「んで?お前はそれでどうしたんだよ。」

シカマルはリビングの椅子に座って、今は定位置になっている私の隣の席で、
みかんの皮をむいていた。

「別に・・・何も言わなかったよ・・・っていうか逃げてきちゃった・・・」

「ふうん。」

シカマルはみかんを一口ぱくりと口にいれた。

「甘ぇ・・・・」



私は別にシカマルの答えとか、なぐさめとか期待してたわけじゃないけどさ・・・
でもさ・・・・
何か言ってくれてもいいと思うんだけどな・・・・・


「はぁ」


私は一つため息をついた。


そんな私をチラリと見て、シカマルは言った。


「お前まだ悔しいんだろ・・・・」

「・・別に・・・」

「まぁ、そいつの言ってることも一理あるわな・・・・・」

またみかんをぱくり。


「う・・・ん・・・・」

そうだね、確かに言われた言葉に傷つかなかったと言えば嘘になるけど、私にも少し非があって、
しかも、案外図星だったりもして・・・だけどそれを認めることも、なんか悔しくて・・・
だってさ、私は私なりに・・・そう誰にもわかってはもらえないかもしれないけど・・
それなりに頑張って修行だってしてきたし・・・・

「これからはさ、もっと頑張りましたーーーー!!って顔してやろうかな?」

私もみかんをぱくり。

「なんだそれ?・・・」

「努力!とか根性!とか書いたTシャツとか着てみようかなっ」

ふふん。笑ってみた。

「あぁ・・・いいんじゃねぇの? 似合う似合う・・・・・」

シカマルは全然興味無しって顔してる。
っていうか、半分寝てるようなマヌケ顔してる・・・・・

「シカマル・・・私の話しなんて聞いてないんでしょ・・・・」

「聞いてるよ・・・・・」

でも、さっきからちっともまともなこと言ってくれないじゃない!!
なんか腹立ってきた。

「あぁ分かった。結局シカマルも私のことバカにしてるんだ。」

シカマルのみかんを食べる手が止まった。

「そうだよね。どうせ私はドンくさくて、忍び向きの女じゃないわよ・・・
 どんなに頑張ったって、そこそこ平凡な成績のまま。なんの取り柄も無いしね。」


シカマルは無言で前だけを見てる。


「シカマルはいいよね。頑張らずにさぼってても、そこそこ平凡な成績ぐらいはとれるんだからさ・・・・」

「そこそこ平凡ね・・・・」


はぁ・・・ため息なんかついてる。


「でも私とシカマルは違う!頑張ってそこそこと、頑張らなくてもそこそこは全然違う!!」

「はっ めんどくせーなそれ・・・・」

シカマルは鼻で少し笑った。

「何よさっきからさ、シカマルはまるで他人事で、私がどれだけ傷ついてるかなんて、
 シカマルには絶対絶対分かりっこないんだから!!!」

私は机をドンッと叩いた。
はぁはぁ・・・なんか一人で興奮しちゃって、息があがってきて、なのに、隣でシカマルは
相変わらず冷静な顔したままで、なんか私一人バカみたい。


シカマルはチラリと私を見て言った。


「お前、さっきっから眉間にバリバリしわよってよ。不細工な顔になってんぞっ」

「は?」

反論でもしてくるのかと思えば、いきなり出た言葉がそれ???
何なの!!もう完全に頭にきたーーーーーーーーーーー!!!


「なによぉ!シカマルなんて最低!!!シカマルなんて!!」

手が震えた。もう泣きそう・・・・


「お前よ・・・・」

「な、なによっ・・・・・・・・」

「くだらねぇ事気にしてんなよっ・・・めんどくせー・・・」

はぁ とため息をつかれた。

「ようはお前が自分自身に納得できてりゃそれでいいんじゃねぇのか?」

「え?」

突然の言葉に私はシカマルを見つめる。
でも、当の本人は相変わらず、みかんをぱくりとしながら、さらりと言ってのけた。

「人の評価がどうとか、くだらねぇよ。お前はお前らしくしとけばいいっつってんのっ。」

「・・・・シカマル・・・」

「お前さ、昔は分身の術、へたくそだったよな。ナルトと一緒でよ」

シカマルはくくくと笑う。

「けどよ・・・今は・・・どうだ?まだ苦手か?」

苦手?そんな事はない。・・・・今は気構える事なく普通に出来るようになった。

「お前は成長してんだよ・・・人よりゆっくりだけどな・・・・・」

シカマルはそれだけ言うと、がたんと席を立って台所に歩いていく。

「お前も、茶飲む?」

頭をがりがりと掻いて、めんどくさそーに振り返る顔。


「え?あ・・・・う・・・うん。//////」


(お前は成長してんだよ・・・)
シカマルの言葉が頭をまわる。
そうか・・私も・・・私もちゃんと成長出来てるんだ・・・


初めて、自分の事を冷静に見れた気がした。


分身の術だけじゃない・・・幻術も体術も・・・私は私なりに手ごたえを感じ初めて
いた所だったんだ・・・・

でもそれは、周りの人達の成長に比べたら、とても小さなことで・・・だから私は
いつからか、自分に自信が待てなくなってしまって、自分のことを見失ってしまっていたのかも
しれない・・・・。


「シ、シカマル・・・・・」

「あ?なんだよ・・・・・」


お茶セットをおぼんにのせて、かったるそうに歩いてくるシカマル。


「私・・・みんなに認められなくてもいい。だって頑張ってれば少しづつでも
 自分なりにちゃんと強くなれてるんだもんね。なんかそれが分かっただけでも嬉しいよ////」






