「シカマル!おめぇは!ちゃんに
 何しでかした!」

俺が縁側で和んでいた所に血相を変えた
親父が怒鳴りこんできた。

「はぁ?いきなりなんなんだよ一体?」
俺は、はぁはぁと肩で息をする親父に
耳の穴をほじりながら答えた。

「お前、ちゃん怒らせたろ!
 んで、ケンカでもしてよぉ!
 ぜってーお前が悪い!」

なんなんだ?
まったくうるせーな・・・・・
しかも、俺が悪いことになってるしっ

「知らねーよ。」
俺はうるせーなと頭をかきながら答える
と、

「ばっかやろー 謝ってこい!今すぐ
 ちゃんのところ行ってこい」

俺はグイグイ腕をひっぱられて、玄関口に
ほおり出された。

「なッ なんなんだよっ!何をどう謝る
 っつうんだよっ!俺は何もしてねーって!」
さすがにムカついて俺が怒鳴ると、

「んじゃ、なんで、ちゃんがお前以外の
男と仲良く喫茶店なんかにいんだよっ」


え?


それはちょっと聞きずてならねーな・・・・・
でも、まさかが・・・・浮気?
俺は疑わしそうな顔で黙って親父の顔を
見た。

「俺は見たぞ。笑ってたぞ! かわいい顔でよ」
親父は涙をためている。

「俺はな、お前なんぞにはもったいねーが、嫁
ちゃんしか考えてねーんだよっ
お前のせいで別れるんだったら、お前が出てけ」

親父のわけわからない説教がうるせーし、
とにかくに会うのが先だと、俺はとりあ
えず親父に

「分かった。とりあえず落ち着けよ親父。
 には俺が話してくっからよ」

とだけ言うと、家の外にでた。



さて、どーすっかな?
んで、はどこにいんだよ?



