パチンッパチンッ


「ねぇシカマル・・・」


「ふあぁ〜あ。・・あ?」


あくびしながらシカマルは眠たそうな目でこちらを振り返る。


「爪切りながら寝ないでね?あぶないよ」

「へいへい。わぁーってるよっ・・・けどマジ眠みぃ・・・ふあぁ・・・」



ソファーの背もたれにどさりと背中をあずけて、シカマルは爪きりを握り締めたまま
大きなあくびをした。


「もうっ」



洗い物はまだ途中だけど、テレビもつけたまま、うたた寝でも初めてしまいそうな
シカマルの姿が心配で、私はまだ洗剤のついたままのお皿を流しにそっと置いて、
ソファーに近づいた。


「大丈夫?」


顔を覗いたら・・・



「なぁ・・・・・・やってくんね?」



半分閉じかけた目でシカマルは無防備に足を広げて、私をチョイチョイと手招きした。


どうやら、爪を切って欲しいらしい。





自分の爪以外切ったことなんてないから、ちょっと心配だけど、
今日はシカマルは任務で疲れてるみたいだし・・・




「しょうがないなぁ・・・いいよ。」


私は眠そうなシカマルにニコリと笑いかけた。



「ありがとよっ」




きゃっ



そしたら突然、手首をギュッとつかまれて、どさりとシカマルの足の間のソファーに座らされた。





何この体勢//////




「もしかして/////ここで切るの?////////」



「なんだよ?不満か?」



シカマルは私の後ろでちょっと意地悪に聞いた。



「そうじゃないけど・・・///////」



ソファーに座ったシカマルの体の前に、チョコリと座らされた自分が
すっごく恥ずかしかった。




「あ?この方がお前も切りやすいだろ?」


シカマルは平然と答える。



「で、でもさぁ///////」


「んじゃ、後はよろしく・・・な?」



シカマルは私を後ろから抱きしめるみたいに、両手を私の体の前に突き出した。
なんか、こうゆうの照れるよ。
だって・・・せ、背中にさぁ・・・・



「早くやって?・・・・ふあぁぁ・・・」



シカマルの言葉とあくびから漏れる吐息が私の首元にあたる。



「う・・・うん////////」


なんだかくすぐったい///////
シカマルと一緒に暮らし初めて、いつだって私とシカマルは一番近くにいるけれど、
何気ない事でもまだすっごく恥ずかしかったりする。


シカマルの右手に握られていた爪きりをそっと受け取ると、シカマルは後ろでくくくっと
笑った。


「な、なぁに?///////」


私は振り向かないで、そっと聞いた。
だって今、私の頬まできっと真っ赤で・・・そんな顔見られるのが恥ずかしいんだもん/////



「別にっ・・・かわいいなぁと思って・・・よっ」


「な///////////な////////////なにがよぉぉっ」


そんなこと言われたら、もう耳まで赤くなるっ!!!



「なんでお前こんなんが恥ずかしいんだよっ・・・くくく」


照れてることはバレバレで・・・シカマルは堪えきれないのか、肩を揺らして
笑うから、密着した私の体までシカマルの笑う体に合わせて小刻みに揺れた。



「笑わないでよっ シカマルのバカ////////もう切ってやんないからっ!!////////」



振り向かないまま、私は耳まで真っ赤になった顔を膨らませて怒った声を出した。
だって、シカマルはすぐ私のことからかうんだからっ!!!嫌いっ



「悪かった悪かった・・・だってよぉ・・・・」



シカマルの両手が ギュッ と私を後ろから抱きしめて、顔が耳元に近づく。
そして、いつもより低い声がそっと囁く。





「俺達、もっとすごいことしてる仲なんじゃねぇのか? なぁ・・・。」







ギョッ//////////





(な、な、な、なんてことを言うのよっ!!///////////)



もう恥ずかしくて、これ以上耐え切れないっ!!!
私は思わず思いっきり後ろのシカマルを振り返った。




「そ、そういう事///////平然と言わないでよっ!!!//////バ、バカぁぁ!!!/////」



こっちはもう恥ずかしくていっぱいいっぱいなのにっ




「なんで?嘘じゃねぇだろ?毎晩、俺の背中にしがみついて、爪たててくれてんのは、
 どこのどいつだよ。」」


シカマルは涼しい顔で私を半分閉じかけたような目で見つめている。





ギョッ///////////





また・・そ、そういう事を言う////////(怒
しかも、その顔・・・・そういう話しに弱いこと知ってて、私のこと完全にからかってるでしょ?(怒
シカマルのバカ!!!もう頭くるっ!!!






