次の日、俺はを探して演習場の近くに来ていた。
もちろん昨日の一件をあやまろうと思っていたからだ・・・




とはいえ・・・



昨日俺は、泣いていたを「帰れ」と一言で突き放した。
を目の前に、俺ははじめなんて切りだしゃいいんだ?


『昨日は・・・悪かった』


とか言って、頭さげてみっか?
んで・・

『テマリのことは誤解だ。俺達はそんな関係じゃねぇし、俺が想ってんのは、お前だけ・・・』




-------------------・・・・・-----------------------






「そんなこと、ここで言えってか?・・・まわりにゃ、きっとの班のやつらもいるだろうし・・・
 いや、やっぱ言えねぇよなぁ・・・」


はぁ。



でも・・・このまま、うやむやにしたら、とマジで終わっちまうかもしんねぇし・・・
そうなっちゃ、もともこもねぇ・・・




「めんどくせぇ・・・このまま帰りてぇ・・・・」



上を見上げたら、真っ青な空に能天気な白い雲がぷっくらと浮いていた。
俺の目の端には、大きくそびえる木の枝が空へと伸びているのが見える。




あぁ・・・やべぇ・・・気の利いた台詞もろくに考えつかねぇうちに、演習場についちまうぜ・・・




「はぁ・・・・」



俺はもう一度深いため息をつきながら、ゆっくりと歩き続けた。










その時だ---------------------------------------------------------------------










「シカマル!」



それはの班のメンバーの一人の男の声だった。
演習場へと続く木々の入り口らへんで、そいつは青ざめた顔で立ち尽くしていた。



「あ?どうした?」


その動揺した態度・・・になんかあったのか?


「早く来てくれ!とテマリが!!」





俺はとテマリという言葉を聞いて、いやな胸騒ぎがした。
昨日の今日で、テマリと俺のことを誤解していた



(2人に何があったんだ?)



「こっちだ!」


そういうと一目散に駆け出したそいつの後を追って、俺も走り出した。






そいつも全速力って感じだ。
近道をしているのか、木々の細い隙間をぬって、それでもザクザクと草を踏んで走り続ける。



「おいっ 何があったんだよ?」



走りながら聞く。



「いいから・・・早くっ シカマルじゃなきゃ止められないよっ」

「止める?・・・なにを?」






答えを聞く前に、俺の視界がパッと陽の光で明るくなった。










足を止め、手で日光をさえぎると、くらんだ目の先に、確かにとテマリが見えた------------------------------------










修行をするために円形に木を取り除いてつくられた場所。

そこに2人は対極に向かいあっていた。









テマリは何故か木の下にうずくまっている。
に目をやると、は印を結んでいる途中だった。




(おいっ まさか!)






・・・・・・・あの印は!!・・・・・・・






「待て!!!!」






とっさに叫んだ俺の声に反応することもなく、は印を結び続ける。





(やべぇぞ!!)




俺の距離からも、離れているの目の色が変わっているのがわかる。
怒りで我を忘れている顔だ。



は普段はおっとりした、大人しい女だ。
忍びとしても突出した忍術を使いこなせるほどのチャクラをためることも
それを使う技もまだ持っていない。



でも、これはあくまでも、が平常でいる場合だけの話だ。



は本当はあの初代火影の血をひくもの。
つまり現火影とも遠い血縁関係にあり、木遁の術も本来使う能力を持っている。



普段それが使えないのは、はチャクラをコントロールするのがヘタなだけなんだ。



俺はの修行に何回か付き合って、そのことを知っていた。



はたまに自分でも予想もつかないほどのチャクラを膨大に一点に集めてしまい、
自分の体をふっ飛ばすほどの術を発動してしまうことがある。
相手へのダメージはものすごいものがあるが、自分へのダメージも少なくない。


このチャクラコントロールのこつさえ掴めば、はきっとどのくのいちより強い。


ただ一番問題なのは、にあまりその意思が無いことだ。
は基本的に優しいから、いくら敵とはいえ、大打撃をあたえられるほどの
怒りをめったに出すことはないし、それを望んでもいない。





でも、今のは・・・・・・





「シカマルっ・・・・」


俺から近い距離で、苦しげなテマリの声がした。
俺はとっさに答える。



「テマリっ お前はそこを動くな!!」




俺はチャクラを足に溜めて、その勢いで、とっさに座り込んでいるテマリの前に立ちふさがり、印を結んだ。




「間に合え!!!」




《影まねの術!!!》



その瞬間に 俺の足元の土が 轟音とともにもりあがり、周りの木の根がまるで生き物のように
動いて、するどい根の先が俺めがけて飛び出してきた。もちろん避ける時間など与えないほどの勢いだ。