俺の足は自然と里の繁華街へと向かっていた。




歩きながら親父のセリフを思いだす。

が男と喫茶店?・・・・・・

俺以外の男と喫茶店で向かいあいながら、楽しそう
に笑うの顔を想像した・・・・・・


マジむかつく・・・・・・
誰だよその男ってぇのは・・・・
人の女に手ぇだしやがって・・・・・・・


歩いていた俺の足はどんどん速まって、気づいたら
走っていた。

普段の3倍ぐらいの速さで繁華街についた。
相変わらず人が多いぜまったく。

俺はこうゆう所はかなり苦手だ。

走ったせいで顔に流れるほどの汗をかいた。
俺がこんなのありえねーよっ

はぁーーーーー盛大な溜息をついた。



「お?シカマル〜!どこ行くんだってばよっ!」

乱れた息を整えていると、聞き覚えのあるマヌケな声。

「ナルト!!」

俺はこんな時にめんどくせー奴にあっちまったと
溜息をついた。

ナルトはそんな俺に構わず、

「なーシカマル〜。俺ってば、もうめちゃくちゃ腹
 減ってるってばよ。一緒に飯食おうぜ!」
俺の腕を強引にひっぱっていこうとする。

「一楽 一楽 一楽らーーめ〜ん」

ナルトは変な歌をうたって、一人上機嫌だ。

「おいっナルト!よせバカ!俺は今忙しいんだってっ」
俺は掴まれた腕をふりほどくと、「んじゃなっ」と手を
振った。

「シカマル 冷てぇーこと言うなってばよ!」

「どあっ!!」

ナルトは背を向けた俺に体当たりしてきやがった。

「痛てぇな!バカ!」

俺ははずみでコケて、地面に倒れた。

「悪ぃ悪ぃ・・・・とりあえず飯食おうぜーーー」

こ・・・・・こいつっ・・・・・・

はぁ・・・・だめだ。こいつに会っちまったのが、
そもそもの運のつきだ・・・・あきらめるか・・・・

「分かったよ」
俺が頭をかきながら答えると、

「おっ!そうこなくっちゃ!行くぜシカマル!」

楽しそうなナルトを尻目に、俺は盛大な溜息を
つきながら、しぶしぶナルトの後について、一楽の
のれんをくぐった。








ずるずるずる〜


2人でらーめんをすする。

「ところでよ?なんでシカマルがこんなとこに
 いるんだってばよ?」

「あぁ?を探してたんだよっ」

俺はらーめんをすすりながら答えると

?ん?俺さっき会ったってばよ」

ナルトは俺の方をチラッと見て言った。

ブオッ

俺はむせた・・・・・・・・

「ど、、どこで?」
まだ喉の奥につまるらーめんをゴホゴホと
咳をして水で流し込む。

「うーーーん。確か、最近新しくできた喫茶店で・・・・」

ナルトは「大丈夫かよ」と俺の背中をさすりながら
答えた。

「そ、それで。誰と一緒だった?」

「さあ?そこまでは・・・・・けど、随分かわいい格好
 してたってばよ。なんかこう女っぽい・・・・・」

「ふーーん」

なんだよっ それは・・・・・・
俺が見るは、いつもTシャツにズボンのような
ラフな格好だ・・・・

ナルトは難しい顔で黙った俺の顔を覗きながら

「ははーーん。シカマル〜。お前さ、お前さ、
 が他の男に取られたと思って探しにきたんだろ?」


ずきーーーーーーーーーーーんっ

図星・・・・・こんな超バカのナルトにバレて俺はかなり
焦った・・・・・・


「バ、バカ!そんなんじゃねーって」

「まったー 嘘つくんじゃねーってばよっ
 んじゃ、なんでめんどくさがりのお前が、必死に
 なって探してんだーーー?」

ナルトに肘でこづかれて、

「違うっつってんだろっ!俺はちょっと
 用事があって、んで探してただけだっての!」

俺が言うと、

「さっきすごい汗かいてたってばよ!シカマルらしく
 ねーって思ってたら、ねー ははーーん?」

ナルトのやろーーーーーーっ!

俺がナルトの胸倉を掴みかけた時、

「あれ?シカマル?ナルト?」



一楽ののれんを片手であげて、俺達を覗き込む女。
逆光でよ顔を良く見えねーが・・・・
声で分かるっつうの!




っ!!』



ナルトと2人で声が重なった。



「よっ!」
は頭に片手をつける格好で笑っている。

俺達はさっきまで話しの中心にいた本人の
突然の登場に驚いていた。

「どうしたの?2人とも・・・・・」

は状況がつかめず、きょとんとしている。


先に話しを切り出したのはナルトだった。

「なに?」
がナルトの顔を不思議そうに見ている。

「あ、あれ?、さっきと格好が違うってばよ」
ナルトはの体を頭からつま先へと交互に見て
言った。

「へ?」
は驚いた顔をしていた。

俺もを見る。

うん。いつもの格好だ。
シャツはノースリーブだが、下はダボダボのズボン。
ナルトが言う、女らしい格好とはかけ離れていた。

「やっぱりな。」

俺はらーめんをずずずとすすった。

「見間違いだろ。まったくよぉ」
俺が言うと、

「見間違い?だったのか?・・・お前ずっと
 その格好だったのか?」

「え?何?なんの話し?」
は訳わからないって顔してる。

俺は箸でナルトの顔を指しながら言った。
「ナルトがな、お前がかわいい格好で喫茶店にいる
 ところを見たんだと・・・・」

俺は親父も見たってことは言わなかった。
 
どうせ2人ともに似た誰かを見て、勘違い
したんだろうよ・・・・・

俺は内心ほっとして、の顔を見た。



ん?



一瞬だが、の表情がこわばった気がした。

でも、すぐには満面の笑顔を見せて、


「やだッ ナルトってば!私な訳ないじゃない!」
と言った。

「そっか・・・・おっかしいってばよ。あれは確かに
 ・・・・でも、あの時のはワンピース
 だったし・・・・」

ナルトは頭を何度もかしげて考えこんでいる。

「見間違いだよ、見間違い!やだっ ナルトったら!」

は、あははと笑って、ナルトの背中を叩いている。




こいつ・・・・・なんか隠してるんじゃねーの?



