教室から、外が見える。


終礼のチャイムがなって、みんなが一斉に教室から出ていった。


「あれ?帰んないの?」


かばんを抱えて、教室を出ようとしたいのが私の席を振り帰る。


「うーーん。もうちょっと・・・・」


「あっそ。んじゃお先〜」


片手をあげて、いのは教室を出ていった。


「はぁ・・・・」


私は?っていうと・・・
出遅れたって感じ?


っていうか、気乗りしなくて・・・・




机にうつぶして窓の外を見る。




だって・・・雨なんだもん・・・







梅雨空のじめじめした雨。
涼しい風を運んでくれるならまだしも・・・降るたびに、じんわりと汗が出るあの
不快感。

「梅雨って最悪・・・・」





はぁ・・・・・・






誰もいなくなった教室に響く私のため息。













でも、私がこんな気持ちになっちゃうのには、別の理由もある。






(・・・今日は・・・いないんだもんね・・・・)







「あたしより・・・・友達なんだからっ・・・・バカッ」








しばらく、ぼんやりと窓にあたる薄い雨粒を見ていた。
サラサラと窓を流れる雨。

いくつもいくつも落ちてくる。

バカみたい。私までなんだか泣きたくなるよ。










しばらく経って、今はもう、まばらになった傘の花を上から見下ろす。




「そろそろ・・・帰ろっかな・・・・」





ため息をついて、ふと玄関に目をやると・・・・








ポケットに手をつっこんで、ぼーーーっと空を見上げて、つったっている男の子。






「え?なんで・・・いるの?//////」




わたしの心臓はドキドキと高鳴る。



だって今日は、友達とゲーセン寄ってくから先に帰れって・・・
そう言ってたのにっ



でも・・・



めんどくさがりの彼のこと・・・
外が雨だと知って、行くのもめんどうになったのかな?




さっきまでのじめじめした憂鬱感は一瞬で消えてしまった。


(早く私も帰ろう!!)












駆け出しながら、机に置いたかばんをひったくるように持って、私は転げるように教室を出て、廊下を走った。



(携帯、鳴らしてくれたらいいのにっ!)



でも、そんな事してくれるほどマメな彼じゃないことも充分分かってる。



だから、私が急がなきゃダメなんだよね!!





間に合うかな?
まだいるかな?




いつもの廊下がすごく長く感じる。




ワクワクする気持ち。
なんかもう爆発しそう!!










だけど・・・






「あれ?。お前、何やってんの?」





反対方向から、思わぬ声をかけられて、私はあわてて立ち止まって振り返る。





「あれ?キ、キバ?・・・どうしたの?」



キバは彼と今日遊びに行くはずだった仲間の一人。




「あぁ・・・ちょっとな。呼び出しくらっちまってよっ」

ばつが悪そうに頭をかく。



「なに?それで、今日はやめたんだ。」


「んーーー。まぁそういう事もある。」


腕組みして、なんか偉そうな態度。
威張るとこじゃないって・・・・キバ。



「どうせまた漫画でも持ってきてたんでしょー。」


それはいつものこと。
私は あはは と笑った。


「ちげーよ。エロ本」


「え////////////」


(な、何それ!!///////)


なんでこの人ってこうもハッキリ言うんだろ///////
仮にも私・・・女の子なんですけどっ


「まさか見つかるとはなぁ・・・ばっちり鞄に細工してあったんだけどよぉ・・・」

「バカ///////」

「イルカ先生、時々するどくねぇ?まぁ返してもらえたからいいんだけどよ」


かはは。
なんでもないように笑うキバ。


「よ、良くないよぉぉ////////そんなの持ってくるなんて・・!!////イルカ先生甘過ぎ!!//」

「うるせぇ。なんなら、シカマルに貸してやってもいいぜ?あいつも欲求不満だろーからなっ」


ニシシと笑って顔を覗かれる。


「なにそれ!!そんなの見せないで/////////っていうかシカマルは見ないから!!//////////」


キバに彼の名前を出されるだけでドキドキしちゃうじゃないっ!!
しかもエロ本って・・・



「お前分かっちゃねぇ。シカマルも俺と同じ男だぜ?」


ふふん。


(何?その意味深な笑い?)



