「シカマル君・・・・君の今の言葉は僕に対する宣戦布告と
 うけとっていいのかい?」

隣で男はジロッと俺を睨んだ。


「まっ そういうこった・・・・・・」

俺は両腕を頭の上で組んで、ニヤッと笑ってやった。


男は怒りで体を震わせている。


けど、俺はそんな男の様子など、気にも留めないという
態度で、あくびを一つしてやった。

「僕は・・・・僕は絶対を君に渡さない!明日は映画を見た
 後に、もう一度に告白するつもりだ!」

男は真剣な目をして、俺にそう言った。

「あっそ・・・・・・興味ねーな・・・・・」
俺はそのままゴロンと草の上にまた寝っころがった。


「君にはもうを取り戻すことなんて出来ないよ・・・」

男はたいそうな捨てゼリフを吐くと、去っていった。









「映画のあとに、もう一度告白・・・・ね・・・・・・」

ほんとに・・・バカだな・・・あいつは・・・・・
本気で守りたいものがあるんだったら、どんな事があっても、相手に
自分の手の内は明かさねーもんだぜ・・・・・

それから、もう一つ。
どんな状況においても、心を乱し、興奮した方が負けるっつうのが常識。
相手につけこまれんだよ・・・・

俺は興味ねーって態度でいたろ?
あれ・・・嘘だから・・・・。

熱くなりやすいあいつなら、その俺の態度に、きっと口を滑らせる
と思ってたぜ・・・・本当、読みやすい性格してんな・・・・・あいつは・・・


これで俺も戦略が練りやすくなったってもんだ・・・・・



 

俺はあいつの姿が完全に見えなくなったことを確認すると、
上半身をゆっくりと起して、深呼吸した・・・・・

草の青い香りが俺の心を落ち着かせる。
そして・・・・例のポーズをとった。

片膝をたてて座りなおし、両手を輪のようにして合わせて目を閉じる。






風の音・・・・草がやわらかくなびく・・・遠くで鳥が鳴く・・・・・
あぁ・・・・大丈夫・・・・・・・うまくやれそうだぜ・・・・・・・・






俺はゆっくりと目を開ける・・・・・

(へっ ありがとな、チョウジ・・・・・・)

「確かに影真似じゃあ、気持ちまではつかまえとけねー。
     ・・・・・でも、やっぱ俺にはこれしかねーか。」














次の日、私は彼との待ち合わせ場所に走っていた。

心の中はまだ不安と迷いでいっぱいだった・・・
私はこのまま彼とデートしていいの?
本当に彼を好きになれるの?

けど、その心とは裏腹に、彼との待ち合わせ場所がドンドン近づいて
きて、私の視界には、いつもより少しおしゃれをした彼がソワソワと
待っている姿が見えてきた。

(そうよ・・・・そうだよ・・・・彼は私を好きでいてくれる。
 大切に思ってくれてる・・・だから私も彼の気持ちに応えなきゃ・・・・)


私は自分にそう言い続けた。




「遅れてごめんなさい・・・・・」

はぁはぁ・・・・胸のあたりをおさえて、私はあがった息を沈めながら、
彼に微笑みかけた。


「全然待ってないから平気だよ!」
彼は私の顔を見て、えへへと笑った。

(嘘つき・・・・・彼は汗だく・・・・きっとこの暑いさなか、予定時刻より
  はやく到着して、そのままずっと私をここで待ち続けていたんだ)

私は彼の優しさに胸がジンとした。


「さっ 映画見よう!」

突然彼に手を握られた。

「!!」

私の心臓はドキドキと高鳴った。
今まで、シカマル以外の男の子と手をつないで歩いたことなんて
一度もなかったから・・・・・・





映画館は目の前・・・・・

そうだ・・・私は何の映画を見るのかも聞いてなかった・・・・
いかにも彼とのデートに興味が無かったみたいで、すごく罪悪感。
題名ぐらい聞いときゃ良かった・・・・・・・



「この映画ね・・・すごく見たかったんだ・・・・きっとちゃんも
 気に入ってくれると思うんだけど・・・・」

私は映画のポスターをそっと見た。
館内は2手に別れているようで、ポスターは2枚貼ってある。



『LOVE 〜真実の愛〜』
『キングゴジラ!木の葉の里壊滅の危機!』





「・・・・・・・・・コレって・・・・・・・・・・」

私はしばらく考えこんだ・・・・

たぶん私とシカマルだったら、ゴジラだろうな・・・・・・

ゴジラが暴れまくる姿をみて興奮する私に、隣でシカマルが
「くっだらねー」
とか言うんだろうな・・・・・

でも、結局、私はストーリーの途中で寝ちゃって、後でシカマルに
どんな話だったか聞くの・・・・・なぜか隣で同じように寝てたはずな
のに、シカマルは私に最初から最後までのストーリーを事細かに説明
してくれる・・・最後はきっと

