(ずっと待ってる・・・・)
そう言ったけど・・・・


カチコチカチコチ・・・・


時計は9時をさしていた。



「やっぱり来てくれないよね・・・・キバ・・・・」


キバ・・・



優しい声が頭の中でこだました。

ガハハハと大声で笑うくったくのない笑顔。

・・・大好きだぜ』
少し照れながら言う姿。


私は今まで、ずっとずっとキバに甘えていた。
私が好きと言わなくても、キバが私から離れていくはずなど無いと
たかをくくっていた。

私はあんなに大事にしてくれたキバを大切にしてあげてなかった。




キバ・・・・会いたい・・・・会いたいよ・・・・・



私はキバにちゃんと気持ちを伝えたい。

たとえキバが許してくれなかったとしても・・・
一度でいい
正直に自分の気持ちをキバにぶつけたい・・・・



でも、やっぱり無理なの?キバ・・・・・・



涙がドンドン溢れてきて、そのうち嗚咽になって、
泣き出す私。





ドンドンドンッ!





突然、家のドアが力強く叩かれた。


!俺だ、開けてくれっ」





       キバ!!




私は転がりそうになりながら、玄関の扉を
思い切りあけた。


目の前で息を切らし、両膝に手をつけて、腰を屈めたキバ
がいた。

「キバ・・・・・」

ゆっくりと顔をあげる。
汗だくで、肩で息をしているキバ。
一体どこから走り続けてきたのだろう・・・・・・・

はぁはぁはぁ・・・・呼吸が乱れて、うまく言葉が出せない

・・・・遅くなっちまって・・・ごめんな。」

苦しい顔をしながら、笑ってくれた。
優しいキバの笑顔・・・・

「いいの・・・・来てくれてありがとう・・・キバ」

胸が熱くなって、そう言うのが精一杯・・・・


キャンキャンッ!
足元で赤丸だけが元気そうにかけずり回っている。


「ったく。赤丸は元気だな・・・・」
ゆっくりと赤丸を抱き上げて、顔を近づけて笑う。



あーーーー私はやっぱりキバが好き・・・・・・



私は目を閉じた。



?お前・・・泣いてるのか?」
玄関先で心配そうに見つめるキバ・・・・

「ううん。違うよ・・・・ささ、入って。」

私はキバを家の中に入れる。




そうだよ。まだ泣いたりしちゃダメだ!
キバにきちんと気持ちを伝えるまで、私は泣いたりして
はいけない。
もうキバに甘えたりしちゃダメなんだよ!


自分にそう言い聞かせた。



「あれ?おばさん、どうしたんだよ?」
「今日は任務でいないよ・・・」
「そ、そっか・・・・・・」
キバはなんとなく遠慮がちに言った。



「ねぇキバ・・・夕飯食べた?」
私はキッチンにむかう。

「え? あー・・・ま、まだ・・・・・・・・」


嘘つき・・・キバは嘘つくと目が泳ぐんだから・・・・


「本当?食べたくなかったらいいよ」

「いやっ まだ食えるから・・・」
キバはいつものように、いつもの席にドカッと座った。

いつも私と母親は向かい合って座っている。
キバはいつもお子様席のように、私と母親の隣、
真ん中に座るのが、私達のパターンだった。


「ところで、夕飯何?」
甘えた顔で私を覗きこんだ。


「えへへ。 じゃーーーん!キバの大好きなシチューだよっ!」
私は鍋をキバの席まで持っていって中を見せた。


「え!!」
キバはすっごく驚いた顔している。

「嫌?・・・だった?」

「バカ!そ、そんな訳ねーだろ。俺の大好物じゃんっ」
なんとなく焦っているキバ。


「う・・・・うん・・・・・・・」

私は冷めてしまったシチューを暖め直す。

その間、私はキバの横顔を見ながら、自分の席につく。



なんとなく、お互い無言になる。


(一体、どんなタイミングで目の前のキバに気持ちを伝えたら
 いいのかな・・・・・)

