もうすぐ祭り会場の入り口までついちまう・・・

その時、聞き覚えのある声が俺を呼びとめた。

「おい!シカマル!!」

「キバ!」

俺はとっさに足をとめる。

「おまえ、何やってんだよっ!!」

キバはしかめっつらをしながら俺に近づいてきた。
キバのいたまわりにはシノとヒナタの姿もあった。

泣かせやがってよ!」

キバは俺を睨んだ。

「おまえ!に会ったのかよ!」

俺はキバの腕をつかんだ。

「会ったもなにも、が走ってきたから呼び止めたらボロ泣きでよ、驚いたぜ」

「んで?あいつどこ行った?」

「けっ それが人にものをたずねる態度かよぉ」

キバはジロリと俺を睨む。


だーーーーーーもうっ 時間がねーんだよバカッ もったいつけてねーで教えろっつうの!


なら階段を下って行ったぞ。たぶん家へ帰るつもりだろう・・・」

離れたところからシノがつぶやいた。

「バカ!シノ!なんで言うんだよっ こういう時はだなー、もったいつけといて、
 ベタ惚れのこのバカからいくらか金を・・・・」


                 バコッ


「痛ってぇーーーーーーーーーーっ」


俺はキバに特大のでこピンをくらわせて、が下った階段に向かって走り出す。

「シノ、悪ぃなっ」

「あぁ・・・キバはほっといて、お前は早くのところに行け」

「あぁそうする」

遠くで、

「シカマル!覚えてやがれっ 今度会ったらぶっ倒すかんな!」

きゃんきゃんっ

バカ犬どもの遠吠えを背中に聞きながら、俺は完全無視で階段を下っていった。

でも最後に

「もうぜってー泣かすんじゃねーぞっ 今度泣かしたら俺がもらっちまうからなっ」

きゃんきゃんっ

キバ流の激励なんだろ?わかってっけどよ・・・・

「うるせーバカッ 死ね!」

大声で叫ぶ。
これが俺流のお礼の言葉だ・・・・

キバ・・・俺だって分かってるっつうの・・・もうぜってーを泣かせたりしねーよ。











人っこ一人いない帰り道。


そうだよね・・・今日は木の葉の里最大のお祭り・・・みんなお祭りに行っちゃったよね。


薄暗い道をとぼとぼと歩く。

すでに鼻緒がすれた部分からは出血していて、歩くたびにズキズキと痛んだ。
私の目からは、さっきからずっと涙が流れっぱなしで、自分でも止められない・・・

悲しくて、さびしくて、つらい・・・・・・

シカマルと彼女・・・やっぱり似合ってた。
私なんかよりずっとずっと大人で綺麗で頭も良くて・・・
私なんかより、シカマルの彼女にふさわしいのは、悔しいけどあの女のほう・・・・・

ぐすんぐすん・・・・一人で泣き続けた。

「私って・・・本当・・・ただのガキだ・・・・」







「よぉ。そこのかわいいお嬢さん・・・俺と付き合わねーか?」

後ろから声をかけられた。


その声・・・・


「シカマルのバカ。何で私のことなんか追ってくるの?彼女とお祭りに行って
 くれば良かったのに・・・」

私は振り返ることもしないで、そう言った。

「興味ねーなぁ。あんな女。 俺にはかわいい彼女がいるしよ」


(そんなこと、思ってもないくせに・・・・)


「シカマルには、ああいう綺麗で大人な女の人の方が似合うよ・・・」

「はぁ・・・・勝手に決めんなよ・・・・」

「シカマルもあの人も背が高くてさ、並んでたらすっごくお似合いのカップルみたい
 に見えたよ・・・本当に・・・似合ってるよ、2人とも」

「だから、勝手に決めんな・・・・・」

「私みたいなチビでガキでバカな女なんてシカマルには似合わないよ・・・」


自分がみじめで、情けなくて、すごくバカみたいで、涙がボロボロ出てきた。


「バーーーーカ」


とっさにシカマルに後ろから抱きしめられた。

「シカマル・・・ やだ離して。」

私は体に巻かれたシカマルの腕をほどこうともがいた。

「離さねー」

低い声が耳元に響いた。

「ずるいよシカマルは・・・私が子供だからそんな風に優しくしてるんでしょ?
 本当は私のことなんて好きじゃないんでしょ?」

ずっと、不安だったこと、さっき彼女に言われて傷ついた一言。
私が子供だから・・・・
そう、シカマルははじめから私のことなんて好きじゃないんだ・・・・

悲しい・・・もう涙がとまんない・・・・・こんなにシカマルが好きなのに、いつだって
シカマルに私の想いは届かないまま終わっちゃう・・・

でも・・・

「お前、何言ってんだ?」

シカマルの声は少し怒っていた。

「だって・・・だって・・・」

シカマルは私の耳元で小さくため息をついた。

「あのなー。一度しか言わねーから良く聞けよ。」

「え?」

突然、私の心臓がドキドキと高鳴りだす。

「俺はお前が好きだ。
 他の女なんて、どーでもいい。 
 いいか!!俺はじゃなきゃダメなんだからなっ」

「・・・・・・///////」

抱きしめる腕が強められて、耳にあたるシカマルの吐息が少し早くて、シカマルもすごく緊張して
いるのが伝わってきた。
そしてそんなシカマルを側で感じて、私の心臓は壊れるぐらいにドキドキしてきた。