さすがの俺も やばいか!? と額と背中から冷や汗が吹き出た。


そして、その根先は俺の首元、あと数ミリのところで グッ と制止した。
もう一歩 影まねが遅かったら、この根はぐっさりと俺の首を掻き切っていたかもしれない・・・


そして、もし俺がこの場にこなかったら、この根先は座りこんでいるテマリに向かって、ぐさりと突き刺していたはずだ。







なんでこんなことをするんだよ・・・・・






俺は離れたところから術を発動して、呆然と立つを見た。
の息は早く、はぁはぁと肩が上下に激しく動いていた。




・・・・お前、何してる?」




俺はに影真似をかけたまま、ゆっくりとそう聞いた。
それでも、は未だ興奮状態にあるようだった。




「影真似をといて!!・・・シカマル。」




遠くからでも分かる。の目はやっぱりいつもの色じゃない。
興奮して、目は充血して、赤くなって見える。




「ダメだ・・・俺の質問に答えろ・・・お前はここでテマリと何してた?」




木の下のテマリがぶっきらぼうに答えた。



「戦ってた・・・見ればわかるだろ?」



強気な言葉の割りに、いっこうに立ち上がらないテマリを不思議に思い、俺はテマリを振り返った。




そして体から血の気が引いた。



テマリの左足から、血がぼたぼたと流れおち、その足は膨れ、あきらかに骨を砕かれていた。





「お前が・・・・・・お前がやったのかよ・・・・」




信じられなかった。
が人を傷つけるようなことをするなんて。
しかもこの足の傷・・・そしてさっきの木遁の術・・・それはが思っていた以上のチャクラがたまって
したことだったとしても、はあきらかにそうなることの予測がついた上で、木遁の術を発動した。


それで、テマリの命を奪うことが、万が一でもあると分かっていてやったってのか?




答えろ・・・これはなんだよ?何してんだお前!!!」




俺の叫んだ声にの体がビクリと硬直した。
充血して見開かれた目がだんだんと色をもどしていく。
いつものに戻っていくのを感じた。




「いいんだシカマル。これは・・・」


「お前は黙ってろっ!!」



をかばうテマリの言葉を静止した。







だってよ・・・・・・お前・・・これはっ・・・・





 お前、何してんだよっ!!」



は我に返ったのか、体を震わせておびえているように見えた。



それでも俺はその場から動けなかった。
お前がテマリにこんなことをするなんて・・・











その時、アスマの声がした。


「お前ら!何してる!!」


の班のシュウが上忍を呼んだんだろう。
たまたま近くにアスマがいたんだ。



俺はの影真似を説いた。




!大丈夫か?」

シュウがの側に駆け寄った。




俺はこんなことをしたが許せなかった。
いくらお前がテマリに良い感情を抱いていなかったとしても・・・これはやり過ぎだ。
仲間にすることじゃねぇ!!



・・・仲間にこんなことするなんて・・・・お前・・・最低だ・・・・・」



俺はとっさに足元のテマリを抱きかかえた。



「お、おろせよ/////」

「いいから。暴れんなっ」


焦るテマリを黙らせる。


このままテマリを放っておくことなんて出来ねぇ。


木の葉病院に直接連れていくつもりだった。
このままじゃテマリは歩くことも、もしかしたら、この足すらダメになるんじゃないかと思ったからだ。
それぐらいひどい傷に見えた。





「シカマル!お前!」

シュウが何か言おうと叫んだが、が制止した。

「いいの・・・シュウ。もういいの。」

シュウに倒れこむようにして泣き出したが俺の目の端に見えた。







でも、俺にはもう、を見ることも、声をかけてやる気力も無かった。


今の俺は・・・の行動の意味が読めない。
そして、がテマリを傷つけたという事実は取り消しようがない。






---------そしてこれは絶対に許されることじゃねぇぞ・・・。---------






俺は振り返らなかった。
俺に抱きかかえられて、テマリは何度もおろせと言って暴れた、でも俺はそのまま抱きかかえて病院まで
テマリを運んだ。



病院に着くまで、俺がのことを振り返ることは無かった・・・・






















木の葉病院で、テマリの足をみた医者はすぐに手術をして開いた傷を縫うといった。
俺はそのまま病院に残って、テマリの手術をまった。


病院の待合のソファーに座りながら、俺は混乱する頭を抱えていた。



《どうしてだよ・・・なんでこんなこと・・・・まさか、昨日の俺とテマリのことを嫉妬して・・それで?
 こんなひどいことするなんて・・・お前がこんなこと・・・・信じたくねぇ・・・・・》