私はドキドキしながら、黙ったままのキバの横顔を見ていた。



キバがふいに私の顔を見た。


「なぁ・・・・・・・・・・」

真剣な目だった。

「う・・・・うん」
私はゴクッと唾を飲みこんだ・・・・・
何を言うつもりなんだろう・・・・

その顔はいつものキバらしくなくて、私はすごく
不安になる。


その時

ぐつぐつぐつぐつ・・・・・・


鍋から、もう火を消すように!と言いたげに、大きな音と
おいしい匂いがした。


「できたよ〜!特製シチュー!」
私はキバの真剣な目から逃れるように、鍋のところにそそくさ
と走っていった。


お皿にシチューをのせている間も、背中の後ろから、キバの視線を
感じて、なんだかドキドキして手が震えた。



「ほら・・・・おいしくできたよ。 キバ、赤丸・・・どうぞ」

コトンとキバの前と、床の赤丸の前にお皿を置くと、

「うわっ うまそーーーー」
キャンキャン!

キバも赤丸もすっごく嬉しそうな顔をした。

私はホッと胸をなでおろす。

(良かった・・・・いつものキバだ・・・・・・・)






『いただきまーーす!』
2人で手を合わせて、シチューを口に入れる。


「あぁ・・・やっぱのシチューは美味ぇな。」

次々に口にいれていくキバ。


「そんなに慌てると、喉につまるよ!」



突然キバが  ウッ   と苦しそうな顔をした。


「キバ!キバ!大丈夫?」
私は椅子から立ち上がって、キバの背中をさする。


「バーーーーーカ!冗談だよっ 」

ガハハハハハ

大笑いしてるキバ・・・・・

本当にもうっ 子供なんだから!


でも、でも、やっぱり、私はそんなキバが悔しいぐらい好き・・・・・・


「あれ?、怒らねーの?めずらしいーな」
キバは私の顔を覗き見た。


(私の心の中で、キバが大好きだって叫び声が聞こえる。
  もう、言おう・・・今、キバを好きだって心底思える今なら・・・
  きっと言える・・・・・)

私は不思議そうな顔をして、私を見つめるキバの顔を真剣に見た。



ドキドキが静まるのを待って、それでちゃんと言わなきゃ。



しばらく無言でキバの顔を見つめた。



そのうち、笑っていたキバも私を真剣に見つめている。


(言おう・・・・言わなきゃ!)














カチコチカチコチ・・・・・・


時計の音だけが響いている。

俺の目の前で、は真剣な目で俺を見ている。
何かを言おうとしているのが、俺にもなんとなく分かった。
そして、それが決して笑い話しなんかじゃないってことも・・・・・

俺はなんだか嫌な予感がして・・・・ドキドキと心臓がなっていた。



はゆっくりと言う。

「キバ・・・・大事な話しがあるの・・・・・」






(やっぱりな・・・・・・・・別れ話・・・・か・・・・・・)
俺は溜息をついた。





はいつだって、物事はきちんとはっきりさせないと納得
しない奴だった。

『んな事、どーでもいいじゃーねーかよっ』

俺がそう言っても

『良くないよ!こういう事ははっきりさせておかないと、
 なんか気持ち悪いもんっ』

そういう事だけは、絶対譲らない頑固なところがあった。






だから・・・・なんとなく分かる・・・・・・


お前は俺との事をはっきりさせようと思ってるんだろ?
俺とはっきりと別れるつもりなんだろ?



でもな・・・俺だって、これだけはゼッテー譲れねーんだよっ













黙ったままのキバ・・・・・

やっぱり怒ってるのかな?
こんな時に好きなんて伝えていいのかな?

私はまた不安になる。

恐る恐るキバに聞く。

「ねぇ・・・キバ?・・・・・・・・・・」


キバは俯いて言った。


「やだねっ お前の話なんか聞かねー」

え?

「ど、どうして?聞いてほしいんだよ・・・私」

「嫌だって言ってんだろっ」

「なんで?なんでよ!」
突然のキバの言葉に私もムキになってきた。

「聞きたくねーーーって言ってんだろうが!」
キバは私の顔をキッと睨んだ。

「嫌!私は聞いてほしいの!キバにはっきり伝えたいの!」

「いいって!しつけーんだよ!お前!」

キバは私の方に向き直って怒ってる。

そんなに私を拒絶するの?
ひどいよキバ!

「私、このままじゃダメだもん!私は、、、、私はキバ・・・」



『好きなんだよっ!俺は今でもがすげー好きなんだ!
 俺はゼッテー別れねーぞ』



え?