「そ、そりゃ私達は親公認で付き合ってて、同棲までしてて、ちゃんと、男と女の深い関係だけどさ!!
 だからって、そういうのをはっきり言うのって・・・・って・・・あっ///あれ?・・・・/////」





ちょっと怒ってやろうと思ってたのに、なんだか言ってる自分の方がすっごく恥ずかしくなってきて、
それ以上は何も言えなくて、私はまっかっかの顔で口をパクパクしていた。




「あははは。お前の方がすごい事言ってんじゃねぇか? そういう事はっきり言うなよっ あはははっ 
 超バカっ 本当お前ってマジ笑えるよっ」





目の前で本気で笑ってる・・・シカマルの意地悪!!!




「ううう/////もう知らないっ////」




くるりと前を向いた。
だって、私ばっかりドキドキしたり、照れたりしてて、恥ずかしいよっ
シカマルはいっつもからかってばっかりっ!!!



「くくく・・・本当・・・超バカでかわいいね・・・お前」


「うるさいっ///////」


(嬉しくないもんっ/////まだ笑ってるし!!!しかも、そんな褒められ方なんかっ!!)


なのに、なのに、言葉とは裏腹にシカマルにかわいいとか言われるだけで、やっぱり私は真っ赤になっちゃうんだよ。
本当、私って超バカだよね。








「くくくっ・・・いいからっ・・・早くやってくれって」


シカマルは笑いをこらえながら、私の右肩におでこをコツンと置いて、手をグイッと突き出した。


「わ、分かったわよ/////////」




まだドキドキしたままだけど、この状況で逃げられないし、仕方ないっ。
私はシカマルの左手をとって自分の顔に近づけた。








(こんなにも近くでシカマルの手をマジマジと見るのは初めてかも・・・)

ドキドキしながらそっと握る。



「くすぐってぇ。」



後ろから、ちょっとぶっきらぼうな言葉が返ってきた。


「仕方ないでしょっ//////爪切るんだもんっ 我慢してっ」

「分かった。分かった。めんどくせぇからチャっチャカやってくれっ」

「うん」







でも・・・私はなんだかその手に釘付け。



だって・・・


シカマルの手・・・あったかい。


それに・・・


その手は思いのほか大きく感じた。
私の手と比べたら、すっぽりと隠れてしまうぐらい大きな手のひらが、やけに男らしくて・・・/////






「無駄に大きいよね・・・シカマルの手」




ちょっと意地悪に言ってみた。
さっきのお返しだよ。
もちろんそれは照れ隠しだけどねっ///////





「うるせぇ。・・・つうか・・・お前が小せぇんだっ」




シカマルは私の手を上からギュッと握る。




そしたら、やっぱりね//////
私の手はシカマルの手ですっぽりと見えなくなった。




それだけで、やっぱり私はまたドキドキしちゃうんだよ。





普段はそっけないくせに、誰もいなくなったのを確認してから、そっと握ってくれるその手。
不安になって泣きそうになると、言葉の変わりにいっぱい想いを込めてギュッって握ってくれるその手。
任務で敵の攻撃から守ってくれる時も、私はその手に何度も体を抱き寄せてもらった。
・・・・・Hする時も、壊れそうな私を体ごと抱きしめてくれるのは・・・この手だ。