わかってるっ
わかってるわよ!私だって・・・シカマルは男の子なんだって・・・
最近は、特にそう感じてしまって、私一人勝手にドキドキしてるんだから///////






シカマルと付き合って3カ月。

そういう関係には程遠い私達だけど、やっぱり私だってシカマルの事大好きだし・・・

最近、シカマルってば、急に背が伸びちゃって、たいして鍛えてもいないくせに、腕や肩には
男の子特有の程よい筋肉がついてきた。


一緒に歩いてても、見上げる横顔は前より男らしくなっちゃって、たまに隣にいるだけで
ドキドキしちゃう。



『あーーー。暑ぃ。歩くのめんどくせぇなっ』



本人はいつも、ただボーッと空を眺めながら歩いてるだけなんだけどね/////




『でも、雲は綺麗だよ?』



真っ青な空には夏定番の大きな入道雲。



『あぁ・・・・そうだな』


『ねぇ。なんか綿菓子食べたくなるよね?』



みんなそう思うもんだと思ってたのになぁ/////////




『いや?そりゃ、チョウジとお前だけっ』



ぷぷぷ
シカマルは笑いをこらえながら、わざと目を細めて言うの。


『・・・・・・ガキ』


『え?何よぉ 意地悪。』


『冗談だよ』


笑われて、ゆっくりと上から優しい顔を見せられるとドキドキしちゃうんだよっ







隣で一緒に歩いて、少しだけ腕がぶつかって・・・またドキドキする。
シカマルと付き合ってから、私はずっとそんな感じだ。





『シカマル!見て見て!あの店って最近話題なんだって!えっとね・・・』



恥ずかしくて、意識しちゃって、なんか口ばっかりまわっちゃうんだよ。
でも、




『こらっ チョロチョロすんなっ 危なっかしいんだよお前はっ』



グイッ



シカマルは私のドキドキにも気づかないで、普通に私の腕を掴むの。
掴まれた腕はこんなにも熱をもっているのに・・・・///////

それから、シカマルの体に引き寄せられて、軽々と歩道側にポイッと移される。




シカマルって、力強いんだなぁって・・・やっぱり男の子なんだなぁって。
そういう時、すっごく意識しちゃう。



私のことなんて、簡単に押さえつけることだって・・・・・





あ・・・・・・・//////////





今、すっごくいけない妄想をしそうになっちゃった//////////



もう!キバが変なこと言うから、意識しちゃうでしょ?/////////バカ!!
















「ううううう//////////」


顔が赤くなる。
だって、こういう話題は苦手なんだもんっ


「何、お前真っ赤になってんだよ?想像すんなバーカ。」


キバにおでこを パチン とはたかれた。


「想像なんてしてないもんっ////////」


本当はしそうになってたけど・・・////////
言葉とは裏腹に、私は耳まで真っ赤になった。



だってしょうがないじゃん!!
いつだって、とっかえひっかえ女の子をすぐ夢中にさせちゃうキバと、想像のみで
実際、シカマルに近づくだけでドキドキしてる私とじゃ、免疫が違いすぎるっ


そんな私をいっつもキバはからかうんだからっ!!




「だはは。お前って本当かわいいね。」



笑ったキバに余計に真っ赤になってしまった。 







でも・・・・・



「それよりよ・・・お前、こんな時間まで何してんの?」


え?



(・・・・・・・・・・・・・・)


一瞬、頭が真っ白になった。



「みんなとっくに帰ったろ?」


キバの言葉で一番大事なことを思い出す。




「いっけない。いそがなきゃ!!」




そうだよ。一番会いたい人に会えないじゃんっ


「とにかく私、早く帰らなきゃ!!じゃね!キバ!」

私が廊下を走ろうとしたら・・・




「待てよっ」



キバにグッと腕を掴まれた。




きゃっ//////




「な、なに?」



「一緒帰ろうぜっ 鞄取ってくっから、ちょっと待っとけ。な?!」



えーーーーーーーーーーーっ!!!


ただでさえ、キバがからかうから時間使っちゃったっていうのに!
いそいで、階段も駆け下りたいよっ

なのに、キバは私の答えも聞かずにノソノソと教室に入っていく。




「もうっ!早く〜 キバーーー!!」



たまらずに叫んだ私の声が廊下に響き渡った。





「んだよっ ちょっとぐらい待っとけよっ」




相変わらず勝手なキバはちょっと不機嫌に鞄を肩にかけながらこちらに歩いてくる。




「だってだってっ 雨がひどくなったら嫌だしっ//////」




まさか、下駄箱に愛しい彼がいるから早く行きたい!!なんて恥ずかしくて言えないもんねっ///////




「何?雨かよ?・・・お前傘は?」



キバってば、そんな事も知らないってことは、相当長い時間、イルカ先生に怒られてたのね・・・・



「もちろん持ってきたよ。折りたたみだけど・・・・」



私は鞄の中から、小さくたたまれた赤い傘をゴソゴソと取り出した。



「お?気がきくねぇお前。んじゃ、今日はの傘に入れてもらうかなっ!!」



かかかっ




当たり前のように笑うキバにちょっとあっけにとられてしまった。




「何それーーーっ」


「んだよっ 別にいいだろ?減るもんじゃなしっ」


「そ、そうだけど・・・」



だって、だってさ、そしたら3人でこの小さい傘にどう治まればいいってわけ?

だって・・・下駄箱にはシカマルがいる。
絶対一緒に帰りたいよっ///////






「あんだよ?」


一瞬ためらった私に気づいて、キバにジロリとにらまれて、また言葉に詰まる。



「べ、別にっ」


「んじゃ帰ろうぜっ」



ふんふん♪



鼻歌まじりの勝手なキバと廊下を歩く。


(もうっ キバのバカ!!)







そしたら、もしかして私の心の声が聞こえちゃった?



