとのように繰り返す名前。

愛する人が消えてしまうような不安にかられる。
ギュッと閉じられた瞳から涙がいくつも流れ落ちた。



「大丈夫だ。ここにいんだろ?」
耳元の優しい声で私は確認する。

あぁ・・・シカマルはここにいる。
そして私もここに確かに存在しているのだと。



・・・好きだ。もう絶対離さねーぞ。」
「うん・・・愛してるよシカマル・・・」


ゆっくりと繋って、言葉では足りない想いが、長く激しい律動と
ともに私へと吐き出される。
体の奥に届く熱い熱い感触。

愛する気持ちが一つになって、心にできた穴を埋めていく。
気持ちと体・・・両方あって満たされていく。

       「シカマル・・・」「・・・・・・」


どんなことがあっても お前を
           あなたを    離さない・・・・


たとえ、お互い側にいる事で傷が増えたとしても、
2人一緒にいられるなら構わない。
たとえ、深い闇に落ちたとしても、
2人手を握っていられるなら怖くなんかない。

あなたが壊れそうに震える夜は、私が毛布になってずっと
温めてあげる。

お前が傷ついて怯える夜は、俺が盾になってずっと
抱き締めてやるよ。

2人一緒なら、きっと乗り越えていける・・・・

だから約束だよ・・・・これからも、ずっと・・・一緒にいよう・・・・






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