「あのなー お前が誘ったんだろ?ったくこれだから、お前と映画に
 くるのはめんどくせーんだよっ」

眉間にシワをよせた顔・・・・・あくびしながらかったるそうに歩く姿。

そんな光景が容易に想像できた。

そうだね・・・・本当に私ってめんどくさい女だよね・・・・
だからシカマルに好きになってもらえなかったんだよ・・・・・








私がボーッとしていたら、隣の彼が私の腕をひいた。

ちゃん、早く入ろう!席取らなきゃ!」

私が入ったのは・・・・・・・・






『LOVE 〜真実の愛〜』





隣同士の席に座って、館内は暗くなった。

「この映画ね・・・すっごく素敵なラブストーリーなんだってさ。
 木の葉の女の子の間でも噂になってる映画らしいんだけど・・・
 ちゃんはこういうの好き?」

小声で彼が聞く。

「え?あ・・・・・・うん。」

私は小さく頷いた。
だって、言えないよ・・・・興味無いなんて・・・・・



予告もだいたい終わった。
「はじまるね」
「そ、そうだね」

私達は話しをやめて、スクリーンを見据えた。






主人公の女の子は幼馴染の男の子に恋をしている。
しかし、男の子はあまりに近い存在の彼女を女として見てくれない。
そこに、彼女の父親が世話になっている御曹司の男が現れ、彼女に
プロポーズした。

彼女は男と婚約してしまう。


ラブストーリー自体には何の興味もない。
けど、この話しは・・・私をスクリーンに釘付けにさせた。
主人公の彼女はまるで、煮え切らない今の私とソックリだ・・・・・・




ラストが近づいてきた・・・・・・・



本当はまだ幼馴染の彼を忘れられないまま、彼女は男と旅立とう
とする・・・・・

するとそこに・・・・彼が現れた。

息を切らし、数人の男達に暴力をうけながらも、
彼女の為に必死に立ち上がり、彼女に駆け寄った彼は
「愛している。」と言うと、彼女をさらっていった。

「君以上の女はいない、ずっと一緒にいよう」
「えぇ もう絶対離れない」

映画のラストは2人が抱き合っている姿をバックに感動的な音楽
が流れ、エンドロールとなった。



こんなの・・・・・私には絶対ありえないラスト・・・・・
私は溜息をついた。
だって、だってさ、シカマルがこんなことしてくれっこないもん・・・・・



館内が明るくなると、会場では何人もの女の客が涙していた。

彼は私の顔を覗きこんで
ちゃん。つ・・・つまらなかった?」
と心配そうに聞いてきた。

「そんなことない・・・・でも・・・・・なんか有り得ない話しだなーって・・・・」
私の言い方は冷めてたかもしれない・・・

「そうだよね・・・・有り得ないよね?あはは」
彼は頭をかきながら苦笑していた。

あーーー悪いこと言ったかも。
せっかくチケットまで用意していてくれてたのに・・・・

「あのね、でも、ハッピーエンドでよかったよね!
 映画に誘ってくれて、ありがとう!」
私は懸命に笑顔をしてみせた。

彼はそんな私の顔を真顔でジーーーと見つめている。

「え?なに?」
私はそんな彼の気持ちが分からなくて、そう聞き返した。

「いや・・・・・ちゃんはやっぱり優しい人だなって思ってさ・・・・」
彼がふいに私の髪にふれた・・・・

すごくドキドキした。
でも、嬉しい感情というより、とまどいだった。
私をそんな風に褒めないで・・・私はそんな良い子じゃない!
今だって、隣にいるあなたの事なんて、少しも想ってなかったのに・・・・・



「さっ 出ようか・・・・」
彼はまた私の手をとった。
「話しがあるんだ・・・・大事な話しが・・・・・・」

彼の真剣な顔がすごく怖かった・・・・
お願い、これ以上私を好きだと言わないで!
私はうしろめたい気持ちで一杯だった。
やっぱり彼に悪いことをした。
好きでもない人と付き合ってはいけなかった・・・