「あっ・・・・・そうかっ」


「な、何?///////」


急にまたキバが立ち止まる。



「もしかして、お前さ、待ち合わせてる?あいつと?」


「へ?////////」


「そういう事なら早く言えよっ!お前とシカマル付き合ってんだもんな?」


めんとむかって言われるとすっごい恥ずかしいぃぃぃ//////
キバにニシシと意味深に笑われて、顔が真っ赤になっちゃう。


「そ、そうなんだけど・・・・」


いやいや・・・でもね・・・・実際約束はしてないの。


毎日約束とか、そういうのめんどくさがるシカマルだから、一緒に帰る時は私がわざと偶然を装って
それで一緒に帰ってるだけで・・・


「いいねぇ。いつも一緒かよっ!!妬けるぜ ったくよぉ!!」


キバは頭をグリグリしてくる。


「きゃーっ やめてよっ」


廊下の窓ガラスにてっぺんをぐしゃぐしゃにされた私の頭がうつっていた。



「もうっ!!キバのバカ!」


あわてて、手で直す。


「悪ぃ悪ぃ!これからあいつに会うってのに、その髪はねぇやなっ」


キバは あはは と笑った。



でも・・・違うよキバ!!



「し、してないしてないっ 約束してないよ!!それにいつも約束なんてしないってば!!」


何故かしどろもどろで弁解した。


「は?そうなのか?・・・ってか・・・お前ら付き合ってんだよな?」


「う、うん////////」


「ラブくねぇ・・・俺なら好きな女とはずっと一緒にいてぇけどなぁ・・・
 お前ら本当大丈夫かよ?」


わざと意地悪にキバが私の顔を覗くから・・・


「うるさいなぁっ/////ほっといてよっ!!!」


ちょっとカチンとね・・・きちゃったりして。


「まっ 相手があのめんどくさがりのシカマルじゃあな・・・そんなもんか?」


「・・・うん」


そう・・・私達は幼馴染という関係を卒業して、周りの友達から言わせると『ようやく』
付き合うようになって3カ月。
なのに、いつだって、追いかけてるのは相変らず私の方。


シカマルにどう接近しようか、常に考える日々。


彼女なのに、やっと彼女になれたはずなのに、これじゃ幼馴染の頃と何も変わってないよ!!!


こんな気持ち。シカマル・・・分かってないよね・・・きっと。




それでも、キバと二人でやっと廊下を歩ききって、私は目の前の階段をおりながら、ドキドキしていた。
だって、階段をおりた先にある下駄箱に・・・・シカマルがいる////////




それだけで、すっごく満ち足りた気持ちになる。
幸せだって思える。




一歩一歩降りるたびに視界に見えてくる下駄箱。




でも・・・・・・




「あ・・れ?・・・・」






そこには、彼の姿はもう無かった。






「え?なんで?さっきまで居たくせにっ」


私はキョロキョロとあたりを見回した。
でも・・・・どこにもいない。


まさかと思いつつシカマルの下駄箱を確認したら、もうすでにいつもの
かかとのつぶれたスニーカーはなくなっていた。


シカマルの姿がそこに無いってだけで、はしゃいでいた心が急に沈む。



「なんだよ。お前らやっぱ待ち合わせてたんだろ?」



落ち着きのない私を見たからか、キバは少し心配そうに私の顔を覗きこんだ。



「違うよ・・・さっき私が勝手に見つけて・・・でも、シカマルと一緒に帰りたかった・・・・・」






はぁ・・・・・





深いため息だって思わず出ちゃうよ。





だって、下駄箱に私の靴・・・・まだあったでしょ?