拳で机をガンッと叩いて、キバが突然叫んだ。



『お前が俺を忘れても、俺はゼッテーお前を忘れたりしねー!
 お前に何かあったら、真っ先に助けに行くぜっ!
 お前に新しい男が出来たとしても、そのヤローより先になっ!』



キバは大きな声をあげて、私の顔を睨みながら、長セリフを勝手に
言い切って、ハァハァと息をきらしている。


私の目は驚いて見開かれた。


「キバ・・・・あんたって・・・バカ・・・・じゃないの・・・・」

「あぁ・・・バカで結構!俺はこういう男なんだよっ悪かったな!」
キバはますます怖い顔で私を見ている。




もう・・・・私が言うつもりだったセリフを先に言わないでよ・・・・・



「キバ」

「なんだよっ!」

私はキバの首に腕をまわして、おもいっきり抱きついた。


「え?」
キバは驚いている。


「私も・・・・私だって、キバがピンチな時はまっさきにかけつけて、
 キバを守ってあげるよ。たとえ、キバに新しい彼女ができても、
 私が誰より先にあなたを守ってみせるよ・・・・・」



キバは呆然とその場に固まっている。


もう!なんかじれったいよ!

「キバのバカ!ちゃんと抱きしめてよ!」
私はキバにまわした手をギュッときつくした。


「え?あ・・・・あぁ・・・・悪ぃ・・・・・・・・・・」
ワンテンポ遅れてキバがギューッと私の体を抱きしめる。


そして、恐る恐る私に聞いてきた。

「あのよ・・・それは・・・その・・お前の話ってのは・・・別れ話じゃねーって事か?」
キバは信じられないって顔で私の顔を見た。


「あたり前でしょ?バカみたいキバ・・・・ 一人で何、焦ってんのよ!」

急に正気に戻ったらしいキバは

「バカってなーー!お前、俺の渾身の大告白にそれはねーだろっ!」
私の顔を睨む。



「本当にバカなんだから・・・・」
キバの鼻をつまむ。

「バカバカ言ってんじゃねーーーー」
キバは少しふてくされた顔


だってバカなんだもん・・・・キバは大バカだよ・・・・・
でもね・・・・・


「でも・・・・そんなキバの事が大好きよ・・・・私はキバが誰よりも好き・・・・・・
 私を・・・・キバの一番にして下さい・・・・・・」
私はドキドキしながらキバの顔を見つめた。



キバは初め驚いた顔をしたけど、その後、ゆっくりと笑った。

「当たりめーだろ・・・はこれからもずっと俺の一番だ・・・」



そっとキスされる。
ゆっくりと唇がおしつけられて、体を痛いぐらいに抱きしめられる。
あったかいキバの唇・・・・
好きで好きで仕方ないよ・・・あなたが大好き・・・・・・・・


それはとても幸せで長い時間に感じた。


きゃんきゃんっ!
赤丸が私達の足元で鳴いた。
(もういい加減にしたら?)


「バカ!邪魔すんなっ赤丸! 」

キバは足元の赤丸を睨んだ。



くすくすくす


笑ッちやう・・・・キバと私の子供みたいな恋愛。

でも、でも、キバ・・・私はこれからはきちんと言うよ・・・
あなたへの気持ちに正直に・・・・・
だから・・・・・


「キバ・・・大好きよ」

「俺もだ・・・・・・・」



チュッ



今度は触れるだけのキスをする。


「なんかシチューの味だな」
「うん」
2人で笑う。


「なぁ・・・」

キバが嬉しそうに言う。

「なあに?」
「シチューも味わったことだし、次はも味わっとくか!」


腕をまわして、肩を抱き寄せられる。
首にカプッと噛み付くキバ

「きゃーーー!やめてよっ もう!キバのばか犬ーーー」

にんまり笑顔のキバ・・・・

「あぁ俺は犬だって言ったろ? 一生離さねーぜ。 かわいい俺のご主人様」

頬をペロッと舐められる。



はぁ・・・もうバカ!


やっぱりはめられたのかな?私。・・・
この先がおもいやられるよ・・・・・・

でもいい・・・・キバが一緒にいてくれるなら
私は幸せだよ・・・・・だからもう一度・・・・素直な気持ちで・・・



「大好きよキバ・・・・・・」




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