彼は人通りの無い、暗い路地へと私を連れていった。
そこでふいに手を離された。

「僕は・・・ちゃんが好きだ」

やっぱり・・・・・私はどう応えて良いのか分からなくて、オドオドして
しまった。

ちゃんの優しいところや、頑張りやなところや、女らしいところ
 や、大人しいところ・・・・
 ちゃんのそういう全てが好きなんだ・・・・・」

彼の言葉の一つ一つが心に突き刺さった。

違う・・・・違うよ・・・・・あなたは私のこと何もわかってない・・・・
・・・・私はずるくて、わがままで、自分勝手で、あなたの想うような
女じゃない・・・・・・

「ごめんなさい。私・・・・やっぱり・・・ごめん。・・・・」
私はそれしか言えず、涙が溢れて止まらなかった。


「いやだ!ちゃんのことは誰にも渡さない!!」


不意に彼に体を抱き寄せられて、私はすごく怖かった・・・・・

(やだ・・・・やめてよぉ! )

一生懸命彼から逃れようとしたけれど、
腕に力を入れられ、私は身動きが取れなかった。

(怖い・・・怖いよぉ・・・・助けて!)

不意に彼の顔が私に近づく・・・

(え?やだっ やめて!)




「シ、シカマルーーーー!!」





急に体が軽くなった。
目を開けると、彼が真っ青な顔をして、ぼーぜんと立ち尽くしている。

(なに?どう・・・・なったの?・・・・・・)

私はハッとしてその場から逃げようとすると・・・・・

「か、体が動かない・・・・・・?」








「あぁ・・・間に合った・・・・・」



私はかろうじて動く目玉を声の方に向けた・・・・・・・・

「シカマル!!」

そこには涼しい顔でめんどくさそうにその場に立ち、
頭をガリガリとかいているシカマル。


私も、隣で青ざめた彼も同じように頭をかいた。


「シ、シカマル!影真似かけたの?」

「気づくのが遅せーーってぇの。」

フフンと鼻で笑って、めんどくさそーにこちらに向かってくる。


すると私も彼もシカマルに向かって歩きだした。

「な、なんなんだ?これは!」
彼は動揺して、声がうわずっていた。

「影真似だよ・・・・お前知らねーのか?これにかかった奴は死ぬ運命
 なんだよ・・・・」

「な、な、な、なんだと!」

「嘘教えんじゃないわよ!バカ!!影真似は相手をつかまえとく術でしょ!」

「へいへい。まったくはおっかねーな。たかが冗談だろっつうの」




隣の彼はそんな私とシカマルのやりとりをボーゼンと見つめている。



シカマルと私達の距離が縮まった。


「よぉ、。 お前に話しがあんだけどよ。」
「な、何よ?」

シカマルは一つ、大きな溜息をついた。

「お前の料理っつっちゃあ、まともに食えるのは煮物ぐらいなもんだけどよ、
 これから練習して上手になるまで待っててやるよ」

私は驚いて目を見開いた。
隣の彼も同じように驚いた顔をしている。


「それからな、何かっつっちゃぁ俺に八つ当たりしてくるその生意気な性格もな、
 正直もう慣れた・・・まぁ多少なら耐えてやってもいい。」


私の心臓がドキドキと音をたてる・・・・・・・


「あとな、お前の甘ったれで、わがままなその性格な・・・・・」

シカマルはうーーん。と一回うなった。

「まっ 結局、許しちまうんだがよ・・・・ほどほどにしとけ・・・・・」


シカマル・・・・・・・・


「なぁ。よく考えてみりゃー、俺ってよく耐えてるよな。
   こんなわがままな女を許せる男・・・・・俺以外にいるか?」 

フフンと鼻で笑ってみせる・・・・
シカマルの意地悪。
でも・・・・・私は・・・・・・


「いないわよ・・・・・・・バカ!」


その瞬間、パッと体が軽くなった。


私は影真似がとかれたのと同時にシカマルの胸に抱きついた。
「バカ・・・・、重てーよっ」
そう言いつつも、シカマルは私の腰にまわした片手をギュッと強めて
顔を近づけた。

『いいか、。これからお前をさらってく・・・』
シカマルは小さな声で耳元でそう囁いた。

『うん』
私は小さくうなずいた。




映画の彼は汗だくで彼女をさらっていったのに、
シカマル・・・
あなたは汗一つ見せず、かったるそうにやってきた。

映画の彼は「君以上の女はいない」と告白したのに、
シカマル・・・
あなたは私を散々バカにしたようにひどい事言ったのよ・・・

でも、やっぱり映画の彼と同じように、
シカマル・・・
あなたは、私をさらってくれるんだね・・・・・・・・・





「よぉ色男!つうわけで、こいつはいただいてくぜ」

シカマルは私をヒョイと抱き上げて、勢いよくかけだした!!