シカマル気づかなかったの?・・・

それとも、私のこと待ってるのも、めんどくさいの?・・・・







考えるとやっぱり答えは後者な気がして、悲しくなる。泣きたくなる。








「なぁんだよ。彼女置いて、とっとと帰っちまったってわけか?相変わらず冷めてんねぇお前の男は」



キバは自分の靴をボカッと地面に放り投げて、乱暴に履いた。



冷めてる?・・・
そんな言葉じゃ、きっともう埋められない。
切なくて、胸が痛い。



「シカマルは・・・私のことなんて・・・本当はあんまり好きじゃないんだよ・・・きっと。」


「え?」


キバは驚いた顔をしたけど・・・本当・・・・そうなんだよ。


でも、分かってるのに、自分で言ったセリフに自分で傷ついる私ってバカみたいだ。




私とシカマルは家がご近所同士の幼馴染。
それ以上の関係を望んでしまった私はきっと欲張りすぎたんだ。

シカマルは・・・彼女になりたいと言った私を断ったりして傷つけて、私が泣いたりする事が、
ただめんどくさかっただけなのかも・・・

認めるのは・・・すっごく切ないけど。

どうしようもない。






「んなことねぇよ・・・バカじゃね?お前」


キバは私の頭をポンと叩く。


「う・・・ん」


キバなりに慰めてくれたみたい。




でもねキバ。
私、まだシカマルから『好き』って言われたことないんだよ?
それでも付き合ってるなんて・・・言っていいのかな。

ねぇ。それでも、シカマルの気持ち。私、信じていいのかな・・・




その想いは、言葉に出せなかった。

彼女だなんて言葉ばっかりで、なんかすごく惨めだよ。



それでも、

シカマルの本当の気持ちを聞くのも怖いから聞けない。



今の関係。壊したくない。めんどくさいって思われたくない。













「うぉ。結構、降ってきてんなっ が傘持ってて助かったぜっ」



キバは玄関先で片手を外に突き出して、雨で手をぬらす。



「いいよ。キバの家まで送ってってあげる。」



軽い気持ちでそう言った。
そして私は折りたたんだ傘をばさりと開いた。


そう。もうどうだっていい。


いつもと同じ。シカマルと別に約束してる訳じゃない。


会いたくて仕方ないから、私がいつもシカマルの部屋におしかけてるだけ。














『やっほーーシカマルーーーっ』


面倒だから玄関のチャイムは鳴らさずに、いつも開いている縁側から声をかける。
シカマルはいつだって、めんどくさそうにノソノソと2階の階段から降りてきて、



『あぁ。・・・上がれば』


その一言で、私を部屋へと迎えてくれる。
階段を上がりながら、私はシカマルの服の裾を後ろから握ってひっぱる


『会いたかったよぉぉシカマルぅぅぅ///////』


本当はさっきも学校で会ったけどさ、でも、精一杯甘えてみたつもり・・・・



『毎日会ってんだろ?バカ』


そんな私の気持ちなんて全然気づかないで、シカマルは振り向きもしないで階段を上がりながら
そっけなくそう言うの。



(あいかわらず、冷たい・・・・)



で、でも、めげないもんね!



シカマルの部屋は幼い頃からいつも来てるから、どこに座ろうが、シカマルのベットに寝そべろうが
シカマルは何も言わない。


だから私はベットを背もたれに、いつもの定位置に座る。


『今日ね、体育で転んでさぁ・・・』


別にとりたてて変わった話題で盛り上げるわけでもなく・・・


『あぁ・・・知ってる。 普通こけるか?あんななんもねぇグランドでよ・・・』


え?


『なんでシカマルが知ってんのよぉぉ////////』


クラスは別々の私達。
授業中に私の体育の授業を見てたの?
まさか、私を探してわざわざ見ててくれたとか?/////////


時々、ドキドキするような事をシカマルが言うから、へんに期待とかしちゃうんだけど・・・


『たまたま外見て寝ようとしたら、マヌケなコケっぷりが目に入っただけだっ』


また、そっけない言葉が返ってくる。







期待して・・・いつも損するんだよね・・・はぁ。





でも、



『傷、見せてみな』



『え?//////い、いいよ//////』



子供みたいにすりむけた私の膝の傷。
恥ずかしから隠しておきたいのに、


『よくねぇの。』


優しくシカマルの大きな手が私のふくらはぎを握る。
じんわりと体温がうつって。


『相変わらず細っこい足してんなっ ・・・だからコケんじゃねぇの?』


シカマルは へっ て笑う。


『うるさーい//////ダイエットしてるんだもんっ』

『やめろよ。ダイエットなんて』



シカマルの静かな声と、優しい手の感触になんかすっごく恥ずかしくなる。




『化膿してねぇな・・・これならすぐ治っだろ・・・』



シカマルの家は特別な薬がたくさんあって、その中でも鹿の角のエキスがはいった塗り薬は
万能なんだよね。


その薬を腰にぶらさげた袋からそっと取り出して、シカマルは指先にたっぷりと薬をつける。



『しみる?』


『ちったぁな。』


シカマルの指先がそっと私の傷口にあてられて、優しくなぞられると、背中がゾクゾクした。
私、感じちゃってる?
顔、赤くなってないかな?シカマルにバレてないかな?

恥ずかしくて、なんかイヤらしくて、わざと痛いフリをした。


『しみるぅぅ』

『我慢し・ろ』




うぅぅぅぅ



案外、本当に痛かったりして、私はギュッと目を閉じた。





・・・お前って本当子供みてぇな。』



あはは。



シカマルは楽しそうに笑った。








そっけなかったり、優しかったり、シカマルはいつだって私をドキドキさせる。







彼女になったって、全然この気持ち、おさまんないっ

もっともっと好きだって思っちゃう。









それから、たわいもない話しをしたり、お菓子食べたり・・・
時間はいつもダラダラと過ぎていく。

シカマルと一緒だとなんだか楽しいし、幸せだよ//////


それでも・・・


何時間かたつと、私だって、恋人としての確信が欲しくなる。
だって、このままただ帰ってしまったら、私達、ただの幼馴染のまんまだよ?

少しは私を彼女として、認めて欲しい。
シカマルとちゃんと付き合ってるって、安心させて欲しい・・・


だから・・・


本を読んでても、お菓子を頬張ってても、いつもツンとしたシカマルの口の形
がやけに色っぽくて・・・
なんか、すっごくおねだりしたくなるの。



『なんだよ?』


シカマルをジッと見てたら、シカマルにジロリとにらまれた。
でも、負けないもんね!!!

私はシカマルの彼女だもんっ!!


