「かぁー このあんみつ!めちゃくちゃ うめーぜ!
 なっ !」

キバはご満悦って顔であんみつをガツ食いしてる。
 
 キャンッ!

「おーおー 悪ぃ悪ぃ 赤丸にもやっからよ!ホレ!」
同じスプーンで赤丸の口にあんを入れてあげるキバ。


「本当・・・おいしいね・・・・・」

私は大の甘党。
だから、このあんみつもとってもおいしくて幸せだけど・・・

けどさ、けど・・・・今日はキバと久しぶりのデートだったのに。

外はぽかぽか良い天気で、サクラも満開で、絶好のお花見日和だって
いうのに、なぜあんみつ屋?

私がキバの顔をボーッと見つめながら、そんな事を思っていると・・・・

「なんだよ!俺ってそんなにカッコイイかぁ?」
キバはスプーンを咥えながら、ニシシと笑った。

「バッカじゃない」
私はあんをパクリと口にほおりこんだ。

「ちぇっ せっかくお前の好きな甘いもん食わせてやってんのによっ
 かっわいくねーな。 なっ 赤丸!」
キバはちょっとムクレて同意を求めるように赤丸の頭をなでた。

「だって、せっかくこんなに花満開で外は綺麗なのに、なんでこんな所で
 デートなの?」
私はキバをチラッと見た。

「へっ に言われたかねーな。花見て喜ぶなんざ、大人しいヒナタ
 ぐらいなもんだろ?お前、花より団子じゃん」

何ぬかす!みたいな顔で言われてちょっとムカついた。

「な、なによ!ヒナタは女の子らしいけど、私は食い気だけの女みたいな
 言い方じゃない!!」

「当たってるじゃん」

ボコッ

「痛てぇ!」

鈍い音がした。
目の前のキバは足のすねをさすりながら、涙目になっている。

「お前なー!!マジで怒るぞ!」
キバはただでさえ怖い顔をひきつらせて、私の顔を睨んだ。

「ふぅんだ。どうせ私はヒナタみたく優しくないもんね・・・
 どうせ、かわい気のない女だもん・・・・・」

キバがヒナタの事ばっかり褒めるから・・・・・・
なんかいじけたくなっちゃうよ・・・・

・・・・・お前は一番かわいいって!」
キバのやつ・・・私が焼もちをやいたのが分かって、なんか得意げな笑顔
をしている・・・・・・なんだか悔しい。

でも、机の下で私の足を、キバの両足でがっちりと挟まれてしまうと、
私はキバの体温をじかに感じてしまって、ドキドキしてしまった。





あんみつを食べ終わると、私達は土手まで赤丸の散歩に出かけた。
土手の向こうには色とりどりの花が咲き乱れ、サクラの花びらが舞って
いる。

土手のまわりには、案の定、幸せそうなカップル達が腕を組んで
花を見上げては、微笑みあい、デートを楽しんでいた。

「やっぱりデートってこういうのを言うのよね・・・・」
私が呟くのと同時に

キャンキャンッ!!

赤丸が興奮して走りだす。

「あっ!こらっ!待てって!」
キバは赤丸の後を追って走り出した。

私は2人の姿を土手の上に腰掛けてみていた。

赤丸もキバもかけづり回って、笑っている。
それはすごく暖かくて、幸せな光景だった。

「私とキバじゃ、デートって感じになれないけど、でも、こうゆうの
 もいいかも・・・・・・」
ちょっとそう思ってしまうくらい、今のキバの笑顔はかっこいい・・・




!お前も来いって!」
キバが土手の下で叫んでいるけど、でも、私も一緒に走るの?

私がボーゼンとしていると、キバは自慢の俊足で一気に私の目の前
に現れたかと思うと、

「早く来いよ!」

私の手をグイッとひっぱった。


「きゃーーーっ」

とっさの事でバランスを崩した私は土手を転がるように落ちて、
気がつくと、服も髪も草と泥だらけ・・・・

「もう!キバのバカーーーーッ」

「だーーーはははは!、どんくせーーー!!あれくらいで
 コケるか?ふつう!」
お腹を抱えて大笑いしているキバ・・・

キャンキャンッ!!

「あ?なんだよ赤丸?」
笑いすぎて涙目になったキバがなおも笑いをこらえながら赤丸を見る。

私の殺気に気づいた赤丸がキバにバカ笑いを止めさせようとしていた
のだ・・・けど、もう遅いわよ!


バッチーーーン!