俺はなんとなく、の笑顔が作り物に感じで仕方
なかった。








その後、もらーめんを食べて、3人で帰った。

「んじゃ、またなっ! シカマル、

ナルトは手を振って帰っていった。





俺とは2人きり・・・・・・・

なんとなく、さっきの事が気になって、俺は黙った
まま歩きだした。

「あっ まってよ!シカマル!」
が俺の後を追って、隣を歩く。

「ね、どうしたの?」
が黙ったままの俺の顔を覗きながら聞いてきた。


「別に・・・・」
俺はを見ずに答えた。

「シカマル・・・・あのね、」
の言葉を遮って、俺はさっきから気になっていた
 ことを思い切って聞いた。

「お前さ、俺達に会う前にどこにいた?」

「え?」
は急に立ち止まった。

「えっとね・・・・・いのといたよ。ほらっ いつもみたい
 に色々買い物してたの!」

・・・・・お前、目が泳いでるぞ・・・・・
俺はそんなの態度に気づかないフリをした。

「ふーーん。いのと一緒じゃ大変だったろ?
 あいつは気に入った物は手当たり次第買うやつ
 だかんな?
 どーせお前もつられて色々買ったんだろ?」

俺はの目をじっと見つめて言った。

「そ、そりゃーもー!いのが色々見てまわるからさ、
 私も色々買っちゃったよーーー
 まいっちゃうよね!いのには!」


はなんだか焦っているようだ。


そりゃそうだろう?
色々買ったって・・・・へたな嘘言うんじゃねーよ。

「そりゃ大変だったな。
 で?お前、買ったものはどーしたよ?」

俺はわざと意地悪く、の顔を見ていった。

は手ぶらだ。
店の紙袋、一つもってねー。

俺はの次の言葉を待った。

「そ、それは・・・・・・えっと・・・・・・」
は顔を真っ赤にして困っている。
手をギュッと握り締めて、オロオロしはじめた。


マジで男と会ってたのかよ・・・・・・


俺は親父とナルトの言葉を思い出した。
かわいい顔して男と喫茶店にいた・・・・・
女らしい格好・・・・ワンピース姿・・・・・

「お前、買い物してたなんて嘘だろっ!!」

俺はの手をギュッと握って、問いただした。

「えっと、えっと、それは・・・・」

は俺を怯えた子犬みてーな目で見ている。

「お前、最低だなっ」
俺は吐き捨てるように言った。

「何?シカマル・・・・なんでそんなこと言うの?
 なんで怒ってるの?」

は涙目で俺の顔を見つめている。

俺は怒りが込み上げてきた。



お前、まだとぼける気かよっ!!



「お前さ、俺のいない間に何やってんだよっ 
 俺が嫌いになったんなら、もう別れてやっから。」

俺はそう言うと、握っていた手を乱暴に振り解いて、
に背中を向けて歩きだした。


「違う。違うよ。誤解だよ・・・シカマル・・・待って!」
は小さい声で呟くように言うと、俺を追って
走ってきた。

「何が違うんだよっ 俺に嘘ついてまで会いたい
 男がいんだろっ!」
俺が怒鳴るように言った事に驚いたのか、
はびっくりした顔をして黙ってしまった。

「もう、めんどくせーんだよっ
 別れようぜ!
 俺達、ただの幼馴染にもどればいいだけだろ?
 そしたらお互い自由だし、それでいいんじゃねー」

俺は心にもないこと言ってる。
別れたいとか全然思ってねーし。
けど、なんかとまらねーし。



俺はゆっくりの顔を見た。
体が固まった。



「シカマル・・・そんな風に思ってたの・・・あたしといる
 のめんどくさいの?」
の目から涙がこぼれ落ちた。

それは、なんだか一枚の絵を見てるかのようで、
俺とは無関係な遠いものを見てるようで、なんだか
見とれた・・・・・

「私は・・・・私は・・・シカマルが好き・・・大好き・・・・ 
 だから別れない。今更、ただの幼馴染になんて
 もどれないよ!」

はそう言うと、俺の横をすり抜けて、走って
いった。

俺は悪くねーだろ・・・・・


そう思いつつも、を泣かせた事が、すごく
胸につかえた。

なんでお前が泣くんだよ・・・・・

「捨てられたのはこっちだっての。
 ったく。めんどくせーな」

俺は今さら、を追うことも出来ず、ただで
さえ、疲れた足をひきづるように、とぼとぼと家
へ帰った。



俺が帰ると、相変わらず親父が俺をうらめしそう
に見てきやがった。

「シカマル・・・・お前、ちゃんと仲直りした
 んだろうな?」

もうなんだか答えるのもめんどくさくなった俺
は、

「さあな。」

とだけ、答えると、そうそうに風呂に入って、
2階にあがり、ベットに潜り込んだ。

親父が下でブーブー文句を言っていたが・・・・・


はぁーーーーーーーめんどくせーー。

マジ、知るか!!俺だって訳わかんねーっつうの。
だいたい、俺が何したっつうんだよ。
・・・・・泣きやがるし・・・・・好きだとか言うし。
俺はどーしたらいいんだよっ!