わざと、ゆっくりとシカマルに子猫みたいに近づいて、正面に座る。

すっごくドキドキしてる。






『キス・・・して?』







女から誘うのって、どうなんだろうって思う。
でも、そうしなきゃシカマルとキスできないんだもんっ

だから、本当はドキドキしてるし、恥ずかしいけど、自分からシカマルの首にギュッとしがみつく。






・・・それじゃできねぇよ』

『え?//////あっ・・・そうだね』




やっぱり恥ずかしくてシカマルの首元にギュッとくっつけた顔をおそるおそる離して、シカマルを見ると、
シカマルはまじめな顔をして、ジッと私を見てる。

黒い瞳に私の真っ赤になった顔がうつってて。
私はそのまま動けなくなる。



そしたら、ゆっくりと大きな手の平に頬を覆われて・・・・


ドキドキと目を閉じたら、ゆっくりとキスしてくれる。


優しい感触。柔らかくて温かい。


(あぁ・・・私はこんなにもシカマルが好き・・・・)


キスしてる間、頭の中も心の中もシカマルでいっぱい。






でも、その時間はいつも曖昧で、短いような長いような・・・




唇を離されると、急に切なくなる。



本当はもっと欲しいぐらいだよ。
でも、シカマルはどう思ってるの?



キスした後は、お互いに言葉もあまり交わさないし、恥ずかしくてあんまりシカマルの顔も見られないから、
シカマルの気持ちが分かんない。



『か、帰るね//////』


キスしてもらったら、そろそろ帰る時間。



『あぁ・・・送ってく』











時々、考えるの。

もしかしたら、シカマルは、キスをねだる私にただなんとなくキスしてくれてるだけなんじゃない
のかな・・・

求めるのはいつも私から。

断って、私が泣いたらめんどくさい?












そう・・・私達なんて、本当はただそれだけの関係なのかもしれない。













「なぁ・・・


キバに名前を呼ばれて はっ とする。


そうだ・・・私、キバと一緒に帰る途中で・・・・


「ねぇキバ。この傘で送ってあげる代わりに、お礼にお茶でも出してよね。どうせ私、暇だし。」

あはは。

なんか作り笑いした。




でも




「お前よ。そういう事、他の男の前であんま言うなよ」

「え?」


キバは急にまじめな顔をして私の傘を掴んだ。



「どうして?・・・」

「彼氏でもねぇ男の家に軽々しく近づくなって言ってんのっ!!」



どうしてキバがそんな事言うの?


私は少し腹がたった。




「だって、キバだからいいでしょ?」

「よくねぇ」

「どうしてよっ!!いつも女の子と遊んでるキバに言われたくないよっ!!」

「お前だから言ってんだろ!!バカッ!!」



私をそんな理由で叱ってくれるのがシカマルじゃないから・・・キバだから・・・
そんなのほとんど八つ当たりだよ。
分かってるのに、言い方がきつくなっちゃう。



「お前は昔っからのダチだし。・・・それに俺の親友の・・・シカマルの大事な女だから・・・ 
 だから言ってやってんだろうがっ」


「だからって・・・どうしてそんなに怒るのよ!!」


「そういうの、自分の女が言うの聞いたら、相手が誰だろうと、男は腹立つもんなんだよっ 
 シカマルだって、ぜってぇ怒るぞっ」


「そんなことない!!」


「分かってねぇな本当にお前はっ!!」



キバは私のペースに合わせるつもりもないのか、勝手に怒りながら私の傘を握り締めて、
ズカズカと歩いていく。




「ちょっと!!私の傘なんだからねっ!濡れちゃうじゃないよぉぉっ キバのバカ!!」



私は傘を握りしめて歩いていくキバの隣で小走りしてついていった。
少しだけ、肩が濡れた。



それに・・・シカマルだって怒るなんてよく言うよ。


シカマルが怒るわけないっ
そんなことで妬いてくれるような人だったら、私はこんなに心配なんかしないっ!!
分かってないのはキバの方だよっ!!!








キバと二人。
同じ傘の中。


ボツボツと傘に雨粒があたる音がやけにうるさく感じた。
急に雨足が強まって、あたりは薄暗くもやっている。


じめじめと蒸し暑い。


なんかイライラする。
だから梅雨の雨なんて・・・大嫌いなんだよっ



傘の中・・・・キバと無言が続いた。



いつもうるさいキバなのに・・・・
さっきので怒ってるの?


男の子って本当に勝手だなぁ・・・


そう想いつつ、隣のキバを見上げる。





いつも乱暴で威張ってるキバだけど、怒られたのは初めて。
でも、それは私の為に・・・



「ごめんね・・キバ。怒らないで・・・・」


そっと呟いた。


「怒ってねぇよ・・・・ただ・・・・・」


「た・・だ?」


恐る恐るキバの顔を見上げた。



「シカマルってよ。すげぇ感情を表に出すのがヘタな奴だから・・・お前も色々苦労するだろうけどよ・・・
 あいつはお前にちゃんと惚れてる。
 だから、好きじゃねぇなんて言うな。」



「どうして・・・どうしてキバにそんな事分かるの?」



シカマルの1番近くにいるのは、いつだって私なんだよ。
その私が、シカマルの気持ちが分からなくて、こんなに苦しいのに・・・

どうして、親友だって言ったって、キバに・・・そんなこと分かるの?