「痛てぇーーーーー」


私は思いっきりキバのほっぺたをひっぱたいた。

「キバのバカ!最低!せっかくのデートなのに!なによ!
 男なら、彼女のこと大事にするもんでしょ!!」

「んだよ!!大事にしてんじゃねーか!一体何が気にいらねーんだよっ!」
キバは私にぶたれて真っ赤になった頬をさすりながら怒鳴った。

「こんなに花が綺麗なんだもんっ!私に摘んでプレゼントとかして
 みなさいよ!キバって本当、デリカシーのかけらもないんだから!!」

そうよ!まわりのカップルを見てみなさいよ!
もっと私を女の子扱いしてよねっ!

「さっきから、花花ってうるせーな!花なんてどこがいいんだよっ!」
キバはくだらねーって顔でそっぽを向いて言った。
私はキバをキッと睨んだ。

「女はみんな、好きな人から花をもらえたら嬉しいものなの!!」

「だってお前、普段は色気より食い気じゃん・・・・・」
キバがボツリと呟いた。

私達のケンカを見ていた周りのカップルにクスッと笑われた。

「もうキバなんて大ッ嫌い!!」

私はフンッとキバに背中を向けて帰り道を歩きだした。

「おいっ!!待てよ!」
キャンキャンッ
キバは私の後を追ってきて、手をギュッと握った。

せっかくのデートなのに・・・・ケンカ別れはすごく嫌な気分・・・・

・・・・何怒ってんだよ!機嫌なおせって!!」

でも、私は何も答えなかった。
2人で並んで、そのまま無言で歩きだした。
手はキバにギュッと握られたままだった・・・・・・・・・
時々、キバが私の顔を心配そうに覗きこんで
「なぁ・・・・・なんか言えよ・・・・」
と言った。
その後も何度か話しかけられたけど、私はキバを無視しつづけた。
クウン・・・・・隣を歩く赤丸はそんな私達を心配そうに見上げていた。




それでも、私を家の前まで送ってくれたキバ。
つないでいた手は自然と離れた。

「じゃぁ・・・・またね・・・・・」
私はキバの顔を見れなくて、そのまま家の中に入ろうとすると、
キバにグイッと抱き寄せられた。
「このまま帰したくねー」
キバの真剣な目。

でも、私はどうして良いのか分からなかった・・・・
心の中はまだモヤモヤしている。

その時、突然キバは私の肩を掴んで顔を寄せた。
キスしようとしてるんだ。
「いやっ!」
こんな気持ちでキスするのなんて絶対嫌だよ・・・・
私はとっさにキバの胸をグイッと押して、抵抗した。

「分かったよ・・・・・もういい・・・・・帰るぞ・・赤丸」
キバは私にくるっと背中を向けてそのまま走っていってしまった。

私は家の玄関の前でボーっと立ち尽くしていた。

だって・・・キバが悪いんだよ・・・いつだって私を子供扱いしてさ・・・
私だって女の子なのに・・・・






その夜、お風呂から出ると、私はキバとの今日のことを考えながら
タオルで髪をゴシゴシとふいていた。

あんみつ・・・おいしかったな・・・・・・・
あれ、きっと私の為においしいお店を探してくれたんだろうな・・・

キバはいつも私に優しい・・・
でも、私はもっと恋人みたいにドキドキするようなデートが
したいの・・・・・
もっと、キバに寄り添って、もっと私のこと見つめてほしいんだよ・・・

なのにキバはいつだって、私をからかってばっかりで、
隣で大笑いしてるんだから・・・

でも・・・・今日の私はやっぱりわがまま過ぎたかも・・・・

キバ・・・怒ってるだろうな・・・もしかして、私のこと嫌いになっちゃった
かも・・・・・・

キバ・・・・今頃どうしてるかな・・・・・・・・・・・


ピンポーン



家のチャイムがなった。

「あら?こんな時間に誰かしら?」
母親が洗い途中のお茶碗をカチャリとおいて、玄関にむかっていく。


しばらくすると


ーーー キバ君が来てるわよ!早く来なさーーい!」

玄関先で母親が叫んでいる。


え?キ、キバが?


私の心臓はどきどきと高鳴った。

私はおそるおそる玄関を覗きこむと
キバがまじめな顔で立っている。

「こんな時間にどうしたの?キバくん・・・・」
母親がキバの顔を覗きこむと
「おばさん・・・・ちょっとこれから借りてく。 すぐ戻っから、
 いい?」
キバは真剣な顔で母にそう言った。