色々思い出すだけで、シカマルの手がすっごく愛しく感じるよ////////




その時、シカマルは私の手をすっぽりと包んだまま、指を絡めてきた。




「本当・・・小せぇ手だな・・・」



シカマルの長い指が私の指の間に体温を重ねる。
指の神経がおかしいぐらいに敏感になっちゃうよ。



両手を握られたまま、後ろからシカマルは私の頬に チュッ とキスをした。




「シ、シカマル/////////」



言葉にされるより、ずっと『好きだ』って気持ちが伝わってくるみたいで/////////
大事にしてくれてるのが分かって、なんかたまんないっ///////



「なんだよ」


耳のふちにも優しくキスされた。
握られた手には力を込められる。




でも・・・・この展開はっ!!!///////////



「だ、だめだよっシカマル!! つ、爪・・・切るんだからねっ////////」


だって、嬉しいけど、やっぱりこんなとこで恥ずかしいし。







「はぁ・・・つれねぇな・・・・・・・・・分かったよ。」




シカマルは握り締めた私の手をパッと離した。
それに、ちょっとぶっきらぼうな声。



私が次の行為をとめちゃったからかな?



『でも、本当は嬉しかったんだよ?』



なんて、今更いえない。












シカマルは諦めたのか、それからは、何もしなかった。






ホッ としたのか、残念なのか、なんか複雑な気持ちになっちゃう自分て何?/////////









それから、離された大きな手をもう一度今度は私が爪を切るために握る。





シカマルの手・・・指も・・・長いなぁ。
手先が器用・・・見ただけで想像つくようなしなやかな指。

だけど、間接がゴツゴツしてる。

男の人の手って・・・みんなこんなに頼もしいのかな?////////






シカマルはあまり几帳面では無いけれど、いつだって爪だけは、深爪じゃない?ってくらい
きちんと切りそろえてある。
それがちょっと不思議だった。




「シカマルってさ、めんどくさがりのくせに、爪切りだけはマメだね?」



「まぁ・・切んのはめんどくせぇけどよ・・・伸びてっと何するにも邪魔でその方がいちいち
 めんどくせぇからよ・・・・」



肩ごしに、答えるのもめんどくさそうな声が返ってきた。



「そうだね。」


ぷぷぷ。
ちょっと笑っちゃった。
だって、その答えもなんかシカマルらしいよ。





「なぁ・・・どうでもいいけどよ。そんなに俺の手なんか見てて、お前おもしろい訳?」


背中ごしに退屈そうな声が聞こえた。





(そっか・・・私、ちょっと見すぎ///////でも・・・・・)




「////うん。おもしろいよ///////」



だって、シカマルの手はいつだって私を安心させてくれるんだもんっ
どれだけ見てたって飽きないよ。



「まぁ・・・別にいんだけどよ・・・・ふあぁ」



シカマルのあくびが頭の後ろで響いた。



(そうだよね。ついシカマルの手にみとれちゃって・・・・私ったらっ//////)








「ご、ごめんごめん。じゃぁ切るよぉ」


「あーはいはい。」




















パチンッ パチンッ




右手の親指からゆっくりと切りそろえていく。



シカマルの爪・・・


形もね・・なんか妬けちゃうほど綺麗。
縦長で血色のいいピンクで。



「・・・マニキュア似合いそう・・・」


「・・・・塗んなよ・・・・」


「えぇぇっ 塗りたいなぁっ////////」


「忍法 影首縛りの・・・」


「嘘です。」





ぷっ




お互いにちょっと笑ってしまった。













パチンッ パチンッ






親指はまだ大きいから切りやすいんだけどさぁ・・・・
他の爪はやっぱり切りづらいっ!!!