頭の中がなかなか整理できない。


先を読むのが得意なはずの俺も、の事になる
とてんでダメだ。

「だーーーーーっ もうやめだ!やめ!考えても
 しょーがねーーー!」

俺はでかい独り言を言うと、頭まで布団をかぶった。









次の日は10班の任務があった。
内容はいつも通り、どーでもいいようなもの。
任務は午後には終わってしまった。

「あーーー。 終わったかー・・・・」

俺は一番大きな木の下の木陰に座って、コキコキと
肩をならしていた。
ふいに、俺の目の前に影がたちはだかる。

「シカマル・・・・あんたに話しがあるんだけど」

いのは完全に怒りモード全開だ。

今日は朝からすこぶる機嫌が悪く、任務中も
俺の顔すらまともに見なかった。
心配したチョウジが
「シカマル、早く謝っちゃった方がいいよ」
なんて声をかけてきたぐらいだ。


まっ 怒る理由はだいたい察しはつくけどよ・・・・・


といのは大親友ってやつだからな・・・・・


「で?なんだよ。」
俺は首を回しながら、適当に答えた。

に別れるって言ったんだって?」

いの・・・・お前の目・・・・すげー怖い・・・・

「あぁ・・・言ったな」
俺はなるべく、いのの顔を見ないように、
今度は腕を上にのばして、伸びをしながら答えた。

「理由は?え?理由は何なのよ!!めんどくさい
 からとか言ったら、私、あんたを殴るわよ!」

突然、目の前に、目を逆立てたいのの顔が近づいて、
俺は座りながらも、後ろにあとずさりした。

「言っとくがな。最初に裏切ったのは、の方
 だかんな!」
俺はいのと少し距離をとって話しをしようと、
試みた・・・・・が・・・・・

興奮したいのはどんどん近づいてきて、俺の胸倉
をギュッと掴んだ。

が裏切るって!どういう事よ!んなわけ
 ないじゃない!バカ!」

「知らねーよ。好きなやつでも出来たんじゃねーの。
 でなきゃ、喫茶店に男といたりしねーだろっ」

俺はいのに弁解すんのも、めんどくせーから、
頭の上に手を組みながら、そう言った。

ふいに、いのの手が俺の胸倉から離れた。


「喫茶店?」
いのは不思議そうな顔をしている。

「なんかよ、かわいいワンピース姿で会ってるらしい
 けど・・・・・・」

いのは目を見開いて、びっくりした様子だ。

いくら仲良くても、のやつ、さすがに自分が俺
以外の男といた事は話してないんだな・・・・・

俺はいのの顔を見ながら、ぼんやりと考えていた。

すると、いのは不意に真顔で俺の顔を覗き込んだ。

「シカマル・・・・あんた・・・・それが別れる理由なの?」

「まあな。」
俺が溜息まじりに答えると・・・・・・

「ちょっと来て!」

突然、いのに手首をつかまれ、ぐいっとひっぱられた。

「おいっ!いの!何すんだ!やめろって!」

俺の言葉が聞こえないのか、無視されてんのか、とにかく
いのは俺をひっぱりながら、里の繁華街へとどんどん
走って行く。

途中で、報告書を提出しに行ったチョウジを見つけると、

「チョウジ!おいしいもの食べさせてあげるから、
 一緒に付いてきて!」

と声をかけ、横をすり抜けて行く。

もちろんチョウジは
「おいしいものって?なに?なに?行く行く〜」

ひっぱられてる俺の後について、走ってきた。




「おい!いの!マジ、どこに連れてく気だよ!
 とにかく手〜離せって!!」

俺の言葉は風を切って走りつづける、いのには
 まるで届かない。

俺はあきらめて、とにかくいのに付いていった。







はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・

いのと俺とチョウジ・・・・・肩で息をしながら、その場
にしゃがみこむ。

「で?どこなんだ?ここは・・・・・・」
「しっ!黙って!」
俺の質問を完全に無視して、いのは草陰に身を隠す
ように指示する。

「ねー いの。俺、お腹すいちゃったよー・・・」
愚痴るチョウジの頭を草の中に押し込んで、いのは
俺に小声で言った。

「シカマル・・・・・あそこ・・・・見て!」