「え?えぇ。キバ君が一緒なら安心だから・・・別にかまわないわよ・・・
 そのかわり、はあとで責任もって送り届けてくれるわね?」

「あぁ。俺が絶対ちゃんと送る。」




キバ・・・・・・私は玄関に飛びだした。

「キバ・・・・・」
、ちょっと来い・・・・」
キバは私を手招きして呼んだ。

クウン

気がつくと、赤丸が私の後ろにきて足を押している。

「分かった・・・・じゃ、いってくるね、ママ」

私は玄関の扉を閉めた。

「ついてこい」

「え?どこに?」

キバは無言で走りだす。
「ま、待ってよ!」
キャンキャン!赤丸は楽しそうに私の後ろからついてきた。






はぁはぁ・・いくら私が忍びだからって、これはキツイよ・・・
どれくらい走ったかな・・・・
気がつくと、森の奥まで来ていた。

辺りは真っ暗で、ここでもしキバを見失ったらと思うとすごく怖かった。

「キ、キバぁ、ねぇちょっと待って・・・もう私走れないッ!」

キバは無言で私を振り返ると、突然体を抱きよせられた。

「え?やだ、こんなところで何するのよ!」
真っ暗でキバの表情も全然見えなくて、私はすごく怖かった。

キバったら、私をどうする気よぉ!!

「バカ!暴れんじゃねーよ」

え?

キバは私の体をヒョイと持ち上げた。
とっさのことですごくびっくりした

「きゃーーーーー」

私は何されるのか分からなくて、ギュッと目をつぶった。

すると、キバは私を抱えて走りだした。


真っ暗な闇の中、私の耳にはゴーゴーと風を切る音が響いている。
辺りの木々が黒い影のように過ぎていく。
朝と違って、全てのものが真っ黒で、不気味に見えて仕方なかった。

「キバ・・・・怖いよ・・・ねぇ、どこに行くの?」
私はキバにしがみついて耳元で呟いた。

「怖かねーよ。俺がいんだろっ」
キバはそれだけ言うと、私を抱く手を強めて走り続ける。
私はキバの体温が自分を包んでくれていることを感じて、なんだか
ホッとした。

そうだよ・・・・・キバが一緒だから、大丈夫・・・・・・・

しばらく、キバは私を抱きかかえたまま暗闇を走り続けた。

、ついたぜ・・・・・・」
突然、流れていた景色がとまった。
キバは私をゆっくりと地面におろしてくれた。


するとそこには・・・・・・


「あ!」


暗がりに青い光を放つ花々が一面に咲き乱れていた。


「き、綺麗・・・・・・・・・・」
その花は夜風に揺れると、かすかに鈴の音がするようだった・・・・
あまりの美しさに言葉を失った。

「へへっ いのの家の親父に聞いて来たんだ・・・・
 これは春の夜にしか咲かない 夜鳴麗花って名前の花なんだぜ」

「キバ・・・どうして?」
私にはキバの突然の行動が分からなかった。

「あぁ。あれから、どうしても、に喜んでもらいたくてよ・・・・
 花欲しがってたろ?だから、いのの花屋に行ったんだ。」

キバは照れて鼻の下をこすって笑った。

「そしたら、いのの親父が、コレを見せたらはきっと俺を許して
 くれんだろって言うからよ・・・・ずっとこの花を探してた・・・
 んで、やっと見つけたんだぜ!」



よく見たら、キバの体は泥だらけだった・・・・


あれから家に帰らずに、私の為にこの花畑をずっと探していたの?


「これは、だけの花束だぜ!どうだ!!こんなデッカイ花束を
 くれる男なんか他にいねーだろ?」
キバは私の頭にポンと手をおいて、笑った。
キャンキャン!赤丸も飛び跳ねてほえた。

「うん。いない・・・。」

いるわけないじゃない。私なんかの為にこんなに一生懸命になって
くれる人なんて・・・キバの他にいないよ!

「キバ・・・・・ありがとう・・・・・・・」

私はキバの胸に飛び込んだ。
キバは私の頭を撫でてくれた。

・・・・俺のこと好きか?」
「うん。大好きだよ・・・・・キバ・・・・・・・」

「ひゃっほーーー!やったぜ!赤丸!」
キバは夜空にむけて両手をつきあげて、叫んだ!
キャンキャン!
赤丸はそんなキバの周りをかけずりまわって喜んだ。

本当にバカなんだから・・・・・・

「キバ・・・・」
「あ?」


でもね、そんなあなたが誰よりも好きよ。



キバがこっちを見た瞬間、私はキバに触れるだけのキスをした。


驚いた顔をしているキバ。
でも、すぐに私の体を抱きしめてくれた。
「大好きだぜ・・・
「私もだよ・・・キバ」




リンリン・・・・・・・花の音色が優しく響く。
それはまるで、仲直りできた私とキバを祝福してくれてるみたいに・・・・
その時、夜風がブワッと吹きぬけた
青い光の花びらが一斉に舞って、辺りを照らし出す。

あ・・・・・・

キバが私の肩を掴んで、顔を寄せた
今度は抵抗しないよ・・・だって私も同じ気持ちだもの・・・・・
もう一度・・・・・・・
目を閉じたキバの顔が私に近づいた・・・・





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