「あいつ見てれば分かる」


「・・・・・・・・・・・」



何も言わなかった。
キバの言葉は、やっぱり期待はずれのものだった。
だって・・・それは・・・私をかわいそうだと思って言ってくれたキバの慰めでしょ?

やっぱりちゃんとシカマルの言葉で聞きたい。

そうじゃなきゃ、私、やっぱりまだ信じられない。


不安で悲しくて泣きそう。









その時、



ぴくぴくと犬みたいにキバの鼻が動いた。






「やっぱな・・・・」

「え?」



突然、ふんっ と鼻を鳴らして笑ったキバ。
最初意味が分からなかった。





「ありがとな。そこの角まででいいぜっ」


キバは私に笑ってそう言った。



「え?だって、キバの家まで距離あるよ?」



雨でぬかるんだ道がグチャグチャと靴にまとわりついた。



「いいんだよっ お前はちょっとそこの神社でも寄ってけっ ご利益あるぜ?」



キバはニシシと笑う。



「ご利益?」


「そっ。なんなら今ここでためすか?」


「何を?」



全然、意味分からなくて、私は傘の中でキバを見つめた。


そしたら突然っ




「きゃっ////////」


キバが傘ごと私を抱きしめた。


「え?何?やだっ キバ離してっ!!!」


「なんで? 傘入れてくれたお礼。」


大きな体が ギュッ と私を抱きしめるから、身動きとれない。
傘を持った右手が投げ出されて、体が濡れていく。
神社へと続く階段の下で、キバはまるで、別の知らない男の人みたいに、私を抱きしめて離さなかった。



「えっ ちょっとやめてよぉ キバ!!!」


すごい力。
抵抗しようとしても、体が動かない。
腕の感触も、押し付けられた胸の硬さも、体の幅も、背中の広さもシカマルとキバは違う。

いつも自分から抱きついて、その温かさに安心するシカマルの体とは全然違うから・・・

すっごく怖い。キバ、怖いよ・・・・



傘を握ったまま、キバの胸でもがいた。



「やだっ やだっ シカマルーーーーっ」





















「おいっ いい加減にしとけよっ テメェっ!キバ!」





え?




目の前の境内の階段下に、雨に濡れて、ものすごく怒った顔をしたシカマルが立っていた。




「え?・・・シカマル!!どうして?」



突然シカマルが目の前に現れて、私はすごく動揺した。



「よぉ。やっとお出ましか?」


キバは へんっ と笑うと、私の体を開放した。



「え?・・・」

私はあっけにとられて、シカマルとキバをジッと見ていた。




「だからよ。言ったろ?ご利益あるってよ?」

キバは小声でニシシと笑うと傘を私に持たせた。







「お前は一人、神社で雨宿りか? それとも、と俺が気になって、ここで待ち伏せでもしてたか?」


キバはふんと笑う。


「んなことすっかよっ めんどくせぇ。」


シカマルはプイッと顔をそむけた。


「そうか? 俺はの傘に入れてもらったぜ。相合傘ってやつ?うらやましいだろ?」


キバは私の肩を抱いた。
それにキバの今の言い方は、まるでシカマルを挑発してるみたいで・・・
キバったら一体どういうつもりなんだろう?・・・・


だけどシカマルは



「そうかよ。そりゃ良かったな」



ぶっきらぼうにそう言った。












なんだ・・・やっぱり・・・





(シカマルはそんなことで妬いてくれるほど、私を好きじゃないっ)




分かってたけど・・・なんか泣きたい。
涙を我慢して肩が震えた。








でも







シカマルに名前を呼ばれた。


「いい加減こっちこいっ」



きゃっ///////



シカマルが傘を持った私の手をグイッとひいたから、私の体はシカマルの腕にぶつかる。



「あれ?もしかして、怒っちゃった?シカマルよぉ。」



キバの言葉にシカマルは へっ と吐き捨てるように笑った。



「お前のバカがうつるっつってんだっ」

「なんだとっ!てめぇ!」


短気なキバもムキになる。


「あ?本当のことだろうが、めんどくせぇっ」


シカマルもめずらしくムキになってて、眉間に深いシワを寄せた。


よく分からないけど、シカマルが怒ってる。
どうしよう・・・私、止めた方がいいのかなっ


私はシカマルの腕にしがみついたまま、おどおどした。




「お前よっ そんなにこいつが大事なら、日ごろから言葉と態度で示してやれっつうの。
 あんな悲しい顔、させんなよっ!!」




キバも真剣な顔をした。

そうか・・・キバは私が落ち込んでるのを知って、わざとこんなことしたんだ。



「・・・・・・」


シカマルは無言でキバをにらんでいた。


「こいつが好きなら、好きって言ってやれよっ!!」


「うるせぇ・・・お前に関係ねぇよ」


シカマルは冷静な声でそう言った。


「んだと・・・」


キバもだんだんマジになってきてて・・・


「いいのっ もうっ キバもやめてっ!!」

なんかやっぱり切なくて泣きそう。




(シカマルは私のことなんて、本当にどうでもいいんだからっ!!!)