「あぁ緊張するよぉっ」

「なんで?」





能天気にそんな事言うけどさぁ・・・



「だって、人の爪なんて切ったことないもんっ」


シカマルの指をギュッと握って、思いっきり目を近づけて真剣に切っていく。


「力入りすぎじゃねぇか?適当に切ってくれりゃぁいいんだぜ?」


「だってっ 気を抜いたら変なとこまで切っちゃいそうなんだもんっ」


「大丈夫だって。いくらお前が不器用でも、爪ぐらい切れっだろ?」


「うるさいっ 集中してるんだから話しかけないでよっ!!!」


「へいへい。」



いくら後ろから手をまわしてもらっていて、自分の爪を切るのと変わらない状況だからって、
所詮、痛みも感じないし、どの程度切ったらいいのかなんてよくわかんないっ







「痛てっ」

私の肩越しにシカマルの体が強張った。


「ご、ごめんね///////」


あわててシカマルの指先を確認する。
注意して切ってたのにっ もしかして、爪の内側の肉まで切っちゃった?
もの凄くあせってたのにっ


「嘘。」











シーーーーーーーーーーーーーーーン




くくく。


また背中から小刻みに揺れるんですけど・・・・










「シカマル・・・本当に思いっきり深爪していい?」

「勘弁してくれ・・・・俺が悪かった・・・。」

「よろしい」




ぷっ











パチンッ パチンッ





ゆっくりと、丁寧に形にそって切っていく。
何本か切ってたら、いくら不器用な私でもだんだん慣れてきた。



「・・・いい感じじゃねぇか」


「でしょ?////////」



褒められてちょっといい気分。




「ふあぁぁあ」


「今寝ないでね・・・・」


「なんで?」


「寝てる間に肉まで切っちゃいそう・・・・」


「こえっ・・・」

















パチンッ パチンッ






「なぁ・・・

そっとささやくような声がする。
突然だから、ビクッと体が反応しちゃう。


「//////なぁに?」


集中がとぎれちゃうじゃないっ


「・・・・んーーーーー・・・お前とこんな近くでくっついてたらよ・・・我慢できそうもねぇな・・・」


「へ?/////////」


「さっきは『おあずけ』されたしなぁ?」




横からチラリと顔を覗かれる。




「今度は拒否んなよ」


耳の後ろを ぺろり と舐められた。


「きゃっ//////シ、シカマル!!//////」



思わず掴んでいた手の甲をつねった。



「冗談だって・・・両手ふさがってっから、どうせなんもできねぇよ。」



シカマルは私の首元におでこをコツンとぶつけた。



「残念でしたーーっ」



ふん なんて笑ってみたけど、本当はドキドキだよ/////




「ほんと・・・残念だな・・・・ふあぁぁぁぁ。あぁ・・・眠ぃ。」



私の頭の後ろで本気のあくび。
きっと大口開けて、マヌケな顔してるにきまってるんだから!!!








(まったくさ//////シカマルって本気なのか冗談なのか全然わかんないっ////////)














パチンッ  パチンッ







それからも何度か背中にシカマルのあくびの声を聞いた。









パチンッ パチンッ



部屋に響く爪を切る小気味いい音。














その音と一緒に私の背中には規則正しい別の音。





すーーすーーー





(やっぱり寝てる・・・・)




「他人に任せてよく寝れるよ・・・まったくもう///////」



安心しきって私の肩に頭をあずけて眠ってしまったシカマル。





すーーすーーー




優しいシカマルの寝息は心地よいリズムを刻んでいる。
その体温は私の首元から背中に・・・そして心までジーーンと温めてくれる感じがした。







「ねぇ・・・私だからそんなに安心して寝てくれるの?だったら嬉しいな・・・」





いったん爪きりを置いて、私はシカマルのごつごつと血管の浮き出た手の甲を撫でた。


あったかい。


そっと自分の指と絡めてみる。



(やっぱりこの繋ぎ方が一番好き/////////)



