その日は雨が降っていた。

薄暗い雲が幾度にも重なって、外は昼間だというのに
薄暗かった。



私はナルトの帰りを待ち続ける。

カチカチカチ・・・・・
規則的な時計の音・・・・・・・


私はベットの上で足をブラブラとゆっくりと動かしてみた。
着慣れない黒のワンピースが私の足を余計に白に見せる。


窓の外では春の雨が柔らかく、でも、とめどなく降り続く。


3代目が死んだ・・・・・
この里を誰よりも愛し、この里のみんなを愛してくれた
火影様・・・・・





私はこのままナルトに会えない気がした。






体から血の気が引くような感覚。
たまらず自分の両腕で自分の体を抱きしめる。


「ナルト・・・・早く・・・早く帰ってきて・・・・・・・」


涙が頬を伝う・・・・・








ガチャリ





扉の開く音・・・・・・







・・・・・・」

雨に濡れて、ナルトの髪からしずくが床へと落ちている。


「ナル・・・ト・・・・・・・」
良かった・・・あなたはここにいる・・・・額のキズを覆う大きな
ガーゼ。
少し血のにじんだ跡・・・・


「どした?・・・・・」
ナルトはゆっくりとこっちに歩いてくる。


「ナルトが・・・このまま帰ってこない気がして・・・いなくなっちゃう気
 がして・・・・」

私の言葉は涙で途切れ途切れになる。


「バーカ」


ナルトが両手を私の背中にグルッとまわした。


「俺はぜってー お前を置いていったりしねーよ。 どんな事が
 あってもな・・・」

「本当?私をおいて死んだりしない?」

「あぁ・・・・・」

「約束だよ・・・ナルト・・・・」

私はナルトの背中に腕をまわして、ギュッとしがみつく。


「約束だってばよ・・・・・」







でも、それが永遠の約束ではないことぐらい分かっていた。
忍びとして生きる者の宿命・・・・・
亡骸さえも残らず死に行くものの悲しさ・・・・・
私達は幾度となく、それらを見てきたのだから・・・・・・


ふいにナルトが私をベットへと押し倒す。
「ナルト?・・・・」
覆い被さるように抱きつかれる。

私の胸にあてられたナルトの頬・・・・



カチコチカチコチ・・・・・
ドクドクドクドク・・・・・



時計の音と私の心臓の音がシンクロする・・・・・・



「ねぇ・・・・ナルト?」
私は天井を見据えたまま、動かないナルトに話しかける・・・・

「動くなって・・・・・・・・・・いいだろ?」

溜息のようなナルトの言葉・・・

「いいよ・・・・」
密着した体からナルトのあたたかな体温が私の体に
じんわりと染み渡る。

ゆっくりと時間が流れていく。


「あぁ・・・聞こえるってばよ・・・・・」
ナルトの弱弱しい声

「・・・・・・・え?・・・・・なに・・・・・」
ゆっくりと問う。

・・・・お前が生きてるって証が・・・・・ここにある・・・・」

大きくて熱をもったナルトの手の平が私の左胸を優しく掴む。



それはとても自然で、いやらしい気持ちなんて微塵も感じなかった。



「この音・・・・・俺の大事なを生かしている音だ・・・・・・・」





ドクドクドク・・・・・・・・




今、この世界には私の心臓の音以外、何も聞こえない気がした。




そっとナルトが顔をあげ、ベットに足を下ろして座りなおした。
私も体をあげ、寄り添うように隣に座る。



「なぁ・・・・キス・・・・しよう・・・・
「いいよ」

だってそれは私達が生きている証。
熱をもった唇から伝わる愛するという感情・・・・・
光と闇が押し寄せる、とめどない流れの中の唯一の希望

「ナルト好きよ」
「あぁ・・・・・・・・俺もだってばよ・・・・」

おでこをコツンとつき合わし、お互いに目を閉じる。




あなたが
お前が

ここに生きている・・・・それだけでいい・・・・・・・・




心の声がそっと囁く。
ドクドクドクドク・・・・・・大事な大事な私とナルトを刻む音。




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