私はシカマルの腕から離れた。



悲しくて、切なくて、その先の答えなんて、聞きたくないよっ


(だから、もうやめてよキバっ!!)


私は、キバの体をおさえようとキバに手を伸ばした・・・・・・



でも・・・・シカマルは、一歩踏み出した私の体をグイッと片手でもう一度自分に引き寄せた。
掴まれた腕が痛いぐらい。







「いくなよっ 。」



え?



シカマル・・・それってどういう意味?//////







なんか・・・片手でだし、間違ってるかもしれないけど・・・・

シカマルの細いくせにガッシリとした胸に力いっぱい押し付けられた自分の体が////////
それはなんだか、初めてシカマルの方から抱きしめてもらっているような感じがして・・・////////
こんな状況で不謹慎なんだけど、私の心臓はドキドキして、顔が赤くなった。






「キバ・・・・」

シカマルの低い声が私の頭上から聞こえる。



一体、シカマルは何を言おうとしてるんだろう・・・・
私はシカマルの胸に顔をうずめて、ドキドキと言葉の先を待っていた。





「あ?」

キバは明らかに、まだ不機嫌そうに、シカマルの顔を見上げた。














「お前、勝手にこいつに触んじゃねぇよっ」


シカマルにグッと肩を掴まれた。



「けっ に好きだとも言えねぇ奴に言われたかねぇよっ なんなら俺がをもらってやろうか?」



キバはジロリとシカマルを睨んだ。



「ふんっ。 バーカ。お前が俺に勝てるわけねぇだろうが」


シカマルはニヤリと笑う。


「あ?」


キバはますます不機嫌な顔をした。










は昔っから、俺だけのもんなんだよ。」








(俺だけのもんなんだよ。)





え?////////





その言葉に、私の心臓がバクバク音をたてた。




(シカマル//////////)



シカマルがそんな事を言うなんて・・・・・////////











キバも目の前で目をまるくした。

そして、




「随分と自己中な言葉だなっおいっ。はものかよ? お前ってそういうキャラ?」

キバは ガハハ と笑った。


「うるせぇ///////」


シカマルはさっきよりグッと右手に力を入れて私を抱きしめた。


「けど・・・俺は嫌いじゃねぇぜ。そういうの。確かに、は初めっからお前のもんだ。
 こんなにまっすぐにお前しか見てねぇ女なんかいねぇよ。」


大きな胸に体ごとおしつけられたままだから顔をよく見れないけど、見上げたシカマルの頬が
赤くなって見えた。




「いいんじゃね? そういうの。 いけてるよっ うん。シカマルお前いけてる。」


キバはまた あははと笑った。





「だから、いちいちうるせぇんだよっ とっとと帰れっ バカ」 


「分かった分かった。心配して損したなぁ俺。んじゃ邪魔者は消えてやるよっ じゃーーーな!!」


「キバっ あの//////」


私はそんなキバにたまらずに声をかけた。
体はシカマルにしがみついたままだったけど・・・



「ん?」


キバはそれでも嬉しそうに振り返ってくれた。


「キバ。あ、ありがと//////」


だって、キバのお陰でシカマルの本当の気持ちが聞けたよ。


「あぁ・・・だから言ったろ?シカマルだって怒るってよ。愛だね。愛っ!!」


がはは。
大声で笑って、キバは 私達に手をふって、雨の中を駆け出して行った。











「何が愛だよっ  本当、バカじゃねぇのあいつ・・・・」


キバの背中を見送りながら、でも、シカマルの顔も赤くなってる。






「で?・・・なんなんだよ。俺だって怒るってよ・・・・・」


シカマルはそっと私を見下ろす。


「ううん。なんでもない。」


それは、内緒。
だって、シカマルの気持ちを信じてなかったなんて、今は言えないよ///////
なのに・・・



「お前とあいつだけが知ってることがあるなんて・・・なんかムカつくんだよっ 
  めんどくせぇ!教えろっ!」


シカマルはギュっと私の肩を抱き寄せて、顔を覗かれる。



その時、初めて見た。
眉間にシワをよせたシカマルの顔。
でも、不安そうな顔。


私とキバのこと・・・心配してるの?//////////


「・・・・・う。うん/////あのね。私・・・・」


シカマルがそんな風に感じてくれることがすごく嬉しかった。



「シカマルの気持ち・・・不安だったの。好きでいるのは私だけなんじゃないのかなって・・・だから・・・」


「なんで?」


シカマルはやっぱり気づいてなかったんだ・・・
私が一人で不安になってたこと。


「だって・・・好きって言ったのも、キスだってさ・・・・・いつも私からで・・・  
 私は・・・えっと・・・シカマルから・・・して欲しい。っだから、えっとね・・・・」