それは、いつも任務の帰りに、いのやチョウジと別れてから、そっと手を繋ぎ合って絡める指と同じ。






「起きないよね?シカマル。」



シカマルからのは拒否っておきながら、彼が寝ているのをいいことに、私はシカマルの手を
指を絡めたままギュッと握った。


だって、もう少しこうしてたい。
あったかくて、大きくて頼もしくて・・・シカマルの手・・・本当は大好きなんだもんっ/////




でもきっと、シカマルが起きていたら恥ずかしくて自分からこんなこと出来ないっ








すーーすーーーーー






気持ち良さそうなシカマルの寝息。



シカマルの手と絡めながら、私はぼんやりと思い出していた。






















その朝はめずらしく夢の内容をはっきりと覚えていた。




『ねぇねぇシカマル!!今日ね、すっごくいい夢見たよvv』


私は洗面所で歯磨きをしているシカマルのパジャマの背中をひっぱった。


『ふうん。どんな?』


シカマルはあんまり興味なさそうに、そのままボーッと鏡の前で突っ立って、歯ブラシに歯磨き粉を
のそっと出していた。



『シカマルといつもの土手で寝っころがって空見てる夢だよ///////』




そんな態度も無視して、私はなんだか弾むようなこの気持ちをシカマルにぶつけた。



『気持ちよかったなぁ・・・シカマルも私の隣で幸せそうに寝てたんだよvv』



シャコシャコと歯磨きしたままシカマルは何も言わずに私の顔を横目でチラリと見た。




『最近さ、シカマル忙しいし・・・一緒に雲見る暇もないもんね・・・』



それは本当で・・・お互い下忍だった頃はしょっちゅうあの土手で二人で昼寝してたのに、
最近は土手どころか、シカマルにはゆっくりと空を見上げる時間も無い気がする。




『・・・・』




ガラガラ・・・ぺっ
無造作にうがいをするシカマル。




『ねぇ・・・シカマルはさ、いつもどんな夢見てるの?』



シカマルは思い出そうとしているのか、タオルで口を拭いて、ちょっと上を見てから、頭をガリガリと掻いた。




『覚えてねぇな・・・・』



『え?』




(シカマルだったらいつだって、のほほんとした穏やかな夢でも見てるんだと思ってたのに・・・・)



『昔はよく見てたんだけどよ・・・』


『?』


『中忍になってから、夢も見なくなったな・・・まぁ・・・夢見ると疲れっからいいんだけどよ』



そう言って、 へっ なんて笑うシカマルを見ていると、私の胸はいつもチクリと痛んだ。




責任という重い荷物が、ゆっくりと流れていたシカマルの時間をその大きな背中ごと押し潰して
しまいそうで・・

私はそんなシカマルの隣でいつも不安に思っていた。




『シカマル・・・・』



なんて言ってあげていいのかも分かんないっ
でも、こんなに近くにいるのに、もしかしたら私はシカマルの何の役にも立ってないんじゃないかって
すっごく切なくなる。 

思わずシカマルのパジャマの裾をギュッと握った。





『バーカ。なんつう顔してんだよ?』



シカマルは泣きそうな私をすごく穏やかな顔で見下ろす。
そして、頬をムギュッとつままれた。




『だって・・・・・』


『中忍って仕事が俺にむいてるかって言われりゃよ・・・俺自身もよく分かんねぇ。・・・けど・・・  
 仲間を守れるっつうのは・・・悪い立場じゃねぇぜ?』


『シカマル・・・・』






いつだって、私の不安を見透かして、私が求める言葉を先読みして、シカマルは私に安心させるような
言葉をくれるんだよ。





『まっ・・・めんどせぇ仕事もいっぱいあっけどな・・・・』




へへっ




シカマルは私の頭をポンポンと叩いて笑った。




シカマルがいつも優しいから・・・頭を叩くその大きな手がすっごく温かいから、余計に胸がジンジンする。





『シカマル・・・私、シカマルの為に何してあげたらいいの?』




こんなことを聞いてしまう私は本当にバカだって思う。
だけど、もうどうしようもなく切ないの。
私達一緒に暮らし初めて、私は誰よりシカマルの近くにいるはずなのにっ









『うん?』




(なんでも言って欲しい・・・今ならどんな我侭だって聞いてあげられる気がするよ)





でも・・・・



『お前は・・・・ずっと俺のそばにいてくれりゃぁそれでいい。』


『え?・・・』





優しい目はじっと私を見ていた。
他の何もうつらないぐらいじっと私だけを。





その言葉は冗談なんかじゃなくて、慰めなんかじゃなくて。
シカマルの本心なんだって・・・


私には分かるから・・・・







『ずっと一緒に・・・いてくれ』


『・・・・・・・・うん/////////』










シカマルは私を抱き寄せる。

力が強いから、思わずよろけて、私の手が置いてあったプラスチックのコップにあたって、

カランッ と大きな音をたてて、コップは勢い良く洗面所に落ちた。


『あっ//////』


その音に思わず気をとられる私の頬を、シカマルの大きな手がグッと引き寄せて、目の前に
近づいた顔。シカマルと鼻先どうしが触れ合った。


『え?///////』

『いいからっ お前は俺だけ見てろ』


少し強引にキスされる。



はぁ・・

小さく吐息が漏れて、唇が離れても、お互いに体を離すことが出来なくて、シカマルが大好きで、
私はまだすぐ近くにあるシカマルの頬に手をあてて自分からキスする。

『『///////』


それからは、どっちからかなんて分かんない。
離れては引き合って、二人、何度も何度もキスをする。


重なり合った私達の姿が洗面所のぼやけた鏡にうつってる。


シカマルの左の手の指が私の髪をからめて、右手が腰を抱きよせて。
私はシカマルの背中にしがみついて。


私達は夢中でキスする。






(もう・・・何もいらない・・・シカマルがいてくれたら・・・私の目には他には何もうつらないよ)