目の前には喫茶店・・・これが例のが男といた
 っていう店か??

俺は目を凝らす・・・・

「あっ!出てきたよ!」
いのの声に、俺の心臓が高鳴った。


カランカラン


木のドアが開いて、中から、水色のワンピースを
来たと、俺の知らない男がなにやら話しを
しながら出てきた。

俺は正直、すげー動揺した。
ワンピース姿のは、ナルトが言っていた
ように、女らしかった・・・・
短い裾から伸びるの白い足に俺は釘づけ
になる。
それは、俺にをより女に感じさせた。

いや、それ以上か。
妙につやっぽくて、いつものじゃ
なくて・・・・・俺は笑いあう2人に嫉妬した。
どうしようもなく腹がたって、自分の手のひらを
ぎゅっと握りしめた。

・・・・なんかかわいい・・・・ね・・・
 でも・・・あいつ・・・誰・・なの?・・・シカマル・・・」

チョウジは草陰からそっと呟いた。

「俺が知るかよっ・・・・」
俺はぶっきらぼうに答えた。

内心、その場に飛び出して行って、あの男を
殴りとばしたい気持ちだった。

しばらくすると、男は笑顔で手を振って、帰って行った。
は男の後を追うでもなく、また喫茶店に
戻っていった。

「さっ!入るわよ!」
いのはまた俺の腕をひっぱって、ひきづるように
つれていく。

チョウジも後につづいた。

くっそーーー のやろー・・・

俺は文句の一つでも言ってやろうと、覚悟を決めた。

いのがドアを開く。

カランカラン

ベルの音が店内に響きわたった・・・・・

・・・お前な・・・」

俺が言いかけた時・・・・・・・


「いらっしゃいませーーーー」

店内にはさっき、が着ていた水色のワンピース
を来た女が4〜5人いて、一斉に声をかけてきた。

あっけにとられた俺の腕をひいて、いのが奥の席へと
そそくさと移動して、俺達を座らせた。



え?



目が点の俺の横にいの。前に、チョウジ。
あっけにとられている俺の前に女が水を運んできた。

「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりました
 らお呼びください」

いのはその女に耳打するように

「注文はって子にお願いしたいんだけど。
 いますか?」
と言うと、

その女は店内を見渡してから、

「奥にいると思いますので、呼んでまいります」

と言って、丁寧にお辞儀をして去っていった。

ぼーーーぜんとした俺の腕をいのが小突いて
言った。

「シカマル〜。に誤りなさいよねーん」

「そっかー。はここでアルバイトしてたん
 だね?シカマル〜」
状況を掴めていないチョウジが呑気に言う。

「そうそう。それをさー どっかの誰かさんが
 勘違いしちゃってさー」

くくくく。

いのは笑いをこらえながら、チョウジに言う。

「うるせー」

「シカマル・・・顔、真っ赤だよーーーーー」

なんとなく状況を理解したのか、チョウジも
ニタニタを笑いながら俺の顔を見ている。

「だから、うるせーって言ってんだろっ」

最後の言葉を言うちょっと前に、俺達の前に
女がきて、事務的に言った。

「ご注文はお決まりですか?」

その女は顔をあげた瞬間、あっ!と声を
出した。

「いの!シカマル!チョウジ!」




「はぁーーい!!来ちゃったよーん」
!俺、イチゴパフェねーーー」

いのとチョウジはに笑いかけている。

俺も罰が悪いこの状況をどうにか打破し
ようと、なんとか答えた。

「よぉ・・・・・」

不意にの顔が俺の目に飛び込んで
くる。

さっきは遠くで、よく分からなかったが、
目が真っ赤だ。


俺には理由が分かりきっていた。

昨日の俺からの別れ話しがショックで
一晩中泣いてたんだろ・・・・・・



「みんな・・・・どうしたの?」

俺の顔を見ないように小声で言った。



すると、いのが突然チョウジの腕を強引に
ひいて、

「私とチョウジは帰るとこ!シカマルの事
 頼むわね!!」

とか言って、ひきづるように、チョウジを
連れて店のドアへと歩いていく。

ったく、みえみえのおせっかいやきやがって!