で、でもでも・・・シカマルがこんな事、私に言ってくれるなんて初めてで・・・・
なんか夢みたいで・・・

「これだけ言えば、いくら天然のお前でも伝わったよな? 俺の気持ち・・・」

「シカマル・・・・」

「な、なんだよ?/////」

私は少しだけ後ろを振り向いて、シカマルの目をじっと見た。

「もしかして、私をからかって嘘言ってる?」

「な!!お前なぁ!!こんな状況で嘘なんか言うかっ バカ////」

「ほんと?」

「ほんとだっつってんだろ」

「・・・本当に?」

「しつけーよ。 どこまで疑う気だこの天然女!」

「シカマルー」

その言葉を聞いた瞬間、私は前にまわされたシカマルの腕にしがみついて、
また泣いてしまった・・・
だって、嬉しくて・・・もうたまらないよぉ

「ったく。もう泣くなって・・・」

シカマルの優しい声が耳元を刺激して、密着した体を急に意識してしまう。

私の背中にぴったりとくっついたシカマルの胸から、シカマルの鼓動がやけにリアルに
響いてきた。
そして私の心臓はドキドキする・・・恥ずかしくてたまらない。


「ねぇ・・シカマル・・・本当の気持ち伝わったから・・・だからもう・・離して?」

「やだ・・・離さねーってさっき言ったろ?」

シカマルは緊張している私に気づいて、わざと意地悪な声でそう言った。

「だって・・・ここ道だよ?誰かに見られちゃうよぉ/////」

「誰もいねーよ」

シカマルはくくくと笑う。

「シカマルの意地悪ぅ!恥ずかしいの////ドキドキしてもう立ってらんないよぉ」

「バーカ」

その瞬間・・・シカマルの腕がギュっと私の体をキツク抱きしめたから、
私の頬がグングン熱くなってくるのが分かる。

「本当・・・お前は・・・なんなんだよ・・ったく」

ふいに吐き捨てるように言われた。

「え?なに?シカマル」

「天然で俺を誘うなっ っつってんだよ。」

「誘うって////え?」

シカマルの片方の腕が動いて、頭を優しくなでられる。

「もう限界なんだよ俺・・・お前の前でふつうにしてるの・・・・」

「シカマル?」

「すぐいじけるところも、笑ってる顔も、怒ってる顔も、照れてる顔も、お前の全部・・・
 すげーかわいいんだよ・・・」

首筋を優しく撫でられて、私の体はドキドキ震える。

「シカマル///////」

「お前、俺がどんだけ必死で我慢してっか分かってねーだろ?」

シカマルは私の首すじに顔を近づける。

「もう俺、無理だから・・・・」

次の瞬間、シカマルの熱をもった唇が私の首筋に押し付けられて、ギュッと強く吸われた。


鈍い痛みが走る。
でも、決して嫌な痛みなんかじゃない。
むしろ、それは快感に近かった。
シカマルに強く噛まれた部分だけが熱をもって体中が心臓みたいに音をたてる。
心臓が壊れそう・・・クラクラするよぉ・・・・


・・・こっち向けよ・・」

「やだ/////」

私の顔はきっと真っ赤だもん。恥ずかしいよ。


「俺のかわいい彼女。かわいい浴衣姿、ちゃんと見せてくれよ」

両肩をやさしく掴まれて、ゆっくりと前を向かされる。

「すげー似合ってるぜ、/////」

シカマルも真っ赤な顔でそう言ってくれた。

「シカマル・・・・・」

なんだか今度は嬉しくて泣きそう・・・・

「あーーーかわいい姫、俺と一緒に花火でも見に行ってくれませんか?」

手を差しだされる。

「でも、もう間に合わないよ?」

だって、私達、もう家の方まで帰ってきちゃったから、いまさらお祭りの会場に向かっても、
きっと花火の打ち上げ時間には間に合わない。

「大丈夫だって、俺を信じねーのか?」

シカマルに覗き込まれる。
そんな訳ないじゃない!私はどこまでもシカマルと一緒に行くわよ!

「連れてってくださいっ 私の王子様」

私は差し出されたシカマルの手をギュッと握りかえした。

「あーーーーやっぱ照れんな・・・こういうの・・・・」

シカマルは片手で頭をガリガリとかいた。

シカマルらしくて笑っちゃう。


あははは と私が笑った。

「笑うなってのっ」

シカマルも少し笑って、それから私のおでこを軽くでこピンされる。
いつものシカマルといつもの私。
やっぱりシカマルと一緒にいると安心する。
シカマル、大好きだよ!!