何度も絡まるシカマルの舌から、少し苦い歯磨き粉のミントの味がした。













キスし終わったら、普段と一緒///////



『朝から・・・やめてくんねぇ?・・・俺、これから任務だっつうのっ』

『だって、シカマルからしたもん/////』

『お前が誘ったろ?』

『ちがーーうっ//////』




ペシッ

手加減してくれる優しい指先で、デコピンされた。



でも、なんだか恥ずかしくて、


『痛ぃぃっ シカマルのバカーーーー//////』

『うっせぇ。超バカ』
ニシシッ

意地悪に笑うのは照れてるだけだって、ちゃんと分かってるんだから・・・・
















いつも私を満たしてくれるのはシカマルだ。
私も少しはシカマルの心を癒せる存在になれてる?


シカマル・・・大好きだよ//////


シカマルの為ならどんなことだってしてあげたい。
いつだってそう思ってるよ。





















「今だけは・・いい夢見てね」


私はシカマルを起こさないようにそっと小声で呟いた。








パチンッ パチンッ












「出来た・・・」



シカマルの右手と左手をそっと自分の座った腿の上に置く。





すーーーすーーー




背中からはまだぐっすりと眠っている様子で、寝息が響いていた。





私はそっと体を後ろに向けて、私にもたれかかったシカマルの体を抱きしめる。



そのままソファーに横にさせてあげるつもりだった。







でも・・・・・




「きゃっ 重いぃぃぃっ」


細身の体だけど、やっぱり背の高いシカマルの体はすっごく重くて、私は支えきれなくて、
座ったままシカマルを抱きしめて身動きが取れなくなっていた。




・・・」

「シ、シカマルねぇ。重いよ起きて?」


急に名前を呼ぶから起きてるって思うじゃない?




「・・・・・・・・」


すーーーすーーーー




(お、起きてないよぉぉぉっ!!!)







「シカマルっ いやっ きゃーー」




結局、支えられなかった体は、私の体を巻き込んでソファーにドスンと倒れ込んだ。







「すーーーーーーーーすーーーーーーー」



シカマルはそれでも起きてないみたいっ


「ま・・・いいけどさ///////」


この体勢はなんかちょっとヤバい感じだし・・・シカマルが寝てる間にそっと抜けでて、
お皿洗おうっと・・・///////

シカマルの体が密着してて、覆い被さってて、彼女としては・・色々と思い出してしまう
このヤバイ体勢をどうにか抜け出したかった。

だって、シカマルは完全に寝てるのに勝手にドキドキしちゃう私って・・・なんか
恥ずかしい////////





「よいしょっ あ、あれ?//////」

力を入れても体が動かない。



いつの間にかガッチリと抱きかかえられた私の体はシカマルの体の下で固まってしまった。



ドクドクドク


シカマルの心臓の音が私のと重なる。






「シカマル・・・」





シカマルの心音が私の体をかけめぐって、私の心臓までドキドキと大きくさせる。

あぁ・・・なんだか胸がいっぱいになるっ

私はまだ自由のきく両手をシカマルの背中にまわして、ギュッと力いっぱい抱きしめた。




さっきよりもっと大きくシカマルの心臓の音が伝わってくる。




なんでだろう?
なんだか泣きたくなってきた。
生きて、こんな近くにシカマルが居てくれる事がすごく幸せで、嬉しくて・・・



(私もやっぱり、シカマルがそばにいてくれたら・・・・それだけでいい。)



私達は忍びだから、命の保障なんて無い。
そんな過酷な条件の中で必死で生きてる私達だから、こんなありふれた日常の一コマでも、
こんなに幸せなんだよね・・・・






「ずっとこうしてたいよ・・シカマル」





私の顔の脇にシカマルの手。




私はそっとその手をとって口元にあてた。



さっき私が切りそろえたばかりの爪・・・綺麗な指先をそっと舐めてみる。



そして、指にも、大きな手の平にも甲にもキスした。









「大好き・・・シカマル」






















「なぁにしてんだよ?・・・・・」






ギョッ/////////





きゃーーーーっ///////
バレちゃった?
今の言葉も全部聞かれちゃったの?