俺は
はぁーーーーーっと溜息をついた。


「え?なんで?イチゴパフェは?ねーいの?
 俺、まだ食べてないってばー」

叫ぶチョウジをひきづって、いのは俺達に
ヒラヒラと手を振って、
「お先に〜」
とか言って、出て行った。


カランカラン


ドアの音が響くと、俺達は目を合わせた。


「あ、あのよ・・・・き、昨日は・・・悪かった。」

俺は誤解していた自分が恥ずかしくて、頭を
かきながら、言った。

「え?・・・・シカマル・・・・・それって・・・
 別れなくてもいいの・・・私・・・・・」

は銀色の丸いお盆を握りしめて言った。

「っつうか。はじめから別れる気とかねーし。
 あれは・・・・俺が勘違いして・・・その・・なんだ・・・
 お前が男と喫茶店にいたって聞いて・・・・
 嫉妬した・・・・・・・・」

俯いた俺からはの細い腕だけが見える。
その手はかすかに震えていた。

「マジ・・・悪かった・・・・・」

俺がそう言うと、

「シカマル・・・私・・・本当にめんどくさくない?」

の声も震えているのが分かる。

「あぁ。 あれ撤回。マジ言い過ぎた。っつうか俺、
 お前いないとダメだし・・・・」

恥ずかしいけど、今は言うしかねーだろ?
だってよ、を傷つけて泣かした俺の罪は
重いよな・・・・・・・

「シカマル・・・バイトのこと黙っててごめんね。」

それはいい・・・・けど、俺は疑問に思った。

「なんで、お前、急にバイトなんかはじめたんだよ」

は赤い顔をして、俯きながら言った。

「もうすくシカマルの誕生日でしょ?前に欲しい
 って言ってた腕時計ね、買ってあげたかったの。」

俺はドキっとした。

前に、と買い物に出たときに、店先に飾って
あったアレか?
俺はなんのきなしに、
「これ、いいな。」
とか呟いた気がする・・・・それを覚えてたのか・・・

「バカッ!俺の為なんかにこんなことまですんじゃ
 ねーよ!」

「だって・・・・シカマルの喜ぶ顔が見たかったから。
 だから、内緒でお金ためて・・・・・」
は頬を膨らまして反論した。

「バカ・・・・だからって、もうやめてくれ。こんなこと。
 ・・・・・いらねーよプレゼントなんて。
 こんなとこで働いて、お前が他の男にちょっかいだ
 される方がよっぽどこたえるってぇの」