組んだ両手の指を何度も何度も組みなおす。
でも、俺の心には、最悪の感情が生まれていた・・・・・




《仲間を傷つけたお前を・・・俺は許せねぇ》
















ほどなくしてテマリの手術は終わった。

麻酔が効いて眠っているテマリの病室で、俺はずっとテマリの側にいた。




眠っているテマリはそこらへんの女と変わらない・・・
穏やかで年頃の綺麗な女の顔をしていた。




こんな風にテマリを見ている自分が・・・今はまだ信じられなかった・・・・・




さっきの出来事がすべて夢のように感じて仕方なかった。




それから何時間かして、ようやくテマリは目を覚ました。







「よぉ・・・」

俺はとりあえず、そう声をかけた。

「これぐらいの傷で麻酔で手術なんて・・・大袈裟なとこだな木の葉は・・・・」

テマリはまだ麻酔が少し残っているのか、 へっ と力なく笑った。

「とりあえず、足つって、しばらく入院だとよ・・・・」

テマリの足はぐるぐるに包帯が巻かれ、上から吊るされた紐で上へと持ち上げられていた。


「かっこ悪いからこれ外せよ」

テマリは真っ赤になっている。

「そりゃ無理だ。お前みてぇなわがままな患者の為に、この包帯には動けないようにチャクラ
 練られてるらしいからな。大人しく寝てろ」

俺は へへへと力なく笑った。


「ちぇっ」

テマリは心底嫌だって顔をした。





「テマリ・・・」

「ん?」


俺はテマリの痛々しい姿を直視できずにいた・・・


がこんなことして・・・悪かった・・・謝る。」

「なんでお前が謝るんだよ。それに・・・仕方ないさ。あの子もマジだったんだから・・・」


テマリはを責めなかった。


「でも・・・これは仲間にすることじゃねぇよ・・・がお前にしちまったことは・・・
 許されることじゃねぇ・・・・」


「本気の喧嘩だった。だから、仕方ないだろ?やられたのは悔しいけどな。・・・」


テマリはへへへと力なく笑った。






こんな時、テマリが逆上して怒ってくれたらどんなにいいかと俺は内心思っていた。

そしたら、俺はきっと土下座でもなんでもして、テマリに必死で謝ることも出来ただろう。
もちろんそんな事で、今回の事がチャラになるなんて思っちゃいねぇよ・・

けど・・・

それでも少しはテマリの為に謝罪したかった・・・・






でも、テマリはの事も、俺のことも責めなかった。


そのことが、余計に俺の胸を締め付け、俺がこいつの為に何かしてやれることはねぇかと
本気で考えた。




「テマリ・・・俺に出来ることはなんでもしてやる・・・だから言えよ・・・
 お前、どうしてほしい・・・」


とっさにそう言った。
かなえられる事ならなんでもこいつの為にしてやりたいと思った。



「じゃあ・・・・しばらくここにいてくれるか?」


テマリは少し紅くなりながらそう言った。


「あぁ・・・いてやるよ・・・お前が帰れって言うまでな・・・」

「本当か?」


子供のようにパァと明るい表情をみせるテマリが普通の女に見えて、俺は正直驚いた。


「んで?他には、何すりゃいい?・・・めんどくせーの無しな?」

「うーーーん。んじゃ、あたしが退院するまで毎日ここに来てくれよっ」


テマリはまるで子供のように無邪気な笑顔でそう言って笑った。


「あぁ・・・・いいぜ。お前が退院するまで毎日来る。」

それが俺に出来る、のおかした罪の償いみてぇなもんだ。



「へへ/////」

テマリは真っ赤な顔でベットの布団から目だけだして笑った。



















それからは毎日テマリの病室に通った。
任務の無い日は朝からいって、あいつの食べたいものを聞いて買いに出る。
任務のある日も帰りには必ず病室に寄った。


その間、俺はに連絡をとらなかったし、からも何も連絡も無かった。











そして、俺自身も、なるべくのことは、思い出さないようにしていた・・・・

の事を考えはじめたら、俺はきっとあいつのことで頭の中がいっぱいになっちまうだろうから・・・・

そして、また、会いてぇとか思っちまいそうな自分を抑えられなくなりそうだからだ。








今はまだ・・・に会えねぇ。
こんな簡単に、俺はお前を許しちゃいけねぇんだ。