すっごく恥ずかしくて////////




だけどシカマルは・・・・





「へぇ・・・そうか。・・・こういうのが好きなのお前」














へ?













さっきまで私の体に覆い被さっていた大きな体がゆっくりと剥がれて、寝ていたはずの
シカマルは私の上でニシシと笑っていた。





「ベットよりこういう狭いソファーの方がいいってわけか?」


「な、なに? お、起きたの?シカマル」


なんか焦ってしどろもどろ。


「つうか目ぇ覚ましたら、お前が俺に必死で抱きついてたんだろ?しかも、俺のこと誘ってるしな?」


「さ、誘ってないっ!!」









「指って感じんだけど・・・・」


///////やっぱり起きてたんだっ//////////
細めた目は・・・・またからかわれてる?私。


「/////////ち、違うよぉぉ//////あ、あれはっ」



さっきシカマルの手にキスしたりしてたのは、なんだかシカマルが愛しくて、
純粋にシカマルがこんなに近くにいてくれる事が嬉しくて・・・だから思わずっ///////



「いいよもう。めんどくせぇ。俺、もうヤバイからよっ」

「え?え?///なに?///」

「お前のせいだからなっ 責任とれってぇの!」





そこはあんまり動いたら下に転げ落ちそうなほど狭いソファーの上だから・・・
グイッと肩を抱き寄せられて、シカマルの手は私の手をギュッと握り締めた。







「しっかり掴まえてやっとかねぇと落ちちまうもんな?」


へっ と笑うシカマル。


「嘘?・・・またからかってるの?」


「からかう?・・・んな、めんどくせぇことすっかよっ さっきからお前に焦らされてばっかでよっ
 いい加減、俺ももう我慢できねぇっつうの」


シカマルは眉間にシワを寄せた。


「本気?/////」


「冗談に見えるか?」


「ううううう//////////」




シカマルの手におさえつけられたら身動き取れないよっ//////





「良く切れてんじゃね?・・・上出来っ」


シカマルは私の手を押さえつけたまま自分の爪を見て、そっと呟いた。



「だ、だって、一生懸命切ったもんっ//////」


そんなことよりこの状況が恥ずかしくて、私はすでに真っ赤な顔をしていた。






「んじゃよ・・・さっきの続きしてみ?」





シカマルのしなやかな指が私の唇をなぞる。
その指は私の口元に押し付けられた。だから私はそっとその指先をくわえた。



「意地悪///////」


こんなこと本当は恥ずかしいんだからねっ//////





そしてふと・・・まさか・・・ね?
思わず悟ってしまったっ
シカマルの得意な能力って・・・・先読み・・・・・!?








「ねぇ・・・まさかこの為に爪切らせたの?」


「そうだって言ったら?」


「嘘?」


「さぁ・・・どうだかな?」










「シカマルーーーーー////////」









シカマルはニシシと笑った。






冗談ばっかり言って、いつもからかわれるけど、それでも、私はシカマルが好きなの。
本当、どこまでバカなんだろ?私。



だけど・・・




・・・・ずっと一緒にいような」

「うん//////」



その愛しい言葉を聞いてしまったら、私の体はシカマルの命令に逆らえない。






「今度こそ・・・マジいい?」


「うん///いいよ////」


「上出来・・・」


シカマルはまるで子供みたいに ニッ と笑った。





切りそろえられた爪と、大きな手のひらが狭いソファーの上でドキドキしたままの私を そっと抱き寄せる-------------------------------























その後は・・・・シカマルと私だけの内緒の話し。






だけど、ねぇ・・・これからは注意しなきゃね?






爪を切らされたらその後は・・・・・・・・・・・vv























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