は驚いた顔をした。
けどすぐに、

「シカマル・・・・・・・ありがと・・嬉しい。」

の目には涙がたまっていた。
それでも俺を見て、優しく笑ってくれた。

その顔に俺はまた見とれた・・・すっげー綺麗
だなって、素直に思った・・・・・

改めて、の姿をまじまじと見る。

水色のワンピースはにすげー似合っている。
多分他の誰よりも・・・そう思うのは俺が
相当惚れてるからだけじゃないはずだ・・・・


けどよ・・・・・


「なぁ・・・・その服・・・・」

「え?似合ってない?」
遠慮がちに腰をかがめて、俺に顔を近づけて、
が小声で言う。

「やばいって、あんま屈むなよ!」

「え?どうして?」

どうしてって・・・・・
・・・・スカートの丈・・・それ、やっぱかなり短けー・・・・

ひらひらと軽やかに舞うスカートの裾からは、
の真っ白で細い足が、おしげもなくあらわに
なっている。

近くで見ると、ちょっとやばいぐらい色っぽかった。

「なぁ。お前、もう今日でバイトやめちまえ!」

「え?」

驚くの腕を強引にひいて、俺は店の外へと
連れ出した。

カランカラン

同じバイトの仲間が俺達を驚いた顔で見ていたが、
そんなことは俺の知ったことじゃねーし。

「ちょ、ちょっと!シカマル!だってだって!店長に
相談しなきゃだし・・・えっとえっと、そんな急に
 やめるなんて・・・・」

店のドアの前でオロオロするに俺は

「俺が断ってくっから待ってろよっ」

と言って、店内にもどった。




店長はぐちぐち文句を言っていたが、とにかく
は今日で辞めさせるとだけ告げて、俺は
の荷物をもって、店を出た。


店の外であっけにとられていた
俺を見て、

「あっきれたー。なんて強引なの!シカマルって
 そういうキャラだっけ?」
とか言って笑ってやがる。

「うるせー。 俺がキャラ変えちゃ悪ぃーかよっ」

と、の頭をぐりぐりと掴んでやった。

はやめてよーとか言いながら、
「でも、なんで?なんで急にやめさせたの?」
なんて聞いてくる。

ばーーーか。あったりめーだろっ
そのかわいい姿を他の男に見せたくねー
んだよ!!


だから俺は言ってやった・・・・・・


「お前のワンピース姿があまりにも変だから・・・」

「なにそれーーーーー!!!」

待てーーーシカマルーーーーーー!!
追いかけてくるをヒョイッと交わして、
俺はにキスをした。

あっけにとられて、はしばらく呆然と立って
いたが、我に返ると、
「シカマルの・・・・バカ・・・・・・」
と言って、真っ赤な顔で後ろをむいた。

そんなとこも、やっぱかわいいんだよな。
マジで・・・・こいつは・・・・・

「なぁ・・・・もう俺に内緒で何かしたりしねーって
 約束しろよな・・・・・・」
俺はたまらず後ろからを抱いて言う。

「う・・・ん。ごめんね。」

まわした俺の腕をそっと掴んで、
唇を押しつけた。

あったかくて柔らかい感触が俺の腕に熱を
もたせた。

の髪が風にふかれて、ほんのりと甘い匂い
がした。
俺はいつもののいつもの匂いにほっとする。

「んじゃ、帰るか・・・・」
「うん。」

俺とは手をつないで帰った。

「ねー」

不意にが俺の顔を覗きこむ。

「ワンピース返しそこねちゃったね」

「え?あぁそうだな。」

店を出るときには、ロッカー室でいつもの服に着替えて
帰ってくるらしいが、今日は強引に俺が連れて帰った
から、はワンピースのままだ。

「シカマルの誕生日に着てってあげよっか?」

はふふふんと鼻をならして俺の顔を見る。

「は?なんで?」
俺は怪訝そうな顔でを見ると、
だってーとか言いながら続けて言った。

「いのがさ、誕生日にシカマルにこの姿見せてみなって!」

は?またいのの差し金かよっ
俺は盛大に溜息をつく。

「んで?なんでだよ!」

「シカマル、きっと悩殺されちゃうって!」

ガクッ
俺はコケそうになった。

!お前、いのの言う事、いちいち本気に
 すんじゃねーよ!」

「え?シカマル、この格好、好きじゃないの?
 私、本当に似合ってない?」

今度は急に心配そうな顔をして言いやがるから、
俺は言ってやった。


「うん。まぁ、似合ってるんじゃねーの。」

「本当!それじゃーこの格好で・・・」

俺はの言葉を遮って付け足す。

「まぁ、その姿で来やがったら、間違いなく押し倒す
 けどな・・・・・」

「え?」

は一瞬間をおいてから、

「もう!シカマルのバカ!エッチ!エロマル〜!」

俺の腕をげんこつで叩いている。
顔も真っ赤でおもしれー!

「めんどくせーからさ、」

俺はの耳元に口を近づけて言った。

「お前、裸で来たら?」










それから家までの間、は俺を叩いて、
バカだのなんだのさんざん叫んでやがったけど、
結局、お互いの家の前で別れるときに
俺が「好きだ」って言ってキスしたら、お前は
急におとなしくなって、「私も大好きだよシカマル」
と言った。

やっぱ、といるとホッとすんな。
めんどくせーけど、俺はお前が相当好きだ。
だからもう心配かけさすなよなっ 




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