風を切る音が耳元で響いている。

私が振り向くと、遥かかなたにボーゼンと立ち尽くす彼の姿が見えた。





シカマルは私を抱きかかえたまま、どんどん速度を上げて、走り続けた。

「影真似とはシカマルらしいね・・・・・」
私はシカマルの首にギュッとつかまりながら、思わず笑ってしまった。

「あ?笑うなってぇの。これでも本気で考えたんだぜ」
シカマルはチラッと私の顔を見て、フンと顔をそらした。

「じゃぁ・・・・・ずっとこのまま影真似かけてて・・・私のことつかまえて
 おいてよ・・・・・」

「バ・・・・・バカ・・・・・・・・」
シカマルは真っ赤な顔で私を睨む。

「へへへ・・・・だって大好きだもん。シカマル・・・・」
私はシカマルの頬にキスをした。



その瞬間、シカマルはゆっくり速度を落として、その場にとまった。
そして私を地面にそっとおろした。


「じゃぁ。 まー お前を助けたお礼ってことで・・・・・」


え?


シカマルは私の顎をきゅっと掴んで、唇にキスをした・・・・・・・・


「ば、ばかぁ!」
私は顔が真っ赤になった。

「あぁ?これぐらいの見返り貰ったってバチ当たんねーだろ?
  だいたい俺が助けにいかなかったら、お前どうなってた??」

眉間にシワを寄せながら顔を覗かれて、私は何も言い返せなかった。

「あっ それとな・・・・・」
シカマルは意地悪く笑った。
「な、なによ!」
私はどうせロクでもない事を言うのだろうと、少しムクレてシカマルの顔を見上げる。


「これからは、お前は俺の女だから・・・もう他の男には触らせねーぞ」

へ?

今度はすごく優しく、シカマルの腕が私を抱き寄せた。
そして、ゆっくりと優しく口付けられた・・・・
まるで、大事な宝物でも扱うように、やわらかい力で・・・

「シカ・・マル・・・・・好き。」
「あぁ・・・・俺もな・・・・・・」
シカマルの腕の中で私は目を閉じた。










次の日、俺達10班は朝から任務があった。

チョウジとの待ち合わせ場所に早くついた俺は昨日の出来事を
思い出していた。

「ごめん!シカマル!待った?」
「あぁ・・・今来たとこだ・・・・・」

俺達は歩きだした。


「なぁ、チョウジ・・・・あのよ・・・・の事で俺が悩んでる時のこと
 お前、覚えってっか?」

俺はチョウジにどうしても話しておきたかった。

「え?うん。覚えてるよ・・・・」

「あん時、俺に影真似があるって教えてくれて、ありがとな・・・・」
俺はなんか気恥ずかしくって、思わず頭をかいて応えた。

「うーーーん?僕、そんな事言ったかな?」
チョウジは頭をかしげている。

「あ?」
俺は口をぽかんと開けてチョウジの顔を見た。

「言ったかもしんないけどさ・・・それは・・・だって、シカマルには
 影真似しかないじゃない!」

チョウジは笑っている。

あーーそういう事かよ!俺はニヤッと笑った。

「けっ 言ってくれんなっ オイ!」

「痛いよぉ シカマルーーー! マフラー離してよぉ!」

「やだねっ 絶対離さねーーー!!」

俺とチョウジはまるでガキみてーにゲラゲラ笑いながら、
歩いていた。





遠くから俺達を呼ぶ声がする。

「コラーーーッ!2人とも遅ーーーーい!」


俺とチョウジは思わず顔を見合わせた。

「やっべーーー!いのだ!」


「今行くよぉ! いのーーーー」
チョウジが大声で叫ぶ。

「あーーーーーぁ 今日もめんどくせーことになりそうだ」
俺は溜息をひとつ。

けどよ、今日はこんなに空が青いし、空気もうめーし。
ついでには俺のもんになったし・・・・
なんだか最高にいい気分だぜ。
お前らのお陰ってやつ?


めんどくせーけど、認めてやるよ。
やっぱ10班は最高だぜ。



俺達は大きく手招きするいのに向かって走りだした。





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