仲間を傷つけたお前の罪は・・・それほど重いはずだ。


たとえ、俺のへの想いが変わらないとしても----------------------------
























テマリが入院してからは、火影の手回しなのか、俺の任務もほとんど無くなった。

だから俺はほぼ毎日、朝からテマリの病室を訪れていた。

そして、その日も俺はテマリの食べたいと言った団子を買いに、一人で繁華街に出ていた。




そこで、の班の男2人を見かけた。


とっさに俺はドキリとした。





も・・・いるのか?・・・・・・・・)





でも、いくら目で2人を追っても、の姿はない。
2人とも明らかに任務帰りだというのに・・・


俺はそのことがどうしても気になって、2人に近づいた。




「シカマル!」

一人が俺に気づいた。

「なんの用だよっ」


シュウがぶっきらぼうに俺にそう聞いた。
それは明らかに敵意のある声だった。
でも、俺は構わず続けた。



は・・・どうした・・・・・」


「お前に関係あんのかよ。今更・・・・」


シュウはあの時の側にいた。
だから俺とがあんな別れ方をしたのも知ってる。
同じ班でと仲の良いシュウが俺を嫌う気持ちも分かる・・・けど、俺もお前を許せないんだよ!!


「お前、なんであの時を止めなかったんだよっ・・・・」

俺はシュウの目をジッと見ていった。


「あぁ?を止める?なんで」

「とぼけんなよ。がテマリをあんなにしちまったの、お前も見てんだろ?その前になんで
 止めなかったのかって聞いてんだっ!!テマリはまだ入院してんだぞっ!!」

「へぇ・・・だから何だよ?テマリがそんなに大事かお前は!!」

シュウの言葉にさすがに俺もキレそうになった。

「話しを変えんなっ シュウ。お前が止めればこんなことにならなかったはずだ!」

「こんなこと?それテマリが足骨折したこと言ってんのか?」

「お前も見ただろーが?」

俺はイライラしながらそう言って、シュウを見た。




「シカマル・・・お前、もうと別れろよ。好きな女一人信じてやれないようなやつ、
 の男だなんて俺は認めねぇからなっ」

シュウの言葉に次言うはずの言葉をグッと飲み込んだ。





(好きな女一人信じてやれない???・・・それは・・・どういう意味だよ・・・・・)





呆然と目の前に立っている俺にシュウは静かに言った。



は訳があって、任務には出てねぇよ。理由が知りたかったら、繁華街のはずれの店に行ってみろよ・・・・
 そこにがいる・・・」


「そりゃ・・・どういうことだ?」




繁華街の店?・・・
意味が分からなかった・・・なんでそんなとこにが?・・・




「知りたきゃ自分で確かめろ・・・がそれを望んでるかは分かんねぇけどな・・・
 お前には確かめる義務がある・・・そうだろ?シカマル。」



シュウはそれだけ言うと、もう一人の仲間に


「行こうぜ」


そう一声かけて、歩いて行っちまった。










その場で立ち尽くしたままの俺は、混乱していた。





さっきのはシュウの言葉が頭をめぐる





は一方的にテマリを傷付けたんじゃねぇのか?)

(どういう理由があったんだ?)





今更だが、理由も聞かずに、を責めて、そのまま何の連絡もとらないままの自分の行為を悔いた。



が一方的にあんな残虐なやり方で仲間を傷つけるような奴じゃないってことぐらい・・・ 俺が一番よく分かってたはずなのに・・・

それでも、あの時のテマリの傷を目の当たりにした俺は、冷静ではいられなかった・・・



を信じてやる余裕も無かった・・・
出来れば、全てを認めないまま、その事実から目をそむけていたかった・・・・





でも・・・やっぱこのままでいい訳ねぇよな・・・





シュウの言葉でやっと目が覚めたぜ。





それでも俺の中でくすぶったまま消せない  への想い。





(とにかく・・・・俺はあの事件の真相を確かめなきゃならねぇ・・・・)






テマリに頼まれただんごの事も忘れて、俺はそのままシュウの行っていた場所へ走り出した---------------
























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