言葉にしようとすると、恥ずかしくてどう説明していいのか分からなくて混乱しちゃう。

『シカマルに好きって言って欲しい』

本当はそれだけのことで・・・。すごく単純なことなのにね。



でも・・・やっぱりシカマルってすごい。
私の足りない言葉も全部埋めてくれるんだ。



「そうか・・・・悪かったな、。俺が不安にさせちまってたって事かよ。」


はぁ・・・・


ため息。


「気づいてやれなくて・・・ごめんな」


頭をポンポンとされるのは、子供扱いされてるんだって思ってたのに、今のシカマルの手は
温かくて、優しいよ。



「もうぜってぇ不安になんてさせねぇからよ。・・・だから、お前、俺以外の男に近づいたりすんな。」

「え?////////」


見上げたシカマルの顔・・・すごく困惑してる。
きっと、そんなこと言うの、すごく恥ずかしいんだよね。
でも、私のために言葉にしてくれてる。



「お前は昔っから、フラフラしてて、危なっかしくて、本当、心配なんだよ」


はぁ・・・

シカマルは額に手を置いた。




「そ、そんな事・・・//////」


(だって、私の心の中にいるのはいつだってシカマルだけだよ?//////)




「最近、お前の笑顔がかわいいだの、女っぽくなっただの・・・他の男から聞くんだよ。」


「え?そ、そうなの?」


「そうなのっ お前が気づいてねぇだけだ。」


「////////」


知らなかった・・・っていうか、そんな事をシカマルが気にしていてくれたなんて・・・///////



「あんま、フラフラしないでくれ・・・おちおち昼寝もできねぇ。本当めんどくせぇ///////」



だから、あの時の体育も・・・本当は心配で見ていてくれてたの?



「心配しないでっシカマル/////私、シカマルしか・・・・」


「なぁ・・・」



真剣な声。思わず見たシカマルの目は私を釘付けにする。








「お前・・・・俺以外、見んなよ。」







髪先をギュッと握られる。
まるで『どこにも逃がさない』って言われてるみたいに・・・・


「う・・・うん//////」


ドキドキして、なんか夢みたいで、体が震えてる。




シカマルの気持ち。
やっと信じられる。


不安なのは・・・シカマルも同じだったの?
ちゃんと私の事、想ってくれてたんだね。





「シカマル・・・・・」


「あ?」



私、すっごく嬉しかったよ//////
だからまた言いたくなっちゃった。
毎日、いつでも言ってるセリフだけど、今日のは特別ドキドキしてる。



「シカマル、大・・・好・・」





「いいよ。言うな。」





さえぎられた言葉にまた少し不安になって、上をみあげたら、シカマルの顔は優しくて、





「俺が言う」


「え?」





いつの間にか、あたりはとても穏やかな雨にかわってて。















「好きだ。。俺はお前だけだからよ・・・」



「シカマル///////」



シカマルの少し切ない声が頭の上から聞こえる。
死ぬほど嬉しくて、でもすごく恥ずかしくて、私はうつむいたまま、その言葉を聞いていた。





・・・」




シカマルの手が私の頬にのびて、顎を持ち上げられる。
目の前、ほんの数cmにシカマルの綺麗な黒い瞳があった。





「いつものキスだけじゃぁ 俺もう足りねぇんだよ。」



私の唇をゆっくりなぞるシカマルの親指。



「俺に全部くれねぇか?」

「え?」


シカマルの顔がそっと私の耳元に近づく。
唇が優しく耳に触れて、吐息が私のみみたぶを刺激した。














・・・心も体も全部俺だけのものになれよ」















囁かれた言葉は、傘の中。







今だけ誰にも内緒で、照れ屋のシカマルと私をその傘で隠して?





だって、シカマルの手が私をゆっくりと抱きしめて、そして、顔を近づける。








「お前は誰にも渡さねぇ。お前は俺のものだ。」

「うん///////」





シカマルの言葉にゆっくりとうなずいて、私達、初めて子供じゃないキスを何度も何度も繰り返した。




(お前は俺のもの)



シカマルの言葉がいけない薬みたいに、体中をまわって、心臓をドキドキさせる。











シカマルが好き好き好き好き。誰よりも大好き。
この世界で1番愛しい人。








もっともっといっぱいキスして、私を好きだと伝えて欲しい。













二人、夢中になりすぎたキスで、思わず落とした傘。










いつの間にか雨があがって、雨あがりの空の向こうに虹がかかっていた。




二人でゆっくりと空を見上げる。






「・・・明日はきっといい天気になるぜ。」


「そうだね」




お互いに不安だった気持ちをかき消すような、雨上がりのきれいな青空。




「なぁお前さ・・・今から俺の部屋・・・来る?」

「うん//////」




シカマルに体を引き寄せられて、私達は、もう一度深くキスをした。

ねぇお願い。キスの続きは、シカマルからシてね?・・・



「ねぇ・・・初めては痛いの?」

「分かんねぇ。・・・不安か?」

「ううん///////シカマルだからシて欲しい。」

「俺も・・・お前だからシてぇ」 


コツンとおでこをぶつけて
二人で笑ったら、雲が優しく流れていった。



「行こうぜ」



優しく握られる手をゆっくりとひかれて、私達は家路へと歩きだした。












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