シカマルはがたんとお茶セットを机の上に置いた。






「へっ お前のことは俺がちゃんと認めてるだーろが。」






シカマルはお茶の葉を筒のふたに入れながら、普通にそう言った。


え?・・・


心臓がドキドキした。
シカマルは私の小さな成長にちゃんと気づいてくれていて・・・そして私を認めてくれて
いたんだ・・・・・

「シカマル・・・・・」

胸がジーーンと痛くなって、涙がでそうになったけど、必死で我慢した。
ここで泣くのはなんか恥ずかしいんもん・・・・


「シ、シカマルみたいに、いつもやる気ゼロの人に認められても嬉しくないもんっ////
 どうせなら、サスケ君とかネジさんとかさ、強〜い人に言われたいよっ」


思わず心にも無い言葉が・・・・
だって、いつも冷たいシカマルが急にあんなこと言うから、だから・・・


「あっそ。そりゃ悪かったな。認めたのが俺みてぇなやつでよっ・・・・」


けっ とか言いながら、シカマルは急須にお茶の葉をさらさらと入れた。


シカマルはいつも通り普通にしてるけど・・・でも、なんか今の自分の言葉は
やっぱりヒドイよね。すごく後悔。
本当は私・・・泣きたいぐらい嬉しいのに・・・・


「シカマル・・・・」

「あ?なんだよ。」

「ごめんなさいっ!!」

私はとっさにシカマルの腕に抱きついた。



「うわ!なにすんだ、バカ!!今、茶ぁ入れてんだろ?あぶねぇっつうの!!」



シカマルの手にはポットのコポコポという音と一緒に湯気がたった急須が握られていた。
シカマルはその熱そうな急須を抱きついた私から遠ざけてくれた。


「火傷してもしらねぇぞっ!ったくお前は!!いきなりなんなんだ?めんどくせー。」

「だって・・・・私、シカマルにヒドイ事言っちゃったから・・・・」

「あ?何が?」

「さっきの嘘。本当はすごく嬉しかったよ。ありがとシカマル//////」

シカマルの腕にギュッとくっつく。

「なんだ?何がだよ。お前いいから離れろっ!!!めんどくせー・・・///////」


シカマルってば、せっかく素直に言ったのに・・・・・・
私はシカマルの一言で泣きたいぐらい嬉しかったんだよ!!
なのに当のシカマルはそんなこと微塵も分かっていなくって・・・
相変わらずシカマルはいつも通りで・・・・・


くすくすくす。
でもそんなシカマルがなんかすっごくらしくて、可笑しかった。

「何笑ってんだよっ 気持ち悪ぃな」

「だって・・・だってさ・・・あははは」

「変なやつ・・・・・」

シカマルは 口をへの字に曲げて、急須を少しゆすった。

「シカマルってさ・・・いつでもシカマルなんだね。」

私は笑って言った。

「あ?俺がいきなりチョウジになったら驚くっつうの・・・・・」

シカマルは眉間にシワを寄せて、めんどくさそーに私を見た。
くすくす。笑っちゃうよ。
だけどね、なんかね、私はそんなシカマルがね・・・・・

「大好きだよシカマル。」

「あ?なんだそれ?意味分かんねぇ//////」

「いいよ。意味なんてないもん。大好きだって思っただけだから・・・あははは」

「ったく・・・//////」

笑い出す私をシカマルは赤い顔をしてしばらく見つめていた。
でもそれから、はぁ と一つため息をついてから、私の頭をポンポンと叩いた。



。お前はいつでもそうやって笑ってろよ・・・その方がお前らしいぜ。」

「え?・・・う・・・・うん//////」

私きっと真っ赤な顔してる。


「けっ ほんとお前って、めんどくせーやつ///////」



シカマルはいつだって、私をドキドキさせて、幸せな気持ちにさせてくれるんだから・・・



「おら、茶ぁ入ったぜ」

ガタンと目の前にお茶を置かれる。
緑茶のいい香り。

「シカマルってさ、お茶入れるのだけは上手いよね!!」

「だけってなんだよ・・・ちっとも褒められた気がしねぇよ。」


くくくく。
私が笑ったら、シカマルは けっ と言って苦笑い。


一口飲んだら・・・

「あついっ」

「バーカ。天罰だ天罰。」

シカマルはニシシと笑った。

「ふーふーってしてよシカマル。」

「何甘えてんだバカっ」

「ケチーーー」

だけど私はまた あははは と笑った。




いつもシカマルがシカマルでいてくれるから、私はなんとかまた頑張れそうだよ。
たった一人あなたが私を認めてくれるなら、私は私らしくいつまでもいられる気がするの。
だからね、シカマル。
ずっとずっと私の側で私を見ていてね。





「ねぇ、シカマルのみかんちょうだい。」

さっき半分食べて転がっていた、シカマルのむいたみかんをポイッと口に入れる。

「あ!バカ!それはさっき俺が丹念に筋とった、超うまいみかんだっての!食うな!!」

「えぇ!けち。私のあげるからさ。」

私がむいたみかんを押し付ける。

「お前が適当にむいたみかんなんて、いらねぇよ。俺の返せ!」

「やだっ!!」

「お前なぁっ」

「えへへへ////」




いつまでも、シカマルはシカマルらしく、私は私らしく・・・
人がどうなんて、本当、関係ないよね。
そしてこれからもずっとこうしてシカマルと一緒に笑って生きていけたらいいな。














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