手をひかれて、歩いて行くと、河原に出た。



「シカマル?花火じゃないの?」

「いいから、まぁ見てろって・・・・」



シカマルは私をいつもの土手に座らせた。




ヒューーッ




遠くで、花火の上がる音。



ドカンッ




-----------------------------あっ-------------------------------




小さい小さい姿だけれど、川面が鏡のように花火をうつした。


真っ暗な河原が一瞬、花火の色に染まって、キラキラと輝く。





「綺麗・・・・・・」


「だろ?」


みんなは花火を近くで見ようと、お祭り会場に行っているはず。
でも、こんなに家の近くで、人も誰もいないところにゆっくりと2人で花火が見れる。
こんなところを知っているのは、きっとめんどくさがりのシカマルだけだ!

でも、そういうシカマルが私は大好き!
シカマルのそういうところ・・・・誰よりかっこいいよ。
でも、でも、だからこそ、不安・・・・

「シカマル・・・」

ねぇ・・・本当に私なんかでいいの?
そう言うつもりだった・・・でも、やっぱり聞けない・・・
怖くて聞けないの・・・・

・・・心配すんな・・・俺はお前以外の女に興味ねーから」

「シカマル/////」

私が何も言わなくても、いつもそうやって安心させる言葉をくれる。

「んじゃ、仲直りっと」

シカマルは私をギュっと抱きしめた。

2人の心臓の音が重なる。

「あんま やきもち焼くなよ。お前が心配するほど俺もてねーから・・・」

「だって、あの女の人・・・」

「俺みてーなガキには興味ねーってさ」

「シカマル・・・・」

嘘つき・・・でも、私を心配させないために・・・・

「シカマル、ありがとう」

「なんだよっ・・・意味わかんねーつうの////」

真っ赤な顔で照れてるシカマル。

私はシカマルの肩にちょこんと頭をのせて、腕にしがみついた。






「あーーーーやっぱ俺無理・・・・」

「え?」

「キスしてーなーーーーって///////」

「シ、シカマル//////」

「初めてすんのに・・・こんな場所じゃお前いや?」

「・・・・・・・・・・・・ううん。いやじゃない」


その瞬間、シカマルに肩をつかまれる。

ゆっくりと近づくシカマルの真剣な顔。

私はそっと目をつぶる。

柔らかい唇が重なって、つかまれた肩に力が入れられる。


キスってすごく気持ちいい・・・
シカマルの体温が唇から伝わる。
優しい感触・・・・

ゆっくり離される唇が、まだ物足りなくて、さびしいよ。


「俺、もっとお前が欲しい・・・いいか?」
「うん。もっとして」


唇を少し乱暴に押し付けられて、わずかに開けられた口元からシカマルの舌がはいってくる。
恥ずかしい気持ちと、もっと欲しいと思う気持ちが交錯して、頭がボーッとする。
シカマルと私の舌はまるで抱きしめ合うように何度も絡みつく。

人を好きになるって、愛するってこういうことなんだなって思う。
相手のすべてが欲しくて、すべてを感じたいと思うもの


何度も何度も深く深く求めあう私達。


遠くで花火があがる音を薄れる意識の中で何度も聞いた。




ゆっくりと、唇が離された。

私は意識がボーっとして、そのままシカマルの胸にコツンとおでこをぶつけた。


「これ以上やったら・・・俺、お前にもっとすごいことしちまいそうだ・・・・」


その言葉に私の体はドキリと反応する。


「けど、それはさすがにここじゃ嫌だよな?」


シカマルが笑った。
私は真っ赤な顔でコクコクとうなづく。



「んじゃよ、今度・・・・・・・やらして・・・・」

「シカマルのバカァ/////」


胸をぽかぽかとぶつ。
シカマルは笑ってる。


「ねぇ・・・・シカマル・・・・大好き」

「あぁ・・・俺も・・・・」



ドドドドンッ


夜空に色とりどりの花火がいくつもいくつも上がりはじめた。
祭りの最後の花火のフィナーレだ。




空には満点の星
川面にはいくつもの大輪の花火

かがやく川辺に思わず見とれる。

「ねぇ・・・シカマル?」

「ん?」

祭り最後の大きな花火が上がって、辺りが一瞬輝いた。






            ・・・・もう一度キスして?・・・・




「バーーカ////」

そして、シカマルのあったかい大きな手が私の頬を優しく包み込む。
私はゆっくり目を閉じる。

(・・・愛してる)

(え?)

小さな囁きは、聞きかえす前に優しいキスで遮られる。

お祭りと花火とキス そしてシカマルの優しい告白。

今年の夏はたくさん思い出がありすぎて、私はきっとドキドキが止まらない。








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